BPO、2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見を通知 公表
放送倫理・番組向上機構[BPO] の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」(委員会決定 第25号)をまとめ、2017年2月7日、記者会見して公表した。
Ⅰ はじめに
選挙権年齢を18歳に引き下げ、「合区」が導入された初めての参議院議員選挙について、「全体の放送量が前回の参院選に比べて2割とも3割ともいわれるほど減少した」との活字メディアの指摘や、東京都知事選挙について、「番組のほとんどが一部の立候補者を中心とするもので、そのほかの立候補者との間で公平を欠いていた」との意見などがBPOに寄せられた。このため委員会は、2016年に行われた参議院議員選挙と東京都知事選挙に焦点を絞って典型例と考えられる相当数の番組を視聴した上で、選挙に関して放送が担うべき職責と使命について議論を重ね、あらためて意見を述べることにした。
Ⅱ 選挙と放送
「政治的に公平であること」などを定めている放送法第4条第1項各号の番組編集準則は、政府が放送内容について干渉する根拠となる「法規範」ではなく、放送事業者が自律的に守る「倫理規範」である。そして、公職選挙法第151条の3と5の規定は、放送局には「選挙に関する報道と評論」を放送法の規定に従って編集する自由があることを確認している。つまり、放送局には「選挙に関する報道と評論の自由」がある。そして、テレビ放送の選挙に関する報道と評論に求められているのは、政見・経歴放送のような「量的公平」ではなく、政策の内容や問題点など有権者の選択に必要な情報を伝えるために、取材で知り得た事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をするという「質的公平」である。
Ⅲ 2016年の選挙に関する放送
2016年に行われた選挙に関する放送で、委員会が議論の対象にしたさまざまな番組がある。
1 参議院比例代表選挙に関する放送
2 東京都知事選挙に関する放送
3 不注意による「映り込み」と「再放送」
委員会は、いずれの番組も放送倫理違反にはあたらないと判断した。ただ「3」の不注意に関しては、いずれも選挙に関する報道や評論をする意図は全くないままに、選挙の公平・公正性の観点から、本来ならば厳重に確認すべき事柄を確認しなかったという不注意によって放送された。放送局の自律によって放送の自由を守ろうとしているにもかかわらず、放送局が自ら定めた基準を自ら遵守できなければ、放送法が定める放送の自律は侵食され、放送の自由に対する脅威ともなりうる。それにもかかわらず、今回も自ら定めた選挙に関するルールが守られないケースがあったことはまことに残念だと言わざるをえない。
Ⅳ おわりに ~ 選挙に関する豊かな放送のために
放送局は、正確な情報を歪めることなく編集して放送し、またこれらの事実を踏まえた評論も、視聴者・有権者の政治選択にとって重要と考えられる点を漏らすことなく取り上げ、有権者に多様な立場からの多様な見方を提示するものとなるように心がける必要がある。政党や立候補者の主張にその基礎となる事実についての誤りが無いかどうかをチェックすることは、マスメディアの基本的な任務だ。また、政党・政治団体や立候補者の政策については、選挙期間中であっても、その問題点を的確に指摘し国民に提示することが求められる。これらはいずれも、選挙を通じて国民の意思を表明するという民主主義の過程を活かすために、放送現場のジャーナリストに求められる職責であり使命である。
この観点から現在の選挙に関する放送を視聴すると、選挙期間中に真の争点に焦点を合わせて、各政党・立候補者の主張の違いとその評価を浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たないことは残念と言わざるをえない。
2017年も、有権者に日本の将来を決定づける重要な選択を迫る選挙が予想される。放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされるよう期待したい。
http://www.bpo.gr.jp/?p=8941&meta_key=2016
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
■ 放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的と
した非営利・非政府の団体。言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送
への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、
以下の三委員会から構成される。
委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:
濱田 純一
URL:
http://www.bpo.gr.jp/
選挙権年齢を18歳に引き下げ、「合区」が導入された初めての参議院議員選挙について、「全体の放送量が前回の参院選に比べて2割とも3割ともいわれるほど減少した」との活字メディアの指摘や、東京都知事選挙について、「番組のほとんどが一部の立候補者を中心とするもので、そのほかの立候補者との間で公平を欠いていた」との意見などがBPOに寄せられた。このため委員会は、2016年に行われた参議院議員選挙と東京都知事選挙に焦点を絞って典型例と考えられる相当数の番組を視聴した上で、選挙に関して放送が担うべき職責と使命について議論を重ね、あらためて意見を述べることにした。
Ⅱ 選挙と放送
「政治的に公平であること」などを定めている放送法第4条第1項各号の番組編集準則は、政府が放送内容について干渉する根拠となる「法規範」ではなく、放送事業者が自律的に守る「倫理規範」である。そして、公職選挙法第151条の3と5の規定は、放送局には「選挙に関する報道と評論」を放送法の規定に従って編集する自由があることを確認している。つまり、放送局には「選挙に関する報道と評論の自由」がある。そして、テレビ放送の選挙に関する報道と評論に求められているのは、政見・経歴放送のような「量的公平」ではなく、政策の内容や問題点など有権者の選択に必要な情報を伝えるために、取材で知り得た事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をするという「質的公平」である。
Ⅲ 2016年の選挙に関する放送
2016年に行われた選挙に関する放送で、委員会が議論の対象にしたさまざまな番組がある。
1 参議院比例代表選挙に関する放送
2 東京都知事選挙に関する放送
3 不注意による「映り込み」と「再放送」
委員会は、いずれの番組も放送倫理違反にはあたらないと判断した。ただ「3」の不注意に関しては、いずれも選挙に関する報道や評論をする意図は全くないままに、選挙の公平・公正性の観点から、本来ならば厳重に確認すべき事柄を確認しなかったという不注意によって放送された。放送局の自律によって放送の自由を守ろうとしているにもかかわらず、放送局が自ら定めた基準を自ら遵守できなければ、放送法が定める放送の自律は侵食され、放送の自由に対する脅威ともなりうる。それにもかかわらず、今回も自ら定めた選挙に関するルールが守られないケースがあったことはまことに残念だと言わざるをえない。
Ⅳ おわりに ~ 選挙に関する豊かな放送のために
放送局は、正確な情報を歪めることなく編集して放送し、またこれらの事実を踏まえた評論も、視聴者・有権者の政治選択にとって重要と考えられる点を漏らすことなく取り上げ、有権者に多様な立場からの多様な見方を提示するものとなるように心がける必要がある。政党や立候補者の主張にその基礎となる事実についての誤りが無いかどうかをチェックすることは、マスメディアの基本的な任務だ。また、政党・政治団体や立候補者の政策については、選挙期間中であっても、その問題点を的確に指摘し国民に提示することが求められる。これらはいずれも、選挙を通じて国民の意思を表明するという民主主義の過程を活かすために、放送現場のジャーナリストに求められる職責であり使命である。
この観点から現在の選挙に関する放送を視聴すると、選挙期間中に真の争点に焦点を合わせて、各政党・立候補者の主張の違いとその評価を浮き彫りにする挑戦的な番組が目立たないことは残念と言わざるをえない。
2017年も、有権者に日本の将来を決定づける重要な選択を迫る選挙が予想される。放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされるよう期待したい。
■委員会決定の全文はこちら
http://www.bpo.gr.jp/?p=8941&meta_key=2016
<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903
■ 放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的と
した非営利・非政府の団体。言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送
への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、
以下の三委員会から構成される。
委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:
濱田 純一
URL:
http://www.bpo.gr.jp/
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