シンク・ネイチャーにアッテ・モイラネン博士が最高科学責任者としてフルジョイン、欧州拠点のフィンランド支店を開設
株式会社シンク・ネイチャー(本社:沖縄県浦添市、代表取締役CEO:久保田 康裕、取締役社長COO:舛田 陽介)は、生物多様性ビジネスに関わる基盤技術の開発(R&D)を推進すべく、アッテ・モイラネン(Atte Moilanen)博士が最高科学責任者(CSO: Chief Science Officer)に就任し、欧州拠点としてフィンランド支店を開設したことをお知らせします。
フィンランド支店設立の目的は、生物多様性ビジネスのR&Dであり、この度同支店に前ヘルシンキ大学・フィンランド自然史博物館・教授であるモイラネン博士をCSOとして迎え入れることになりました。
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モイラネン博士は、1968年生まれで、コンピュータサイエンス、応用数学、生態学の学位を取得され、 空間生態学、保全決定分析、生態学に基づく土地利用計画に30年間従事して来られました。モイラネン博士の主なアプローチは、トップダウン型で、概念的かつ方法論的なもので、ソフトウェア開発も含まれます。例えば、モイラネン博士が開発したゾーネーションソフトウェアは、世界的に使用されているツールで、高解像度の生物多様性の空間分析を可能にしています。最近では、生物多様性クレジットや市場とも関連する生物多様性オフセットのツール開発にも取り組んでおられます。一連の研究の功績から、モイラネン博士は、2018年の欧州保全生物学会(ECCB: European Congress of Conservation Biology)で表彰されました。
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ECCBにおける受賞講演は「オフセットにおける12の運用上重要な意思決定:生物多様性オフセットが失敗する理由」 という内容で、講演の最後では「科学的知見の社会実装こそ、大きな課題である"Implementation is one of the big questions」と強調されました。
アッテ・モイラネン博士のコメント
生物多様性は、自然界全体と人間との相互作用に関わる極めて複雑な分野です。私は、生物多様性保全を、多くの相互作用を持つ階層的な考慮事項と捉えています。
最上位レベルには、生物多様性、経済、社会という主要な考慮事項があります。 これらはさらに、種や生息地の種類、費用や機会費用、生態系サービスや生活、生物多様性に対する脅威やそれらに対抗するために取ることのできる行動といった主要な運用構成要素に分かれます。 概念や詳細が下位レベルに下がると、詳細の次元は膨大なものになります。 たとえば種だけを例にとっても、世界には約1000万種の生物が存在します。それぞれの種には、生息地の適性、収容能力、地域人口の動態、分散行動とつながり、機能的特性、遺伝子、他の種との相互作用、人間との相互作用などの特性があります。 保全活動の選択肢としては、数千もの方法があります。 詳細度を高めていくと、生物多様性関連の分析の複雑さは手に負えなくなります。 では、何をすべきでしょうか?
これが、業務に関連する生物多様性分析につながります。 私の意見では、十分な情報を得た上で単純化することが鍵となります。主な考慮事項としては、まず、階層構造の主要な構成要素がどのように扱われるかというバランスが挙げられます。ある場所では深く掘り下げ、別の場所では上位レベルの考察を完全に無視するといったことがあってはなりません。これにより、社会的に関連性のある運用方法と科学的な方法が区別されます。個々の科学的研究では詳細に焦点を当てることができますが、実際の現場での意思決定ではバランスが求められます。次に、費用対効果があります。これは、代替となる保全活動や活動を行う場所(または行わない場所)を選択する際に、企業や社会全体にとって中心的な要素となります。3つ目に、不確実性は避けられません。それらにどう対処するか? 4つ目に、分析をどのように運用レベルで実施するかという問題があります。 ここで、データが重要となります。 生物多様性に関するデータは限られており、多くの点で偏りがあります。 そのため、分析には十分な情報を盛り込んだ簡素化が必要となります。不完全なデータや膨大な基礎的な複雑性や不確実性があるにもかかわらず、生態学的に正当な答えを導き出すことができるようにするためです。 運用分析戦略の概念化は非常に興味深いものです。
私はThink Natureの活動に感銘を受け、生態学的に正当化され、かつ企業や社会が必要とする生物多様性関連の手法や分析の開発に尽力していることを理解しました。Think Natureに参加できる機会を光栄に思います。また、その活動に参加できることを楽しみにしています。生物多様性分析に関連する実務的な開発の最前線に立つことは、価値ある挑戦となるでしょう。新しい職務を始めることをとても楽しみにしています。
株式会社シンク・ネイチャーCEO、久保田 康裕 博士のコメント
この度、アッテ・モイラネン博士を、シンク・ネイチャーの最高科学責任者(CSO)としてお迎えできたことを、とても嬉しく思います。アッテ・モイラネン博士のような一流研究者が大学を辞して、シンク・ネイチャーのようなスタートアップ・シンクタンクにフルジョインすることは前例がなく、それだけ、生物多様性の保全再生やネイチャーポジテイブが、社会的に切迫した課題であることを明示しています。気候変動やカーボンニュートラルと並んで、生物多様性やネイチャーポジティブが、ビジネスの文脈で語られるようになりました。しかし、生物多様性の保全再生に関する科学的知見は、ビジネスにおいてはほとんど主流化されておらず、科学的な合理性や信頼性が無いままに、お金だけが動く仕組みが議論されている、というのが私たちの問題意識です。
アッテ・モイラネン博士を、シンク・ネイチャーCSOに招聘することを契機にして、生物多様性保全再生に関わるR&Dをビジネスの観点で推進し、「誠実なる生物多様性ビジネス」を推進していく所存です。
株式会社シンク・ネイチャー
生物多様性科学において卓越した実績を有する研究者で構成されている琉球大学発スタートアップ企業です(https://think-nature.jp)。世界の陸・海を網羅した野生生物や生態系の時空間分布を、自然史の研究論文や標本情報、リモートセンシング(人工衛星・ドローンによる観測)、環境DNA調査、野生生物の行動記録(バイオロギング)、植物・動物愛好者の研究などで収集された生物関連データ(地理分布、遺伝子、機能特性、生態特性など)を元にビッグデータ化し、AI等の最先端技術を用いたネイチャーの可視化や予測やシナリオ分析技術を有しています (J-BMP*1)。TNFDのデータカタリストイニシアティブに参画し、自然資本ビッグデータを活用した自然の持続的利用に関する分析、評価、ソリューション(GBNAT*2 、TN LEAD*3)で、金融機関・機関投資家・企業の生物多様性対応を支援しています。さらに、「生物多様性ネットゲイン」を可視化し、ネイチャーポジティブ事業を推進するためのサービス(TN GAIN*4)を提供しています。また、生物多様性の記載に尽力している研究者を表彰する「日本生態学会自然史研究振興賞(*5)」を提唱し、賞金を提供して基礎科学の裾野を支える活動を行い、さらには一般向けに、生き物の豊かさを、地図で見える化したスマートフォンアプリ「ジュゴンズアイβ版(*6)」(無料)をリリースし、生物多様性の主流化(教育普及)を推進しています。
*1 J-BMP: 日本の生物多様性地図化プロジェクトhttps://biodiversity-map.thinknature-japan.com/
*2 GBNAT: GBNATは、生物多様性、森林減少、人的影響、水リスクに関するグローバルな定量データを提供し、生物多様性への影響を評価するための優先地域の特定を支援します。GBNATの "ready-to-use" なアウトプットは、TNFDのロケーション評価をサポートし、さらにコモディティ生産、採鉱、自然再生拠点の分析にも役立ちます。https://lp.gbnat.com/jp/
*3 TN LEAD:全産業セクター&グローバルな事業拠点に対応した TNFD対応支援サービス https://think-nature.jp/service03
*4TN GAIN:住宅の庭づくり、都市再開発における不動産物件の緑化計画 、企業緑地や社有林の森づくり、ビオトープの計画など、ネイチャーポジティブ関連事業の効果量をビフォー・アフターの比較を基に算定し、生物多様性ネットゲインを可視化するサービス https://services.think-nature.jp/gain/
*5 日本生態学会自然史研究振興賞:日本生態学会の新賞、生物多様性に関する記載研究を推進している会員を表彰する新たな賞 https://note.com/thinknature/n/n885ba7f11009
*6 ジュゴンズアイ(DugongsAI)β版:生物種毎の生物の豊かさが地図上で可視化された個人向けスマホアプリ
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