真皮の奥深くではコラーゲン6が加齢により減少することを発見
コラーゲン6を介して、真皮全体の線維芽細胞にも影響を及ぼしている可能性
1.真皮の下層部にあたる「網状層」では、加齢に伴い、コラーゲン6(※1)が減少する
2.ヒメガマ穂エキスとカミツレ花エキスの組合せは増殖休止中の線維芽細胞においてコラーゲン6の発現を増やす
※1 生体内のさまざまな組織で、器官や細胞の周囲、基底膜の近く、またはコラーゲン線維の間に存在し成分どうしの結合にも寄与するコラーゲン。
皮膚成分の結合やオートファジーに影響するコラーゲン6に着目
コラーゲンには28もの種類があり、中でもコラーゲン6は多くの成分と結合することが知られています。真皮では、ヒアルロン酸や4型コラーゲンといった他の成分や、表皮や血管と真皮とを隔てる基底膜などと結合することからハリ・弾力に寄与すると考えられています。さらにポーラ化成工業ではコラーゲン6がオートファジー(※2)の初期段階を促進する役割も果たすことを明らかにしました。
これらを総合すると、コラーゲン6は皮膚の老化と密接に関連することがうかがえます。そこでコラーゲン6の量が加齢でどのように変化するのか確認することとしました。
※2 細胞が自分で細胞内の成分や小器官を分解する仕組み。加齢とともに停滞することが分かっている。
真皮の下層部では加齢でコラーゲン6が減少していた
20~60代女性8名の皮膚を解析したところ、50~60代の真皮の深い部分に当たる網状層(補足資料2)ではコラーゲン6が減少していました(図1、補足資料3)。このことから、コラーゲン6の減少は、皮膚のハリ・弾力などに悪影響を及ぼすと考えられます。
コラーゲン6を増やすエキスを発見
真皮のコラーゲン6は線維芽細胞によって作られています。最近の研究により、線維芽細胞は、特に増殖を休止しているG0期(補足資料1)にコラーゲン6の産生を活発化することが分かってきました(※3)。
そこでこの時期のコラーゲン6産生をさらに高めることのできる成分を探索したところ、ヒメガマ穂エキスとカミツレ花エキスの混合物が有効であることを見出しました(図 2)。
本研究は、加齢による肌のハリ・弾力低下の詳細なメカニズムの理解につながります。
※3 「増殖休止中の線維芽細胞はコラーゲン6増産体制にあることを発見 コラーゲン6を介し真皮全体に影響を及ぼしている可能性も」(2023 年 6 月 29 日)http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20230629_1.pdf
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【補足資料1】G0期について
細胞には、分裂して増殖する細胞周期と呼ばれる状態(G1期、S期、G2期、M期からなる)と、増殖を停止しているG0期と呼ばれる状態が存在します(図3)。
G0期には、神経や脂肪、筋肉の様に分化して増殖できない状態や、老化して増殖できない状態、そして、増殖能力は保ちつつも増殖のための活動を休んでいて、環境に応じて細胞周期に戻れる状態があります。コラーゲンに接着した線維芽細胞の多くがG0期やG1期の状態になることが知られています(※4)。
※4 Kono T, Arch Dermatol Res. 1990;282(4):258-262.
【補足資料2】真皮網状層について
真皮は、乳頭層と網状層の2層に大きく分けられます(図4)。
乳頭層は皮膚表層の表皮に近い部分で、主に細いコラーゲン線維で占められています。網状層は、乳頭層よりも奥にある乳頭層と皮下脂肪層の間の厚い層で、真皮の大部分を占めています。
網状層には太いコラーゲン線維が規則的な方向性を持って存在しており、コラーゲン線維の間に並行に存在する太い弾性線維(エラスチン線維)も多いことから、皮膚の弾力性に重要な役割を果たしていると言われています。
【補足資料3】加齢によるコラーゲン6の減少
図1のような、コラーゲン6を染色した皮膚組織の画像を用いて20~30代と50~60代のコラーゲン6の量を数値化し比べました。 解析の結果、乳頭層では年代間で違いが認められなかったのに対して、網状層では20~30代に比べて50~60代ではコラーゲン6が少なくなっていることが分かり、数値の上でも加齢による変化が捉えられました(図5)。
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