保健師、言語聴覚士と、遠隔地の言語聴覚士チームがオンラインビデオ会議ツールを用いて協働して介入を行った機能性構音障害の一例を報告
ことばサポートネットではオンラインビデオ会議ツールを用いた構音訓練をチームで行っている。今回保健師・現地ST・ 当法人STチームが協働して構音障害のある児に介入を行ったので考察を加え報告を行った。
第26回 日本言語聴覚学会 概要
名称:第26回日本言語聴覚学会 in 山形
テーマ:言語聴覚士には人と社会を変える力がある
~なせばなるなさねばならぬ何事も 共生の時代へのSTep~
開催日:2025年6月27日(金)・28日(土)
会場: やまぎん県民ホール、 山形テルサ
公式サイト:https://jaslht26.may-pro.net/outline/index.html
言語聴覚士が不足する地域の課題
北海道鷹栖町の町の保健センターでは、月に一回、町外の言語聴覚士が訪問しことばの相談を実施しています。これにより、ことばの心配事のあるお子さんが専門職に相談することができ、保健師を中心にみんなで育ちを見守ることができる町になっています。
ことばの心配事を抱えるお子さんの中には、「機能性構音障害」とよばれる、発音の障害を持つ場合があります。これは、病気の有無や発達障害の有無とは関係なく、どんなお子さんにも起こりえる障害です。「機能性構音障害」は、適切な時期に言語療法を受けることにより改善する障害です。 機能性構音障害の改善のための言語訓練を行う場合、状態によっては月に2回以上の言語訓練が必要な場合があります。
今回、機能性構音障害があり、月に一回の言語聴覚士によることばの相談に加えて月に二回以上の言語療法が必要なお子さんについて、保健師・現地ST・ 当法人STチームが協働して関わることで障害の改善につながった経過について考察を加えて報告しました。
発表内容の概要
【表題】保健師、言語聴覚士と、遠隔地の言語聴覚士チームがオンラインビデオ会議ツールを用いて協働して介入を行った機能性構音障害の一例
(埜藤奈美1 ,髙橋路子1,2 ,中井みつ穂1 ,吉岡志乃1 ,松本竜弥1, ,熊田広樹3 1一般社団法人ことばサポートネット, 2東京大学医学部附属病院 口腔顎顔面外科・矯正歯科, 3旭川市立大学短期大学部 幼児教育学科 )
【はじめに】当法人ではオンラインビデオ会議ツールを用いた構音訓練をチームで行っている.A町保健センターのことばの相談は,町外の言語聴覚士(以下ST)が月1回程度訪問し実施している.今回,保健師・現地ST・ 当法人STチームが協働して構音障害のある児に介入を行ったので考察を加えて報告する.

【症例の経過】
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3:6健診で医師より発音不明瞭の指摘あり.
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年少時に保育士より吃症状の指摘があり保健師が相談を受ける.
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4:2時,保健師がST相談を依頼,構音不明瞭・吃音が指摘され,以降STが定期的な相談を実施.
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就学時健診を経て,6:2時より機能性構音障害(t/k,d/g)の改善と音韻発達の支援, 吃音に対する言語療法を目的に 月1回の訓練を開始.
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その後吃音は改善したが,構音訓練及び音韻面の支援に必要な練習頻度を確保するため,6:7時より当法人STチームが引き継ぎ保健師同席の下オンラインでの訓練を月2回程度実施.
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現地のSTには定期的に経過を報告.
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学校とは保健師を介して現状の情報共有・関わり方の提案等を行い教員のST訓練同席もあった.
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7:7時に関係者と検討を行い,必要事項を学校に引き継いで介入を終了した.

【考察】オンラインの言語療法では,点在するSTがチームで対応できる,遠隔地から短時間のみの利用が可能 といった利点がある一方,十分な視診や触診が不可能,実施可能な検査が限られる,実物を用いた関わりが不 可能,関係者との連携がとりにくいといった欠点がある.今回,現地のSTによる十分な評価があった事,当法 人引継ぎ後も必要な際には現地STへの相談が可能であった事,オンラインの訓練場面で保健師が同席し一緒にシールを貼るなどの活動が可能であった事,保健師が調整役を担い関係各所と連携がとれた事により欠点を最 小限に抑えられたと考える.今後実践を重ね,必要な児に言語療法を届けられる仕組み作りを行いたい

今後の展望
保健センターは、地域のお子さんたちが健やかに育つための中核的な役割を担っています。ことばの心配事がある場合に、相談を受けることの多い保健師が中心になり、地域資源の活用に加えて言語聴覚士不足をICTを活用して補うことで、お子さんの健やかな発育に寄与する事ができたこの活動は、他の言語聴覚士不足がある地域にも活かすことができると思います。
困り感のある地域で活用していただけるよう、オンライン言語療法ができる言語聴覚士の育成と、地域とのつながりづくりを行ってまいります。
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