建築家・丹下健三の描いた都市設計から未来を考える 今治市の新たなまちづくり
~伊東豊雄氏をはじめ有名建築家たちが「世界のタンゲ」を語る「丹下健三顕彰シンポジウム」も開催~
愛媛県今治市は、「世界のタンゲ」こと建築家・丹下健三氏が幼少期を過ごした“ふるさと”であり、丹下氏の作品が集積する特別なまちです。
今治市では、これまで丹下氏の功績を顕彰する様々な取り組みを進めており、2024年12月には、日本を代表する建築家・伊東豊雄氏、藤森照信氏、大西真貴氏、豊川斎赫氏を招いて「丹下健三顕彰シンポジウム」を開催しました。このシンポジウムは、丹下氏が遺した都市設計の理念を再評価し、新たなまちづくりに向けたアイデアを考えることを目的に開かれたものです。
現在、本市では、市民と共に進める中心市街地の新たなまちづくりが加速しています。「世界のタンゲ」の理念と未来の都市機能との融合を目指す、今治市の新たなまちづくりへの挑戦にご注目ください。
【今治市中心部に集積する丹下建築作品】
今治市の未来を指し示す、丹下健三の描いた都市デザイン
■「世界のタンゲ」の建築作品が集積
「世界のタンゲ」こと故・丹下健三氏(1913年~2005年)は、広島平和記念公園や国立代々木競技場体育館など、数々の名作を手掛けた日本を代表する建築家です。幼少期を過ごした今治を“ふるさと”と呼んでいた丹下氏は、当時の今治市長で幼馴染だった田坂敬三郎氏の三顧の礼に応じて、今治市庁舎、今治市公会堂、今治市民会館を設計しました。これらの3作品は、今治の玄関口である今治港から一直線に伸びる大通り(広小路)の先に位置し、本市のシンボルとも言える存在となっています。丹下氏は今治市名誉市民にも選ばれており、没後20年が経過しても、本市にとって誇るべき偉大な存在です。
丹下氏は、建築物を独立したものと考えず、常に都市デザインの構成物と捉えていました。都市の機能や動線、全体の景観を意識し、都市計画の中で建築物に役割を与え配置してきました。今治市庁舎、今治市公会堂、今治市民会館の建築群は、それを具現化した、丹下氏の未来への思いが詰まった作品群です。
本市はこれまで、丹下氏の功績を顕彰する様々な事業を実施してきました。2024年4月には、次世代にも丹下氏の功績を伝えるため、B&G財団の助成事業を活用して「マンガふるさとの偉人丹下健三」を制作し、市内の小学5年生に配布。また、マンガの原稿や関連資料の展示や講演会、子ども向けワークショップなどを開催し、丹下氏の功績を楽しく学べる取り組みを展開しています。
○マンガふるさとの偉人- 丹下健三 ~世界のタンゲと呼ばれた建築家~(オンライン版・今治市電子図書館)
丹下健三顕彰シンポジウム
■伊東豊雄氏ら日本を代表する建築家が語った「丹下健三の偉業」
2024年12月21日に今治市内で「丹下健三顕彰シンポジウム」が開催されました。このシンポジウムは、丹下氏の功績を再評価し、その建築の魅力を全国に向けて発信するとともに、本市の未来のまちづくりを考えることを目的に開かれたものです。伊東豊雄氏、藤森照信氏、大西麻貴氏、豊川斎赫氏という著名な建築家たちが「世界のタンゲ」を語る貴重な機会とあって、会場には県内外から300人以上が来場し、オンライン視聴者も200人を超えるなど、大きな注目が集まりました。
シンポジウムでは、まず、伊東氏による「丹下健三の偉業」と題した基調講演が行われ、丹下氏が日本建築界に残した足跡を振り返りました。
『回想・世界のタンゲ』
丹下氏を評して「建築家の間では“神様”みたいな人」と称えた伊東氏は、自身が学生時代に丹下氏の講義を受けたエピソードを披露。「ファッションが洗練されていた」と述懐しつつ、当時、間近に迫った東京オリンピックのため多忙を極めていた丹下氏が、大学に姿を見せる機会は滅多になかったと明かしました。
また、丹下研究室では、弟子たちが提案したアイデアを丹下氏が取捨選択するスタイルが取られていたことを挙げ、この方法によって日本建築界特有の「コンスタレーション(星座)」のような系譜が生み出され、他国には例がない継承文化が成立したと解説。丹下氏が弟子たちの意見を尊重しながらも、最終的な方向性を明確に示すリーダーシップを発揮していたと語り、その存在が日本建築界を飛躍させる原動力になったと評価しました。
『丹下健三の三大傑作』
さらに伊東氏は、丹下氏の代表作として「広島平和記念公園」「香川県庁舎」「国立代々木競技場体育館」の三つを挙げ、それぞれの意義に言及しました。
広島平和記念公園は、戦後復興の象徴として、軸線の力強さを通じて再生への希望を建築で表現した重要な作品だと解説。香川県庁舎では、公共建築が市民に開かれるべきという新しい理念を反映し、庭園やピロティ、屋上などが、市民が自由に利用できる空間として設計された点を評価。そして、代々木体育館は、革新的な構造美と曲線のデザインが世界的な賞賛を受け、伊東氏も「これほど美しい建築を見たことがない」と、その技術と芸術性が後世に多大な影響を与えたと語りました。
■「丹下建築から未来のまちづくりを考える」―建築家たちの貴重なディスカッション
パネルディスカッションには、伊東氏に加え、藤森氏、大西氏がパネリストとして登壇。豊川氏がコーディネーターを務め、「建築家と原風景」「異文化との遭遇」「都市と建築」という三つのテーマを軸に、丹下氏の建築思想や本市における未来のまちづくりについて、それぞれの視点から深い考察が交わされました。
『建築家と原風景』
建築家が育った原風景と建築作品との関係に着目した最初のテーマでは、まず藤森氏から、丹下氏が少年期を過ごした今治の海が、建築家としての造形の基礎となった可能性の指摘があり、特に、世界的にも稀な瀬戸内海の多島美や穏やかな波などの光景が、丹下氏が手掛けた建築の軸線構成や非対称デザインに影響を与えたのではないかと考察しました。
また、伊東氏も自身が幼少期を過ごした長野県の諏訪湖を挙げ「諏訪湖の移ろいゆく風景や現象を建築として表現したいという想いがあった」と、原風景と建築とのつながりについて言及しました。
『異文化との遭遇』
このテーマでは、丹下氏の建築が異文化との出会いを通じて進化を遂げた点に着目。豊川氏は、ル・コルビュジェのインドでのプロジェクトに触発された丹下氏が、その影響を今治市庁舎などの作品に反映させたことを解説し、1950年代以降の各年代を代表する丹下氏の建築が現存する今治市は、丹下建築の変遷をたどることができるユニークな都市であると紹介しました。
『建築と都市』
「都市設計から建築を考える」という丹下建築の原点に焦点を当てたこのテーマでは、大西氏が自身の京都での経験を振り返り、京都市立芸術大学の設計おいて京都の街の構成を考慮したことを紹介。続けて、今治の都市設計について、市庁舎、公会堂、市民会館の3つの建築が軸線を中心に美しく配置されていると賞賛。さらに、市庁舎前の広場が駐車場として利用されている現状に触れ、「芝生化や市民が集える空間への再整備が重要」と提案しました。
一方で伊東氏は、公共建築が点在している今治の現状を指摘。「市庁舎などを拠点に様々な施設を集約し、都市全体の人の流れを作るべきだ」と述べ、軸線に頼らずとも人を集めることでまちは活性化できると力説し、これからのまちづくりの方向性に一石を投じました。
日本を代表する建築家たちが共演したこのイベントに参加した人々からは、「建築家の視点やアイデンティティに触れることができた」「世界的な建築家から見た丹下健三の評価を聞けた」といった感想が寄せられたほか、「今の今治に必要なことが見えた」「今治の未来に向けて何をすべきか考える機会になった」など、今治のまちづくりへの視点が広がったとの評価もありました。
現在、本市では、丹下氏が設計した市庁舎をはじめとする施設の将来的な活用方法に加え、中心市街地全体を見据えた新たなまちづくりが進行中です。このシンポジウムを契機に、未来へ向けた本格的な挑戦が始まります。
○今治市政広報番組「i.i.imabari! 瀬戸内の新しい風 ~むすぶ×イマバリ!~」
今治のまちづくりの未来を考える丹下健三顕彰シンポジウム
市民とともに挑戦する中心市街地の新たなまちづくり
■市民会議から描くグランドデザイン
現在、今治市では、中心市街地の新たなまちづくりが加速しています。2024年11月30日に開催した「中心市街地まちづくり市民会議」には、市民、学生、専門家が一堂に会し、市民参加型の本格的な議論がキックオフしました。
会議では、高校生や大学生、地域プレイヤーなどのまちづくりに関する事例発表に続いて、本市から「今治市中心市街地グランドデザイン」の素案を提示しました。2022年から多様なまちづくり関係者との意見交換をスタートした本市では、その成果をもとに中心市街地まちづくり構想を作成。さらに、市民委員も参加するデザイン会議でグランドデザインの検討を重ねており、今回公開した素案を市民とのオープンな意見交換を通じて磨き上げていきたいと考えています。
その出発点となる今回の市民会議は、中心市街地の魅力向上へ向けて参加者から多様な意見が上がるなど、新しいグランドデザインを市民とともに作り上げる有意義な議論の場となりました。
○今治市政広報番組 「i.i.imabari! 瀬戸内の新しい風 ~むすぶ×イマバリ!~」
中心市街地まちづくり市民会議
■市民の力がまちづくりを前進させる
本市では、「丹下健三顕彰シンポジウム」や「中心市街地まちづくり市民会議」などの開催を通じて、市民と共にまちづくりを進める機運を高めています。まちづくりにおいて最も重要なことは、市民が自ら未来のまちをイメージし、納得と共感をもとに、そのプロセスに積極的に関わることです。市民会議では、「自分たちの意見が政策に反映されることで、地域をより好きになり、魅力的なまちをつくりたいという気持ちが強くなった」といった声が多く聞かれました。こうした市民のエネルギーをさらに引き出し、行政と市民が一丸となって未来志向のまちづくりを推進していきます。
今治市中心地市街地の将来イメージ(案)
※このイメージは、中心市街地の目指すべき姿を示したものです。今後、関係者との協議、調整により変更となる可能性があります。
【関連サイト】
○今治市公式ホームページ
https://www.city.imabari.ehime.jp/
○今治市戦略的情報発信プロジェクト
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