福岡市公民館など45ヶ所でインフラサウンド観測の実証実験を開始

~九州大学の研究を地域防災に活用~

国立大学法人九州大学

伊都キャンパスから見た福岡近郊の積乱雲

九州大学大学院理学研究院では、地球惑星科学部門の中島健介准教授らを中心に、福岡市主要部の公民館など45ヶ所に高感度のセンサを設置して、高密度・高頻度観測により「インフラサウンド」をとらえ、ゲリラ豪雨や竜巻などの局地的・突発的な災害事象の検知を目指す実証実験を行います。

インフラサウンドとは、周期20分の1秒から数百秒程度までのゆっくりした僅かな気圧変動で、積乱雲・雷雨・竜巻などの激しい気象現象や、地震・津波・山崩れ・雪崩などの災害事象に伴って発生します。

この研究は情報通信研究機構(NICT)委託研究の一環で、福岡市実証実験フルサポート事業に採択され、福岡市役所、各公民館の協力のもとに実施します。研究成果を災害軽減に効果的に活用し、地域の安心・安全に貢献することを目指します。

9月3日に行われた実証実験の採択式に参加した中島准教授(中央)と高島市長(右)、福岡地域戦略推進協議会の石丸事務局長(左)
  • 研究者(中島准教授)からひとこと
     今回の観測には、普通のスマホにも使用されている低価格の「MEMSセンサ」を使います。多くの観測を組み合わせることで、災害につながる現象やその前触れを素早くその場でとらえることを目指します。将来は一般家庭や店舗、公共機関などにも装置が設置されて、住民自ら地域に密着した防災のヒントを入手できるシステムの実現に繋がればと思います。

    背景と目的
     気象災害の中には、ゲリラ豪雨・竜巻など、狭い範囲で急激に発生するものがあります(図 1)。これらは、前兆が現れるとしても、その直前、その場所のごく近くに限られ、数時間以上前から場所や時間を的確に予報することは難しいのが現状で、被害者にとっては不意打ち になりがちです。しかし、高感度・高密度・高頻度の観測があれば、こうした突発的局所的災害イベントの発生や予兆を捉えられる可能性があり、さらに情報をその場で住民自身が入手できる方法があれば、防災への可能性が開けます。この実証実験は、近年の技術的進歩により測定可能となっているにもかかわらず現在の気象観測・予測では全く利用されていない「インフラサウンド」を捉えるための高感度・高密度・ 高頻度の気圧観測ネットワークを福岡市主要部を中心に展開し、局地的・突発的な災害事象の検知を目指します。

図1:様々な気象現象の大きさと寿命の関係。小さい現象ほど寿命が短かく、前兆の把握や変化の予測が困難です。

  • インフラサウンドとは
     インフラサウンドとは周期20分の1秒から数百秒程度までのゆっくりした僅かな気圧変動で(図2)、積乱雲・雷雨・竜巻などの激しい気象現象や地震・津波・火山噴火・山崩れ・雪崩などの様々な災害事象などに伴って発生します。核爆発でも発生するため、核実験禁止条約の検証[注1]にも活用されています。

図2:インフラサウンドは、音波と同じく気圧変動を伴う波動ですが、周期が長いため、耳で聞くことはできません。
  • 実証実験に用いる観測装置
     今回の観測では、一般のスマホで高度差センサとして広く使用されるようになった低価格の「MEMS気圧センサ」を使います。これは、絶対値の保証はありませんが、高感度・高速かつ低雑音であるため、インフラサウンドの測定が十分可能です。
     このセンサを小型のマイクロコンピュータで制御し、測定結果はインターネット経由で九州大学のサーバに蓄積して解析します。観測装置とデータ収集システムは、本学の大学院学生の協力を得て開発したものです。各々の観測装置(図3)は小型・省電力で比較的安価に製作できるため、数十台の装置を高密度に展開することが可能になりました。

図3:装置一式はノートPCサイズです。
  • 高密度・高感度・高頻度の観測ネットワーク
     今回の実証実験では、主に福岡都市高速の環状線の内側に位置する福岡市公民館35ヶ所、および、南区役所、西区役所西部出張所、Fukuoka Growth Next、福岡市科学館など合計45ヶ所に配置します(図4)。これにより、既存の気圧観測と比較して面積あたりで約100倍の高密度、測定する気圧刻みとして10倍の高感度、測定時間間隔で600倍以上の高密度・高感度・高頻度の観測ネットワークを構成します[注2]。
     ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲がこの中で発生すれば、これに伴うインフラサウンドが詳しく捉えられ、得られたデータの総合的分析により積乱雲発生の前触れを探すことができます。観測は約3ヶ月間行います。

図4:福岡市実証実験フルサポート事業で設置する観測点。積乱雲(大きさ1~10km)にともなう気圧の変動を詳しく観測できます。
  • これまでの準備と今後の展望
     この実証実験は令和4年度から高知工科大学・産業技術総合研究所・北海道情報大学・九州大学で受託して大阪大学・京都産業大学・日本気象協会の協力を得て本年度まで遂行している情報通信研究機構(NICT)委託研究22605 [注3]の一環として実施します。この委託研究ではこれまで、MEMS気圧センサの徹底的な定量的性能評価、過酷な実環境での実用試験を行うとともに、並行して小規模(高知県香美市)、中規模(北海道江別市)の観測網の展開を試行し、このたび最終年度において、福岡市主要部での大規模観測の実証実験を迎えました。
     今回の実証実験の実施は、福岡市実証実験フルサポート事業 [注4]に採択され、福岡市役所、公民館等の多大の協力を頂いて実施しています。実証実験で得られた観測データは、高密度・高感度・高頻度の観測ネットワークの運用経験とともに、局地的・突発的な災害事象の即時把握・早期警戒と予測に向けて分析し、地域における災害軽減と住民の安心・安全の実現を目指して活用します。さらに、インフラサウンドを津波など幅広い災害事象の早期検知・警戒に活用するための基礎データとしても役立てたいと考えています。

[注1] 国際連合広報センター,包括的核実験禁止条約準備委員会,

https://www.unic.or.jp/info/un/unsystem/specialized_agencies/ctbto/

「関連リンク」より辿れる英語サイトの中の International Monitoring System の地図

https://www.ctbto.org/sites/default/files/2022-07/ims_map_front_back_august_2021_webfriendly.pdf

 の緑色の60点がインフラサウンドの観測点です。

[注2] 気象庁の気圧観測点は福岡市内には福岡管区気象台の1ヶ所だけで、通常は10分おきに0.1 hPa 刻みの観測値を公表しています。この実証実験では、福岡市主要部など45ヶ所の観測点を置き、0.01 hPa の以下の刻みで毎秒20回の観測データを収集します。

[注3] 情報通信研究機構, 高度通信・放送研究委託研究 22605「データ利活用等のデジタル化の推進による社会課題・地域課題解決のための実証型研究開発:地域防災のための多地点微小気圧変動計測パッケージの標準化と都市近郊・中山間部における市民協力型実証実験」

      https://www.nict.go.jp/collabo/commission/k_22605.html

[注4] 福岡市実証実験フルサポート事業

福岡市と福岡地域戦略推進協議会が AI・IoT などの先端技術を活用した社会課題の解決や生活の質の向上などにつながる実証実験プロジェクトを全国から募集し、福岡市での実証実験を全面的にサポートするものです。

     https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/kigyo-renkei/mirai/fullsup/fullsupport.html

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業種
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本社所在地
福岡市西区元岡744
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代表者名
石橋達朗
上場
未上場
資本金
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設立
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