Classiq、住友商事とみずほ第一フィナンシャルテクノロジーの実証実験へ技術提供—量子回路を最大95%圧縮で金融分野での量子活用を加速
量子コンピュータを活用した信用ポートフォリオのリスク管理計算における、量子アルゴリズム実装の効率化を実証。金融領域における量子アルゴリズムの早期実用化を加速。
量子アプリケーション開発プラットフォームを提供するClassiq Technologies G.K.(東京都千代田区、ゼネラルマネージャー: 田中晃、以下「Classiq」)は、住友商事株式会社(東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO: 上野 真吾、以下「住友商事」)が企画実施した金融領域における量子アルゴリズムの実装および最適化プロジェクトにおいて(以下「本プロジェクト」)、モンテカルロ・シミュレーションに関する量子アルゴリズムの実装で量子回路の大幅な圧縮に成功したことを発表します。
本プロジェクトは、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:安原 貴彦、以下「みずほ第一FT」)が提供した量子アルゴリズムを基に、Classiq が提供する量子アプリケーション開発プラットフォームを活用して、住友商事が実施したものです。
背景:金融領域における量子コンピューティング実装への期待
金融業界では、デリバティブの価格決定や資産リスク評価にモンテカルロ・シミュレーションが広く活用されていますが、これに乱数を用いた膨大なシナリオ生成が必要となるため、計算負荷が高く、処理に多くの時間を要することが課題となっています。量子コンピューティングは、従来の計算手法に比べて大規模な確率シミュレーションを効率的に処理できる可能性があり、シミュレーションの高速化とリスク評価の精度向上に貢献することに大きな期待が寄せられています。本プロジェクトは将来的な量子アルゴリズムの実装を視野に、みずほ第一FTが提案する擬似乱数を用いた新しい量子モンテカルロ・シミュレーションのアルゴリズム(1)にClassiqの技術を活用する事で、より効率的な量子回路生成を試みたものです。
目的:2種類の量子アルゴリズムを用いたハードウェアリソース削減可能性の検証
量子モンテカルロ・シミュレーション(2)は、金融分野においてVaR(Value at Risk)といったリスク指標の計算に活用され、高速かつ高精度な信用ポートフォリオのリスク評価が期待されています。本プロジェクトでは、この量子モンテカルロ・シミュレーションを「従来型」と、みずほ第一FTが提案した「擬似乱数型」の2種類で実装し、量子回路の最適化を検証しました。従来の手法ではそれぞれの乱数に量子ビットを割り当てる必要が生じ、膨大な量子ビットを要するという課題があることに対し、擬似乱数型の手法は必要な乱数パターンを段階的に生成することで、従来と比べて量子ビット数を抑制できることが大きな特長です(3)。一方で、回路設計上、量子ビット削減によって回路が深くなるトレードオフが起こりえます。そこで、本実証では、Classiqのもつ量子回路圧縮技術を活用し、2種類の量子モンテカルロ・シミュレーションで構築した回路をさらに圧縮できるかを検証しました。具体的には、従来技術で作成した量子回路と、Classiqの高水準言語Qmodを用いて設計した量子回路を比較し、使用する量子ビット数、回路の深さ、計算精度(4)の観点から評価を実施しました。その結果、両方の手法において、量子ビット数を極端に増やすことなく、最大で95%の高い圧縮率が得られ、限られた量子リソースでも効率的かつ高精度なリスク評価を実現できる可能性が示されました。
成果:従来の量子回路設計技術と比較して、計算精度を維持したまま最大95%の回路圧縮を実現
量子回路とは、量子コンピュータ上でアルゴリズムを実装するための回路構成を指します。量子回路は、情報の基本単位である量子ビットと、それらの量子ビットに対して操作を行う量子ゲートの組み合わせによって構成されます。量子回路が長くなるほど、誤り率の増加やハードウェアのリソースをより多く消費するため、量子回路の圧縮は量子アルゴリズムの実装効率を向上させる上で重要な技術課題となっています。本プロジェクトでは、信用ポートフォリオのリスク管理を想定した量子モンテカルロ・シミュレーションの2種類の実装方式において、量子ビット数を極端に増やすことなく量子回路を大幅な圧縮を実現できたことで、量子コンピュータ上での計算効率が向上し、より大規模な問題に対応できる可能性が示されました。特に、リソースを抑えつつ高精度な計算が実行可能になるため、金融リスク管理における大規模な確率シミュレーションの実現が期待されます。また、圧縮によって回路の深さが抑制されることで、誤り耐性が向上し、ノイズの影響も低減されます。これにより、実機上での量子アルゴリズムの実行精度が向上し、金融分野での量子コンピュータ実用化に向けた重要な一歩となることを明らかにしました。
図:量子回路圧縮の結果
[従来の量子モンテカルロ・シミュレーション]

[擬似乱数型の量子モンテカルロ・シミュレーション]

実施体制
プロジェクト実施:住友商事
実証支援:Classiq
アルゴリズム提供:みずほ第一FT
(1) K. Miyamoto & K. Shiohara, “Reduction of qubits in a quantum algorithm for Monte Carlo simulation by a pseudo-random-number generator” Phys. Rev. A 102, 022424 (2020).
(2) 量子モンテカルロ・シミュレーション(QMCI):モンテカルロ・シミュレーションに量子コンピュータの計算能力を組み合わせた手法。確率分布の積分を効率的に評価することで、リスク管理や金融シミュレーションにおいて従来のモンテカルロ・シミュレーションと比べ収束速度の向上が期待されている。
(3) https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.102.022424
(4) 生成した量子回路については、量子シミュレータでの計算を実行し、従来ツールで生成した量子回路の計算結果と一致することを確かめている。
Classiqについて
Classiq Technologiesは、量子アプリケーションの設計から実行までをワンストップで行う包括的なプラットフォームを提供しています。Classiqが開発した「Qmod(キューモッド)」は業界初の高水準モデリング言語であり、量子アルゴリズムの概念を直感的かつ高い抽象度で記述することを可能にします。ネイティブ構文、Python統合、およびグラフィカルエディタを活用することで、効率的で直感的な量子プログラムの開発を支援します。この高水準の記述式の量子アプリケーション開発環境*1により、従来型のゲートレベルでの手動設計とは異なり、量子回路生成を自動化することが可能です。これにより、量子ハードウェアに関する専門知識のない開発者においても、AI、機械学習(ML)、線形代数の知識を活かして量子コンピューティングを活用できるようになります。
さらに、Classiqのプラットフォームは、多様な量子ハードウェアおよびシミュレーターと連携しており、それぞれの制約条件に応じた最適な回路を自動生成します。これにより、開発者の負担を軽減し量子コンピューティングの全体的効率を大幅に向上させます。Classiqは、量子コンピュータ、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、量子シミュレータなどの先進的な計算ハードウェアプロバイダーと協業を進めています。
ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)、HSBC、Samsung、インテーザ・サンパオロといった強力な投資家に支えられ、ワールドクラスの科学者・エンジニアチームが長年にわたり培ってきた量子コンピューティングの専門知識を基盤に、量子アプリケーション開発を変革する開発プラットフォームを提供しています。
Classiqをフォロー:
LinkedIn(https://www.linkedin.com/company/classiq-technologies/)
X(旧Twitterhttps://twitter.com/classiqtech)
YouTube(https://www.youtube.com/c/ClassiqTechnologies)
ClassiqのSlackコミュニティ(https://classiq-community.slack.com/)
ウェブサイト( https://ja.classiq.io/ )
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
- 種類
- その他
- ビジネスカテゴリ
- 証券・FX・投資信託アプリケーション・セキュリティ
- ダウンロード