政府のプラごみ問題施策方針へのNGO共同提言
代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を
プラスチックの大量生産と熱回収を含む焼却処理では、地球温暖化を加速させるCO2を発生させます。また、紙製やバイオマス素材の代替品の使用を廃プラスチックのリデュース施策と位置付けてしまうと、代替品が過剰生産され、原材料栽培地への転換による原生林の伐採など、新たな環境問題を発生させる可能性があります。さらに、リサイクルは素材の品質や機能の低下を伴うものがほとんどであり、現状では資源として循環していません*。今後世界で4倍にまで増えると予想されるプラスチック生産の増加を放置したまま、熱回収や代替品の使用を推進していくのでは、深刻化するプラスチック汚染の解決策とはなり得ません。加えて漁業活動等、海域で使用するプラスチックの問題への更なる対応や、拘束力のある国際的な解決の枠組みを早急に発足させることも重要です。
そこで、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークのメンバー及び 賛同20団体は、以下の内容を「基本的方向性」に取り入れることを求めます。
- 総量を削減するための実効性のある政策の早期導入
- 容器包装分野における、リユースを基本とした仕組みの導入
- 拡大生産者責任制度の確立
- 代替品の位置づけ見直しと、持続可能性の確保
- 漁具等、海域で使用するプラスチックの管理施策の促進
- 法的拘束力のある国際協定締結の推進
以上
* 品質を落とさずにリサイクルされているのはプラスチック容器包装のうち世界でわずか2%と言われている(世界経済フォーラム、2016)
「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」
https://www.env.go.jp/council/03recycle/0902pra3.pdf
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環境大臣
内閣府特命担当大臣(原子力防災)
小泉 進次郎 殿
環境副大臣
笹川 博義 殿
2020年10月13日
「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」への共同提言
― 代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を ―
減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク
メンバー団体 (五十音順)
特定非営利活動法人 OWS
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
さがみはら環境問題研究会
一般社団法人 JEAN
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
全国川ごみネットワーク
特定非営利活動法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
公益財団法人 日本自然保護協会
公益財団法人 日本野鳥の会
特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス
特定非営利活動法人 プラスチックフリージャパン
容器包装の3Rを進める全国ネットワーク
賛同団体 (五十音順)
特定非営利活動法人 アーキペラゴ
小山の環境を考える市民の会
環境問題を考える会
とくしま自然観察の会
Hamaumi-浜松の海を守る会
ふるさと清掃運動会
特定非営利活動法人 プロジェクト保津川
山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト
令和2年9月1日、産業構造審議会 産業技術環境分科会 廃棄物・リサイクル小委員会 プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ、及び、中央環境審議会 循環型社会部会 プラスチック資源循環小委員会の合同会議により、「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」(以下、「基本的方向性」という)が示された。深刻なプラスチック汚染の問題が顕在化する中で、それを確実に解決できるような指針としていく必要がある。
日本で発生する廃プラスチックの量は、年間891万トンと世界で3番目に多いが、その内735万トン(82%)を、熱回収を含む温室効果ガスを発生させる焼却処理や、海外輸出、及び埋め立てに依存している*1。また、廃プラスチックの47%は、ほとんどが使い捨て用途の容器包装・コンテナ類(以下、「容器包装」)であるが*1、コロナ禍の状況下で、発生が増加傾向にある。容器包装を中心に、バージン材によるプラスチック製品の生産総量を大幅にリデュースすること、及び、それを可能とする社会システムを構築することが、喫緊の課題である。しかし基本的方向性では、「リデュースの徹底」といった言葉は使われているものの、実質的には、代替品利用とリサイクルの推進による、結果的な削減を見込んでいる。
上記を踏まえ、以下の通り循環型社会形成推進基本法で示された、
- 削減(リデュース)
- 再使用(リユース)
- 再生利用(リサイクル)
という廃棄物管理の基本的な優先順位に立ち返る必要がある。また、代替品の使用を廃プラスチックのリデュースと位置付けてしまうと、代替品が過剰生産され、原材料栽培地への転換による原生林の伐採、土壌の流出、貯蔵炭素の放出など、新たな環境問題を発生させる可能性がある。よって、代替品の使用は、リデュース、リユースが出来ない場合に、補完的な位置づけとして検討されるべきである。
また世界で最も広い範囲に海洋ごみが集中して漂う、日本の国土の4倍以上の広さの「太平洋ごみベルト」と言われる海域においては、ごみの総量の46%をプラスチック素材の 漁網が占めており、また、文字が認識できるごみの1/3に日本語が記載されていた*2。漁網等の漁具など海域より発生するものが、海洋プラスチックごみ全体の1から2割を占めており、漁具の流出抑制や回収、適正処理の促進も、優先度の高いプラスチック資源施策として含めるべきである。そして、国際的なプラスチック汚染問題を解決するための国際的な枠組みが存在しない状況下において、法的拘束力のある国際協定の締結に向けて、日本がリーダーシップを発揮していくことが強く期待されている。
ついては、減プラスチック社会を実現するNGOネットワークのメンバー及び賛同20団体は、以下の通り提言する。
1. 総量を削減するための実効性のある政策の早期導入
代替品への切替えを除いた、プラスチック製品の生産・流通総量のリデュース目標を設定した上で、レジ袋有料化に続けて、使い捨て用途のより幅広いプラスチック製品に対し、有料義務化や取り扱い禁止も含めた実効性のある具体的な政策を、早急に導入すること。
2. 容器包装分野における、リユースを基本とした仕組みの導入
使い捨てプラスチック容器包装モデルの代替として、BtoCの容器包装分野におけるリユースの仕組みの大規模導入を推進すること。なお、ここで述べる「リユース」には、詰め替え用パウチ製品のように、新たに使い捨てプラスチックを発生させるものは含まない。
3. 拡大生産者責任制度の確立
拡大生産者責任制度を全面的に導入し、事業者がライフサイクル全般(回収・リユース・リサイクル)にわたり責任を持ち、回収からリユース・リサイクルまでの全工程を確実に実施するよう義務付けること。
4. 代替品の位置づけ見直しと、持続可能性の確保
安易に代替品の使用を推進するのでなく、リデュースやリユース、リサイクルができないものについて、原料の持続可能性やリユースやリサイクルの可能性に十分配慮して導入すること。
5. 漁具等、海域で使用するプラスチックの管理施策の促進
漁具等の不適切な管理による海洋への流出を抑えるとともに、流出漁具の回収と適正な処理を推進するために、更なる政策を導入すること。
6. 法的拘束力のある国際協定締結の推進
海洋プラスチック問題の解決に向け、包括的で法的拘束力のある国際協定の枠組みを早期に発足させることを日本の政府が支持し、国連環境総会等の場で締結に向けた議論においてリーダーシップを発揮すること。
上記の提言を基本的方向性に取り入れることにより、プラスチックを使い捨てにする社会から早期に脱却し、リデュース・リユースを基本とした社会に移行することが、プラスチック汚染を防ぎ、脱炭素社会を目指すためにも必要不可欠である。これは、ウィズコロナ、ポストコロナの社会で求められる「グリーンリカバリー」を実現することにつながり、地球の再生能力の範囲内で投入資源を最大限循環させることで新たな資源投入をゼロに近づけるという 「サーキュラーエコノミー」の考え方にも沿っている。世界で使い捨てプラスチック容器包装の2割をリユース可能なものに切り替えるだけで1兆円以上のビジネスチャンスが見込まれるなど*3、この移行は新たな経済価値を生み出すと見られており、国際潮流となりつつあるこの 分野で日本が国際的競争力を発揮していくためにも、以上6項目を提言する。
*1 プラスチック循環利用協会(2019)による2018年の実績。熱回収503万トン、単純焼却73万トン、輸出91万トン、埋立68万トン
*2 Lebreton et al. (2018)
*3 エレンマッカーサー財団 (2019)
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