老化に向かう引き金は「GDF11の減少」だった
GDF11が皮膚の細胞で加齢によるさまざまな変化を食い止めることを解明
1. 複数種の細胞において、「GDF11(補足資料1)」の減少は、皮膚老化に結び付くさまざまな変化を引き起こす
2. 植物エキスのGDF11発現促進作用
本知見の一部は、2023年3月25~28日に開催された日本薬学会第143年会にて発表されました。
皮膚の老化について
皮膚が老化すると、乾燥、シワ、たるみ、シミなどの年齢サインが現れます。従来の研究ではこれらの現象一つ一つに対して個別に要因を探ることが主流でした。しかし、実際はこれらが並行して起こります。そのため、皮膚老化に広く影響し、年齢サインを予防する因子について知ることが重要と考えました。ポーラ化成工業では、さまざまな皮膚細胞において若返りにつながる作用が知られている「GDF11」に着目しました。GDF11は加齢によって減少することが知られていますが、実際に減少した場合の皮膚への影響は明らかにされていませんでした。そこで複数種の皮膚細胞においてGDF11減少の影響を明らかにすることで、さまざまな皮膚老化を引き起こしている可能性を検証することとしました。
GDF11の減少が皮膚老化の一因だった
皮膚を構成する主な細胞3種(表皮細胞、メラノサイト、線維芽細胞)において、それぞれGDF11遺伝子の発現量を人為的に減らしたところ、保湿やハリに関わる遺伝子の発現が低下し、一方で、ハリの低下をもたらす遺伝子の発現やシミのもととなるメラニン色素の産生量が増えることが分かりました(図1、補足資料2, 3, 4)。これにより、GDF11の減少はさまざまな皮膚老化の引き金となることが示唆されました。
GDF11の発現を増やすエキスを発見
各細胞においてGDF11発現量を増やすことができれば、複数の皮膚老化の予防につながると考えられます。そこで皮膚を構成する細胞3種にさまざまなエキスを添加し、GDF11の発現量を増加させるものを探索した結果、ハスカップエキスおよびローズヒップエキスにその作用を発見しました(図2)。
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【補足資料1】 GDF11とは
GDF11とは、Growth Differentiation Factor 11の略です。成長分化因子の一種で、皮膚老化の改善につながる作用が知られていることから、美容医療でも用いられています。その他、加齢による心肥大を改善する作用や、神経細胞を再生し機能を回復させる作用なども報告されています。
【補足資料2】 表皮細胞におけるGDF11減少の影響(うるおい低下につながる変化)
皮膚表面の表皮角層を形成している表皮細胞においてGDF11遺伝子の発現量を人為的に減少させる(※1)と、角層のうるおい保持に重要なタンパク質、フィラグリン(※2)の遺伝子発現量が減少しました(図3)。
これにより、GDF11が減ることでうるおいを保つ力が弱まると考えられます。なお、乾燥は小ジワの形成などにつながることが分かっています。
※1 siRNAの導入による
※2 天然保湿因子(NMF)のもと
【補足資料3】 メラノサイトにおけるGDF11減少の影響(シミ形成につながる変化)
メラニン色素を作る細胞、メラノサイトにおいてもGDF11遺伝子の発現量を人為的に減少させると、メラニン色素の産生量が増加しました(図4)。
これにより、GDF11の減少によりシミができやすくなる可能性が示唆されました。
【補足資料4】 線維芽細胞におけるGDF11減少の影響(ハリ低下、シワ・たるみ促進につながる変化)
線維芽細胞は、真皮内部のコラーゲン(※3)やエラスチン(※4)などの線維およびヒアルロン酸(※5)の合成や分解に関わり、皮膚のハリや弾力を保つ役割をしています。そこで線維芽細胞においてもGDF11遺伝子の発現量を人為的に減少させると、コラーゲン(図5a)、エラスチン(図5b)、ヒアルロン酸合成酵素(図5c)の遺伝子発現量が減ることが分かりました。一方で、コラーゲンを分解する酵素の遺伝子発現量は増加していました(図5d)。
これにより、GDF11が減ることで皮膚が弾力やハリを失い、ひいてはシワやたるみの引き金になっている可能性が示されました。
※3 皮膚の強度を保つ
※4皮膚の弾力を保つ
※5皮膚の水分を保つ
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