日本初。東大発ベンチャーによる国産チャットAI、米国の国際学会で認可を取得
GPT-4 にも応用可能。東大松尾研発ベンチャーによる研究成果で。
都内で国産AIの研究開発を行う東大発ベンチャー、株式会社 Daisy(東京都中央区)は、本日 20 日、同社の開発する自然言語処理技術に関する論文が、ニューヨーク大学およびフェイスブックが主催する人工知能トップの国際学会(ICLR'23)で正式に採録認可されたことを発表します。
今回採択された論文は、東京大学松尾研究室出身で同社の創業者兼代表取締役、大澤昇平による論文であり、9 ページの技術提案と 6 ページにわたる数学的証明を含んだ英語論文です。内容は「コミュニケーションする再帰的エージェント」(Communicative Recurrent Agents) の深層強化学習に関するもので、経済学の「逆ゲーム理論」を応用し、インターネットや SNS、メタバースのような一般的には管理者不在とされる分散環境において、教師の手を借りずに事実認定を行うバイアスのない AI を学習することを目指しています。現在は、GPT-4 のような自己注視機構を使ったニューラルネットワークへの応用を見据えた改良、ならびにプライバシー保護技術の研究開発を、日本国内の専門家と連携しながら実施中です。
大澤氏は、東大松尾研で博士号を習得後、同ゼミで特任助教を務めていた経験があります。同氏の論文は、2021年1月に一度証明の不備が指摘され認可を拒否されたものの、2022年10月にその問題を解決した版を再投稿、ニューヨーク大学の教員含む世界中の人工知能研究者3名による3ヵ月に渡る審査を経て内容の正しさが認められ、今年 1 月に ICLR'23 で正式に採録認可が決定しました。大澤氏は、今年5月にルワンダで開催予定である同名の国際学会に出席し、技術詳細について世界中に講演を行う予定です。なお、今回のように、企業の代表取締役かつAI研究者でもある者が、単著でICLRから認可を受けるケースは日本初の快挙となります。
株式会社Daisyは、大澤氏が松尾研究室在籍中に創業して以降、東京都港区でエネルギー事業等を営む株式会社リミックスポイント【3825】より2019年に第三者割当増資による出資を受け、分散環境における事実認定AIやチャットAIを搭載した「Daisy AI プラットフォーム」の研究開発を実施、2022年2月に黒字化しました。今回、ICLRから認可を受けたことは、同社が保有する事実認定の発明が、グローバルな基準に照らしても大きな発見であることが客観的に認められたということであり、企業の保有する AI 技術の信用を裏付ける一つの根拠になると言えます。
ICLR'23 学会監修者(AC)のコメント
"While there are aspects of this paper that could be improved, such as the legibility of the maths, I and the reviewers agree that it is a quality contribution. One comment mentions that the paper has been submitted and rejected previously, but this should not be held against it."
「この論文には、数式の難解さなど改善すべき点はあるものの、私や査読者達は、この論文が質の高い貢献であることに同意します。ひとつの(査読者以外の第三者の)コメントには、この論文は以前に投稿され却下されたことがあると書かれていますが、このことを不利に考えるべきではありません。」
―― Open Review ICLR'23 より引用
今後同社では、Daisy AI の学習に同技術を利用する他、Open AIやFacebook、Google を初めとする組織との交渉を通じ、これらの技術を搭載することを目指しており、国内外のVCならびに事業会社からの支援を広く求めています。
論文PDF(原文): https://arxiv.org/pdf/2106.03007.pdf
■ICLRについて
ICLR は深層学習技術に関する世界トップの国際学会であり、ChatGPT の元となったニューラルネットワーク技術など、近年の人工知能技術を代表する多くがこの学会のオープンな論文を元にしている。技術の新規性・有用性・信頼性などを採択基準に 3-4 名の査読者による厳正な審査が実施されるため、多くの論文は掲載却下される。そのため、多くの場合は 2~3 名以上の研究者が共同で研究開発を行い、共著で論文を提出する場合が過半数を占める。今回のようにベンチャー企業の代表取締役が、単著でICLRから認可を受けるケースは日本初。
■Daisy AI について
深層学習による文章生成は、GPTを初め、現在、ビジネスにおいて非常に注目されている革新的な自然言語処理技術の一つである。OpenAIやマイクロソフトを初めとする多数のAI企業が資金を投じているが、Daisy AI の強みは、今回ICLRより認可を受けた分散事実認定技術*にある。これは、インターネットやブロックチェーンのように情報の正当性を判断する中央集権的な管理者がおらず、複数のプラットフォーマーのAIが異なる情報を提供する環境において、政治的・倫理的に偏りなく真実性のある情報を認定するための応用が期待されている。今後は、AI企業との提携・パートナーシップの形成を行い、性能向上やプライバシーの課題解決について取り組むことを視野に入れている。
*特許取得済:特開2019-192040、特開2019-191963
【代表発明者】
大澤 昇平 (昭和62年-)
株式会社Daisy代表取締役CEO・オーナー創業者
1987年福島県生。福島高専出身。博士(工学)。2015年東京大学大学院工学系研究科博士課程松尾研究室修了。日本IBM新卒入社。IBM東京基礎研究所で、日本取引所グループ(JPX)とのブロックチェーンの実証実験に従事した。19年には“東大最年少准教授”として東京大学大学院准教授に就任する傍ら、株式会社Daisyを設立し、代表取締役CEOに。2020年より同社専任となり、現職。TOEIC935。著書:『AI救国論』(新潮社)、『覚醒せよ日本人』(宝島社)
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