自動運転用3次元アノテーションツール「Automan」を開発

〜オープンソースとして無償提供開始〜

自動運転システムの人工知能(AI)基盤には高品質な教師データが大量に必要となりますが、従来のような労働集約型の教師データ作成方法では、教師データの不足や品質の問題により自動運転AIの研究開発が進まないという課題がありました。
東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平准教授は、自動運転AIの開発に不可欠な教師データ作成のための3次元アノテーションツール「Automan」をFastLabel株式会社、株式会社Human Dataware Lab.と共同で開発し、2022年1月21日にオープンソースとして公開しました。「Automan」は従来、単一機能として設計することが一般的であった3次元アノテーションを自動運転システム全体のContinuous Integration / Continuous Delivery(CI/CD)(注1)に組み込むことができるインターフェースを持ち、ウェブブラウザ等のアプリケーションを用いて誰でも無償で利用できることで、自動運転の領域においてAIの研究開発の加速が期待できます。

  • 発表のポイント
◆ 自動運転AIの開発に不可欠な教師データ作成のための3次元アノテーションツール「Automan」を共同開発し、オープンソースとして公開した。
◆ 3次元アノテーションを単一機能として提供するのではなく、自動運転システム全体のContinuous Integration / Continuous Delivery(CI/CD)に組み込むことができるインターフェース設計を行った。
◆ オープンソースとして公開することにより、誰でも無償で利用でき、自動運転の領域においてAIの研究開発の加速が期待できる。

 

 
  • 発表内容
東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平准教授を中心とするJST-CRESTプロジェクト「完全自動運転における危険と異常の予測」では、完全自動運転中の危険と異常を予測する技術、並びにその予測能力を持続的に発展させるためのデータ収集・解析・配信の方法論について、理論と実践の両面から実用的課題に取り組んでいます。本研究の提案時に、研究グループは「危険」と「異常」を以下のように定義しました。

● 危険(Risk): 死角からの飛出しや見通しの悪い交差点での出会い頭を含む環境側の危険および自動運転システムによる自車の運転の危険
● 異常(Anomaly): アルゴリズムの失敗による異常、およびその処理の遅れや外部環境から得られる情報の誤りを含むシステム的な異常

現在の自動運転システムの主流は、人間並みの判断を可能にする機械学習技術にありますが、本研究チームは、高度な判断によって複雑なケースを自動運転で乗り切ることよりも、致命的な事故を未然に防ぐために適切なタイミングで自動運転をあきらめる(停止する)ことのほうが社会的価値は高いという着想のもと、危険と異常の予測に焦点を絞り研究を進めてきました。特に運行設計領域(ODD: Operational Design Domain)(注2)を定義することによって、限りなく100%に近い精度で危険と異常を予測し、そこから最小限の移動量によって安全に停止できる自動運転システムのプロトタイプを完成させました。

本研究成果を広く社会に普及させるためには、本研究チーム以外の第3者が本研究成果を再現できることが重要となります。特に自動運転システムの人工知能(AI)基盤には高品質な教師データが大量に必要となりますが、従来のようにマンパワーに頼った労働集約型の教師データ作成方法では、教師データの不足や品質の問題により自動運転AIの研究開発が進まないという課題がありました。

そこで研究チームは、研究代表者の加藤真平准教授らが手掛けるオープンソースの自動運転OS「Autoware(注3)」の開発知見を活かし、Autowareの開発をリードする株式会社ティアフォー、およびその子会社である株式会社Human Dataware Lab.の協力のもと、自動運転AIの研究開発のためのデータの取得・解析に関する業務やデータ解析の自動化に取り組んできました。また、FastLabel株式会社が提供するアノテーションプラットフォーム「FastLabel」と連携し、自動運転AIが用いる画像と点群のデータに対するアノテーションの自動化に取り組んできました。

今回、自動運転AIの開発に不可欠な教師データ作成のための3次元アノテーションツール「Automan」をFastLabel株式会社、株式会社Human Dataware Lab.と共同開発し、2022年1月21日にオープンソースとして公開しました。これにより、ウェブブラウザ等のアプリケーションを用いて誰でも無償で利用できるようになり、自動運転の領域においてAIの研究開発の加速が期待できます。従来、3次元アノテーションは単一機能として設計することが一般的であったが、本研究では、3次元アノテーションを自動運転システム全体のContinuous Integration / Continuous Delivery(CI/CD)に組み込むことができるインターフェースを設計したことで、自動運転AIの開発サイクルを飛躍的に改善することを可能としました。

本研究では危険と異常という課題に対して実時間性と不確実性の観点からアプローチしましたが、今後は脆弱性に対する研究も進め、外部からの攻撃に備える必要もあります。そして、「走れば走るほど賢くなる自動運転システム」の構想を目指して、本共同開発を機に、自動運転AIの領域において、自動運転の実用化をさらに加速すべく取り組みを進めます。
 
【研究支援】
本研究は、以下の事業・研究領域・研究課題の支援を受けて行われた。
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究課題:「完全自動運転における危険と異常の予測」(JPMJCR19F3)
研究代表者:加藤 真平(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授)

【発表者】
加藤真平(東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・准教授)
大谷 健登(株式会社Human Dataware Lab. 代表取締役CEO)
上田 英介(FastLabel株式会社 取締役)

【問い合わせ先】
(研究内容について)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻
准教授 加藤 真平(かとう しんぺい)
E-mail: shinpei.kato@pf.is.s.u-tokyo.ac.jp
Tel: 03-5841-6030

株式会社Human Dataware Lab.
代表取締役CEO 大谷 健登(おおたに けんと)
E-mail: ohtani@hdwlab.co.jp
Tel: 080-2633-2623

FastLabel株式会社
取締役 上田 英介(うえた えいすけ)
E-mail: eisuke.ueta@fastlabel.ai
Tel: 090-8727-2866

 (報道・取材について)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 広報室
土方 智美
E-mail:ist_pr@adm.i.u-tokyo.ac.jp
Tel:090-1705-8416(直通)

【用語解説】
(注1)ソフトウェア開発において、ビルドやテスト、リリース、デプロイなどの工程を専用のツールなどを用いて自動化し、開発の効率化や省力化、本番環境への迅速な反映を図る手法のこと。
(注2)自動運転システムを開発・設計するうえで、それぞれのシステムが作動する前提となる走行環境条件のこと。
(注3) AutowareはThe Autoware Foundationの登録商標です。LinuxとROSをベースとした自動運転システム用オープンソースソフトウェアとなっており、名古屋大学、長崎大学、産総研による共同成果の一部として、自動運転の研究開発用途に無償で公開。プロジェクト公式サイト:https://automan.ai/

【資料】
公開日時:2022年1月21日15時(日本時間)
https://automan.ai/
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