大規模AIクラウド計算システム「ABCI 3.0」が国内随一のAI計算能力を証明
世界に伍する最先端AI技術開発が可能に。国内のAI産業の競争力強化に貢献。
● 2025年1月20日に一般提供を開始した「ABCI 3.0」が、同年6月10日発表されたAI計算能力を示すスパコン性能ランキングHPL-MxPで世界4位、国内1位を獲得。ABCI 3.0が国内随一のAI計算能力を証明。
● 従来不可能だった規模の大規模言語モデル開発、実世界データを用いた基盤モデル開発、それらを組み合わせたマルチモーダルAI開発等、世界に伍する最先端AI技術開発が可能に。
● 高度でより使いやすいAI開発環境を構築・整備するとともに、日本国内の生成AI開発能力の向上及び計算インフラから生成AIのサービス提供に至る、幅広い産業の競争力強化に貢献します。

概要
産総研グループ(国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)および株式会社AIST Solutions)が運営する大規模AIクラウド計算システム「ABCI 3.0」が、AI計算能力を示す世界のスパコン性能ランキングHPL-MxPで世界4位(国内1位)を獲得しました。この結果は、独・ハンブルクで開催されたスーパーコンピュータに関する国際会議「ISC HIGH PERFORMANCE (ISC 2025)」において6月10日(中央ヨーロッパ時間)に発表されました。なお、本結果についてABCI 3.0全体の51%の構成で実行したものになります。
ABCI 3.0では、従来比7倍の計算性能に整備したことにより、従来不可能だった規模の大規模言語モデル開発、実世界データを用いた基盤モデル開発、それらを組み合わせたマルチモーダルAI開発等、世界に伍する最先端AI技術開発が可能になります。
なお、公的利用への提供を目的とした「開発加速利用」において、2025年4月以降、すでに60課題以上の基盤モデル、生成AI、マルチモーダルAI等の最先端AI技術の研究開発にご利用いただいております(2025年5月末時点)。
経緯
産総研グループは、生成AIモデルをはじめとした最先端AI技術の研究開発能力の強化を目的として、経済産業省「生成AIの基盤的な開発力強化に資する計算資源の整備」(令和5年度補正)の一環としてABCI 2.0の後継システムであるABCI 3.0(調達件名:「実世界基盤モデル開発向け大規模クラウド基盤」)を整備し、2025年1月20日に一般提供を開始しました。
ABCI 3.0では、最新の高性能・省電力GPU「NVIDIA H200 SXM5」8基を搭載したサーバー「計算ノード(H)」を766台導入しており、従来比7倍の計算性能を持ちます。その他のABCI 3.0の特徴については、ABCI 3.0ホームページをご参照ください。

ABCI 3.0のシステム構成の一覧は以下で公表されています。
ABCI 3.0計算資源: https://abci.ai/ja/about_abci/computing_resource.html
AIや機械学習ワークロード向け性能ベンチマークHPL-MxPにて
世界4位、国内トップを獲得
近年、AIや機械学習ワークロードでは、GPUをはじめとしたAI向けプロセッサの活用が進んでいます。AIや機械学習ワークロードの計算性能を表す適切なベンチマークとしては、低精度演算の処理能力を反映したHPL-MxPがデファクトスタンダードとして認知されてきています。HPL-MxPベンチマークの測定にあたって、ABCI 3.0は、高性能で省電力のGPU「NVIDIA H200 SXM5」8基を搭載したサーバーを392台使用しました。演算性能2.3628 エクサフロップスを記録し、世界4位、国内1位になりました。なお、本結果についてABCI 3.0全体の51%の構成で実行したものになります。また、TOP500ベンチマークでも測定を実施し、世界15位、国内2位になりました。その他のABCI 3.0のベンチマーク結果については、2025年6月10日当社ホームページ公開記事を参照ください。
HPL-MxPの結果は以下で公開されています。
https://static.swapcard.com/public/files/803be24592fe4db3bed49640371eb337.pdf
今後の予定
ABCI 3.0は、計算能力の提供のみならず、高度でより使いやすいAI開発環境を構築・提供するとともに、基盤モデル構築時に利用可能なデータ群の整備などを進めて、日本国内の生成AI開発能力の向上に寄与します。加えて、AI開発環境および計算インフラ構築ノウハウを国内クラウド事業者とも共有することで、計算インフラから生成AIのサービス提供に至る、幅広い産業の競争力強化に貢献します。
今後、基盤モデル、生成AI、マルチモーダルAI等の最先端AI技術の研究開発、評価、人材育成を目的とした公的利用等に、重点的に提供していきます。また、産総研における実世界の画像・音響・3次元点群等のデータによるフィジカル領域の基盤モデル開発や、それらを組み合わせたマルチモーダル生成AIの構築と応用といった、先進的なAI研究開発でもABCI 3.0は活用されるとともに、公的研究機関をはじめとした国内の産学官によるさまざまな生成AI技術の研究開発に活用される計画です。
用語の説明
◆GPU(Graphics Processing Unit)
本来はコンピューターグラフィックス専用のプロセッサーだったが、グラフィックス処理が複雑化するにつれて性能や汎用(はんよう)性が増し、現在では高性能計算向けの汎用ベクトル・行列演算プロセッサーに進化している。深層学習(ディープラーニング)の高速化にも広く用いられている。
◆HPL-MxP
スーパーコンピューターの性能を評価するためのベンチマークの1つで、特にAIや機械学習のワークロードにおける計算性能を測るために2019年11月に制定された。倍精度演算に特化した「TOP500」とは異なり、GPUをはじめとしたAI向けプロセッサで近年導入が進んでいる低精度演算の処理能力を反映した計算性能を評価するもの。
◆TOP500
世界のスーパーコンピューターを対象に、計算性能の上位500システムを年2回ランク付けし、評価する国際的なプロジェクト。1993年に開始され、評価基準には、テネシー大学のジャック・ドンガラ博士が開発したLINPACKベンチマークが用いられている。LINPACKは、連立一次方程式を解く処理性能を測るもので、倍精度浮動小数点演算の能力を評価する。LINPACKは、計算速度だけでなく、長時間の安定動作も求められるため、性能と信頼性の両面を示す指標とされている。
◆エクサフロップス(Exa FLOPS)
フロップス(FLOPS, Floating-point Operation Per Second)は1秒間に行える浮動小数点演算の回数。エクサは(10の18乗)を意味する。
◆倍精度、単精度、半精度
数値(実数)のコンピューター内での表現方法。倍精度は8バイト(有効桁数約16桁)、単精度は4バイト(有効桁数約7桁)、半精度は2バイト(有効桁数約3.3桁)で表現する。最新のGPUなどを用いると、半精度・単精度では倍精度よりも大幅に高速な演算処理が可能になるため、機械学習・AI分野において活用が進んでいる。
本件問い合わせ先
【ABCI利用に関するお問い合わせ】application*abci.ai(*を@に変更して使用してください。)
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