第9回 ゼロマラリア賞は金子明・大阪公立大学大学院医学研究科 特任教授へ
マラリア根絶に向けた長年のフィールドワークが評価
特定非営利活動法人マラリア・ノーモア・ジャパン(東京都千代田区、代表理事:神余隆博)は、4月25日の世界マラリアデーに、第9回ゼロマラリア賞を金子明(かねこ あきら)・大阪公立大学大学院医学研究科特任教授へ贈ることを発表しました。これまでの過去37 年間にわたりインドネシア・北スマトラ島、ヴァヌアツ島嶼、パプアニューギニア、マラウイ、ザンジバール、ケニア・ビクトリア湖畔などにおいて現地に根付いたゼロマラリアのためのフィールド研究が高く評価されました。
受賞に当たり、金子さんからは、「持続するマラリア伝播の背景に何があるのか、コロナ後の世界においてマラリア撲滅を加速させるべく、今回の受賞に際して今一度問い直したいと思います」とのコメントを受けました。
日本で唯一のマラリアに特化した市民社会組織であるマラリア・ノーモア・ジャパンでは、ゼロマラリア賞を通じて、より多くの方が、マラリアや感染症について関心を持ち、アクションを起こすきっかけになればと考えています。
ゼロマラリア賞とは
「2030年までにゼロマラリアを達成する」という国際社会の目標に寄与する活動に取り組む、あらゆる分野の個人、団体を対象に、表彰しています。2014年の開始以来、公益社団法人日本青年会議所の蚊帳配布キャンペーン(2014年)、マラリア研究を行う個人の研究者(2015年、2016年)、沖縄におけるマラリア制圧の取り組みの記録を残した著者及び出版社へ(2017年)、蚊に関する創作落語の上演(2018年)、アジア・メディカル・イノベーション・コンソーシアム(AMIC)マラリア部会(2019年)、國井修・グローバルファンド戦略・投資・効果局長(2020年)、斉藤美加・琉球大学医学研究科・助教、NGOチームがじゃん代表(2021年)へと、支援事業や研究にとどまらず、様々な立場からのゼロマラリアへの貢献を評価し、表彰しています。詳細は以下をご参照ください。
金子明氏のコメント全文
「今から38年前、バンコクに勉強しに行った時から常にマラリアを意識しつつ生きてきたものとして、この度第9回ゼロマラリア賞を頂くことは大変光栄であるとともに嬉しく思います。この間、私は常にマラリア流行地現地からみて来ました。末端のコミュニティはモノに関しては大変豊かになりました。1955 年に開始された世界マラリア根絶計画は「マラリアに魔法の弾丸はない」という教訓を残し1969 年に幕を閉じました。それは今なお生きていると感じます。持続するマラリア伝播の背景に何があるのか、コロナ後の世界においてマラリア撲滅を加速させるべく、今回の受賞に際して今一度問い直したいと思います。」
金子 明(かねこ・あきら)略歴
東京都出身、筑波大学付属駒場高校卒。1982年弘前大学医学部卒業後、東京警察病院における臨床研修を経て弘前大学医学部寄生虫学教室入門。1984年マヒドール大学において熱帯医学・衛生学Diploma(DTM&H)取得。1985-1987年インドネシア・北スマトラJICAマラリア専門家。1987-1994年南西太平洋ヴァヌアツWHO Malariologist。1995年弘前大学で医学博士、1999年カロリンスカ研究所でPhDの学位取得。東京女子医大国際環境・熱帯医学教室助教授、カロリンスカ研究所研究員として、マラウイ、ケニア、ザンジバール、カンボジア、パプアニューギニア、ヴァヌアツ等においてマラリア研究を展開。2006年長崎大学熱帯医学研究所客員教授。2010大阪市立大学教授(寄生虫学)。2011年よりカロリンスカ研究所教授( Global Health)。2012 年以来ケニア・ビクトリア湖地域において、熱研と「マラリア流行はなぜ続くのか?」を問う共同研究。2020年より当地においてJICA/AMED による地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム事業(SATREPS)研究代表として新たな挑戦を始めている。2022年大阪市立大学名誉教授。
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ゼロマラリア賞とは
マラリア制圧のために取り組む個人、団体を表彰するもの。具体的な支援事業の実施に留まらず調査研究、情報発信、またマラリアという言葉の認知率向上のためのアイデア作りなどに取り組む個人など、マラリアに関わるあらゆる分野の個人、団体を対象に、2014年に認定NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンによって設立されました。
- 第1回(2014年度)受賞者 公益社団法人日本青年会議所 長年の国際青年会議所による蚊帳をアフリカの子どもに送るキャンペーン「Nothing But Nets」に協力する活動が評価
- 第2回(2015年度)受賞者 川本文彦・大分大学名誉教授 アクリジンオレンジ染色顕微鏡検査法の開発、並びにマラリアとG6PD欠損症の分子疫学的研究で世界的にも有名な研究者の研究に対して
- 第3回(2016年度)受賞者 小林潤・琉球大学教授 長年ラオスでの活動を実施などアジアでの活動に対して
- 第4回(2017年度)受賞者 南山舎による南風原英育著「マラリア撲滅への挑戦者たち」出版活動 日本で最後まで残った所謂「戦争マラリア」およびその後のマラリア制圧の沖縄県での取り組みを丹念に取り上げ、戦争マラリアの実態を紹介した書籍『マラリア撲滅への挑戦者たち』の出版活動に対して
- 第5回(2018年度)受賞者 桂歌助・落語家 狂言「蚊相撲」をヒントに作られた、創作落語「蚊相撲」を通じて、マラリアや蚊が運ぶ病気について、エンターテインメントから情報発信を行ったことに対して。
- 第6回(2019年度)受賞 アジア・メディカル・イノベーション・コンソーシアム(AMIC)マラリア部会 同会でこれまで推進されてきたアジアおよびアフリカ地域におけるマラリア制圧のための産官学民が連携した具体的な取り組みに対して。
- 第7回(2020年度)受賞 國井修・グローバルファンド戦略・投資・効果局長 これまでの感染症対策・事業への長年の貢献に対して。
- 第8回(2021年度)受賞 斉藤美加・琉球大学医学研究科・助教、NGOチームがじゃん代表 八重山からマラリアが一掃されてから60年周年 マラリア排除の偉業を伝える試みが評価されて。
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