人への投資が企業の成長に。一方で「二極化」も加速
~働きがい働きやすさ調査・推進委員会『2025年調査』結果発表~
働きがい働きやすさ調査・推進委員会 事務局
一般社団法人日本テレワーク協会

働きがい働きやすさ調査・推進委員会(事務局:一般社団法人日本テレワーク協会(JTA))は、全国734の企業・団体が回答した「2025年度 働きがい働きやすさへの取り組み調査」の結果分析レポートを発表しました。併せて12月より311の希望企業・団体に無料フィードバックを開始します。
本調査により、「人への投資」と「企業成長」に極めて強い正の相関関係がデータで裏付けられました。一方で、取り組み状況は企業規模・地域・業種で「二極化」が加速しており、また「戦略的人材育成」が、多くの企業で課題となっている実態が浮き彫りになりました。
調査レポートのポイントを2026年1月15日JTAアニュアルカンファレンスにて主管の研究員が解説します。
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調査実施の背景
本調査は、弊協会が取り組む日本全体の働きがい改革を進化させるサイクルの中核と位置付けられます。そのサイクルとは、【調査】による現状把握と課題の可視化、【事例】(働き方DX事例集)による成功モデルの共有、【研修】による企業・団体ごとのアクションプラン作成、【表彰】による優れた取り組みの普及の4つを継続的に廻すことであり、日本の働き方をアップデートし、生産性・エンゲージメント・付加価値向上の追求を目的としています。
調査結果が示す3つのポイント
全国734の企業・団体から得られた回答を分析した結果、日本の「働きがい・働きやすさ」に関して、以下の3つの発見がありました。
1. 「人への投資」と「企業成長」に極めて強い正の相関
企業の業績と「働きがい働きやすさ」のスコアには、極めて強い正の相関が見られました。業績が「上がっている」企業は、「キャリア採用など専門人材の計画的獲得」、「リーダーシップ研修の実施」、「エンゲージメント測定と改善」といった人材関連の項目、および「テレワーク制度」、「DXによる付加価値創造」、「情報セキュリティ対策」といったDX関連の項目で、業績が下がっている企業に比べ最大3点以上高いスコアを示しました。これは、「人への投資」が、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略である可能性を示しています。
※スコアは10点を満点としています。
2. 加速する「二極化」。従業員1001人以上の企業・本社東京・情報通信業が突出
取り組み状況は、企業規模と本社所在地の属性間で昨年度以上に格差が拡大し、二極化がより鮮明になりました。
企業規模: 従業員数が多くなるほどスコアが高い傾向が顕著で、特に1001名以上の組織は1000名以下の組織に比べて全項目で平均点が高く、昨年との比較では、1000名以下の組織との平均スコア差が0.6点拡大しました。
所在地: 「東京」に本社を置く企業は、他の地域に比べて全項目で平均点が高く、昨年との比較では、他の地域との平均スコア差が0.8点拡大しました。
業種: 「通信・情報通信業」も全項目で取り組みが進んでいます。特に「時間や場所にとらわれない働き方/DX」分野のスコアが7.2点と突出しており(他業種平均4.3点)、昨年との比較では、他業種との平均スコア差が0.5点拡大しました。
3. 共通の課題は「戦略的人材育成」
全体的に企業の理念やパーパス(存在意義)など「設問分野1:企業・事業の社会的存在意義の共有」のスコアは比較的高い(分野平均:5.6点)一方で、それを実行・牽引する人材の育成が追いついていません。特に「設問分野4:リーダーシップ開発・活躍支援」(分野平均:4.2点)や、「スキル習得や資格取得と処遇の連動」(問16:4.4点)などのスコアが低く、より戦略的な人事に関連する項目が、多くの企業にとって共通の課題となっています。
その他課題とインサイト
■ 経営と現場等の「認識ギャップ」
人事担当者は比較的高く評価する一方、経営層は低めに評価する傾向が見られ、また管理職と一般社員の間でも、「スキルと処遇の連動」や「エンゲージメント測定」などの項目で認識の差が見られました。
■ 「付加価値創造のDX」と「学び合う文化」の強い関係性
DX推進においても、「業務効率化」(問27:4.9点)に比べ、「新サービス開発等新たな付加価値創造」(問28:4.2点)はスコアが低く、多くの企業が「新たな付加価値を創造するDX」の段階に進めていない状況がうかがえます。
相関分析では、この「新たな付加価値創造(問28)」は、「従業員同士が学び合う機会(問17)」と相関を示し、「学び合い(問17)」は「スキルと処遇の連動(問16)」と強く相関しています。
これは、「個人のスキルアップを公正に処遇する制度」が「学び合う文化」を醸成し、その文化こそが「新たな付加価値を創造するDX」の源泉となる、という人的資本経営の成功モデルが存在する可能性を示しています。
調査結果からの提言(処方箋)
本調査・推進委員会は、これらの結果に基づき、企業・団体および国・自治体に対し、以下の点を提言します。
企業・団体への提言:
1. 経営層: 「働きがい働きやすさ」の実現には、IT戦略と、人事戦略が不可分であることをトップが認識し、両戦略の一体化を推進する。
2. 人事部門: 「制度設計・運用」に留まらず、「文化醸成と効果測定」も役割と認識し、現場の実態を経営層に伝える機能を強化する。
3. 小規模事業者: ITツール導入の前に、まず「経営層と従業員の対話の場」を活性化、現場の非効率な業務を特定して、効率化に直結する取り組みから着手し、成功体験を積み重ねる。
国・自治体への政策的提言:
中小企業・地方・現場中心産業が「新たな付加価値の創造」につながる本格的DXに取り組むための人材育成プログラム開発を支援し、関連する助成金に組み込む。また、働きがい働きやすさや本格的なDX成功事例の共有を一層推進する。
「2025年度 働きがい働きやすさへの取り組み調査」 概要
調査名称: 2025年度 働きがい働きやすさへの取り組み調査
調査主体: 働きがい働きやすさ調査・推進委員会(オブザーバー:総務省、厚生労働省、経済産業省)
事務局: 一般社団法人日本テレワーク協会
調査期間: 2025年7月16日~9月5日
調査方法: 企業・団体向けWebアンケート調査
有効回答数: 734件
調査主体概要
団体名: 働きがい働きやすさ調査・推進委員会
概要: 東京大学名誉教授 大西 隆を座長に、学識経験者、経済団体、産業団体等で構成され、日本の「働きがい」「働きやすさ」を高め、生産性、エンゲージメント、付加価値向上に資することを目的とする。関連省庁(総務省、厚生労働省、経済産業省)がオブザーバーとして参加。
本リリースに関するお問い合わせ先
働きがい働きやすさ調査・推進委員会 事務局 一般社団法人日本テレワーク協会
問い合わせ窓口Email:guide()japan-telework.or.jp ()を@に替えてください
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