2025 年(第34 回)ブループラネット賞 受賞者発表
炭素循環研究を通じ温室効果ガス削減に貢献したジャクソン教授と、金融市場への気候変動リスクの織り込みを推進したレゲット博士に贈賞
公益財団法人 旭硝子財団(理事長:島村琢哉、所在地:東京都千代田区)は、今年で第34回を迎える
ブループラネット賞(地球環境国際賞)の2025年受賞者を決定いたしました。
本賞は、地球環境の修復を願い、地球サミットが開催された1992年(平成4年)に創設されました。地球環境問題の解決に向け、理念の構築や科学的理解の深化、あるいは人文・社会科学を含む科学技術に根差した対策や実践活動に大きく貢献した個人または組織を顕彰する国際賞です。受賞者は、以下の2名です。
1.ロバート・B・ジャクソン 教授(米国) 1961年9月26日生まれ
スタンフォード大学 地球システム科学科
炭素循環研究を通じ温室効果ガス削減に貢献

ロバート・B・ジャクソン教授は、森林・草原・湿原などの陸域生態系の炭素循環の専門家で、土壌・植生・土壌細菌群集の関係に関する先駆的な研究を行ってきた。また、化石燃料の使用や自然の生態系から発生する二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの収支を定量化している。2017年からは、グローバルカーボンプロジェクト(GCP)の議長として温室効果ガス排出量の監視と削減を主導している。
2.ジェレミー・レゲット 博士(英国) 1954年3月16日生まれ
ハイランド・リワイルディング社創設者・CEO
カーボン・トラッカー・イニシアティブ初代会長
金融市場へ気候変動リスクの織り込みを推進

ジェレミー・レゲット博士は、Carbon Tracker Initiative (CTI) の初代会長として「カーボンバブル」の概念を提唱し、化石燃料資産の経済リスクを明らかにした。CTIの活動を通じて投資家や政策立案者に影響を与え、ダイベストメント(投資撤退)運動を促進した。また、経済活動と環境保全の両立を目指す実践的な活動として、英国を代表する太陽光発電企業を創業。最近ではスコットランドで自然回復と地域社会の繁栄を結び付ける取り組みを推進している。
●毎年原則として2件を選定し、受賞業績1件に対して、賞状、トロフィーおよび賞金50万米ドルが贈られます。
●表彰式典は 10月29日(水)に東京會舘(東京都千代田区)で行う予定です。受賞者による記念講演会は、10月30日(木)に東京大学、11月1日(土)に京都国際交流会館で開催を予定しています。
※本リリースは環境記者クラブ、環境記者会、重工記者クラブに同時配布しています。
※本リリース及び本年度受賞者の写真は、6月11 日 午前 11 時から当財団 ウェブサイト(https://www.af-info.or.jp)にて入手可能です。
<受賞の辞>
・ロバート・B・ジャクソン教授
松尾芭蕉の数ある俳句のひとつに、次のような句があります。
「この道や 行く人なしに 秋の暮れ」
しかし、俳人とは異なり、科学者は決して一人で旅をすることはありません。
より良い世界を目指して努力する中で、支えてくれた家族、友人、研究室の仲間たち、そしてグローバル・カーボン・プロジェクトの同僚たちに感謝します。
スタンフォード大学のハロルド・ムーニー教授(2002年のブループラネット賞受賞者)の研究室で出会って以来、共に歩んできたGCP事務局長のジョセップ・カナデルにも深く感謝しています。そしてもちろん、環境のための取り組みを支えてくださっている旭硝子財団にも心より御礼申し上げます。
私たちは、過去の環境保護の先駆者たちのおかげで、私たちがどれほど健康でいられるのかを、つい忘れがちです。米国では、有鉛ガソリンの段階的廃止によって、子どもの血中鉛濃度が96%も低下しました。米国の「大気浄化法」は、30倍の投資効果を上げつつ、年間数十万もの命を救っています。また、国際協力によって、地球のオゾン層と地球上のすべての生命を守るモントリオール議定書も策定されました。
しかし、自由や平等と同様に、環境の進歩や安全な気候もまた、今まさに危機にさらされています。ブループラネット賞は、私にそのことを思い起こさせてくれるものであり、私はこの栄誉に深く感謝しています。
・ジェレミー・レゲット博士
このたびの栄誉に、心より光栄に思うと同時に、身の引き締まる思いです。とりわけ、私が長年にわたり日本と関わってきたことを思えば、なおさらのことです。
1980年代には、地球科学の研究者として日本の大学や産業界の研究者と緊密に連携してきました。1990年代には、気候変動対策の活動家として、日本を含む世界の仲間たちとともに、1997年の京都気候サミットの成功に向けて尽力しました。その後、太陽光発電の起業家として歩み始めた初期の頃には、日本、アメリカ、ドイツの先駆者たちから多くのことを学びました。
これらすべての仲間たち、そしてSolarcentury、SolarAid、Carbon Tracker、Highlands Rewildingのチームとかつての仲間たちに、心から感謝します。また、気候変動アナリストや国連職員として活躍していた日本人の妻、アキにも深く感謝しています。私がこの賞を受賞できたのは、彼らの支えがあったからこそであり、この名誉は私だけのものではなく、彼らと分かち合うべきものです。
この賞が与えてくれる機会を生かして、持続可能で希望ある未来を築くための取り組みを、さらに加速させていく所存です。
<本年度(第 34 回)の選考経過>
国内408名、海外 828名のノミネーターに推薦書を送り、146件の受賞候補者が推薦されました。候補者の分野は、多い順に生態系35件、気象・地球科学30件、環境経済・政策が23件などでした。候補者は39ヶ国にわたります。
選考委員会による数次の審査をもとに顕彰委員会に諮った後、理事会で、1件はロバート・B・ジャクソン教授が、もう1件はジェレミー・レゲット博士が受賞者として正式に決定されました。
<ブループラネット賞について>
人類が解決を必要としているグローバルな諸問題の中で、最も重要な課題の一つが地球環境の保全です。地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、河川・海洋汚染などの地球環境の悪化は、いずれも私達人間の生活や経済活動が大自然に影響を及ぼした結果です。旭硝子財団は、地球環境の修復を願い、地球サミットが開催された1992年(平成4年)に、地球環境問題の解決に向けて著しい貢献をした個人または組織に対して、その業績を称える地球環境国際賞として「ブループラネット賞」を創設いたしました。
賞の名称の「ブループラネット」は人類として初めて宇宙から地球を眺めた宇宙飛行士ガガーリン氏の言葉「地球は青かった」にちなんで名付けられました。この青い地球が未来にわたり、人類の共有財産として存在しつづけるようにとの祈りがこめられています。
<歴代受賞者>

<賞状とトロフィー>


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