宮内庁宮内公文書館・文京区立森鴎外記念館共催 特別展「鴎外、最後の4年間―帝室博物館総長兼図書頭・森林太郎」開催のお知らせ
就任から没するまでの4年間尽力した、帝室博物館総長兼図書頭(ずしょのかみ)としての鴎外の業績を、公文書類と私的資料との二つの側面から紐解きます。

2025年10月11日(土)から2026年1月12日(月・祝)まで、宮内庁宮内公文書館・文京区立森鴎外記念館共催の特別展「鴎外、最後の4年間―帝室博物館総長兼図書頭・森林太郎」を開催いたします。
明治・大正の文学者として知られる森鴎外(本名・森林太郎、1862-1922)は、軍医の最高位である陸軍軍医総監まで務め、1916(大正5)年4月に退任します。ところが、退任から時を経ずして1917(大正6)年12月、鴎外は宮内省の帝室博物館総長兼図書頭に任命されました。
帝室博物館と図書寮の二つの組織の責任者となった鴎外は、上野の東京帝室博物館(現・東京国立博物館)と当時は三年町(現・千代田区霞が関)にあった宮内省図書寮に勤務しました。鴎外は、帝室博物館総長として展示品の時代別陳列、研究紀要の発刊など、同館の運営改善に精力的に取り組みます。また、毎年秋には正倉院の曝涼(虫干し)にも立ち会いました。同時に図書頭としては、皇統譜登録や『天皇皇族実録』の編修、図書寮で保管される古文書や公文書類の管理などに努めました。
本展では、帝室博物館総長兼図書頭就任から1922(大正11)年7月に在任のまま没するまでの足跡を、宮内庁宮内公文書館が所蔵する宮内省の公文書類と、文京区立森鴎外記念館が所蔵する原稿・書簡・遺品などから紹介します。官僚そして文学者として生涯を歩んだ鴎外の最後の4年間をご覧ください。
■開催概要
展覧会名:特別展「鴎外、最後の4年間―帝室博物館総長兼図書頭・森林太郎」
会 期:2025年10月11日(土)~2026年1月12日(月・祝)
休 館 日:11月25日(火)、12月22日(月)、12月23日(火)、12月29日(月)~1月3日(土)
開館時間:10時~18時(最終入館は17時30分)
会 場:文京区立森鴎外記念館
観 覧 料:一般600円 ※ 中学生以下無料、障害者手帳ご提示の方と介護者1名まで無料
主 催:宮内庁宮内公文書館・文京区立森鴎外記念館
出品協力:森鴎外記念館(津和野町)、東京大学総合図書館
主な展示資料
帝室博物館総長兼図書頭の拝命、そして実際に勤務する様子が伝わる資料

帝室博物館総長兼図書頭拝命(「進退録」のうち) 宮内公文書館蔵
1917(大正6)年12月25日、鴎外は帝室博物館総長兼図書頭を拝命した。史料はその人事を決定した際の公文書である。拝命について、1918年1月24日付で鴎外は親友の賀古鶴所へ「上野モ三年町モ活気ヲ生ゼシメ度」と送り、就任の意気込みを述べている。

『委蛇録(いだろく)』 文京区立森鴎外記念館蔵
1918(大正7)年1月1日から1921(大正10)年3月17日までの鴎外自筆の日記。一日も欠かさず漢文体で記す。「参館」「参寮」の記述から、月・水・金曜日は帝室博物館へ、火・木・土曜日は図書寮に出勤する様子が確認できる。
図書頭としてあたった皇統譜の調査についての業務と、天皇の謚(おくりな)についての鴎外の研究成果

御歴代の代数年紀および院号に関する調査沿革序文(「御歴代ノ代数年紀及院号ニ関スル調査ノ沿革 定稿本 附同資料1」のうち) 宮内公文書館蔵
図書寮において1917(大正6)年に作成された歴代天皇の代数や院号について調査した記録に、鴎外が図書頭として寄せた序文。「図書頭医学博士文学博士森林太郎」の署名がある。調査記録は皇統譜の調査に関する参照資料として活用された。

鴎外自筆原稿『帝謚考(ていしこう)(上篇)』 文京区立森鴎外記念館蔵
1921(大正10)年3月に図書寮より百部限定で発行(非売品)された『帝謚考』の原稿。『帝謚考』とは、神武天皇以降明治天皇までの天皇の謚(おくりな)の出典考証をまとめたもの。鴎外は図書頭の職務の過程で、この編纂に取り組んだ。『帝謚考』は、上篇で謚の分類と沿革を考証し、下篇で出典を詳覧する。本原稿は上篇の13枚のみ。
帝室博物館総長としてあたった正倉院の管理についての業務と、奈良から送った家族宛の手紙

正倉院御物拝観許可証(「正倉院御物拝観録」のうち) 宮内公文書館蔵
正倉院御物拝観の許可証控え(和文・英文の表裏)。帝室博物館総長として鴎外は、1919(大正8)年11月の正倉院宝庫曝涼(ばくりょう)より「学芸技芸ニ関シ相当ノ経歴」を有する者にも拝観資格を拡大した。

鴎外筆森杏奴(あんぬ)宛葉書 1918(大正7)年11月5日 文京区立森鴎外記念館蔵
鴎外は、帝室博物館総長兼図書頭に就任後、毎年秋に正倉院曝涼の立ち会いで奈良に出張した。約1ヶ月の滞在中、子どもたちに毎日手紙を送っている。当時9歳の次女・杏奴に鹿を描いて送ることもあった。
その他注目資料
大礼服 森鴎外記念館(津和野町)蔵
鴎外旧蔵品。宮内高等官(勅任官)用の大礼服。宮中の儀礼で着用した。
所蔵館以外で展示されるのは本展が初となる。

展覧会図録を発売
展示資料の図版や解説、論考、コラム、関連年譜を収録した展覧会図録を、開幕日10月11日(土)より館内ショップにて販売します。通信販売にも対応しています。
A4判・96頁(予定) 予価:税込1,300円 発行日:2025年10月11日(土)
関連事業
○展示関連講演会
①「帝室博物館総長森鴎外と正倉院」
講師:田良島 哲 氏(東京文化財研究所客員研究員)
日時:2025年10月25日(土)14時~15時30分
料金:無料(参加票と本展覧会観覧券(半券可)が必要)
②「歴史を記録する鴎外」
講師:村上 祐紀 氏(拓殖大学教授)
日時:2025年11月22日(土)14時~15時30分
料金:無料(参加票と本展覧会観覧券(半券可)が必要)
③「一学徒としての帝室博物館総長兼図書頭・鴎外」
講師:須田 喜代次 氏(大妻女子大学名誉教授、森鴎外記念館(津和野町)館長)
日時:2025年12月13日(土)14時~15時30分
料金:無料(参加票と本展覧会観覧券(半券可)が必要)
※講演会はいずれも定員50名、事前申込制。申込方法等詳細は、当館HPなどでお知らせします。
○スライドトーク
①「森鴎外と外﨑覚」
講師:毛利 拓臣(宮内庁宮内公文書館研究職)
日時:2025年11月3日(月・祝)13時~13時45分
料金:無料(要当日の展示観覧券)
②「森鴎外と旧津和野藩」
講師:篠﨑 佑太(宮内庁宮内公文書館研究職)
日時:2025年12月6日(土)13時~13時45分
料金:無料(要当日の展示観覧券)
※スライドトークはいずれも申込不要。
○ギャラリートーク
日時:10月29日(水)、11月12日(水)、2026年1月7日(水)14時~(30分程度)
申込不要、要当日の展示観覧券
○11月1日(土)は開館記念日
開館を記念して、当日本展を観覧された方に、オリジナルポストカードをプレゼントします。
参考
森鴎外とは
1862(文久2)~1922(大正11)年。
陸軍軍医、小説家、翻訳家、医学博士。本名・森林太郎(りんたろう)。
現在の島根県鹿足郡津和野町に、津和野藩主・亀井家の典医を代々務めた森家の長男として生まれる。1872(明治5)年に10歳で上京。東京大学医学部を卒業後、陸軍軍医となる。1884(明治17)年、ドイツ留学。帰国後の1889(明治22)年に共訳詩集『於母影(おもかげ)』を、翌年に小説『舞姫』を発表し文壇で名声を高めた。1907(明治40)年、陸軍軍医総監、陸軍省医務局長に就任。公務の傍ら、『青年』『雁』『山椒大夫』『高瀬舟』『渋江抽斎』などを執筆した。1916(大正5)年、陸軍軍医総監を退任。翌年、帝室博物館総長兼図書頭に就任し、在任のまま没した。
宮内庁宮内公文書館とは
明治以降の宮内省・宮内府・宮内庁が作成または取得した9万6千点を超える特定歴史公文書等を所蔵。宮内省図書寮が設置された1884(明治17)年時点の所掌事務には「帝室一切ノ記録ヲ編輯」することがあげられ、1907(明治40)年公布の宮内省官制をもって「公文書類ノ編纂保管」が明確に示された。以後、宮内省図書寮からその業務を引き継いだ宮内庁書陵部へと変遷しながら、公文書に係る事務を専門的に取り行う。2010(平成22)年、宮内庁書陵部図書課内に宮内公文書館が設置された。現在、同館では公文書の保存、利用、調査研究等に関する業務を行っている。
文京区立森鴎外記念館とは
森鴎外が1892(明治25)年から没する1922(大正11)年までの30年間を過ごした、邸宅「観潮楼(かんちょうろう)」跡地に建つ記念文学館。鴎外生誕150年目に当たる2012(平成24)年に開館した。敷地内には鴎外生前の風景を偲ばせる大イチョウ、庭石(通称「三人冗語の石」)、正門跡の敷石などが遺る。地下一階展示室で年間4回開催している企画展と、様々なイベントをとおして、鴎外の生涯や業績を顕彰している。
※森鴎外は公文書上本名の森林太郎を用いていますが、本展においては便宜上、文学者としての呼称として知られる鴎外の号を用いています。
※「図書頭」の読みは、宮内省でも公定されておらず「ずしょのかみ」「としょのかみ」「としょとう」等、明治・大正・昭和と時代が下るなかで、いずれの呼称も用いられていました。本展では「ずしょのかみ」で統一しています。
お問い合わせ
文京区立森鴎外記念館
〒113-0022 東京都文京区千駄木1-23-4
TEL 03-3824-5511 FAX 03-3824-0123
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