BPO、「事件報道に対する地方公務員からの申立て」(テレビ熊本)事案で「放送倫理上問題あり」との「見解」を公表
本件は、テレビ熊本が、2015年11月19日午後4時50分以降、ニュース番組の中で、地方公務員である申立人が、酒に酔って抗拒不能の状態にあった女性の裸の写真を撮影したという容疑で同日午前に逮捕されたことを報じた4つのニュースと、翌日以降、逮捕後の勤務先の対応や不起訴処分となったことなどを報じたニュースに関する事案である。本決定では、最も詳しく報道された逮捕当日午後6時15分からのニュースを中心に検討した。
申立人は、この放送について、意識がもうろうとしている知人の女性を自宅に連れ込んだとか、同意なく女性の服を脱がせたなど、申立人が認めたこともない容疑まで申立人が事実を認めているなどとして、申立人が悪質な犯行を行ったと印象づける放送を行って申立人の名誉を毀損し、また、申立人の自宅建物の映像をむやみに放送し、フェイスブックに掲載した写真も無断で放送して申立人のプライバシー等も侵害したとして、委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、申立人について、①わいせつ目的をもって意識がもうろうとしていた女性を同意のないまま自宅に連れ込み、②意識を失い横になっていた女性の服を同意なく脱がせ、③意識を失い抗拒不能の状態にある女性の裸の写真を撮った、④(①ないし③の)事実を認めている。さらに、⑤薬物などによって女性が意識を失った疑いがあり、警察はこの点も申立人を追及する方針である、ということを伝えるものである。テレビ熊本は、本件放送は警察の広報担当の副署長の説明に沿ったものであり、申立人に対する名誉毀損は成立しない、また、地方公務員であった申立人についてフェイスブックの写真や自宅建物を放送することは社会の関心に応えるものであって問題はないと主張する。
放送が示した事実のうち、逮捕の直接の容疑となった③の事実以外の①、②、④、⑤について真実であることの証明はできていないが、副署長の説明に基づいてこれらの点を真実と信じて放送したことについて、相当性が認められ、名誉毀損が成立するとはいえない。
しかし、容疑に対する申立人の認否などに関する副署長の説明は概括的で明確とは言いがたい部分があり、逮捕直後で、関係者への追加取材もできていない段階であったにもかかわらず、本件放送は、警察の明確とは言いがたい説明に依拠して、直接の逮捕容疑となっていない事実についてまで真実であるとの印象を与えるものであった。また、副署長の説明を超えて、単なる一般的可能性にとどまらず、申立人が薬物等を混入させた疑いがあるという印象を与えた。これらの点で、本件放送は申立人の名誉への配慮が十分ではなく、正確性に疑いのある放送を行う結果となったものであることから、放送倫理上問題がある。
フェイスブックの写真の使用やボカシの入った自宅建物の放送については、本件放送の公共性・公益性に鑑みて問題はないと考える。
委員会は、テレビ熊本に対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために人権と放送倫理にいっそう配慮するよう要望する。
■ 委員会決定の全文はこちら
http://www.bpo.gr.jp/?p=9008&meta_key=2016
■ 委員会決定の「見解」とは
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124#gradatio
「申立てから『委員会決定』までの流れ」
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124
「放送人権委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1141
■放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを
目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するた
め、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって
設置され、以下の三委員会から構成される。
委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:
濱田 純一
URL:
http://www.bpo.gr.jp/
申立人は、この放送について、意識がもうろうとしている知人の女性を自宅に連れ込んだとか、同意なく女性の服を脱がせたなど、申立人が認めたこともない容疑まで申立人が事実を認めているなどとして、申立人が悪質な犯行を行ったと印象づける放送を行って申立人の名誉を毀損し、また、申立人の自宅建物の映像をむやみに放送し、フェイスブックに掲載した写真も無断で放送して申立人のプライバシー等も侵害したとして、委員会に申し立てた。
委員会は、申立てを受けて審理し、本件放送には放送倫理上の問題があると判断した。決定の概要は以下のとおりである。
本件放送は、申立人について、①わいせつ目的をもって意識がもうろうとしていた女性を同意のないまま自宅に連れ込み、②意識を失い横になっていた女性の服を同意なく脱がせ、③意識を失い抗拒不能の状態にある女性の裸の写真を撮った、④(①ないし③の)事実を認めている。さらに、⑤薬物などによって女性が意識を失った疑いがあり、警察はこの点も申立人を追及する方針である、ということを伝えるものである。テレビ熊本は、本件放送は警察の広報担当の副署長の説明に沿ったものであり、申立人に対する名誉毀損は成立しない、また、地方公務員であった申立人についてフェイスブックの写真や自宅建物を放送することは社会の関心に応えるものであって問題はないと主張する。
放送が示した事実のうち、逮捕の直接の容疑となった③の事実以外の①、②、④、⑤について真実であることの証明はできていないが、副署長の説明に基づいてこれらの点を真実と信じて放送したことについて、相当性が認められ、名誉毀損が成立するとはいえない。
しかし、容疑に対する申立人の認否などに関する副署長の説明は概括的で明確とは言いがたい部分があり、逮捕直後で、関係者への追加取材もできていない段階であったにもかかわらず、本件放送は、警察の明確とは言いがたい説明に依拠して、直接の逮捕容疑となっていない事実についてまで真実であるとの印象を与えるものであった。また、副署長の説明を超えて、単なる一般的可能性にとどまらず、申立人が薬物等を混入させた疑いがあるという印象を与えた。これらの点で、本件放送は申立人の名誉への配慮が十分ではなく、正確性に疑いのある放送を行う結果となったものであることから、放送倫理上問題がある。
フェイスブックの写真の使用やボカシの入った自宅建物の放送については、本件放送の公共性・公益性に鑑みて問題はないと考える。
委員会は、テレビ熊本に対し、本決定の趣旨を放送するとともに、再発防止のために人権と放送倫理にいっそう配慮するよう要望する。
■ 委員会決定の全文はこちら
http://www.bpo.gr.jp/?p=9008&meta_key=2016
■ 委員会決定の「見解」とは
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124#gradatio
「申立てから『委員会決定』までの流れ」
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124
「放送人権委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1141
■放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを
目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するた
め、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって
設置され、以下の三委員会から構成される。
委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)
住所:
東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館
理事長:
濱田 純一
URL:
http://www.bpo.gr.jp/
すべての画像