世界初の定常核融合炉実現を目指す株式会社Helical Fusion、 エネルギーを取り出す重要装置「ブランケット」の材料候補となる希少金属「ベリリウム」に関しMiRESSOと業務提携を開始
世界初の核融合エネルギー実⽤化へ、国⽴研究所の研究成果を活かすスタートアップが提携
世界初の定常核融合炉実現を目指す株式会社Helical Fusion(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:⽥⼝昂哉、以下「Helical Fusion」)は、このたび、株式会社MiRESSO(本社:青森県三沢市、代表取締役CEO:中道勝、以下「MiRESSO」(ミレッソ))と、商用の定常核融合炉の開発において重要な装置である「ブランケット」材料候補であるベリリウムの将来的な調達ならびに仕様・設計検討を共同で進める業務提携を開始します。MiRESSOは、世界で唯一、フュージョンや航空宇宙、産業機器等の分野で利活用が期待されるベリリウムを低コスト・省エネルギーで生産する新技術「低温精製技術」を持つ日本のスタートアップ企業です。

本提携の意義
今回の提携を通じて、Helical Fusionの核融合炉開発の知見とMiRESSOのベリリウムに関する知見を融合し、フュージョンエネルギーの実用化に向けたブランケット開発を着実に進めていきます。核融合分野で世界最高峰の研究機関である核融合科学研究所(NIFS)、量子科学技術研究開発機構(QST)の知見をそれぞれ受け継ぐHelical FusionとMiRESSOというスタートアップ同士が提携することにより、日本発でグローバルフージョンエネルギーの商業化および新産業創出に向けて取組みます。
核融合開発の意義
世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測*され、生成AIの普及も背景とした世界的な電力需要の急増に対し、既存発電方法のみで応えることは厳しい見通しです。フュージョンエネルギーは、太陽の輝きと同じ原理を使ったクリーンで安全性の高い発電方法であり、海水からほぼ無尽蔵に採取可能な燃料を用いることからも、こうした世界的な課題を抜本的に解決する技術として期待されています。
フュージョンプラントも建設および電力市場は2050年までに世界で年間5500億ドル規模にまで成長するとの試算**もあり、今後自動車産業のように日本が世界をリードする巨大産業を創出できる可能性がある一方、国際的な開発競争も激化しています。Helical Fusionは世界最速での定常核融合炉を2034年までに実現し、世界中で商用化することで、持続可能なエネルギー源の社会実装を目指しています。
*国際エネルギー機関(IEA)年次報告書
「2023年版世界エネルギー見通し」(World Energy Outlook 2023)
**FusionX/Helixos report Global Fusion Market Analysis: Electricity, Supply Chain & Construction
(https://fusionxinvest.com/data-analysis/analysis/)

ブランケット開発の重要性
Helical Fusionが開発する「ヘリカル型核融合炉」は、岐阜県にある世界有数の核融合の国立専門研究機関「核融合科学研究所」をはじめ、日本で70年以上蓄積されてきた研究の知見を引き継ぐものであり、プラズマ研究・炉設計と工学研究成果の観点から、既に実用化に向けたハードルをほとんどクリアしています。残された数少ないハードルの1つがブランケット開発であり、核融合反応から電気を作るための「エネルギーを取り出す」「燃料を増やす」「装置全体を守る」役割を担う重要な部品ですが、製作の難易度が高く、世界中でもまだ実装した装置はありません。
ブランケット開発における「ベリリウム」の役割
核融合炉は、プラズマ状態の重水素とトリチウム(三重水素)を燃料とした発電システムですが、燃料のトリチウムは天然ではほとんど存在しないため、プラズマの周囲を取り囲むブランケットの中で、トリチウムを自己生産させる必要があります。ブランケットの素材の中にリチウムを混ぜておくことで、プラズマから飛び出してきた中性子とリチウムが反応し、トリチウムができます。燃料のトリチウムを自己生産させるこのトリチウム増殖の仕組みをいかに効率的に行えるかどうかが、核融合炉を実用化する上での経済性の確保において、非常に重要です。
ブランケットの素材に中性子増倍材である「ベリリウム」を加えることで、核融合反応で生じた中性子を1個から2個に増倍させ、燃料であるトリチウムを効率的に生産できることから、核融合エネルギー生産自体の効率を高める鍵となる可能性があります。
しかしながら、現状ベリリウムの生産量は非常に少なく、高価であることが課題です。核融合炉1基に対する必要量は現在の世界の総生産量を上回るという試算もあり、安定確保に向けたイノベーションが必要な状況です。

MiRESSOについて
世界で唯一、ベリリウムを圧倒的な低コスト・省エネルギーで生産する新技術「低温精製技術」を誇る日本のスタートアップ企業です。代表取締役CEOである中道氏らが、核融合の世界的な研究機関である国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)において、化学処理とマイクロ波加熱の複合技術による低温精製技術の開発に成功しています(特許出願済み)。
従来ベリリウム鉱石の溶解で2,000℃の高熱処理が必要であったのに対し、低温精製技術では300℃の常圧で溶解することができ、圧倒的な低コスト・省エネルギーでのベリリウム精製を実現可能としています。
現在、ベリリウム製造のパイロットプラント「BETA」(Beryllium Testing plant in Aomori)を八戸市にて整備し、2027年度中のベリリウム生産開始を目指しています。さらに、原型炉及び商用炉の建設が本格的に進む2030年代初頭に、ベリリウム生産年100トン規模の量産プラントを建設する計画を有しています。
MiRESSO 代表取締役CEO 中道勝 氏のコメント

世界初の定常核融合炉の実現を目指すHelical Fusionとの間で、今回の提携を実現できたこと、大変嬉しく考えております。
当社は「ベリリウムの安定供給により、フュージョンエネルギー(核融合)の社会実装に貢献する」をVisionとして掲げて創業しました。
今回の提携はVision達成に向けた第一歩であり、特に核融合炉の開発を自社で進めているHelical Fusionとの提携は、核融合のサプライチェーンを日本企業が築いていく上でも意義が大きいと考えております。
Helical Fusionと一緒に、核融合の社会実装に貢献していけるよう邁進していきます。
Helical Fusion 共同創業者 代表取締役CEO 田口昂哉のコメント

MiRESSOとHelical Fusionは、ともに日本が誇る国立研究所における知見を引き継いで創業し、世界に先駆けてフュージョンエネルギーを実用化する挑戦にコミットするスタートアップとして、共有する想いがあると感じています。
核融合炉はたった一つ作ればゴールではありません。
世界中に、何百、何千と設置し、身近なエネルギー源として普及していくことを考えれば、ベリリウムの安定確保は極めて重要なテーマの一つです。フュージョンプラント全体の設計開発を担う数少ないリーディングカンパニーとして、Helical FusionはMiRESSOとともにこのテーマに挑戦できることを誇りに思っております。
Helical Fusion共同創業者 代表取締役CTO 宮澤順一のコメント

フュージョンエネルギーの実現というテーマに対して、MiRESSOとHelical Fusionは異なる角度からアプローチしていますが、信念を持って技術を磨き、まだこの世にないソリューションを生み出す、という挑戦者のマインドは間違いなく共通しています。世界初の定常核融合炉を作り上げ、動かすこと。それだけではなく、燃料を自ら生み出しながらずっと稼働し続けられる発電装置として社会に送り出すことが、私たちの使命です。MiRESSOとともに、これから創っていく成果を楽しみにしています。
すべての画像