日本野鳥の会が管理する豊田市自然観察の森で、環境管理活動により16年ぶりにサシバが営巣
里山生態系の頂点に位置するタカの仲間サシバは、生き物が豊富な里山環境の指標となります。そこで観察の森では、2003年度に周辺の里山124.5haが管理地に含まれたのを機に、サシバを保全目標種とした里山保全事業「サシバのすめる森づくり」を2005年にスタートさせました。具体的にはサシバの餌となるカエルやヘビを増やすため、計12,931haの休耕田を整備し水を張ることでカエルの産卵場所を確保しています。また餌資源の変化を知る指標としてニホンアカガエルの卵塊カウント調査も併せて行っています。今年6月に管理地内で巣を発見し、ペアが2羽の雛を育てているのを確認しました。これは16年ぶりの営巣で、長く続けてきたこの保全事業の成果と言えます。
また、一旦繁殖が途絶えて後に環境保全活動により復活したのは、全国的にも非常に珍しい例です。
■サシバについて
サシバは、東北地方以南に夏鳥として渡来する中型の猛禽類です。南西諸島からフィリピンなどで越冬し、おもにトノサマガエルやニホンアカガエルなどの両生類、シマヘビやニホンカナヘビなどの爬虫類、ヤママユガの幼虫やトノサマバッタなどの昆虫類、小型哺乳類などを食物としています。
東日本におけるサシバの生息地の多くは谷津田や谷戸と呼ばれる里山環境です。サシバの行動圏は約100~200haで、水田と森林の接する長さが長い環境を好むことが知られています。
3月末から4月に飛来し、巣作り、産卵、育雛をへて7月上旬に巣立ちます。9月下旬から10月にかけて、南下し愛知県の伊良湖岬などを経て渡っていきます。
■保護活動について
環境省の繁殖分布調査の結果によると、生息分布が急激に縮小していることが示されており、特に関東以西でその傾向が顕著です。そのため、2006年12月に改訂された環境省レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類としてとりあげられるまでになってしまいました。サシバは、ダム建設事業や道路建設事業、住宅地や工業団地等の面的な開発事業等のほか、水田の圃場整備や耕作放棄等による採食環境の悪化により、その生息に影響を受ける事例が見られます。
日本野鳥の会では、日本自然保護協会、アジア猛禽類ネットワークとともに繁殖地、中継地、越冬地で連携し保全活動を進めています。2019年5月には繁殖地の栃木県市貝町で国際サシバサミットを開催し、今後、中継地の沖縄県宮古島、越冬地のフィリピンなどでも開催予定です。また、調査・保護活動用に本会会員等から集めた中古の双眼鏡や望遠鏡をフィリピンに寄贈する活動も行っています。
■豊田市自然観察の森について
観察の森は、身近な自然を都市近郊に確保し、市民が気軽に自然に親しみながら自然のしくみや機能を学び、自然保護について考える場とする目的で、環境省の指導と補助により全国に10か所設置された施設です。観察の森もその1つで1990年6月に開設されました。豊田市の中心市街地の東方約4kmに位置し、標高70~140m、面積28.8ha(周辺地域は124.5ha)。鞍ケ池公園から続く緑地帯の中にあります。中心施設であるネイチャーセンターの他、自然散策道や休憩舎、探鳥用ブラインド等の施設が整えられています。ネイチャーセンターでは自然に関する展示や自然観察のアドバイスや観察コースの案内などを行っています。またガイドウォークや動物・昆虫・植物などの観察会、団体対応なども行っています。観察の森開設から20年目となる2010年には、新しいネイチャーセンターが完成しました。周辺地域124.5haを中心として、「サシバのすめる森づくり」を環境保全の目標としています。
■「日本野鳥の会」について
「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざして活動を続けている自然保護団体です。
独自の野鳥保護区を設置し、シマフクロウやタンチョウなどの絶滅危惧種の保護活動を行なうほか、野鳥や自然の楽しみ方や知識を普及するため、イベントの企画や出版物の発行などを行なっています。会員・サポーター数は約5万人。野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます。
<組織概要>
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
創立 : 1934(昭和9)年3月11日 *創立86年の日本最古にして最大の自然保護団体
URL : https://www.wbsj.org/
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