高圧電源内蔵のTHz波検出モジュールの量産化に成功

世界初の技術でTHz波研究を加速 今春より受注開始

浜松ホトニクス株式会社

当社は、長年培ってきた光電子増倍管(以下、PMT)やイメージインテンシファイア(以下、I.I.)の技術と新開発のメタサーフェス技術を応用し、テラヘルツ(以下、THz)波パルスを室温で高速、高感度に検出できる高圧電源内蔵のTHz波検出器として「THz PMTモジュール」と「THz I.I.」の2種類を開発し、量産化に成功しました。

両製品は電界電子放出技術(※1)をTHz波検出に応用した世界初のモジュールであり、ほかにはないユニークな特性を有しているため、創薬や分析、半導体、非破壊検査などへの応用に向けたTHz波の基礎研究や応用研究がより加速すると期待されます。

 両製品は、国内外の大学や研究機関に向け、THz PMT モジュールは3月14日(金)、THz I.I.は4月14日(月)から受注を開始します。また、3月14日(金)から17日(月)までの4日間、東京理科大学野田キャンパス(千葉県野田市)で開催される「第72回 応用物理学会 春季学術講演会」にて出展、口頭発表を行います。

※1 電界電子放出技術:物体表面に強い電界が加わることでポテンシャル障壁が薄くなり,トンネル効果によって電子が外部へ放出される現象のこと

<製品の概要>

THz PMTモジュールとTHz I.I.の両製品は、THz波-電子変換にメタサーフェスを活用した、THz波領域に感度を有するTHz波検出モジュールです。従来のPMTやI.I.に搭載されている光を電子に変換する光電面を、新技術である電界電子放出を原理としたメタサーフェスに置き換えることで、フォトンエネルギーが低く検出が難しいTHz波の検出に成功しました。

従来の光電面は、外部光電効果(※2)の原理を用いているため、検出できる光の波長域は紫外光から近赤外光までの範囲となり、より長波長でフォトンエネルギーが低い光であるTHz波の検出は困難です。そこで、当社はデンマーク工科大学とともに、THz波に共鳴する微小なアンテナを利用した電界電子放出技術としてメタサーフェスの共同研究(※3)を進めてきました。

今回、THz波-電子変換部であるメタサーフェスの新規技術と、当社のコア技術であるアルカリ金属の成膜技術を融合することで、メタサーフェスの機能層の成膜技術を確立しました。これにより、THz波検出モジュールであるTHz PMTモジュールとTHz I.I.の開発、量産化に成功しました。また、開発した検出器の評価を行うために理化学研究所と共同研究(※4)を行い、波長可変THz波光源(injection-seeded THz-wave parametric generator : is-TPG)の技術を導入することで、同検出モジュールの各種特性を正確に評価する技術も確立しました。

THz PMTモジュールは、駆動回路や高圧電源を内蔵しており、パソコンにUSB接続するだけで簡単に使用できます。また、入射するTHz波強度に対して出力電流信号が非常に大きく変化するため、THz波の微小な変化を高感度に検出可能です。

 THz I.I.は、THz波ビームの形状や集光点を手元で簡単に観察できます。コンパクトな筐体のため狭い光学系の間にも直接挿入することが可能であり、さらに最大で毎秒1,000フレームの高速撮像により、従来の熱型のTHz波カメラでは捉えることが難しい高速現象を撮像可能です。

※2 外部光電効果:真空中の金属や半導体に光を当てたとき表面から真空中に電子が放出される現象。

このとき電子が放出されるには、光が一定以上のエネルギーを持つ必要がある。

※3 デンマーク工科大学のProf. Dr. Peter Uhd Jepsen, Asst. Prof. Dr. Simon Jappe Lange, Postdoctoral Researcher Dr. Tobias Olaf Buchmann, Postdoctoral Researcher Dr. Matej Sebekと共同研究を行った。

※4 理化学研究所・光量子工学研究センター・テラヘルツ光源研究チームの南出泰亜チームリーダー、瀧田佑馬研究員と共同研究を行った。

THz PMTモジュールの使用イメージ
THz I.I.を用いたTHz波ビームの観察

ユニークな特性を持つ新しいタイプのTHz波検出モジュールの開発、量産化に成功したことで、創薬や分析、半導体、非破壊検査などへの応用に向けたTHz波の基礎研究や応用研究がより加速すると期待されます。

今後、さらなる高感度化に向けた開発を進めるとともに、応用の拡大を目指します。

<開発の背景>

光と電波の両方の性質を持つTHz波は、光の直進性と電波の透過性を兼ね備えていることなど、ほかの波長領域にはないユニークな特徴を持つことから、これを生かした研究や産業応用に向けた開発が進められています。しかし、THz波技術の社会実装には多くの課題があります。その中の一つが検出器の選択肢の少なさにあります。

当社はこの課題を解決するために新しい原理、今までにない特性の検出器が必要だと考え、開発に着手しました。また、THz波技術を社会実装するためには、高い性能のみならず使い勝手やコスト、メンテナンス性などが重要です。このため当社は、早期のTHz波技術の社会実装を目指し新しい原理、特性のTHz波検出器の技術開発に取り組んできました。

<主な仕様>

●製品価格(税込) 

 THz PMTモジュール:2,200,000円

 THz I.I.:3,300,000円

 電源非内蔵型THz PMT:1,800,000円

 THz I.I.用電源:220,000円

●販売目標台数

  初年度5台/年、3年後累計20台

THz PMTモジュール(左)とTHz I.I.(右)

<この件に関するお問い合わせ先>

■報道関係の方 浜松ホトニクス株式会社 コーポレートコミュニケーション部 野末迪隆

〒430-8587 浜松市中央区砂山町325-6 日本生命浜松駅前ビル

TEL:053-452-2141 FAX:053-456-7888 E-mail: nozue-m@hq.hpk.co.jp

時間外は、携帯電話080-8262-0374へお願いします

■一般の方 浜松ホトニクス株式会社 電子管事業部電子管営業推進部 山中孝彦

〒438-0193 静岡県磐田市下神増314番地の5

TEL: 0539-62-5245 FAX: 0539-62-2205 E-mail: takahiko.yamanaka@crl.hpk.co.jp

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会社概要

浜松ホトニクス株式会社

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URL
https://www.hamamatsu.com/jp/ja.html
業種
製造業
本社所在地
静岡県浜松市中央区砂山町325-6
電話番号
053-452-2141
代表者名
丸野 正
上場
東証プライム
資本金
350億9500万円
設立
1953年09月