シリコン量子コンピュータの実用化に向けた研究開発を加速

(左上から)imec・Arul Mahesh Jagadeesa Dasビジネス構築ディレクター、理化学研究所・中島峻上級研究員、日立製作所・量子プロジェクトリーダ 兼 技師長 水野弘之、(左下から)imec・Sofie Beyne量子プロジェクトマネージャー、理化学研究所・樽茶清悟チームディレクター、日立製作所・執行役常務 CTO 兼 研究開発グループ長 鮫嶋茂稔
日立は、国際的な共同研究を通じて、シリコン量子コンピュータ*1の実用化に向けた研究開発を加速し、材料開発や金融ポートフォリオ最適化、創薬など、従来のスーパーコンピュータでは困難だった複雑な計算課題の解決や、持続可能な社会の実現に向けた新産業創出に貢献していきます。
量子コンピュータは、材料開発や金融ポートフォリオ最適化など多様な分野での活用が期待されており、世界中で研究開発が加速しています。現在、量子コンピュータはさまざまな方式が提案されており、日立が研究開発を進めるシリコン量子コンピュータは、成熟技術である半導体技術を活用することができるため、量子ビットの大規模集積化に有利な方式として期待されています。一方で、単一電子を高精度で制御する量子ビット*2操作方式の確立や高純度シリコン同位体を使用した製造プロセス最適化など、実用化に向けた課題も残されています。
そのため、シリコン量子コンピュータの実用化には、単独の組織だけでなく、異なる強みを持つ国内外の研究機関や企業が連携し、知見や技術を共有・融合する「多様なパートナーシップ」と「オープンなエコシステムの構築」が不可欠となっています。
*1 シリコン量子コンピュータ: 半導体技術を活用し、量子ビットをシリコン基板上に集積する方式の量子コンピュータ
*2 量子ビット: 量子コンピュータの情報単位で、量子力学的な重ね合わせの原理に基づき、0状態と1状態の2値を表す従来の古典ビットより多様な状態を表現可能
■三者連携によるシリコン量子コンピュータ実用化に向けた研究開発の加速
こうした背景のもと、日立は、シリコン量子コンピューティング分野で世界的な研究業績のある理化学研究所(以下、理研)とナノエレクトロニクスやデジタル技術の世界的な研究イノベーション・ハブであるimecとグローバルなエコシステム構築に向けたMOU(基本合意書)を締結しました。日立はこれまで、ムーンショット型研究開発事業*3を活用した大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発において理研と共同研究を進めるとともに、世界的な半導体の開発拠点であるimecとも連携してきました。本MOUにより、日立、理研、imecの三者共同で各国の研究拠点や専門人材を活用したグローバルな研究開発ネットワークを構築し、シリコン量子コンピュータの実用化に向けた研究開発を加速します。
具体的には、理研の世界トップクラスのシリコンスピン制御技術*4と、imecが有する世界最先端の半導体微細加工設備やプロセス技術を組み合わせることで、量子ビットの高精度制御と大規模集積化を同時に実現し、量子コンピュータの大規模化や安定動作などの技術的課題の解決をめざします。さらに、日立が有する量子ビット制御回路、ソフトウェアなど量子コンピュータを構成する各要素の高度なインテグレーション技術を活用し、シリコン量子コンピュータの実用化および新産業創出に貢献していきます。
*3 ムーンショット型研究開発事業 目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現(プログラムディレクター: 北川勝浩)」の研究開発プロジェクト「大規模集積シリコン量子コンピュータの研究開発(プロジェクトマネージャー: 水野弘之)グラント番号 JPMJMS2065」
*4 シリコンスピン制御技術: シリコン中の電子スピンを高精度に制御する技術で、量子ビットの安定動作に不可欠
■日立製作所 執行役常務、CTO兼 研究開発グループ長 鮫嶋 茂稔のコメント
「日立は四半世紀にわたり、量子技術の基礎研究を行ってきました。今回、各々世界トップクラスの技術を持つ理研・imec・日立の三者による協力を通じて、最先端の量子物理学と半導体技術を融合し、シリコン量子コンピュータの実用化と社会実装を加速します。これにより、産業や社会のさまざまな課題解決や新たな価値創出に貢献し、持続可能な未来の実現をめざします。」
■理化学研究所 量子コンピュータ研究センター 半導体量子情報デバイス研究チーム 樽茶 清悟 チームディレクターのコメント
「半導体シリコンは、現代のエレクトロニクスを支える基盤であると同時に、量子コンピュータをはじめとする量子技術の分野においても、その重要性が注目されています。今後この分野を発展させていくためには、学術界と産業界の力を結集することが不可欠です。今回のMOU締結が、そのための重要な契機となることを期待しています。」
■imecフェロー 兼 量子コンピューティング・プログラム・ディレクターprogram director quantum computing fellow 兼 KU Leuven大教授 Prof. Kristiaan De Greveのコメント
「量子コンピューティングは現代における最大級のグランド・チャレンジであり事業機会でもあります。量子コンピューティングを実験室から現実の実用的世界へ導く事は、まさしくムーンショット的な挑戦であり、真に国際的な連携のもとに才能豊かな研究者を集結させる事が必要不可欠です。半導体量子ドットによる量子ビットはそのための有力候補であり、この分野で創成期から活躍する日本のベストチームのパートナーとなる事はimecにとって大変光栄です。」
■今後の展望
日立は、理研およびimecと連携して、2027年までに開発者や研究者が参加できる量子プラットフォーム*5の構築をめざし、シリコン量子コンピュータのクラウド公開*6を推進します。三者の強みを結集し、量子技術の社会実装に向けたグローバルなエコシステムの形成を加速していきます。今後もパートナー企業や研究機関と連携し、社会課題解決や持続可能な社会の実現に貢献していきます。
*5量子プラットフォーム: 量子コンピュータを活用したアプリケーション開発や研究が可能な共通基盤
*6 クラウド公開: インターネット経由で研究者や開発者が単一電子からなる量子ビットを実際に操作できるサービス
■関連情報
■照会先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
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