「におい」を「色」で表す 新たな客観・定量的な指標作りへ
においから連想される「色」を予測できる新たなモデルを開発しました
私たちが感じる視覚や嗅覚など様々な感覚にはそれぞれ結びつきがあります。赤く着色した白ワインを本物の赤ワインと評価してしまうことがあるように、「視覚」から「嗅覚」には強い影響があることが分かっていますが、「嗅覚」が他の感覚に与える影響は実はあまりよく分かっていません。「嗅覚」は特に個人感覚のバラつきが大きく、客観的、定量的に計測できないため、影響の評価が難しいからです。田村研究室は人がにおいを感じた時に連想する色とその背景にある言語的なイメージとの結びつきについて実験を行ってデータを分析。いくつかのにおいにおいて「食べられそう」「覚醒度」という評価が特定の色の連想に結びつくことを明らかにしました。この研究から、人が感じるにおいと連想色を結びつける評価モデルを提案することができ、私たちがふだん、何となくにおいを嗅いでイメージする色について規則性を解明して予測できる可能性があります。また、においが見た目の印象や視覚に与える影響を解明できる第一歩につながります。研究について取材頂けましたら幸いです。よろしくお願いいたします。
「におい」の感覚を客観的に共有できる?
「におい」を客観的な表現や指標で他者に伝えることができますか?色や明るさ、音の大きさや高低などの数値化できるデータがある視覚や聴覚と異なり、においは個人による感じ方のバラつきが大きく、感覚を共有できる客観的な指標がありません。一般的ににおいの感覚共有には言葉を使いますが、様々な種類のにおいを形容する言葉には無数のバリエーションがあります。また、言葉で表現できないものもあり、全てのにおいの感覚を言語で共有することはできません。においの感覚をどう客観化、定量化するか?田村研究室はにおいの評価軸に定量化した「色」を用いることを提案。このために、においから連想する色の指標作りを目指しています。
評価方法 におい×言語評価×色
においを色で客観・定量化するためには、においと連想する色のイメージにどのような関係性があるのか?を解明したモデル構築が求められます。この研究は被験者に13種類の匂いを嗅いでもらい、そのにおいを5つの言語表現指標で評価してもらいました(「強さ」「快」「親密度」「可食性」「覚醒度」)。また、においからイメージする「色」をそれぞれ別に評価しました。2つの評価を組み合わせ、被験者がにおいを認知するプロセスの中で、においをどのような言語評価と結び付けているのか。同時に、なぜそのにおいから色を連想したかを探りました。これによってにおいと連想色の関係の間に言語評価軸を持たせることができます。以上のデータから、個人でばらつきのある「においにどういう色印象を持つか」ということについて、予測モデルを構築しました。
食べられそうなにおいは「赤」「黄色」っぽい?においと色の相関が明らかに
田村研究室は被験者から得られたデータについて階層ベイズマルチ分析を実施。それぞれの要素について相関を調べたところ、13のにおいの中で3つのにおいではEdibility(可食性)という言語評価が赤っぽい色と相関していることが分かりました。また、Edibilityについては他の5つのにおいで黄色っぽい色と相関していることが分かりました。さらに、Arousal(覚醒)という言語評価は2つのにおいで黄色っぽい色と相関がありました。被験者が感じるにおいの「強さ」は色の明るさと関連していることも明らかになりました。このモデルを基にすることで普段私たちが何となくにおいを嗅いでイメージする「色」について規則性を解明し、予測することができるかもしれません。研究の今後にも注目ください。
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