真皮弾性線維※1の三次元解析により、構成タンパク質の存在状態の加齢変化を解明
株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、星薬科大学 基礎実習研究部門 輪千 浩史(わち ひろし)教授との共同研究により、真皮弾性線維の三次元解析を行った結果、加齢に伴い線維の方向性と分布が変化しており、さらには真皮弾性線維の構成タンパク質の存在状態にも変化が生じていることを明らかにしました。これにより構成タンパク質の存在状態がシワやたるみに影響を与えている可能性があると示唆されました。
【研究背景と成果のポイント】
当社は、シワやたるみが発生するメカニズムの解明や有効なアプローチ方法の開発のために、皮膚の構造や弾力を維持する上で重要な真皮弾性線維をターゲットにした研究を重ねてきました。真皮中に三次元に分布する真皮弾性線維の存在状態と、その加齢変化を詳細に理解するには、ヒト皮膚における立体的な線維構造の把握が重要と考えました。そこで、若齢皮膚(30代)と老齢皮膚(70代)について、真皮弾性線維の主要構成タンパク質であるフィブリリン-1※2とエラスチン※3の三次元解析を実施し、それらの加齢変化の可視化に成功しました(図1)。
※1、2、3 : 4ページ参照
< 研究結果の詳細 >
これまで、真皮弾性線維の構成タンパク質の存在状態の加齢変化に関する解析は、主に二次元での観察手法により行なわれてきました。しかし、その手法では真皮中において三次元に複雑に分布する弾性線維の構造変化(例えば線維の枝分かれや連続性など)を理解するには不十分でした。一方で、皮膚組織の三次元構造を正確に把握するには、組織の劣化が進む前に摘出後速やかに処理した皮膚組織を観察することが重要となります。
そこで、当社 「研究所 フランス分室」※4にて若齢者と老齢者より摘出された皮膚を速やかに処理し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、まずは真皮弾性線維全体の三次元画像の再構築を行いました。その結果、若齢皮膚(30代)において真皮乳頭※5部全体に張り巡らされた垂直方向の真皮弾性線維が、老齢皮膚(70代)では減少するとともに、線維の方向性と分布が変化していることを確認しました(図2)。
※4、5 : 4ページ参照
【若齢皮膚(30代)では、真皮乳頭部全体にフィブリリン-1とエラスチンが連続的かつ密に分布】
さらに詳細に解析を行うため、若齢皮膚(30代)における、真皮弾性線維の主要構成タンパク質であるフィブリリン-1とエラスチンを免疫染色後、共焦点レーザー顕微鏡にて立体像を取得しました。その結果、若齢者(30代)の真皮乳頭層においては、垂直方向に連続的に走る線維状のフィブリリン-1とエラスチンの存在が確認され、真皮乳頭部全体に広がる様に細かく枝分かれをして存在していることが分かりました。これまで、この垂直方向の真皮弾性線維にはエラスチンが存在しないと考えられてきましたが、今回新たに、エラスチンの存在が明らかとなりました(図3)。
【老齢皮膚(70代)では、真皮乳頭部近傍でフィブリリン-1が減少し、エラスチン優位な弾性線維が分布】
老齢皮膚(70代)においても同様の手法で立体像を取得し、若齢皮膚(30代)と比較しました。その結果、若齢皮膚(30代)に比べ老齢皮膚(70代)においては、真皮乳頭部のフィブリリン-1が減少し、エラスチン優位な弾性線維へと変化していることが明らかとなりました。
若齢皮膚(30代)においては線維状のフィブリリン-1が乳頭部全体に密に存在しているのに対して、老齢皮膚(70代)においてはフィブリリン-1の線維の蛍光強度が全体的に弱く、線維が減少していることが分かりました(図4中央)。一方、エラスチンは老齢皮膚(70代)においても蛍光強度が強く(図4右)、フィブリリン-1とエラスチンを重ね合わせた像では、加齢に伴いエラスチン優位な線維となっていることが分かりました(図4左)。
今後も、最新の解析技術を駆使し、加齢に伴うこれらの真皮弾性線維の構造変化における詳細なメカニズムの解明を行っていくとともに、お客さまの肌悩みとなるシワやたるみにアプローチするエイジングケア※6化粧品の提供に繋げていきます。本知見は「第44回日本香粧品学会」(2019/6/28~29)にて発表しました。
※6 年齢に応じたお手入れ
【用語解説】
※1 真皮弾性線維
弾性線維とは複数の構成成分からなり、動脈、心臓、肺といった弾力に富む臓器に多く存在する線維です。皮膚の弾力においても重要な役割を担い、加齢や紫外線により変性すると、シワやたるみが生じると考えられています。
※2 フィブリリン-1
フィブリリン-1とは弾性線維の主要構成成分のひとつです。真皮の線維芽細胞により産生され、弾性線維形成において重要な細線維を細胞外に形成します。
※3 エラスチン
エラスチンとは弾性線維の主要構成成分のひとつです。真皮の線維芽細胞により前駆体タンパク質トロポエラスチンとして産生されます。トロポエラスチンが細胞外の細線維上に沈着・架橋して、エラスチンとなります。
※4 コーセー研究所 フランス分室
2017年10月にフランス リヨン市に開設した研究所の分室です。同市には国立リヨン市民病院や化粧品企業など皮膚科学研究分野の研究施設が集積しており、同室でも最先端の皮膚科学研究を推進しています。
2017年10月31日リリース : https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2017/10/20171031.pdf
※5 真皮乳頭
表皮と真皮の境界において、表皮側に突出している真皮の突起構造を指します。加齢により、この真皮乳頭の突起構造が減少する事が知られています。
参考情報 : コーセーの真皮弾性線維研究
当社は、シワやたるみが発生するメカニズムの解明や配合成分の開発のために、1990年代から、皮膚の構造や弾力を維持する上で重要な役割を担っている真皮弾性線維をターゲットにした研究を続けてきました。2018年には「加齢に伴うフィブリリンの変性メカニズムと、アスタキサンチンによる新たな弾力改善のアプローチ」※7に関する研究成果を発表、商品へ応用してきました。
※7 2018年7月2日付リリース https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2018/07/20180702.pdf
このニュースに関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
株式会社コーセー コーポレートコミュニケーション室 TEL 03-3273-1514 (直通)
【研究背景と成果のポイント】
当社は、シワやたるみが発生するメカニズムの解明や有効なアプローチ方法の開発のために、皮膚の構造や弾力を維持する上で重要な真皮弾性線維をターゲットにした研究を重ねてきました。真皮中に三次元に分布する真皮弾性線維の存在状態と、その加齢変化を詳細に理解するには、ヒト皮膚における立体的な線維構造の把握が重要と考えました。そこで、若齢皮膚(30代)と老齢皮膚(70代)について、真皮弾性線維の主要構成タンパク質であるフィブリリン-1※2とエラスチン※3の三次元解析を実施し、それらの加齢変化の可視化に成功しました(図1)。
※1、2、3 : 4ページ参照
< 研究結果の詳細 >
これまで、真皮弾性線維の構成タンパク質の存在状態の加齢変化に関する解析は、主に二次元での観察手法により行なわれてきました。しかし、その手法では真皮中において三次元に複雑に分布する弾性線維の構造変化(例えば線維の枝分かれや連続性など)を理解するには不十分でした。一方で、皮膚組織の三次元構造を正確に把握するには、組織の劣化が進む前に摘出後速やかに処理した皮膚組織を観察することが重要となります。
そこで、当社 「研究所 フランス分室」※4にて若齢者と老齢者より摘出された皮膚を速やかに処理し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、まずは真皮弾性線維全体の三次元画像の再構築を行いました。その結果、若齢皮膚(30代)において真皮乳頭※5部全体に張り巡らされた垂直方向の真皮弾性線維が、老齢皮膚(70代)では減少するとともに、線維の方向性と分布が変化していることを確認しました(図2)。
※4、5 : 4ページ参照
【若齢皮膚(30代)では、真皮乳頭部全体にフィブリリン-1とエラスチンが連続的かつ密に分布】
さらに詳細に解析を行うため、若齢皮膚(30代)における、真皮弾性線維の主要構成タンパク質であるフィブリリン-1とエラスチンを免疫染色後、共焦点レーザー顕微鏡にて立体像を取得しました。その結果、若齢者(30代)の真皮乳頭層においては、垂直方向に連続的に走る線維状のフィブリリン-1とエラスチンの存在が確認され、真皮乳頭部全体に広がる様に細かく枝分かれをして存在していることが分かりました。これまで、この垂直方向の真皮弾性線維にはエラスチンが存在しないと考えられてきましたが、今回新たに、エラスチンの存在が明らかとなりました(図3)。
【老齢皮膚(70代)では、真皮乳頭部近傍でフィブリリン-1が減少し、エラスチン優位な弾性線維が分布】
老齢皮膚(70代)においても同様の手法で立体像を取得し、若齢皮膚(30代)と比較しました。その結果、若齢皮膚(30代)に比べ老齢皮膚(70代)においては、真皮乳頭部のフィブリリン-1が減少し、エラスチン優位な弾性線維へと変化していることが明らかとなりました。
若齢皮膚(30代)においては線維状のフィブリリン-1が乳頭部全体に密に存在しているのに対して、老齢皮膚(70代)においてはフィブリリン-1の線維の蛍光強度が全体的に弱く、線維が減少していることが分かりました(図4中央)。一方、エラスチンは老齢皮膚(70代)においても蛍光強度が強く(図4右)、フィブリリン-1とエラスチンを重ね合わせた像では、加齢に伴いエラスチン優位な線維となっていることが分かりました(図4左)。
今後も、最新の解析技術を駆使し、加齢に伴うこれらの真皮弾性線維の構造変化における詳細なメカニズムの解明を行っていくとともに、お客さまの肌悩みとなるシワやたるみにアプローチするエイジングケア※6化粧品の提供に繋げていきます。本知見は「第44回日本香粧品学会」(2019/6/28~29)にて発表しました。
※6 年齢に応じたお手入れ
【用語解説】
※1 真皮弾性線維
弾性線維とは複数の構成成分からなり、動脈、心臓、肺といった弾力に富む臓器に多く存在する線維です。皮膚の弾力においても重要な役割を担い、加齢や紫外線により変性すると、シワやたるみが生じると考えられています。
※2 フィブリリン-1
フィブリリン-1とは弾性線維の主要構成成分のひとつです。真皮の線維芽細胞により産生され、弾性線維形成において重要な細線維を細胞外に形成します。
※3 エラスチン
エラスチンとは弾性線維の主要構成成分のひとつです。真皮の線維芽細胞により前駆体タンパク質トロポエラスチンとして産生されます。トロポエラスチンが細胞外の細線維上に沈着・架橋して、エラスチンとなります。
※4 コーセー研究所 フランス分室
2017年10月にフランス リヨン市に開設した研究所の分室です。同市には国立リヨン市民病院や化粧品企業など皮膚科学研究分野の研究施設が集積しており、同室でも最先端の皮膚科学研究を推進しています。
2017年10月31日リリース : https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2017/10/20171031.pdf
※5 真皮乳頭
表皮と真皮の境界において、表皮側に突出している真皮の突起構造を指します。加齢により、この真皮乳頭の突起構造が減少する事が知られています。
参考情報 : コーセーの真皮弾性線維研究
当社は、シワやたるみが発生するメカニズムの解明や配合成分の開発のために、1990年代から、皮膚の構造や弾力を維持する上で重要な役割を担っている真皮弾性線維をターゲットにした研究を続けてきました。2018年には「加齢に伴うフィブリリンの変性メカニズムと、アスタキサンチンによる新たな弾力改善のアプローチ」※7に関する研究成果を発表、商品へ応用してきました。
※7 2018年7月2日付リリース https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2018/07/20180702.pdf
このニュースに関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
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