須藤玲子とNUNOの過去最大規模展「テキスタイル・アルケミー」、米国・LACMAで開幕
会期は2027年3月7日まで。展覧会書籍は日本国内でも発売。

米国西部最大の美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館(Los Angeles County Museum of Art、以下LACMA)にて、須藤玲子とNUNOの40年以上にわたる活動を包括的に紹介する展覧会「テキスタイル・アルケミー:須藤玲子とNUNOの創造」(Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO、以下本展)が、2026年9月20日に開幕しました。NUNOの展覧会としては過去最大規模となり、2027年3月7日まで開催されます。
本展では、世界有数のNUNOテキスタイル・コレクションを有するLACMAの所蔵品を中心に、100点を超えるNUNOのテキスタイルを、そのデザイン画やスケッチ、原材料、道具、モックアップ、試作品などとあわせて展示。NUNOの創造の軌跡と、その背景にある日本各地の職人や工場との協働に光を当てています。
会場の中心には、NUNOが設立された1984年当時のショップを再現。また、ピーター・ズントー(Peter Zumthor)が設計を手がけ、2026年春に開館したLACMAの新しいデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ(David Geffen Galleries)のカーテンのために開発された、クロムスパッタリング加工のテキスタイルも紹介されています。
ロサンゼルスを訪れる機会がありましたら、ぜひ本展に足をお運びください。本展とあわせて、LACMAキャンパス内の同ギャラリーズでは、実際の建築空間でNUNOのカーテンを体感していただけます。また、LACMAとデルモニコ・ブックス(DelMonico Books)から刊行された書籍『Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO』は、日本国内でも入手いただけます。
■展覧会『 テキスタイル・アルケミー』について
「テキスタイル・アルケミー」に込められたもの
展覧会タイトルに掲げられた「アルケミー(Alchemy/錬金術)」について、本展を企画したLACMA衣装・テキスタイルおよび日本美術部門長兼シニア・キュレーターのシャロン・S・武田(Sharon S. Takeda)は、次のように語ります。
「須藤玲子とNUNOは、アート、工芸、テクノロジー、サステナビリティを結びつけてきた、現代のテキスタイルデザインにおいて最も影響力のある存在のひとつです。かつて錬金術師たちが身近な素材を価値あるものへと変えようとしたように、須藤は一見何気ない素材から、予想もしなかった美しさと先端的なデザインを生み出します。本展を通して、テキスタイルを芸術的かつ文化的な存在として、より深く理解していただけることを願っています。」(LACMAのプレスリリースより引用)

NUNOの創造を紐解く3つの視点
本展は、日本各地の職人や工場との対話と協働を重ねながら、これまでにないテキスタイルを生み出してきた須藤玲子とNUNOの40年以上にわたる活動を、そのものづくりの根幹をなす「実験(Experimentation)」「テキスタイルの伝統の再解釈(Reimagining Textile Traditions)」「サステナビリティと再利用(Sustainability and Reuse)」という3つの姿勢を軸に紐解きます。

「実験」では、インダストリアルデザインをはじめとする他分野に開かれたNUNOの姿勢に着目し、自動車部品に使われる工業用コーティング技術を応用して生まれた、金属のような輝きと布ならではの柔らかさをあわせ持つメタルシリーズなどを紹介しています。

「テキスタイルの伝統の再解釈」では、1990年代より日本各地の伝統的な染織産地を訪ね、職人たちとの対話を重ねてきた須藤玲子とNUNOの取り組みを紹介しています。伝統を固定されたものとして保存するのではなく、今に生きる創造の資源として捉え直し、和紙などの素材や、刺繍、伊勢崎銘仙に受け継がれる技術を現代のテキスタイルへと展開した作品を取り上げています。

また、「サステナビリティと再利用」では、従来は副産物や残材として扱われてきた素材に新たな価値を与えてきたNUNOの取り組みに着目し、繭の外側の粗く硬い部分である「きびそ」や、奄美大島で泥染めされた絹糸の残糸などを活用した作品にフォーカスしています。
1984年のNUNOショップを再現した展示空間
会場の中心には、NUNOが設立された1984年当時のショップを再現した空間が設けられています。東京・六本木のAXISビルにあるNUNOショップは、創設以来、テキスタイルを販売するだけでなく、布を介してアーティストや建築家、デザイナーをはじめとするさまざまな人々が出会い、交流する場であり続けてきました。本展のショップもそのあり方を受け継ぎ、来場者はNUNOのテキスタイルとその制作背景に触れた後、布や衣服、アクセサリーなどを実際に手に取り、購入することができます。
展覧会全体の展示デザインには、ヴィジュアル・アーティストのアン・ハミルトン(Ann Hamilton)がアドバイザーとして参画し、LACMAチームと協働しています。また、会場では、パノラマティクス主宰の齋藤精一と映像ディレクターの本間無量(Abstract Engine)が手がけた映像を通して、テキスタイルが完成するまでの制作過程や、職人や技術者との協働の背景も紹介されています。

展覧会概要
展覧会名:テキスタイル・アルケミー:須藤玲子とNUNOの創造
(英文名:Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO)
会期:2026年9月20日(日)~2027年3月7日(日)
会場:ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)レスニック・パビリオン
所在地:5905 Wilshire Boulevard, Los Angeles, CA 90036
公式サイト:https://www.lacma.org/art/exhibition/textile-alchemy-art-reiko-sudo-and-nuno
■本展に関連するトピックス
01|ピーター・ズントーの建築空間を形づくるNUNOのカーテン
須藤玲子とNUNOは、2026年春に開館したLACMAの新しいデイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズ(※)のために、クロムスパッタリング加工を施したカーテンをデザインしました。建築の設計を手がけたのは、スイスの建築家ピーター・ズントーです。
須藤玲子とNUNO、LACMA、そしてピーター・ズントーによる数年にわたる協働から生まれたこのカーテンは、可視光透過率(VLT)を抑えて光に敏感な美術作品を守りながら、館内からロサンゼルスの景観を望むことができるよう設計されています。光を受けて繊細に輝く透過性のある布は、コンクリートを基調とする建築に柔らかな表情をもたらし、時間や天候によって移ろう館内の光を調整します。
素材や光が生み出す空間のアトモスフィアを重視するズントーの建築において、NUNOのカーテンは単なる調度ではなく、建築空間を構成する重要な要素として恒久的に設置されています。本展では、このカーテンのために開発されたテキスタイルも紹介されており、来場者は、展示作品としての布を鑑賞するとともに、それが実際の建築空間で機能する姿をあわせて体感することができます。
※デイヴィッド・ゲフィン・ギャラリーズは、同じLACMAキャンパス内にありますが、本展会場とは別の建物です。



02|展覧会書籍『Textile Alchemy』、日本国内でも発売
本展にあわせて、LACMAとデルモニコ・ブックス(DelMonico Books)による書籍『Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO』が刊行されました。本書では、写真家・林雅之らによる完成したテキスタイルや制作工程の写真とともに、LACMA館長のマイケル・ゴーヴァン(Michael Govan)、建築家の伊東豊雄、友禅の重要無形文化財保持者(人間国宝)・森口邦彦をはじめとする執筆者が、それぞれの視点からNUNOの創造について論じており、展覧会への理解をより深めることのできる内容となっています。本書は通常版と特別装丁版の2種類があり、特別装丁版にはNUNOが開発した4種のテキスタイルサンプルが収められています。なお、日本国内でも一部書店での販売がスタートしており、NUNOのオンラインショップでも近日中の発売を予定しています。




書籍概要
書籍タイトル:Textile Alchemy: The Art of Reiko Sudō and NUNO
刊行:Los Angeles County Museum of Art/DelMonico Books
編集・執筆:シャロン・S・武田
序文:マイケル・ゴーヴァン(Michael Govan)、伊東豊雄、森口邦彦
執筆:須藤玲子、廣李果、新見隆、ナオミ・ポロック(Naomi Pollock)
仕様:ハードカバー/英語/176ページ
サイズ:約22.9 × 28.6 cm
NUNO オンラインショップ:https://nuno-shop.com(同ショップでは近日発売予定)
■プロフィール
須藤玲子(Reiko Sudo)
茨城県石岡市生まれ。株式会社布 代表。東京造形大学名誉教授。1984年、NUNOの設立に参画。以来、伝統的な染織技術と現代の先端技術を融合させ、新たなテキスタイルの可能性を追求し続ける。2008年より、株式会社良品計画、株式会社アズほかでテキスタイルデザインのアドバイスを手がける。作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)、メトロポリタン美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ヴィクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館などに所蔵されている。水戸芸術館での個展などにより、2024年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

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