パートナーの9割が不安? 「海外出張」意識調査――家族の本音が企業リスクに
ノウンズ株式会社 × 株式会社エイチ・アイ・エス 共同調査海外出張に対する家族の不安実態を可視化

「今、本当に行かなければならないのか?」
緊迫する世界情勢の中、海外出張を控えた社員の背後で、切実な「家庭内の葛藤」が起きています。
そのような中、ノウンズ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:田中啓志朗、以下「ノウンズ」)と株式会社エイチ・アイ・エス(本社:東京都港区、代表取締役社長:澤田秀太、以下「HIS」)は、海外出張に対する家族の不安と企業の対応実態を明らかにするため、共同で調査を実施しました。
2025年12月に実施した「ノウンズ消費者リサーチ」によると、海外出張を予定・検討している社員のパートナー(配偶者)の9割が「渡航に対して不安を感じている」ことが判明しました。さらに、7割以上が「出張を控えてほしい」と内心思いながら、そのうち4割は本人に言えずにいる実態も明らかになりました。社員本人は「仕事だから」と割り切ろうとしても、家族の不安が心理的なブレーキ(ファミリー・ブロック)となっている現状が浮き彫りとなりました。
本調査は、消費者インサイト分析を専門とするノウンズの調査設計とデータ分析力と、法人向け海外出張支援の現場知見を持つHISの実務視点を組み合わせることで、海外出張を取り巻く新たな課題構造の可視化を目的として実施したものです。400名のパートナーへの調査から見えた「家族の本音」と、企業が今向き合うべき「家族をも含めた安全配慮」のあり方を紐解きます。
1. 【データ】「行ってほしくない」が7割超。すでに3人に1人が"直訴"済み
海外出張における「家族の不安」は、もはや潜在的な課題ではありません。
調査では、昨今の国際情勢を鑑みて「パートナーに海外出張を控えてほしい」と感じている人は約7割を占めました。
そのうち、約3割が「実際に海外出張を控えてほしいと伝えたことがある」と回答しており、約3人に1人の家庭で、出張を巡る具体的な話し合いや反対意見が出ていることになります。
また、約4割は「伝えたいが言えていない」と回答しており、社員は帰宅後、言葉にされない家族の重圧を感じている可能性があります。
【図表1:ファミリー・ブロック(出張反対)の発生率】

(図説)
実際に「海外出張を控えてほしい」と伝えた、あるいは伝えたいと回答した家族は約7割を占めました。その多くが、ニュースでの事件報道をきっかけに不安を増幅させています。この「見えない拒否感」を放置することは、グローバルプロジェクトの停滞や離職に直結するリスクをはらんでいます。
従来、企業は「社員本人の安全確保」に注力してきました。しかし家族が抱える不安は、本人のパフォーマンス低下、メンタルヘルス問題、さらには「海外赴任の辞退」という形で、組織に跳ね返ってきます。家族は人事戦略の"外部要因"ではなく、グローバル人材マネジメントの構成要素として捉え直す必要があります。
2. 【原因】「日常の事件」が怖い。8割が行動制限を要望
なぜ、これほどまでに家族は敏感になっているのでしょうか。調査の結果、出張を控えてほしいと強く感じる家族は28%、行動制限を求める層を含めると約8割が懸念を示しました。背景には、近年報道される通り魔事件や無差別殺傷事件など、日常生活における予測不能なリスクへの心理的不安が影響している可能性も考えられます。
【図表2:海外の治安情勢に対する家族の心理】

(図説)
「昨今報じられる海外での通り魔や無差別事件などの治安情勢について、パートナーの渡航にどの程度影響するか」という質問に対し「強く不安を感じ、出張を控えてほしい」と回答した割合は、全体の28%に達しました。
地政学的な「有事」だけでなく、日常生活の延長線上にある治安不安が、家族にとって最大の心理的ハードルとなっている実態が浮き彫りになったのです。
この「沈黙の不安」は、企業の従業員エンゲージメントや、DE&I(多様性・公平性・包摂性)施策にも影響します。家族を含めたウェルビーイングを重視する企業文化がなければ、優秀な人材の流出や、グローバル配置における選択肢の狭まりを招きます。家族の声を「聞く仕組み」そのものが、今後の競争力を左右していくといえるでしょう。
3. 【課題】企業の備えは「家族に届いていない」。信頼度は2割未満
一方で、企業の危機管理体制に対する家族の評価は厳しいものです。
「パートナーの勤務先は万が一の際、会社が社員を確実に救い出してくれる具体的な準備(チャーター機の手配、24時間サポート窓口など)があるか」という問いに対し、「十分に準備・周知されている」と信頼している家族はわずか17%に留まりました。
最も多かった回答は「準備はしていると思うが、内容はよく知らない(56%)」でした。
多くの企業では、危機管理マニュアルを社員本人には共有していても、その家族までは届けていません。この「情報の断絶」こそが、家族の不安を増幅させ、結果として社員の海外赴任や出張への意欲を削ぐ根本原因となっています。
さらに致命的なのは、約8割が「企業が緊急避難手段の確保や24時間相談窓口を導入し、家族にも説明していたら不安は軽減される」と回答している点です。
これは何を意味するか。企業にとって、すでに投資している安全対策が、家族に伝えるだけで8割の不安を軽減できるという事実です。逆に言えば、伝えないことでそれだけの機会を損失しています。
【図表3:企業の危機管理体制に対する信頼度と期待】


(図説)
「有事の救出手段が準備されている」と信じている家族はわずか17%に留まりました。一方で、会社が「チャーター機の確保」や「24時間サポート」を導入し、それを家族に開示することで、約8割の家族が「不安が軽減される」と回答。家族が求めているのは、具体的な「救出のエビデンス」であることが明確となりました。
これは、企業のリスクマネジメント体制の透明性や、家族を含めたステークホルダーへの説明責任の問題といえるでしょう。家族が不安を抱えたまま社員を送り出す状況は、緊急時の対応遅れやクレーム、風評リスク、さらには訴訟リスクにもつながりかねません。企業には、具体的な安全対策とその情報共有が求められています。
4. 【示唆】調査から見えた「家族を含めた安全配慮」の重要性
では、どうすればこの「ファミリー・ブロック」を解消できるのでしょうか。
調査では、もし勤務先が「緊急避難手段の確保(チャーター機等)」や「24時間日本語医療相談」を導入し、その内容を家族にも説明した場合、8割以上の家族が「不安が軽減される」と回答しました。
これからのグローバル経営において、企業は以下の2点をセットで推進する必要があります。
1. 物理的な安全確保: 民間機が止まっても帰還できる手段と、24時間つながる医療・相談窓口の確保。
2. 家族への情報開示: 安全対策を社外秘にせず、「当社はあなたの大切なパートナーをこうやって守ります」と家族に向けて明文化し、約束すること。
「社員を守る」義務は、今やその帰りを待つ家族の心理的安全性にまで広がっています。精神論や「大丈夫」という言葉ではなく、具体的なエビデンスに基づいた安全対策を家族と共有することこそが、2026年のグローバルビジネスを支える新しい「安全配慮」の形と言えるでしょう。
【両社の取り組みについて】
本調査では、海外出張を予定・検討している社員のパートナーの約9割が「渡航に不安を感じている」と回答し、海外出張のリスクが社員本人だけでなく、その家族にも大きな心理的影響を与えていることが明らかになりました。
この結果を受け、近年では企業側でも「社員本人だけでなく、家族も含めた安心設計」の重要性が高まっています。海外出張管理の分野では、家族向けの情報共有や緊急時対応の可視化など、家族を含めた安全配慮を制度化する動きが広がっています。
その一例として、HISは、法人向け海外出張・駐在員サポートサービス「BTMプログラム(Business Travel Management)」を通じて、実務現場における新しいアプローチを提示しています。従来の「社員向け安全対策」に加え、家族を含めた情報開示と安心設計を重視する点が特徴です。
一方でノウンズは、本調査を通じて得られた消費者インサイトを、企業の人事・総務・リスクマネジメント領域の意思決定に活用できる形で提供しています。ノウンズの「ノウンズ消費者リサーチ」は、アンケートデータを基盤に、家族や生活者の意識変化を定量・定性の両面から可視化し、企業の制度設計やコミュニケーション改善を支援します。
両社は今後も、調査データと実務知見を組み合わせることで、海外出張に限らず、企業の人事・リスクマネジメント・顧客理解など幅広い領域における課題の可視化と、意思決定の高度化に貢献していきます。
【まとめ】家族の不安を、企業の意思決定に活かす時代へ
本調査から、企業が講じる安全対策の“量”よりも、それを家族にどこまで開示できているかが、社員の心理的安全性を大きく左右する構造が見えてきました。
ノウンズの消費者データは、こうした「見えない不安」を可視化し、企業の制度設計やリスクマネジメントに新たな視点を提供します。また、HISの実務知見と組み合わせることで、調査結果を現場の改善につなげる可能性も広がっています。
家族の不安を放置するのか、それともデータと現場知見で解決に向かうのか。その分岐点に、日本企業は立っているのかもしれません。
◇調査概要
・調査目的:海外出張に対する「家族の不安」と「企業の対策状況」の可視化
・調査期間:2025年12月
・調査人数:400名
・調査機関:ノウンズ消費者リサーチ
・調査対象:パートナー(配偶者)に海外出張の経験・予定がある20代〜50代の男女

ノウンズ株式会社
ノウンズ株式会社は、消費者の意識データを捉えるボイス型モバイルアンケートアプリ「Knowns App」と、企業向けにそのデータを活用したサブスク型リサーチSaaS「Knowns 消費者リサーチ」を展開しています。
「Knowns 消費者リサーチ」は、回収率の高いモバイルアンケートデータをもとに、定量・定性を横断したインサイト抽出を可能にする新しい調査プラットフォームで、リサーチ設計から結果分析までを一貫して支援し、日々の意思決定の精度とスピード向上を実現します。
・会社名:ノウンズ株式会社
・所在地:東京都渋谷区道玄坂1丁目7-1 渋谷グローリアビル5F
・設立:2019年12月
・代表者:代表取締役 田中啓志朗
・事業内容:消費者データ分析サービス「Knowns 消費者リサーチ」の開発/販売および消費者から意識データを聴取するスマホアプリ「Knowns App」の運営。
▪️Knowns 消費者リサーチ:https://knowns.co.jp/research/
▪️Knowns App:https://app.knowns.jp/
▪️問い合わせ:https://knowns.co.jp/#contact

株式会社エイチ・アイ・エス
株式会社エイチ・アイ・エスは、国内外の旅行事業をはじめ、法人向け海外出張・駐在支援サービスなど、グローバルビジネスを支える多様なサービスを展開しています。企業の海外出張・駐在におけるリスクマネジメントや出張管理の分野では、現場に即した支援体制の構築を強みとしています。
法人向け海外出張支援サービス「BTMプログラム(Business Travel Management)」では、出張手配だけでなく、24時間365日のサポート体制、緊急時の避難支援、医療相談などを含む包括的な危機管理ソリューションを提供し、企業の安全配慮義務の実現を支援しています。
・会社名:株式会社エイチ・アイ・エス
・所在地:東京都港区虎ノ門4丁目1番1号 神谷町トラストタワー
・設立:1980年12月
・代表者:代表取締役社長 澤田 秀太
・事業内容:旅行事業、法人向け海外出張支援サービス、地域創生事業 ほか
■ HIS 危機管理(リスク管理)サービス
https://www.his-j.com/corp/btm/risk/
■ HIS 出張管理システム(BTM)
https://www.his-j.com/corp/btm/
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