教職員アンケート結果を公開!「学習指導要領の内容、精選するとしたら?」
学習指導要領の内容量について「多い」「やや多い」と感じている割合が高い値に。実用性の低下した内容や準備負担の大きい活動について見直しを求める意見など、多くの提案が寄せられた。

学習指導要領、学習指導要領解説、検定教科書によって、学校の授業時数が大まかに決められるなか、子どもにとっても教員にとっても時間数の負担が大きいという声が聞かれます。
2024年7月~8月にSchool Voice Projectが行った授業の持ちコマ数に関するアンケート調査では2023年の調査と同様に、校種に関わらず、多くの先生がコマ数の多さに負担を感じている現状が明らかになりました。
アンケート結果:授業の持ちコマ数、週いくつが妥当?(2024年ver.)
この現状を踏まえ、もし学習指導要領の内容を精選するとしたら、どのようなやり方が考えられるでしょうか。今回のテーマは教職員の関心が特に高く、募集期間を延長した結果、全国から小学校306件、中学校85件、高等学校39件の延べ430件もの貴重な声が寄せられました。それぞれの校種ごとに、教職員が考える学習指導要領の内容精選についての意見をご紹介します。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年12月6日(金)~2025年2月24日(月・祝)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :418件
アンケート結果
Q1. あなたの通常業務に関係のある学習指導要領を選択してください。
(例:特別支援学校中等部 → 中学校および特別支援学校を選択)(複数選択可)

アンケート回答者は小学校に関わる教職員が最も多く306人、次いで中学校が85人、高等学校が39人、特別支援学校が13人となっています。
Q2. 【小学校】あなたが授業をしている教科・科目についてお聞きします。現行の学習指導要領の内容量についてどのように感じていますか?
※担当していない教科・科目は「担当していない」を選択してください。


小学校では多くの教科で「多い」「やや多い」という回答が目立ちました。
「多い」「やや多い」回答割合は外国語(83%)、国語(81%)、算数(78%)、道徳・社会(各73%)、総合(72%)の順で高くなっています。
「ちょうどよい」の回答割合は、生活(55%)、音楽・特別活動(各49%)、図画工作(47%)が比較的高くなっており、「やや少ない・少ない」の回答割合は、特別活動(13%)以外、全ての教科で6%を下回る数字にとどまりました。
Q3. 【中学校】あなたが授業をしている教科・科目についてお聞きします。現行の学習指導要領の内容量についてどのように感じていますか?
※担当していない教科・科目は「担当していない」を選択してください。

中学校では小学校と同様に多くの教科で「多い」「やや多い」という回答が目立ちました。
「多い」「やや多い」回答割合は小学校に比べてさらに高い傾向にあり、回答者数が10人以上の教科の中で比較すると、外国語(100%)、社会(88%)、国語(78%)、理科(77%)、道徳(76%)、数学(63%)、総合・特別活動(各60%)の順で高くなっています。特に外国語は、回答者15人のうち11人が「多い」、4人が「やや多い」と答え、小学校の外国語と同様、非常に多くの割合の方が「多い」「やや多い」と回答しました。
ほかに注目すべきは「特別活動」で、小学校では「多い」「やや多い」が38%にとどまっていたのに対し、中学校では66%と大幅に増加しており、校種間で大きな認識の差が見られます。これは中学校での行事や生徒会活動の負担が相対的に大きいことを示唆しています。
「ちょうどよい」の回答割合は、数学・特別活動(各32%)、総合(31%)が比較的高くなっていますが、小学校の「ちょうどよい」回答に比べると全体的に低い傾向にあります。
「やや少ない・少ない」の回答割合は、小学校と同様に全体的に低く、特別活動・総合(各9%)以外は6%以下となっています。中学校教員の多くは、現行の学習指導要領の内容量が「多い」と感じていることがわかります。
Q4. 【高等学校】あなたが授業をしている教科・科目についてお聞きします。現行の学習指導要領の内容量についてどのように感じていますか?
※担当していない教科・科目は「担当していない」を選択してください。

高等学校は回答者数が全体的に少なく、回答10人以上の科目が国語・数学・総合・特別活動の4つのみのため、単純比較はできない部分はありますが、特に特別活動において他校種と異なった傾向が見られました。
具体的には、中学校で「多い」「やや多い」が60%となっていた特別活動は、高校では「ちょうどよい」が52%となっています。
10人以上の回答があった他の教科(国語・数学・総合)については、相対的に「多い」より「やや多い」を選ぶ回答が多かった点以外は、おおむね同様の傾向となりました。
まとめ
今回のアンケート調査結果では、学習指導要領の内容量について「多い」「やや多い」と感じている割合が、小学校では教科によって50%~80%超、中学校では60%~100%と高い値を示しました。特に小学校では国語(81%)、外国語(82%)、算数(78%)で、中学校では外国語(100%)、社会(88%)、国語(78%)、理科(77%)、道徳(76%)で「多い・やや多い」の回答が顕著でした。
校種間で特徴的な違いも見られました。特別活動については、小学校では「多い」「やや多い」が38%だったのに対し、中学校では60%と大幅に増加。一方、高等学校では「ちょうどよい」が52%と状況が逆転しています。これは中学校での行事や生徒会活動の負担が相対的に大きい可能性を示しています。
「もし内容を精選するとしたら」という問いに対しては、校種を超えて、総合的な学習(探究)の時間の削減を求める声が多く見られました。多くの教員が理念自体は理解しているものの、実施のための準備や外部との調整に多大な労力がかかることや、学校や教員によって取り組みの質に大きな差が生じやすいことを課題として挙げています。
また、実用性の低下した内容や準備負担の大きい活動について見直しを求める意見もあります。小学校ではそろばんや毛筆など時代にそぐわなくなった内容や水泳指導の削減、中学校では道徳の教科化見直しや仮定法などの英文法の高校への再移行、高等学校では情報科の内容精選や理科の内容整理を求める声が目立ちました。
さらに、授業時数や授業形態そのものの見直しについても多くの提案がありました。標準授業時数の上限設定や、45分授業への変更、午前中だけで授業が終わるような時数設定など、教員の働き方改革や児童生徒の負担軽減につながる具体的な提案が寄せられました。
今後も、School Voice Projectではこうした声を集め、制度や教育現場の改善につながるよう提案を続けていきます。
※WEBメディア「メガホン」の記事( https://megaphone.school-voice-pj.org/2025/03/post-5959/ )より、お自由記述での意見の内容がご覧いただけます。また全回答がデータもDLしていただけます。
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