ソケッツ、"平成"を音楽で振り返る

〜歌は時代を表しているのか?感性メタデータ分析〜

株式会社ソケッツ

株式会社ソケッツ(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:浦部浩司、以下「ソケッツ」)は、平成という時代30年間の日本の音楽シーンについて、オリジナルの「感性メタ(※)」を活用、分析した結果レポートを公開いたしました。時代と音楽の関係性を読み解くことで、平成を通じた日本という国の感情の移り変わり、世相を読み解きました。
(※)感性メタとは、人間が感じる繊細で曖昧な感覚や感情、嗜好を特徴付け、体系化しデータ化したものです。たとえば音楽においては1曲1曲を人間の耳で聴き込み、歌詞を全て読み、膨大な作業により機械には出来ない感性的な解釈を可能とするデータベースです。ソケッツでは創業以来、感性データベースの開発にこだわり、音楽から始まり映画、書籍などのエンターテイメント分野、美容、飲料、食品、消費材などの非エンターテイメント分野まで、世界でも類を見ない感性メータベースを開発しております。
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"平成"を音楽で振り返る
〜歌は時代を表しているのか?感性メタデータ分析〜

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ついに、およそ30年間続いた平成が幕を閉じます。平成のヒット曲や、人気アーティストの移り変わりなどについては多くのメディアがすでに取り上げていますが、ソケッツでは自社MSDBの感性メタデータを活用して、ソケッツらしく平成を音楽を通じて振り返ってみたいと思います。
▼対象データ
MSDBより、平成元年(1989)〜平成30年(2018)にリリースされた邦楽シングル楽曲を対象(※)とし、各楽曲に付与されているメタデータを抽出、分析
(※) MSDBから抽出したシングルリリース対象楽曲数:63,497曲
まずはメタ単位でいくつか時系列で見ていきたいと思います。ひとつ目はわかりやすく楽曲メインテーマメタより大きく4つに分類した結果をまとめてみました。

Graph1
平成30年間でリリースされたシングル楽曲より、楽曲メインテーマのうち「応援」「心情」「人生」「青春」に関するメタがついた楽曲を抽出、年次での4テーマごとの割合を算出し時系列で表したグラフ

まず平成元年(1989)から順に見ていくと、平成2年(1990)バブル崩壊の年、「人生」と逆転する形で「応援」をメインテーマとした楽曲割合が上昇しており、平成最初の変化がこの年に見られました(Graph1❶)。その後、比較的安定して推移していた楽曲テーマですが、平成7年(1995)の阪神・淡路大震災以降、再び「応援」が上昇していきます(Graph1❷)。以降、「応援」は平成8年(1996)以降のオリンピックイヤーで上昇する特徴も確認できました。そして、平成19年(2007)以降、死者、負傷者、行方不明者を多数もたらす震災、災害に日本各地は見舞われていきます。それと同調するかのように「心情」が上昇しはじめ、あの平成23年(2011)の東日本大震災をきっかけに、楽曲テーマも平成30年間の中で最も大きな転換期を迎えていました(Graph1❸)。個人寄付総額は前年の2倍以上に跳ね上がり「寄付元年」とも言われている2011年、どこに住んで、どんな仕事をして、どんな立場で、そんなことは関係なく、多くの人が自分ができることを、と真剣に向きあった年、アーティストやクリエイターが音楽に込めた思いがこうした大きな変化を生んだのでしょうか。

次は、J-POPとは切り離せない「恋愛」メタで見ていきましょう。実際には恋愛メタは日本人の心情を表すよう、非常にきめ細やかな粒度で付与されていますが、今回はその恋愛メタをポジティブ、ネガティブ、それ以外の3つに再分類しています。

Graph2
平成30年間でリリースされたシングル楽曲より、恋愛メタがついた楽曲を抽出、恋愛メタ各種をポジティブ、ネガティブ、それ以外の3つに分類し、年次で各割合を算出し時系列で表したグラフ

恋愛メタについては、阪神・淡路大震災があった平成7年(1995)よりポジティブメタ割合が上昇します(Graph2❶)。その後、緩やかに上昇していきますが、平成23年(2011)の東日本大震災には急上昇(Graph2❷)、直接的ではない恋愛メタにおいてもこうした相関が見られるということは、地震大国である日本にとってそこからの復興の道のりには、私たちの生活に思った以上に音楽が根付いていて、活力になっているのだと感じさせます。

そして、せっかくなので、何か季節性が見えないか、恋愛メタを月単位でまとめてみました。

Graph3
恋愛メタの出現回数を各年・月別でランク、1番多く出現していた月を30年間で集計した結果

クリスマスに向けた11月に、あらゆる恋愛メタ要素が突出しています。ポジティブな恋愛メタを含む楽曲がリリースされる月はバレンタインデーのある2月、夏に向けた6、7、8月という結果に。ネガティブな恋愛メタを含む楽曲については11月についで、少し意外なことに5月でしたが、梅雨に向けた四季情緒のある日本人の心情を考えるとしっくりくる結果ですね。

それでは、いよいよ本番。ソケッツのメタデータを使ってまずは以下の手法で分類します。
▼分析手法
潜在的意味を推定するためのモデルであるトピックモデル(LDA)を利用
Latent Dirichlet Allocation (LDA)とは…
・文書がどのような話題(トピック)で構成されているかを解析
・各トピックにおける各単語の所属確率が算出される
・トピック数(いくつのグループに分けるか)は予め決めておく
・どのような意味を持つグループを作るかは予め人間が決めるのではなく、得られた確率から後で人間が解釈をする

今回は邦楽を10トピックでわけることとする

 

ということで、平成30年間でリリースされたシングル楽曲のメタデータから算出したジャンルにとらわれない10トピックとその階層構造を可視化した階層クラスタリングがこちらになります。

この階層クラスタの距離は各トピックの類似度をあらわしています。楽曲ごとに付与されたメタでの分類上、Topic5とtopic8は他のトピックより独立傾向にあると解釈できます。
実際に、各トピックにおける所属確率が高かった楽曲例をあわせて見ていただくとかなりイメージが湧きやすくなるかと思いますので、まずはそちらをご紹介します。

いかがでしょうか。10トピックの楽曲例を見ていくと、具体的なイメージと、そしてなんとなく納得感が得られないでしょうか?
さらに、1楽曲につき約2,000項目付与されている感性メタの中から「楽曲テーマ」「歌詞」「曲調」「楽器」「ヴォーカルタイプ」の5つをピックアップして、各トピックの特徴的メタを見ていくと、次のような感じになっています。

先ほど少し触れた通り、左端のtopic2:苦悩、憂鬱系ロック、topic3:パワフルな励まし系ロックというようにロックがかたまっています。同様に隣り合っている類似性が高いのがtopic6:軽やか・明るい、アイドルグループ系ソングとtopic10:夢・頑張る、あたたか、さわやか系ソングです。こちらは前述の各トピックの楽曲例を見るとわかりやすいかと思いますが、topic6:軽やか・明るい、アイドルグループ系ソングが徐々にtopic10:夢・頑張る、あたたか・さわやか系ソングのよりテーマ性を持ったあたたかさ、さわやか系ソングへと変化、合流していった流れが汲み取れます。これは後述の時系列での考察でさらに確定的となります。
また、右端のtopic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングとtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングはそのほかのトピックからは独立していますが、この両トピックは年齢層高めもしくは幅広い年齢層に受け入られやすい楽曲、アーティスト影響の色濃いトピックのため他のトピックとの距離が遠くなっていると解釈できます。

では、これを時系列でみていきたいと思います (前述の通り、所属確率をもとに出しているため、楽曲数での影響は受けていません)。

Graph4
平成にリリースされたシングル楽曲を対象とした10トピックの推移

これはアーティスト、クリエイターが各時代、その時々で発信したかった、伝えたかった、届けたかった音楽の傾向と受け取れます。
平成になってからtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが長らく邦楽界を牽引していたことがわかります。しかし、topic5と同様に主流だったtopic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングは、初代iPodが発売され、同時に違法なファイル共有ソフトでの利用率が一時期9%を超える事態になっていた平成13年(2001)以降、リリースされていく割合は他のトピックと比べ下火になっていきます(Graph4❶)。
長らく安定していたtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが下降し始めた2008年にはリーマン・ショッックがあり、世界同時不況を引き起こしました。
そして、先ほどのメタと同様、ここでも平成23年(2011)の東日本大震災が起こった年に、音楽シーンでも大きな変化が起こっていました(Graph4❷)。それまで長らく主流だったtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが急下降し、代わりにtopic10:夢・頑張る、あたたか・さわやか系ソングが上昇、翌年平成24年(2012)には逆転する形に。平成に入ってすぐバブル崩壊、そんな時代を優しくあたたかく励ましてきた邦楽は、震災という出来事をきっかけに「夢、頑張る」と気力を喚起するあたたかく、さわやかな楽曲制作へと変化を遂げていました。さらにはJ-POPの王道イメージがあるtopic1:切ない恋愛系ソングもこの年以降、下降しています。
以降の動きとしては、平成13年(2001)以降下降していたtopic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングですが、平成25年(2013)に上昇に転じています(Graph4❸)。この年の出来事を振り返ってみると「あまちゃん」が大ブームとなり、1980年代の既存のアイドル歌謡曲を中心に多数ドラマ内で使用されたほか、オリジナルソングもいくつか制作されました。こうしたCD世代の中高年層へ向けた音楽の流れがデータからも読み取れました。
平成27年(2015)に入ると、日本での音楽定額制サービスでApple Music、LINE MUSIC、Googleが参入し本格化しはじめます。さらに翌年の平成28年(2016)、日本での利用率77%(Google2016年度調査発表より)と10、20代の若い層を中心に普及したYouTubeをきっかけにPPAPが大ヒット、平成23年(2011)を起点として上昇しはじめたトピックはさらなる上昇を、反対に下降しはじめたトピックはさらに下降し、2011年に起きた変化は一過性ではなく、より顕著な特徴を表しています (Graph4❹)。
日本の音楽シーンは、2011年以降牽引してきたtopic10:夢・頑張る、あたたか・さわやかソングがそのままの勢いで、そして平成終盤、topic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングが再び盛り返す形で、新たな令和という時代へ突入していきます。

次は今まで見てきた平成時代にリリースされてきたシングル楽曲に対して、“ヒット曲”に絞って同様に時系列で見てみました。

Graph5
平成にリリースされたシングル楽曲の中で音楽ランキングなどにチャートインした”ヒット曲”を対象とした10トピックの推移

前述のシングルリリース全曲をアーティスト、クリエイターが各時代、その時々で発信したかった、伝えたかった、届けたかった音楽と表現するならば、こちらは国民が共感、支持した音楽性ととらえられます。
平成2年(1990)のバブル崩壊後、就職氷河期に突入した平成4年(1992)、topic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングにおけるヒット傾向が上昇(Graph5❶)、同様に新潟中越地震、アテネ五輪での日本が躍進(メダル数で国別5位の実績)した平成16年(2004)にも上昇しています(Graph5❷)。先の見えない暗い時代、日本が世界で頑張る姿、そんな背景で、topic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが支持されたことがわかります。ちなみに、この平成4年(1992)、平成16年(2004)のtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングのヒット隆起に対してtopic10:夢・頑張る、あたたか・さわやか系ソングは下がっているのも特徴的です。ところが、ヒット曲においても、東日本大震災があった平成23年(2011)を起点に、先ほどのシングルリリース全楽曲と同様に、変革が訪れます(Graph5❸)。安定して推移していたtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが下降し、topic5と同様に推移してきたtopic10:夢・頑張る、あたたか・さわやかソングが上昇しており、シングルリリース全曲と動向が一致しています。アーティスト、クリエイターの思いが、国民へきちんと届いた結果がこうしてデータから見て取れました。
そしてシングルリリース全曲でも特徴が顕著化した平成28年(2016)、ヒット曲においてもさらなる変化が見られます(Graph5❹)。東日本大震災から5年が経過、復興の現状としてはまだまだ多くの人が避難生活を余儀なくされ、福島第1原発では、廃炉作業が続いています。復興への長い道のりに向け、平成終盤、平成23年(2011)から下降していたtopic5:励ます、優しい・あたたかい系ソングが再度急上昇、同様にtopic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングも急上昇、一見両極端に思えるトピックですが、音楽に励まされ、音楽で人生、現実と向き合ってこれから新たな時代に進んでいこうという意思を感じずにいられません。

最後に、シングルリリース全曲とヒット曲それぞれの各topic所属確率における差分を出してみました。クリエイティブサイドからの思いやメッセージの詰まった楽曲の提供に対して、国民が共感・支持した楽曲の構成要素の特徴、傾向は平成30年間を通してどのように移り変わっていったのでしょうか。

Graph6,7
平成にリリースされたシングル楽曲と音楽ランキングなどにチャートインした”ヒット曲”を対象にした10トピックの差分結果を2種類のグラフで表したもの

シングルリリース全曲に対して、ヒット曲所属確率が上回っていた特徴を見ると、30年間において全般的に安定してプラスで推移していたのは、topic10:夢・頑張る、あたたか・さわやかソング、ついでtopic6:軽やか・明るい、アイドルグループ系ソングでした。またtopic10,6ほどではありませんが、topic9:ラップ、R&B、ヒップホップ、ダンサブル系ソングと、topic4:軽やか・明るい、さわやか系J-POPもプラス幅は小さいながらも安定して推移していました。
この安定推移とは別に、特徴的なところをピックアップすると、大きく3つの期間に分けることができそうです。
平成3年(1991)から平成11年(1999)、topic2:苦悩、憂鬱系ロック、topic3:パワフルな励まし系ロックにおける、ロックブームが確認できます(Graph7❶)。次に平成11年(1999)から平成23年(2011)に入れ替わるようにして、topic7:温かい・穏やか、感動的パラード/メロウ系ソングが台頭(Graph7❷)。終盤、平成29年(2017)から平成30年(2018)にかけては、topic5:励ます、優しい・あたたかい系ソング、Topic8:人生、ゆったり、ほろ苦い系ソングがプラスに転じ、ガラッと傾向が変化しています(Graph7❸)。令和に向けて音楽シーンも新たな時代に突入していく予兆でしょうか。

よく「歌は時代を映す鏡」などと言われますが、こうして日本での出来事と感性メタから傾向や推移を見ると、生活に根ざした、日本という国や季節、生活に寄り添っている根底が見えた結果となりました。
また今回は平成の音楽シーンという大枠で概要をご紹介しましたが、今回の結果にとどまらず、経済状況などとの因果関係や別の切り口、層別で見ることで、今まで目で見ることができなかった人の“感性”の移り変わりなどをデータから明らかにしていくことができます。
もちろん、過去や直近の傾向だけでなく、未来予測も可能です。現在、ソケッツではこの未来予測の精度UP、実用化に向け積極的に取り組んでいます。
そして、音楽に限らず、映画や本、漫画なども同様に、感性メタを活用した分析で、時代の移り変わりとともに何が求められ、何が受け入れられ、どのように推移しているのかをデータから明らかにすることも可能です。
さらには、この数年でソケッツでは、エンターテイメントにとどまらず、美容・飲料・食品・消費材・体験など非エンターテイメント分野における感性メタのデータ開発にも取り組んでいますので、例えば今回の音楽分析で可能となるように「優しい・あたたかい」から「さわやか」に時代が移行していく、さらにいえば同じ「さわやか」でも人や家族によって異なる、など、その時々、人それぞれで共感力のある“感性”がなんなのかを明らかにすることで、化粧品、飲料、食品、洗剤など消費材、家電などの一般商材、イベントや旅行などの体験などにおいてどのような変化・影響があるのかを分析し、エンターテイメント分析で得た人の感性や感情をを起点に、あらゆるものや場所やサービスを結ぶ、ブランドパートナーシップ、さらにはクロスエクスペリエンスを提供できると考えています。企業やあらゆる商品、サービスが、感性メタで可視化され、つながっていく。感性という軸で繋がる企業同士が協力をしながらブランディング、プロモーションを行ってく。これが、ソケッツが目指す『エンターテイメント×テクノロジー発 感性マーケティング行』です。今後もソケッツの技術開発の取り組みにご期待ください。

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http://www.sockets.co.jp/inquiry/contact/policy.html

 ●公開日
平成31年4月24日(水)

●ソケッツレポート
http://www.sockets.co.jp/kansei/kansei_report09.html

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代表者名
浦部 浩司
上場
東証スタンダード
資本金
5億573万円
設立
2000年06月