釜石市の避難訓練における人流の可視化による避難行動の分析実証について
概要
避難訓練の実施時に、Agoopが事前に配布したスマホアプリ「アルコイン」から収集した人流データを用いて、避難状況に関する迅速な情報収集・共有支援技術を実証
実証日時:2024年3月3日(日)午前8時30分~
実証場所:岩手県釜石市
対象訓練:釜石市地震・津波避難訓練
背景
東日本大震災や熊本地震など、過去の災害では指定外避難所の使用に関する多くの問題が浮き彫りになりました。また、2024年1月に発生した能登半島地震では、被災した人々や地域が孤立するという深刻な事態が発生しました。災害時に孤立した地域や指定外避難所についての情報を、初期段階で行政や救援機関が収集・共有することの難しさは、共通の課題として指摘されています。この問題は、2020年7月に発生した熊本豪雨でも同様に報告されており、2021年12月に内閣府が公表した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定では、地震や津波によって多くの避難者が孤立する可能性が示されました。特に冬季の災害では、孤立した避難者の情報の迅速な収集と救援活動への早急な反映が、低体温症などの健康被害を未然に防ぐ上で極めて重要です。
これらの課題に対処するため、Agoopは自社が保有するリアルタイム人流可視化ソリューションの有効性を検証する目的で釜石市と協力し、市の地震・津波避難訓練を利用した実証実験を行いました。釜石市とAgoopは、同市の防災まちづくりを推進するため、災害時におけるスマートフォンの位置情報を基にした適切な避難行動の検証を目的とした「避難行動の在り方の検証を通じた防災まちづくりの推進に関する覚書」※1を、2023年12月に締結しています。
※1 Agoopと釜石市が「避難行動の在り方の検証を通じた防災まちづくりの推進に関する覚書」を締結(2023年12月19日)
https://agoop.co.jp/2023/12/19/46798/
内容
地震による津波災害を想定した避難訓練実施時に、指定緊急避難場所や指定避難所、それら以外の地域への避難状況を、あらかじめ避難訓練実施地域の住民へ配布したスマホアプリ「アルコイン」を通して、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データをリアルタイム人流可視化ソリューションで可視化し、災害対策本部に設置されたモニターに投影して分析しました。
災害対策本部には2台のモニターを設置し、2種類の可視化(写真1)を行いました。
・リアルタイム分析
- リアルタイム分析とは、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データを地図画面上に表示し、どの方向へ、どれくらいの速さで移動しているかを確認できる仕組みです。最大津波浸水エリアや、指定避難所の情報を重ねて可視化することができ、避難者の行動を把握・分析できる機能です。
・ 避難所検知
- 避難所検知とは、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データを分析し、指定された避難所の稼働状況や、市が把握していない自主避難場所を自動検知して可視化する技術です。人流の集合度合いからランキング表示も可能で、各支援関係者の各避難所への訪問の優先順位付けなどにも活用可能な機能です。
写真1:リアルタイム人流可視化ソリューション(左からリアルタイム分析、避難所検知)
<リアルタイム分析で避難者の行動を見る釜石市の小野共市長(中央)>
<消防および海上保安庁の関係者>
実証結果
【リアルタイム分析】
鵜住居エリア、唐丹エリア、釜石市役所周辺エリアおよび八雲神社周辺エリアの4カ所を対象に同時モニタリングを行い、午前8時33分に発令された避難警報後の避難行動をリアルタイムに可視化することに成功しました。このシステムは毎分情報を自動更新する機能を備えています。実証実験当日のモニタリング状況の動画をご覧いただけます。
【避難所検知】
避難警報発令後、八雲神社境内や小佐野コミュニティ会館、鵜住居小学校・釜石東中学校、釜石小学校校庭などの指定避難所での稼動が順次検知されました。検知された避難所は赤い円で表示され、人流量が多い場所ほど円の色が濃い赤に変わる仕様となっています。主な検知結果は、下記の通りです。
<八雲神社境内>
<小佐野コミュニティ会館>
<鵜住居小学校・釜石東中学校>
<釜石市役所付近>
今後の展開
今回の実験において、リアルタイムの人流可視化技術を用いることにより、避難行動を即座に可視化し、検証することが可能であることが実証されました。この技術は避難訓練や防災計画の策定など、日常時における活用は言うまでもなく、緊急時においても迅速な分析を可能にする環境を構築し、防災DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することを目的としています。
この技術は、能登半島地震の発生時においても有効に活用されました。徳洲会グループの特定非営利活動法人TMATや、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所との連携の下で日本赤十字社へ提供することで、初動部隊の現地入りルートの検討や、被災自治体の災害対策本部における孤立地域ならびに自主避難場所の現状把握や情報共有に加えて、各避難所への訪問の優先順位付けなどの具体的な救援活動に活用されました。
災害発生時は市民だけでなく、自治体関係者も被災者となる可能性があります。そのため、この技術により状況把握を迅速に行い、どこからでも確認可能なシステムを日頃から整備しておくことで、対策活動への貢献を目指して引き続き取り組んでいきます。
■Agoopについて
Agoop(アグープ)は、位置情報ビッグデータを活用する先進的企業であり、スマホアプリから大量の位置情報・センサー情報を集積して独自の技術で解析することで人の動きを“見える化”し、「流動人口データ」などのビジネスに新しい視点をもたらす価値ある情報を提供しています。
Agoopの「流動人口データ」は、同意を得たユーザーのスマホアプリから収集される位置情報データを、秘匿加工を行った上で提供しているもので、これまでにさまざまな企業や自治体の支援を行っています。高精度かつ鮮度の高い情報を分析・活用することで、日々変化する人の動きを把握することが可能となり、街づくりや観光振興、災害対策、商圏分析などにおいて、正しい意思決定を迅速に行うことができます。
Agoopの「アルコイン」を活用していただくことにより、楽しく継続できるヘルスケアとして、また休日のお散歩の記録などとして、健康的な習慣を身に付けて日常の歩く時間を新たな価値に変えていくことを目指しています。
※ このプレスリリースに記載されている社名および商品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。
※ このプレスリリースに記載されている情報は発表日時点のものであり、予告なく変わる可能性があります。あらかじめご了承ください。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像