「ありふれた日常」の瞬間を絵画に取り込み、鑑賞者を主人公とする。森本啓太個展「A Little Closer」、KOTARO NUKAGA(六本木)にて開催。
KOTARO NUKAGA(六本木)では7月29日(土)から9月16日(土)まで、森本啓太による展覧会「A Little Closer」を開催いたします。本展は、一昨年に開催した国内初の個展「After Dark」以来、森本にとって約二年ぶりの日本での個展となり、約20点の新作のペインティングを展示します。1990年大阪生まれの森本は、高校を卒業後単身カナダへ渡り、16年という長い歳月をトロントで過ごしました。その後、2021年より拠点を東京に移し制作しています。森本はレンブラントやエドワード・ホッパーを連想させるドラマチックな光の表現を用い、風景や人物を描きます。ありふれた街並みや日常の瞬間は、森本が古典的な技術を現代に持ち込むことにより、劇的な世界へと変貌するのです。
展覧会の見所1) 「ありふれた日常」の瞬間が絵画に
森本は、「ありふれた日常」の瞬間を絵画にします。森本の絵画はファンタジーでもなく特別な瞬間でもなく、ありきたりな風景の中に美しさや神秘性を見出し、描かれた誰でもない誰かが主人公になります。本展のために制作された新作では、部屋の中や食事、ショッピングなど、自身と同世代の若者たちのプライベートな空間に入り込みます。過去作品と比較すると更にパーソナルな風景を描き出し、何気ない日常の一コマがドラマチックな瞬間へ変貌します。
森本作品で描かれるなんとなくどこかで目にしたことがあるような光景、また実際に当事者として経験したことがあるような瞬間は鑑賞者の「共感」を呼び、鑑賞者自身を絵画の当事者とします。社会における何者であるかではなく、描かれた本人が個人としての自分らしさ、つまり「自由」を獲得している時が描き出されるのです。社会から与えられた役割ではなく、自分が何者であるのか、何を良しとし、どんな瞬間を美しいとするのかといったことを他者の手に委ねないこと。このことこそ人間が人間らしく生きる上で最も重要なことであり、それが大きな自由を獲得することにつながるのだということを森本は自身の絵画を通して鑑賞者に提示します。
展覧会の見所2) ショートストーリーを思い浮かべる
森本の絵画からあなたのストーリーを思い浮かべてみてください。現代を生きる若者たちの日常を切り取るかのように描く森本の作品は、描かれた瞬間の前後や、その背景にある人と社会との様々な関係性を想像させます。
▼参考:KOTARO NUKAGAスタッフ、Tのショートストーリー
いつのことだったろう。
きみの住んでいたこの街で夜の街灯の下、
なんてことない会話をしながらあの商店街に向かって歩いていたのは。五限のおわりにきみとなんとなく待ち合わせをして、それから行くのはいつも決まった店。食事をしにきたのに会話がとまらなくなって、ごはんを食べに来たのか、話に来ているのかわからないくらいだった。「じゃ、いこうか」と、きみの大きな上着と適当に物を詰め込んだ袋をとってガラガラと音をたてる戸をくぐって、近いような、はなれているようなそんな距離感で並んで歩く。それが私のいつもだった。それがいつもじゃなくなったのはいつだろう。私は、もうあの商店街をあるくことも街灯の下をあるくことも、もうないんだ。
二度とおとずれることのないきみのいた街に私は、ちいさく手を振った。
【開催概要】
「A Little Closer」
会期: 2023年7月29日(土) - 9月16日(土)
開廊時間: 11:00 – 18:00 (火-土) ※日月祝休廊
会場: KOTARO NUKAGA(六本木)
住所: 〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
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