実際の認知度や取り組みはどう?熱中症対策の義務化に関するアンケート調査結果
「取り組みは進む」でも「認知には差」、見えてきた熱中症対策義務化への温度差
エフアンドエムネット株式会社(本社所在地:大阪府吹田市、代表取締役社長:上枝康弘)は、管理部門向けのビジネスメディア「労務SEARCH(労務サーチ)」にて、建設業・製造業・運送業・警備業で働く男女300名を対象に、熱中症対策の義務化に関するアンケート調査をおこないました。

調査背景
2025年6月1日、労働安全衛生規則の改正省令が施行され、企業や事業所に対して「熱中症対策」の実施が法的義務となりました。施行から2カ月が経った現在、どのような対策が浸透しているのでしょうか?
今回労務SEARCHでは、熱中症対策の義務化に関するアンケート調査を実施しました。これからも労務SEARCHでは、管理部門の悩みを解決できるようなアンケート調査を実施し、バックオフィス業務に役に立つ、価値のある情報を発信してまいります。
■■当調査の引用・転載に関するお願い■■
当調査のデータを引用・転載する場合には、必ず「出典:労務SEARCH(https://romsearch.officestation.jp/report/report/52077)」と表記いただきますようお願いいたします。
主な調査結果
・認知度は7割を超えるも、約3割は「初めて知った」と回答
・熱中症対策について「周知されていない」と回答する人も
・義務化の柱である「WBGT測定」、実施企業は4割に満たず
・熱中症対策は「水分補給の徹底」が最多、3割以上は「特に対応なし」
・緊急時の報告体制、約9割の企業で「不十分」と判明
・企業における熱中症対策の課題とは
・業務負担は「変わらない」が半数以上、「少し増えた」も4割近くに
・行政に求める支援、6割以上が「補助金・助成制度の拡充」を希望
●認知度は7割を超えるも、約3割は「初めて知った」と回答

はじめに、熱中症対策の義務化(労働安全衛生規則等の改正)を知っているか尋ねたところ、「なんとなく知っていた」が51.0%で最も多く、次いで「今回初めて知った」が28.0%、「よく知っていた」が21.0%という結果になりました。
「よく知っていた」「なんとなく知っていた」を合計すると72%に達し、多くの従業員が熱中症対策の義務化について認知していることがわかります。一方で、「今回初めて知った」という回答も28.0%にのぼり、制度の周知が完全には行き届いていない現状が伺えます。
●熱中症対策について「周知されていない」と回答する人も
熱中症リスクや対応フローに周知方法について尋ねたところ、1位は「朝礼やミーティングで説明」で52.0%、2位は「何もしていない/わからない」で30.0%、3位は「マニュアル・ポスター・掲示で告知」で26.7%でした。
半数以上が朝礼などの場で直接情報を伝えている一方で、3割は周知自体がおこなわれていないという実態が明らかになりました。
従業員の安全意識を高めるためには、ポスター掲示やチャットツールでの発信など、複数の方法を組み合わせて継続的に情報提供することが重要です。

●義務化の柱である「WBGT測定」、実施企業は4割に満たず

今回の法改正で大きなポイントとなったWBGT(暑さ指数)の測定・記録について、その実施状況を尋ねたところ、「定期的(毎日/シフトごと)に測定・記録している」と回答した企業はわずか16.7%に留まりました。
「現場単位では測定しているが記録はしていない」(23.7%)を含めても、なんらかの形で測定をおこなっている企業は4割に満たない状況です。
最も多かった回答は「検討すらしていない」で41.7%にものぼり、義務化から2カ月が経過しても「制度の根幹をなす項目への対応が多くの企業で進んでいない」という深刻な実態が浮き彫りになりました。
●熱中症対策は「水分補給の徹底」が最多、3割以上は「特に対応なし」
法改正を受けて新たに実施・強化した対策を尋ねたところ、最多は「水分・塩分補給の徹底」で50.7%でした。次いで「冷房機器の設置や強化」(32.0%)、「服装・装備の見直し」(28.3%)と続き、比較的導入しやすく従来からおこなわれてきた対策の延長線上にあるものが上位を占める結果となりました。
しかし、ここで注目すべきは31.3%が「特に対応していない」と回答している点です。法改正という大きな動きがあったにもかかわらず、具体的なアクションを起こせていない、あるいは起こす必要性を感じていない企業が依然として多いことを示唆しています。
また、義務化された「作業環境のWBGT測定」を強化した企業は14.3%に留まっており、法改正の本質的な部分への対応よりも、まずは着手しやすい既存対策の強化に留まっているという傾向が見て取れます。

●緊急時の報告体制、約9割の企業で「不十分」と判明

熱中症発生時の報告体制(誰が・どこに報告するか)が明確になっているかという質問に対し、「全員が理解しており体制も整っている」と断言できた企業はわずか9.7%でした。
最も多かったのは「周知はしたが理解度にはムラがあると感じる」で46.3%にのぼり、ルールはあっても全従業員に浸透しておらず、いざという時に機能しない「形骸化」のリスクをはらんでいる状況が伺えます。
さらに深刻なのは、「未整備」(17.0%)と「わからない/把握していない」(27.0%)を合わせると44%に達し、そもそも体制が存在しない、あるいは担当者ですら把握していないという企業も少なくないことです。
●企業における熱中症対策の課題とは
熱中症対策の実施にあたって課題に感じていることを尋ねたところ、1位は「コストがかかる」で40.7%にのぼりました。次いで「測定や記録など運用が複雑」が30.3%、「具体的に何をすべきか不明確」が29.0%と続き、金銭的な負担と実務的なノウハウ不足が二大障壁となっていることが明らかになりました。
WBGT測定器や冷房機器といった初期投資だけでなく、消耗品の購入や管理・記録にかかる人件費といったランニングコストも大きな負担となっていることが伺えます。
また、「運用の複雑さ」や「なにをすべきか不明確」といった回答からは、多くの担当者が手探り状態で対策を進めようとしている苦労が垣間見えます。

●業務負担は「変わらない」が半数以上、「少し増えた」も4割近くに

次に、義務化されたことで業務の負担は増えたかという質問をしたところ、「変わらない」が55.7%で過半数を占めた一方で、「少し増えた」(37.7%)と「大幅に増えた」(4.7%)を合わせると、42.4%の回答者が負担増を実感していることが明らかになりました。
「変わらない」と回答した方は、建設業や製造業など、もともと熱中症リスクが高く既に対策を徹底していたケースや、あるいは屋内での事務作業が中心で法改正による追加対応が少なかったケースなどが考えられます。
●行政に求める支援、6割以上が「補助金・助成制度の拡充」を希望
行政や外部機関に求めたい支援について聞いてみたところ、「補助金・助成制度の拡充」が61.7%と、他の選択肢を大きく引き離して最多となりました。
しかし、2位以下の回答にも注目したいところです。「測定器・冷却用品などの導入ガイド」(36.3%)や「法改正の分かりやすい資料・周知」(28.0%)といった、具体的な情報提供へのニーズも非常に高いことがわかります。
企業や担当者が単にお金を求めているだけでなく、「受け取った支援をどう効果的に使えばいいのか」「そもそも自社に合った対策はなにか」という、実践的なノウハウや指針を強く求めていることの表れです。

調査結果まとめ
今回の調査から、熱中症対策の義務化から2カ月が経過した現在も、多くの企業で法改正の核心部分への対応が遅れている実態が明らかになりました。制度の認知度は7割を超える一方で、WBGT測定の実施率は4割に満たず、緊急時の報告体制も約9割の企業で不十分という「認知と行動の大きなギャップ」が見られます。
その根本的な原因として、「コストがかかる」という金銭的な課題と、「運用が複雑」「なにをすべきか不明確」といった深刻なノウハウ不足という二大障壁が存在していることが明らかになりました。
記録的な猛暑が「災害」とも言えるレベルで常態化する現代において、熱中症対策はもはや単なる福利厚生ではなく、従業員の生命を守り、企業の社会的責任を果たすための重要なリスク管理であり経営課題そのものです。
自社の対策状況を客観的に見直し、法令遵守の先にある「従業員が真に安全で健康に働ける職場環境」の構築が重要です。労務SEARCHではこれからも、こうしたアンケート調査を通じて、人事・労務管理に関する課題を解決する手助けとなる情報を発信してまいります。
<調査の実施概要>

調査対象 |
建設業・製造業・運送業・警備業などで働く男女300名 |
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調査方法 |
インターネット調査 |
調査日 |
2025年7月31日~2025年8月13日 |
掲載記事 |
■労務SEARCHについて

労務SEARCHとは、管理部門の日々の業務課題を解決する記事コンテンツや、管理部門のニーズに合ったBtoBマッチングに役立つ資料を提供するビジネスメディアです。会員数は2万人超え、そのうち半数は管理部門の役職者です。またコンテンツの高い専門性から、士業の方々からも支持されています。
サイトURL:https://romsearch.officestation.jp/
■エフアンドエムネット株式会社 概要

会社名 |
エフアンドエムネット株式会社 |
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代表者 |
代表取締役社長 上枝 康弘 |
設立 |
2000年9月 |
資本金 |
5,800万円 |
事業内容 |
・SaaSの提供 ・ホームページ制作 ・業務用システムの企画・開発・運用代行 |
事業所 |
大阪・東京 |
サイト |
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