独自の排水センシングシステムとAI技術で、さまざまな気象条件に対応。京セラ滋賀野洲工場で、AI自動排水監視システムを導入
京セラ株式会社(代表取締役社長:谷本 秀夫、以下 京セラ)、京セラコミュニケーションシステム株式会社(代表取締役社長:黒瀬 善仁、以下 KCCS)、株式会社Rist(代表取締役社長:藤田 亮、以下 Rist)は、このたび、京セラ滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)の排水処理設備において、カメラを用いた排水センシングシステムとRist独自のAI(人工知能)画像分析技術を用いて、排水処理状態をリアルタイムに自動で良否判定を行うAI自動排水監視システムを導入し、本日より本格運用を開始しますので、お知らせいたします。
■ 開発背景
産業分野で使用される水は、施設内において国の定める排水基準を満たすよう適切に処理し、人と環境に与える影響を最小限に抑えなければなりません。SDGsでも安全な水に関する達成目標が掲げられています。
工場などの生産施設に設置される排水処理設備は、24時間365日運転することを前提に設計されています。排水処理状態の確認は通常、一定時間ごとに作業者が目視確認を行いますが、人手不足や業務効率改善の観点から自動で監視できる管理システムの開発が求められています。しかしながら、屋外の排水処理設備においては、点検する際の時間帯や気象条件などによって水面の見え方が異なるため、システムによる良否判定が難しく、作業者の経験が必要となっておりました。
これらの課題を解決するため、KCCSの100%子会社で、AI技術を用いたソリューションを提供するRistでは、2019年6月に、排水の処理状態をリアルタイムで監視、AIで自動点検を行うソリューション「Deep Inspection Liquid」のサービス提供を開始しました。京セラではこのサービスを活用し、2019年7月からシステムのインテグレーションを行うKCCSとともに京セラ滋賀野洲工場の排水処理設備で現場実証を重ね、このたびの本格運用に至りました。
■システム概要
凝集沈殿※槽にカメラを設置し、一定時間間隔ごと(時間間隔は自由に設定可能)に排水の処理状態を撮影し、クラウドサーバーに画像データが転送されます。クラウドサーバーではAIモデルによって排水処理状態の良否判定が行われ、異常と判断された場合は、作業者のパソコンやタブレット端末等にアラートが発報される仕組みです。リアルタイムでの点検に加え、処理不良が発生した際には、システムで予め状態を確認できるため、現場で速やかな復旧作業を行うことができます。また、京セラが長年培ってきた排水処理設備の点検ノウハウ、排水処理の画像データ、現場実証で得られたさまざまな環境データを活用したAIモデルの構築により、昼夜の明暗、晴雨や風といった気象条件などにより、水面の見え方が変化した場合でも、正確で安定した良否判定を実現しました。
※ 薬剤を投入し、排水中に含まれる金属などの含有物質をフロック(塊)の状態にし、沈殿させる工程。フロックが良好で濁り等がなければ、正常な処理状態。
なお、水面での泡の発生等により水中の凝集状態が観測できない領域については、画像前処理機能(右下図)を追加することによって判定対象外とし、良否判定精度の向上をはかっています。
■ 今後の展開
京セラでは、2021年12月までに京セラ滋賀野洲工場にある全ての排水処理設備にAI自動排水監視システムの展開を完了し、あわせて全国にある京セラの生産拠点への展開を図り、企業経営における業務効率改善と環境配慮の両立を目指します。また、KCCSならびにRistでは、排水処理だけでなく、「水」を取り扱うさまざまな現場に対応可能な処理監視ソリューションの研究開発を加速させ、早期の事業展開を進めてまいります。
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