【イベントレポート】9月21日、「読書のすすめ」(東京都・江戸川区)にて、ジーン・パスリー著、小宮由訳『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』トークイベント&サイン会を開催
株式会社佼成出版社(本社:東京都杉並区)は、『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』の刊行を記念し、ジーン・パスリーさん、小宮由さん、同店店長・清水克衛さんによるトークイベントとサイン会を開催しました。
史実に空想を混ぜ、ひとりの人間としての小泉八雲像を浮き彫りにした『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』は、ジーン・パスリーさんが2021年に発刊したBlack Dragonflyの邦訳版です。当社では、小泉八雲没後120年を期して、8月末に本書を刊行しました。
「西洋の人にも、小泉八雲のことをもっと知ってほしいと思った」ジーン・パスリーさん
八雲と同郷のアイルランド人であり、脚本家・作家として活躍するジーン・パスリーさんは、「1980年代のときに日本に来ました。そのとき、『アイルランドから来ました』というと、『ああ、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の』と何度も言われて。そこで、初めて小泉八雲を知りました」と八雲を知るきっかけを話します。パスリーさんはその後、『怪談』を読んで、アイルランドに帰国した際には、偶然にも八雲が幼少期を過ごした家の近くに住むことになり、ますます小泉八雲のことが気になっていったそうです。
「西洋の人にも、小泉八雲のことをもっと知ってほしいと思った。最初は映像作品や演劇の脚本にしようと思ったけれど、上手くいかなかった。でも、アイルランドの作家・コルム・トビーンが書いたヘンリー・ジェイムズの歴史小説を読んで、小泉八雲をえがくのはこれだ! と感じました」
パスリーさんは続けて、小泉八雲のことを書くのはとても楽しくて、アイルランドのダブリンにいながらも、日本を毎日訪れている気分だったと話し、「アイルランド人であった小泉八雲の視点から見た日本を、読者の方にも体感してもらえるように工夫をした」と、原著を執筆するまでの試行錯誤と、作品へのこだわりを語りました。
「八雲の波瀾万丈な人生に衝撃をうけた」小宮由さん
普段は、児童書の翻訳が主な仕事である小宮由さん。本書の翻訳を請け負ったことで、小泉八雲の生涯を深く知り、「八雲の波瀾万丈な人生に衝撃を受けた」と述べます。また、翻訳家として“X”=“原作者への愛と理解”を掴むことが大切である語った小宮さんは、「本書は小泉八雲とジーン・パスリーさんの2人のXを掴むことが難しくて、心を砕いた。でも、児童書と違い、本書の翻訳は言葉に制限がなかった。頭に浮かんだ言葉をそのまま表現できる。そこがとても自由で面白かった」と、翻訳家としての信念と、本書を翻訳する上での苦労、楽しさを話しました。
「この本を読んで、日本人の原風景を思い出した」清水克衛さん
編集者に、Black Dragonflyの翻訳者として小宮さんを推薦した清水克衛さん。「本書を読んで、本当に感動した。読んでいて、日本人の原風景を思い出した」と述べます。戦争や地球温暖化など、社会問題に流されて、多くの日本人が原風景を忘れていく現状を憂える清水さんは、「いまの日本人、政治家にこそ、この本を読んでほしい」と本書への熱い思いを語りました。
「黒もトンボも、死者の象徴」ジーン・パスリーさん
「タイトルをなぜ『黒い蜻蛉』としたのでしょうか」との質問を受け、パスリーさんは「トンボはヤゴとして暗い水中で過ごした後、空へ羽ばたいていきます。様々な苦難を経験した八雲は、日本で安らぎを見つけ、そして数多くの作品を残しました。また、日本では、トンボは亡くなった先祖の霊魂であるとされており、西洋においても、黒色は死者を象徴します。こうした要素を合わせて『黒い蜻蛉』とし、小泉八雲の人生そのものを表しました」と、作品の顔であるタイトル『黒い蜻蛉――小説 小泉八雲――』を名付けた意図について述べました。
トークイベントの終盤、「ぜひまた、パスリーさんに日本に来てほしい。どうすれば、そのチャンスを掴むことができますか」という質問に対して、パスリーさんは、「今日イベントに参加してくださったみなさんの中に、映像制作の関係者がいれば、ぜひ声を掛けてください。私が脚本を書くので、ぜひ『黒い蜻蛉』を映像化しましょう」と笑顔を見せ、今後の展望を語りました。その後のサイン会では、登壇者と参加者の交流が盛んに行われ、和気あいあいとした空気が漂うイベントとなりました。
【書籍情報】
書名:『黒い蜻蛉──小説 小泉八雲──』
著者:ジーン・パスリー
翻訳:小宮由
発行:佼成出版社
発売日:2024年8月30日
ページ数:344ページ
定価:2,750円(税込)
内容紹介:Black Dragonflyが待望の邦訳刊行。出生にコンプレックスをもっていたラフカディオ・ハーンが最後の地に決めたのは、日本だった。なにが彼を引きつけ、のちに『怪談』をうみだす小泉八雲となったのだろうか? その真髄に迫った空想的伝記小説。
【特設サイト】
https://special.chieumi.com/029259
【著者プロフィル】
ジーン・パスリー
脚本家。ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部で映画制作を学び、日本語の学士号と映画学の修士号を取得。脚本の代表作に、小説家メイヴ・ビンチーの短編 How About You や、2020年、コーク国際映画祭で観客賞を受賞した共同脚本の The Bright Side があり、2021年、自身が監督・脚本を務めた短編映画 Ship of Souls 精霊船は、アイルランド映画テレビ賞にノミネートされた。また、アイルランド放送協会のラジオ番組にもレギュラーで出演している。長年日本で暮らしていたが、現在はアイルランドのダブリンで、ラフカディオ・ハーンが幼少期に暮らしていた家の近くに住んでいる。本書が初の小説作品。
【訳者プロフィル】
小宮由(こみや・ゆう)
翻訳家。東京都生まれ。出版社勤務や留学を経て、主に子どもの本の翻訳に携わる。2004年より東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰。訳書に『さかさ町』『けんかのたね』(以上、岩波書店)『イワンの馬鹿』『キプリング童話集』『くるみ割り人形』(以上、アノニマ・スタジオ)など多数。祖父は、トルストイ文学の翻訳家、良心的兵役拒否者である故・北御門二郎。
【会社概要】
株式会社佼成出版社
TEL:03-5385-2311(代表)/FAX:03-5385-2395(代表)
〒166-8535 東京都杉並区和田2丁目7−1 普門メディアセンター
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