2025年版 国内クリエイターエコノミー調査結果を発表

市場規模は2兆894億円、潜在市場は約14兆5,866億円に

一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(以下、MURC)と共同で、国内のクリエイターエコノミーに関する調査を実施しました。結果を一部抜粋してお届けします。

【調査結果ダイジェスト】

  • 2024年における国内クリエイターエコノミーの市場規模は2兆894億円で、2021年以降、年平均約15.5%で成長

  • モノ/グッズ販売、動画投稿に関連した広告・マーケティング、スキルシェアなどが引き続き市場全体の約7割を占め、成長をけん引

  • 生成AIの普及により、創作過程の効率化と新規クリエイターの参入が進み、創作物の質・量の向上と取引の活性化に寄与

  • 個人クリエイターの法人化や伝統的なエンタメ・メディア産業、IPビジネスなどを含めた「クリエイターエコノミー潜在市場」は14兆5,866億円と推計。従来推計してきたクリエイターエコノミー市場規模(約2兆円)と比べ、およそ7倍の規模を持つことが明らかになった。

【調査実施の背景】

近年、動画や文章、イラストなどのデジタルコンテンツ提供に加えて、自身で制作したグッズやスキルのオンライン販売など、クリエイターの活躍の場は一層広がっています。

同時に、マネジメントや事務手続きのサポート、制作・販売ツールの提供など、クリエイターの活動を支えるさまざまなサービスも登場し、クリエイターを中心とした「クリエイターエコノミー」は国内においても重要な成長分野として注目されています。

当協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社は、2022年より国内クリエイターエコノミーに関する共同調査を継続しており、本年で4回目となります。今回の調査(調査対象年:2024年)では、市場規模や成長要因の分析に加え、個人クリエイターの法人化や伝統市場への進出、IP活用などを含めた「クリエイターエコノミー潜在市場」の把握も試みました。

また本調査では、生成AIの活用動向やクリエイターへの影響をより深く把握するため、アドビ株式会社およびnote株式会社の2社に対してインタビュー調査を行い、生成AIに関する取り組みや課題認識についてもヒアリングを行いました。

【調査結果詳細】 

◆ 国内クリエイターエコノミーの分類と主なサービス

本調査では、クリエイターエコノミーに関連する企業やサービスを「プラットフォーム」と「支援サービス」の2つに大きく分類しました。

「プラットフォーム」は、クリエイター活動の場を提供するものであり、価値の源泉に応じてさらに2つのカテゴリに分けられます。

1つ目は、クリエイターがモノやコンテンツ、スキルを提供する場として機能するプラットフォームです。ECや動画投稿サービス、スキルシェアサービスなどが該当し、具体的な創作物やスキルに対して対価が支払われます。

2つ目は、クリエイターとユーザー(ファン)を結びつけるプラットフォームであり、クラウドファンディングやファンコミュニティ、有料メンバーシップ、投げ銭機能などがこれにあたります。これらは、創作物だけでなく「クリエイター自身の活動」や「つながり」そのものを価値として提供する役割を担っています。

一方の「支援サービス」は、クリエイターの活動をより円滑に進めるためのツールやサポートを指します。動画編集や画像加工などの制作支援ツール、クリエイターと企業をつなぐマッチングプラットフォーム、確定申告や契約管理などを支援するオペレーションサービス、クリエイター向けPCなどのハードウェアが含まれます。近年は、生成AI機能を組み込んだ制作ツールや、自動字幕・要約などを提供するサービスも増えており、活動効率の向上に寄与しています。

<図表1 各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例>

(出所)MURC作成

◆国内クリエイターエコノミーの市場規模

本調査では、クリエイターエコノミー市場を、クリエイター活動による収入(間接課金・直接課金)と、クリエイター支援サービスへの支出をあわせたものとして定義しています。

<図表2 クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方>

(出所)MURC作成

2024年の国内クリエイターエコノミー市場規模は2兆894億円と推計されました。調査開始時点である2021年の市場規模は1兆3,574億円であり、2021年から2024年にかけて年平均約15.5%のペースで拡大していることになります。

<図表3 国内クリエイターエコノミーの市場規模推移(イメージ)>

(出所)MURC作成

市場の内訳をみると、モノ/グッズ販売、動画投稿に関連した広告・インフルエンサーマーケティング、スキルシェアといった分野が引き続き市場全体の約7割を占めています。これらの分野では、オンラインプラットフォームの利用拡大に加え、ファンとの直接的なつながりを生かした販売やマーケティング手法が浸透し、クリエイターの収益機会を広げています。

◆国内クリエイターエコノミー市場の拡大要因

2023年から2024年にかけて、国内クリエイターエコノミー市場は複数の要因が重なり合うことで成長を続けました。本調査では、とくに以下の3点を主要な拡大要因として整理しています。

1. クリエイターを中心とする経済圏への移行
これまでの市場では、作品やコンテンツそのものに対する消費が中心でしたが、近年は「誰が作ったか」を重視する傾向が強まっています。SNSや動画配信を通じて、ファンがクリエイター本人を応援し、複数のプラットフォームをまたいで支援する動きが広がっています。こうした“クリエイターベース”の経済圏の形成が、グッズ販売や広告案件、イベント出演など、クリエイターの収益機会を多面的に拡大させています。

2. 生成AIの普及による創作の効率化と参入促進
調査・構成・文章の推敲・翻訳など、創作プロセスの多くの工程で生成AIが使われるようになりました。BASEやminne、メルカリなどでは商品説明文の自動生成機能が提供され、動画・ライブ配信の分野でも自動字幕付与やコンテンツ生成などの機能が広がっています。さらに、アドビが提供する「Adobe Firefly」をはじめとした生成AI搭載ツールが、プロだけでなくノンプロ層にも利用されることで、創作へのハードルが下がり、新規クリエイターの参入やクリエイターの活動分野の拡大、創作物の増加につながっています。

3. クリエイターに対する社会的サポートの充実
誹謗中傷やハラスメントへの対応は、クリエイターの活動継続を左右する重要なテーマです。VTuber事務所やインフルエンサー事務所などのエージェント企業は、専門チームを設置し、脅迫行為や名誉毀損への削除要請・警告・法的措置などを行っています。また、プラットフォーム事業者によるガイドライン整備や通報機能の拡充、業界団体によるルールづくりなど、クリエイターを守るための取り組みも進展しています。こうした環境整備が、クリエイターの中長期的な活動を支える基盤となっています。

◆国内クリエイターエコノミーにおけるトレンド

国内のクリエイターエコノミー市場では、生成AIの普及と、クリエイター支援における事業者の役割拡大が大きなトレンドとなっています。本調査では、アドビ株式会社およびnote株式会社の2社へのインタビューを踏まえ、以下の2つの観点から整理しました。

1. 生成AIによる創作・マッチングの高度化と“人間らしさ”の価値
生成AIは、活動分野により活用方法が異なるものの、創作活動全般を支えるツールとして広く利用されています。調査・構成・文章の推敲・翻訳などの工程に加え、企画案づくりなどにも用いられ、クリエイターの負担軽減に寄与しています。アドビは、生成AIツール「Adobe Firefly」を通じて、プロフェッショナルだけでなくライトユーザー層にも活用の場を広げており、2025年6月にはモバイル版の提供も開始しています。一方、noteの加藤代表によれば、生成AIの活用は投稿数の増加やコンテンツの質・量の向上に寄与しつつも、コンテンツの量が増えるほど「情報量だけで価値を出すのは難しくなる」といいます。最終的には、クリエイター自身の経験や価値観に基づくストーリー性や“人間らしさ”が、ファンから支持されるための重要な差別化要素になるという認識が示されました。

アドビも、「クリエイティブの主体はあくまで人間である」との立場をとっており、生成AIはあくまで創作プロセスを効率化させるための補助的なツールであり、最終的なアウトプットの質はクリエイターの力量に依存するという見解を示しています。

2. 著作権・倫理面への配慮と、noteによる“選べる”仕組みづくり
生成AIの学習・活用をめぐっては、著作権や倫理に関する懸念が高まっています。学習データとしてコンテンツを利用する場合の権利処理や、適切な還元のあり方など、クリエイターの不安に向き合うことが事業者に求められています。

アドビでは、著作権に関する懸念に対応するため、場面に応じたモデル選択を可能にする方針を採用しています。Adobe Fireflyで生成した画像は商用利用が可能で、学習素材の管理を徹底することで著作権リスクを抑えた環境を整備しています。さらに2025年には、Fireflyに加えてChatGPTなど他の生成AIモデルも自社サービス上で選択できるようにし、用途に応じて安全性と柔軟性を両立した制作ワークフローを実現しようとしています。

一方、生成AIによる学習そのものに不安を抱くクリエイターも少なくありません。これに対して、noteでは、クリエイターが自身のコンテンツをAI事業者の学習用データとして提供した際の収益を還元する仕組みづくりを進めています。コンテンツを「学習に利用する/利用しない」をクリエイター自身が選択できる点を重視しており、事業者側には、こうした選択を可能とする制度設計や運用の透明性の確保が求められるとしています。

さらに、コンテンツ量の増加により、個々の創作物が埋没しやすくなる課題に対して、noteの加藤代表は、精度の高いマッチングの提供がプラットフォームの重要な役割であると指摘しています。AI時代におけるプラットフォームの役割として、クリエイターとファンの関係性を守りながら、適切な対価還元とビジネスとしての商流を両立させることが重要であり、クリエイターが安心して生成AIを活用できる制度設計や環境整備が今後いっそう求められます。

◆今後のクリエイターエコノミー市場の成長性

クリエイターエコノミーが拡大を続けるなかで、個人クリエイターの活動はオンラインプラットフォーム上にとどまらず、書籍の出版やCDデビューなど、従来の流通メディアを通じて創作物を発信・販売する動きも広がっています。本調査では、こうしたクリエイターエコノミーとエンタメ・クリエイティブ産業との「境界横断」を「クリエイターエコノミー潜在市場」と定義し、その規模を推計しました。

<図表4 クリエイターエコノミー市場と潜在市場の関係図>

(出所)MURC作成

公開資料等を用いてこれらを合算した結果、2024年の国内クリエイターエコノミー潜在市場は14兆5,866億円と推計されました。これは同年のクリエイターエコノミー市場規模(2兆894億円)の約7倍に相当し、クリエイターを起点としたビジネスが、従来の市場推計の範囲を超えて広がっている可能性を示しています。  クリエイターの法人化、伝統的なエンタメ・クリエイティブ産業との連携、IPビジネスの展開などを通じて、今後もクリエイターエコノミーはさらなる拡大が期待される分野であり、「伸びしろの大きい市場」として位置づけられます。

◆おわりに

2024年の調査結果を通じて、国内クリエイターエコノミーの市場規模が2兆円を超え、2021年以降も高い成長率で拡大を続けていることが明らかになりました。モノ/グッズ販売やスキルシェア、動画投稿関連の広告等に加え、生成AIの活用やクリエイターを中心とした経済圏への移行が、この成長を後押ししています。

同時に、個人クリエイターの法人化や伝統的なメディア・エンタメ産業との連携、IPビジネスの広がりなどにより、国内クリエイターエコノミーの潜在市場は約14兆円規模に達する可能性が示されました。これは、今後もクリエイターを起点とした多様なビジネスが生まれうることを意味しています。
一方で、生成AIの普及やコンテンツ量の増加に伴い、市場構造やクリエイターを取り巻く環境は複雑さを増しています。クリエイター個人のストーリー性や人間らしさを生かしつつ、安心して創作できる環境を整備していくことが、クリエイターエコノミーの持続的な発展にとって重要な課題となります。
当協会としても、事業者・クリエイター・ファンがともに発展できるエコシステムの構築に向けて、引き続き取り組みを進めてまいります。

レポートの全文は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が公表するレポートよりご覧いただけます。

▼レポートの全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.murc.jp/library/report/cr_251210/

【調査概要】

調査期間:2025年6月〜9月

調査方法

国内・海外のクリエイターエコノミーに関する文献調査

企業インタビュー

クリエイターエコノミー協会について

「クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する」をミッションに、クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けた様々なアクションを実施しています。

代表理事(アルファベット順):BASE株式会社/note株式会社/UUUM株式会社
監事:骨董通り法律事務所 代表パートナー 弁護士 福井 健策
会員企業一覧:https://creator-economy.jp/n/n5e67eb0210cf
アドバイザー:国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター 山口 真一 准教授

入会について:現在は法人会員のみ入会を受け付けています。

https://creator-economy.jp/n/n5e67eb0210cf 

協会概要

名称:一般社団法人クリエイターエコノミー協会(Creator Economy Association)

所在地:〒106-8007 東京都港区六本木三丁目2番1号

公式サイト:https://creator-economy.jp/

問い合わせ先:info@creator-economy.jp

公式Twitter:https://twitter.com/CEA_Japan

公式Facebook:https://www.facebook.com/CreatorEconomy.jp

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会社概要

URL
https://creator-economy.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区六本木三丁目2番1号
電話番号
-
代表者名
UUUM株式会社/note株式会社/BASE株式会社
上場
未上場
資本金
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設立
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