UFCデビュー戦で、秋山成勲の新武器のヒジは炸裂するか? ~公開練習、そして成田出発~

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ラスベガスで7月11日(現地時間。日本時間12日)に開催されるUFC 100に参戦する秋山成勲が、7月2日、東京広尾のクラウド秋山道場で公開練習を行なった。その模様と、公開練習後、および成田から旅立つ直前の本人のコメントを交えてリポート!(文:稲垣收)

黒い金網に2人の男たちの肉体がぶつかる軋み音が、真新しい道場に響き渡る――UFCの試合で使われるオクタゴンと同じ材質の金網を使ったケージ・スペースで、黒いラッシュガードを身につけた秋山は、チーム・クラウドのメンバーを相手に、立った状態から両脚タックルに入ったり、そこからバックを取ったり、片脚タックルに切り替えたりと、さまざまなテイクダウンの技術を見せる。変形の支え釣り込み足など、柔道技を胴衣のない総合格闘技用にうまくアレンジさせた技も繰り出す。
その後はシャドーボクシングを2ラウンド。パンチのコンビネーションに時折ヒジ打ちも織り交ぜる。これまでは試合で使う機会のなかった技だが、かつて慧舟會で一緒に練習したことのある高谷裕之は、秋山のヒジのうまさを絶賛していた。この新しい武器が、オクタゴンの中で炸裂するのか?
続いて、スネ当てを付けたキックのコーチとのミット打ちでは、パンチング・ミットめがけてシャープでコンパクトなパンチを叩き込み、コーチが放つパンチや蹴りをよけてはジャブやワンツーを入れる練習を繰り返す。PRIDEで活躍したデニス・カーンをアッパーでKOして見せたように、柔道出身でありながら秋山の打撃のうまさには定評がある。秋山にパンチの指導をしている吉田邦男コーチは、かつて藤猛(元WBA・WBC世界スーパーライト級王者)と戦ったこともあるボクサーで、K-1ファイターを指導したこともある人物だが、
「秋山選手の才能は、私がこれまで指導した中で最高です。教えたことをどんどん吸収するから、教えていてすごく楽しいですね」と太鼓判を押す。
柔道家として活躍した父に、物心ついた頃から柔道で鍛えられて培われたバランス感覚や運動能力の高さもあるだろうが、それだけではない。実は、秋山の祖父はボクサーだったのだ。パンチの当て勘のよさは、祖父の血を引いたものと言えるかもしれない。
加えて、新しい技術を吸収する貪欲さ。自らの頭で考え、さまざまな工夫を凝らす研究熱心さ――そうしたさまざまな要素が、秋山をして特別な格闘家にしているのではないだろうか。
「試合が近づいて来て、一人になるとふと試合のことを考えている。やっぱり緊張してきてるんでしょうね。ともかくケガをせず、その場に立つこと。後はアメリカの大きな会場での試合を楽しみたいです」
練習後、現在の心境を尋ねられると、そう答えた。
「今回は打撃でどこまでできるのかも見せたい」とも言うが、「相手のベルチャーは、『打撃も、寝技も、四つに組んだ力も強い』と前にベルチャーと戦った岡見選手から聞いてます。それを肝に銘じて、オールラウンドな戦いをしたい。相手はたぶん、怖いものなしで来ると思うんで、勢いに乗らせないことですね。後手に回らないようにしたい」
 セコンドには、6月にUFCで復帰戦を行なった宇野薫もつく。かつてBJ・ペンとUFCライト級タイトルマッチを戦って引き分けたこともある宇野は、心強い味方だ。
「本場のMMAファンに自分の印象を植えつけたいですね。日本のファンにも、日本人が外国で頑張る姿を見せたいと思います」
 そう言い残すと秋山は、7月4日に成田から、まずはハワイに向けて旅立った。宇野やキックのトレーナーも同行し、ハワイで時差調整をかねた最終特訓を行なった上でベガスに乗り込むのだ。
“反骨の柔道王”の金網初挑戦。舞台は記念すべきUFC第100回大会。そして彼の試合は、全米PPVの第1試合だ――お膳立ては整った。あとは結果を出すのみである。
(文中、一部敬称略)

秋山成勲が出場するUFC100は、7月12日(日)夜10時10分からハイビジョン放送される。

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1984年12月