BPO、フジテレビの「都知事関連報道に対する申立て」事案で「要望あり」との「見解」を公表

放送倫理・番組向上機構

 対象となった番組は、フジテレビが、2016年5 月22日に放送した『Mr.サンデー』。この放送について、舛添要一東京都知事(当時)の夫人と長男、長女が人権侵害を訴える申立書を委員会に提出。二人の子どもは1メートル位の至近距離から執拗に撮影されたと肖像権侵害を訴え、また、夫人がこうした撮影に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、事務所家賃に関する質問を拒否したかのように都合よく編集して放送されたと名誉毀損を主張していた。

 これに対してフジテレビは、二人の子どもを取材・撮影する意図は全くなく執拗な撮影行為など一切行っていない、夫人の発言も家賃に関する質問から夫人の回答を一連の流れとしてノーカットで放送したもので作為的編集の事実は一切ないなどと反論した。

 BPO放送人権委員会は、2017年7月4日に「委員会決定」を通知・公表し、審理の結果、子どもに対する肖像権侵害は認められないと判断した。また、雅美氏による抗議の放送場面は名誉毀損を問題とせず、放送倫理上の問題として検討するのが妥当であるとし、その検討結果として、映像の順序を入れ替えたり途中の一部をカットしたといった事情はないこと等に照らすならば、放送倫理上の問題があるとまではいえないと判断した。もっとも、この場面の放送については視聴者に誤解を生じさせないための工夫の余地があったと考えられるとした。
また、取材方法については、公共性・公益性の高い問題である以上まずは取材依頼をするべきであったし、取材の際に被取材者の言葉に正面から対応しなかったのは妥当ではなかったとした。
委員会は、フジテレビに対し、本決定の趣旨を真摯に受け止め、指摘された点に留意し、今後の番組制作に活かすよう要望した。

決定の概要は以下のとおり。

 フジテレビは、2016年5月22日放送の『Mr.サンデー』において、舛添要一東京都知事(当時)の政治資金の私的流用疑惑を取り上げ、この中で舛添氏の政治団体が、夫人の雅美氏が代表取締役を務める会社(舛添政治経済研究所)に事務所家賃を支払っていた問題を伝えた。放送2日前の早朝にカメラクルーが舛添氏の自宅・事務所前で雅美氏を取材し、番組では雅美氏が「いくらなんでも失礼です」と発言した模様などを放送した。
 この放送について、雅美氏と長男、長女が番組での謝罪などを求める申立書を委員会に提出した。二人の子どもは取材の際に1メートルくらいの至近距離から執拗な撮影をされ衝撃を受けたとして肖像権侵害を訴え、また、雅美氏はこうした子どもの撮影に抗議して「いくらなんでも失礼です」と発言したのに、事務所家賃に関する質問を拒否したかのように都合よく編集して放送されたために名誉を毀損されたと主張している。また、取材依頼なしでの取材、子どもの登校時にあわせた早朝の取材、子どもの撮影をやめるよう求めたのにフジテレビが答えなかったこと等につき放送倫理上の問題があったと主張している。

 委員会はこの申立てを審理し、大要、次のとおり判断した。
 二人の子どもの撮影は、フジテレビによる雅美氏の取材の際に、いわゆる映り込みとして生じたと考えられる。政治資金流用疑惑のある家賃支払先の会社代表者である雅美氏を取材することには高い公共性・公益性が認められ、子どもの撮影は、そのような取材に伴う付随的撮影として相当な範囲を超えるものではないから、二人の子どもに対する肖像権侵害は認められない。

 雅美氏による抗議を放送した部分は、政治資金流用疑惑のある家賃関係の質問に対して雅美氏がキレて怒った印象を視聴者に与え、雅美氏にマイナスイメージを与える。しかしながら、社会的評価の低下をもたらす具体的事実は摘示していないし、実際の映像を放送したにすぎないといった事情から、この点は名誉毀損を問題とせず、放送倫理上の問題として検討するのが妥当である。

 そのうえで、この部分につき放送倫理上の問題を検討すると、同放送部分は、雅美氏が実際には子どもの撮影に対して抗議をしたのに、家賃問題に関する質問に対してキレたという誤解を視聴者に与えるものである。ただし、映像の順序を入れ替えたり映像の途中を一部カットしたといった事情はないこと等に照らすならば、放送倫理上の問題があるとまでは言えない。もっとも、この場面の放送については視聴者に誤解を生じさせないための工夫の余地があったと考えられ、フジテレビは、本決定の指摘を真摯に受け止めて今後の番組制作に活かすよう要望する。

 取材方法に関しては、早朝に取材を行ったことに特に問題はないが、取材依頼を試みることは通常の取材手続きとして重要かつ基本的なことであるうえ、本件は政治資金流用疑惑という公共性のある事項についての取材であったから、仮に事前に取材を申し込んでも十分な対応は期待できないと判断したとしても、事前に取材依頼を試みるべきだったと考えられる。また、取材の際に被取材者からの言葉に正面から対応しなかったのは妥当ではなかった。これらはいずれも放送倫理上の問題まで生じさせるものではないが、フジテレビがこれらの点に改善の余地がなかったか検討し今後の番組制作に活かすよう要望する。

■委員会決定の全文はこちら
http://www.bpo.gr.jp/?p=9148&meta_key=2016

■委員会決定の「見解」とは
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124#gradatio

「申立てから『委員会決定』までの流れ
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1124

「放送人権委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=1141

放送倫理・番組向上機構 概要
名称: 放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性を踏まえて、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを
目的とした非営利・非政府の団体。言論・表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するた
め、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって
設置され、以下の三委員会から構成される。

委員会:
放送倫理検証委員会
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)
放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)

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東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館

理事長:
濱田 純一

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03-5212-7333
代表者名
大日向 雅美
上場
未上場
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設立
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