代表・冨永拓也インタビュー「なぜ東芝9年のエンジニアが"中小企業のAI化"に人生を賭けたのか」

株式会社Leach(本社:東京都港区、代表取締役:冨永拓也)の代表が、東芝での9年間のキャリアを経て、生成AIスタートアップを創業した背景を語る。

株式会社Leach

熊本高専からNAIST、そして東芝へ──エンジニアの原点

――冨永さんのキャリアの出発点から伺えますか。

冨永:出身は熊本高専の情報電子工学科です。15歳から5年間プログラミングを叩き込まれて、その後は専攻科の生産システム工学で2年。高専って、大学よりも実践寄りの教育なんですよ。手を動かしてナンボの世界で育ちました。2006年には東工大・大阪大主催のスーパーコンピューティングコンテストにファイナリストとして出場しています。高校生相当の年齢でスパコンを触っていたことになりますね。

――その後、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)に進まれた。

冨永:はい。NAISTの情報科学研究科で修士を取りました。2012年から2015年までの3年間です。在学中に力を入れたのが学会発表で、2014年には情報処理学会のDICOMO2014で293件中1位のベストプレゼンテーション賞をいただきました。同時に優秀論文賞も受賞して、さらにDPSWS2014で優秀ポスター賞。1年で学会賞トリプル受賞です。

――学生時代からインターンにも積極的だったそうですね。

冨永:アカツキでは半年ほどがっつり入って、ソーシャルゲーム「シンデレラシリーズ」の公式サイトをRuby on Railsで新規開発しました。スマートフォン向けチャットアプリもiOS/Objective-CとRuby on Railsで作っています。Speeeでは2週間程度のインターンシップでWebアプリをチームで開発して、上級コースで優勝。エクスモーションではエンジニアインターンを経験しました。あと、孫泰蔵さんが主催するシードアクセラレーションプログラム「MOVIDA SCHOOL」の2期生にも選ばれています。

――アカツキ、Speee、エクスモーション。3社ともその後上場しています。

冨永:後から振り返ると面白い偶然です。成長企業の空気を学生のうちに吸えたのは大きかった。スタートアップのスピード感は、あの頃に体で覚えました。

東芝での最初の仕事──20万行のWebアプリ開発

――2015年に東芝に入社されます。最初はどんな仕事を。

冨永:最初の配属はインダストリアルICTソリューション社のIoTテクノロジーセンターです。ここでの大きな仕事が、社内向けのWebアプリケーション開発でした。コード規模は約20万行。社内の各開発プロジェクトからデータを収集して、経営層がダッシュボードとチャートで可視化できるシステムです。

――具体的にはどういう使われ方を。

冨永:複数のプロジェクトの進捗状況を横並びで比較できるんです。「このPJは他と比べて遅れている」「この工程にボトルネックがある」といった判断が、数字とグラフで一目で分かるようになる。経営層の意思決定を支援するツールですね。バックエンドにはAWS上にECSでクラスタリングシステムを構築して、ソフトウェア開発者向けのデータ活用基盤も一緒に作りました。

――いきなりフルスタックで大規模な開発ですね。

冨永:加えて、fault-prone module分析──バグが発生しやすいモジュールを予測する研究にも取り組みました。ソフトウェア工学的な分析ですね。2022年4月にはこの一連の仕事でソフトウェア技術センターの業務表彰・優秀賞をいただいています。

HDDファームウェアからTerraform 7,000行──技術の振れ幅

――キャリアの途中でHDDファームウェアの開発にも携わったと。

冨永:2019年10月から約1年間、ニアライン向けHDDのファームウェア開発に参画しました。ここは完全にローレベルの世界です。メモリの1バイトが勝負を分ける。データ消失に直結するからバグは絶対に許されない。20万行のWebアプリとはまるで別の緊張感がありました。

――そこからまた高レイヤーに戻る。

冨永:2020年10月以降は、C向けのデータ蓄積・分析基盤の設計に移りました。Terraformの.tfファイルだけで7,000行を超えるインフラ設計です。このあたりでAWSの知識が一気に深まって、2024年1月にAWS認定資格全12冠を約1ヶ月で取得しました。東芝初、東芝グループ内でも2人目という記録です。

――全12冠を1ヶ月。なぜそこまでのスピードで。

冨永:20万行のWebアプリ開発でバックエンドからフロントまで全部やった経験、HDDファームウェアで低レイヤーを極めた経験、Terraformで7,000行のインフラ設計をした経験。全レイヤーを実務で通過しているから、試験範囲がほぼ「仕事で使ったことがある知識」だったんです。机上の勉強ではなく、実戦の蓄積がそのまま資格に変換された感覚でした。

東芝テック CDO室──GoogleやMcKinseyとの協業

――2022年からは東芝テックに出向されています。

冨永:CDO(最高デジタル責任者)室への出向です。デジタルイノベーションテクノロジーセンターの先端ソフトウェア技術室に所属していました。ここでの大きな経験が、GoogleやMcKinseyとの共同プロジェクトです。

――具体的にはどういうプロジェクトだったのですか。

冨永:McKinseyのAI部門であるQuantumBlackと、NVIDIA GPUを用いた小売データのリアルタイム分析基盤を構築するプロジェクトに携わりました。POSシステムから得られる膨大な取引データをGPUで処理して、従来のCPUベースの分析を超える速度と精度を実現するというものです。McKinseyの公式サイトにも事例として掲載されています。

――世界トップレベルのコンサルタントやエンジニアと一緒に仕事をした。

冨永:McKinseyのコンサルタントから学んだのは「課題の構造化」の技術です。業務をヒアリングして、ボトルネックを論理的に分解して、優先順位をつける。この思考法は、今のLeachの生成AI顧問サービスでそのまま使っています。Googleとの協業ではGoogle Cloud Blogにも取り上げていただいて、世界トップのエンジニアリング文化──コードレビューの厳密さ、ドキュメンテーションの水準──を直に体験できた。これは本当に貴重でした。

――2023年には東芝AI技術者教育でも成績を残されています。

冨永:東京大学との共同開発プログラム「東芝版AI技術者教育」セッションAで、センター内から述べ20名ほどが受講する中、第2位の成績でした。所属のソフトウェア技術センターからは初の受賞者です。CTF(Capture The Flag)セキュリティコンテストでも68チーム中5位、SecBok2016ベースのCISO認定で最高のレベル5をいただきました。セキュリティもAIもインフラも、全方位で成果を出せたのは、東芝で全レイヤーの実務経験を積んできたからこそだと思います。

創業の原点──現場で見た「絶望的な風景」

――東芝を離れた直接のきっかけは何だったのですか。

冨永:きっかけは一つではありません。ただ、決定的だったのは、退職前後にさまざまな中小企業の現場を訪問したときの体験です。

――どんな光景を目にしたのでしょう。

冨永:ある会社では、社員の方がモニターに定規を当てて、PDFの書類と紙の帳票を1行ずつ突き合わせていました。別の会社では、受発注データを一つひとつ手作業でコピーアンドペーストしている。朝8時から夕方まで、ひたすら同じ作業を繰り返している人がいたんです。

――それはショッキングですね。

冨永:衝撃でした。東芝テックのCDO室で小売データのリアルタイム分析基盤を作り、McKinseyやGoogleと最先端のプロジェクトに取り組んでいた。その「上空」ではAI・DXが華々しく語られている。でも、足元ではまだこんな状態だった。このギャップを見たとき、「ここだ」と確信しました。

――そこから起業に至る。

冨永:大企業にいてはこの問題は解けない。中小企業の現場に入り込んで、生成AIの力で一つひとつの業務を変えていく。2024年11月13日に株式会社Leachを創業しました。

創業後──ハッカソン連続受賞と急成長

――創業後、2026年3月にはハッカソンで立て続けに受賞されています。

冨永:まずY Combinator公認ハッカソン「c0mpiled-7: San Fransokyo」で「The Biggest Engineering Lift」という技術賞をいただきました。最も技術的難易度の高いプロジェクトに贈られる賞です。そしてその約2週間後、Digital Garage共催・205名参加のBuilders Weekend 2026 TokyoでVoiceOS賞を受賞しました。

――2週間で2つの技術賞。

冨永:どちらも当日結成の国際チームで参加しました。初めて会った人たちと24〜48時間で動くプロダクトを作り切る。東芝で9年間培った技術力と、1日17時間コードを書き続ける体力があれば、短時間でも圧倒的なものが出せるという手応えがありました。

突合.comとSaturn──数字で見る成果

――現在のプロダクトについて教えてください。

冨永:主力は2つです。まず「突合.com」。PDFの書類同士をAIが自動で突き合わせるサービスです。あのモニターに定規を当てていた作業を置き換えるものですね。2人で2時間かかっていた作業が、1人で30分に短縮されます。

もう一つが「Saturn」。受発注管理のCORECから会計ソフトfreeeへのデータ転記を完全自動化するAIです。月額3万円で、毎日8時間の転記作業が10分になる。これは実際の顧客企業で計測した数字です。

生成AI顧問──実態は"技術の何でも屋"

――「生成AI顧問」サービスも提供されていますね。

冨永:月額5万円から、チャットツール(Microsoft Teams・LINE・Slackなど)で技術全般の相談に乗るサービスです。名前は「生成AI顧問」ですが、実態は技術顧問そのもの。生成AIの活用相談はもちろん、社内NASの構成どうしたらいい?という相談にも乗りますし、最新の生成AI動向を定期的にキャッチアップ情報としてお流しすることもある。Python勉強会を開催したこともあります。

――想像以上に守備範囲が広い。

冨永:外部ベンダーの「門番」にもなります。170万円の見積もりを精査して100万円に圧縮した実績もあります。中小企業にはIT部門がないことが多い。だから、高すぎる見積もりも、不要な機能の押し売りも、見抜けない。そこに僕が入る。東芝で大企業の開発プロセスを知り尽くしているから、ベンダーの提案の妥当性が瞬時に分かるんです。実はMENTAというメンタリングプラットフォームでも数百名のエンジニアを支援してきて、評価4.9、スコア8,658という実績があります。Docker環境構築からブロックチェーン設計書のレビュー、キャリア相談まで、本当に何でもやってきた。その経験がそのまま法人向け顧問サービスに活きています。

業種特化AI業務OS──6つの業界に同時展開

――業種特化型のOSプロダクトも展開中ですね。

冨永:FactoryOS(製造業)、FestOS(イベント業)、BuildOS(建設業)、RecruitOS(人材紹介業)、LogiOS(運送業)、WasteOS(廃棄物処理業)の6つです。汎用SaaSでは対応しきれない業界固有の課題を、AIで解決します。

なんでオールインワンを作るかというと、そもそも分断してたらAIが使いづらいじゃんということなんだよね。APIで連携するにしても面倒だし。

――なぜ6つも同時に。

冨永:累計40社以上(個人含む)を支援してきて分かったのは、業種ごとに「痛み」がまったく違うということです。製造業はFAX受注の手入力、建設業は請求照合の紙地獄、運送業は2024年問題への対応不足。それぞれに最適化されたシステムがなければ、本当の意味でのDXは進まない。

1日17時間コードを書く理由

――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージを。

冨永:僕は今も1日17時間コードを書いています。目は常に痙攣していますし、コロナ禍にはGWを使って横浜から熊本まで1,350kmを電動アシスト付き自転車で横断するような人間です(笑)。普通ではないことは自覚しています。

でも、なぜそこまでやるのかというと、現場で疲弊している人の顔が浮かぶからです。定規でモニターを見て突合している人。毎日8時間コピペを繰り返している人。その方々の2時間を30分に、8時間を10分にできる技術が、今ここにある。

「AIは難しい」「うちには関係ない」と思っている経営者の方。それは違います。まずはチャットでもメールでも、気軽にご連絡ください。「うちのこの業務、AIで何とかならない?」──その一言から、すべてが始まります。

会社概要

項目

内容

会社名

株式会社Leach

所在地

東京都港区

代表取締役

冨永拓也(Takuya Tominaga)

設立

2024年11月13日

事業内容

生成AIを活用した中小企業向け業務自動化ソリューションの開発・提供、生成AI技術顧問

主要プロダクト

突合.com、Saturn、生成AI顧問、FactoryOS / FestOS / BuildOS / RecruitOS / LogiOS / WasteOS

支援実績

累計40社超(個人含む)

URL

https://leach.co.jp

代表プロフィール

冨永拓也(とみなが たくや) 1989年生まれ。熊本高専 情報電子工学科(2005-2010)、同 専攻科 生産システム工学専攻(2010-2012)を経て、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)情報科学研究科 修士課程修了(2012-2015)。在学中にDICOMO2014ベストプレゼンテーション賞(293件中1位)・優秀論文賞・DPSWS2014優秀ポスター賞をトリプル受賞。孫泰蔵氏主催MOVIDA SCHOOL 2期生。アカツキ、Speee、エクスモーションにてインターン(いずれもその後上場)。

2015年より東芝にエンジニアとして9年間在籍。社内開発データの可視化Webアプリ(20万行)やAWSデータ基盤の構築、ニアライン向けHDDファームウェア開発、Terraform 7,000行超のインフラ設計など全レイヤーの開発を経験。東芝テック CDO室出向時には、McKinsey(QuantumBlack)・NVIDIA GPUによる小売データリアルタイム分析PJ、およびGoogleとのデータビジネスPJに従事。

AWS認定全12冠を約1ヶ月で取得(東芝初、グループ内2人目)。東大共同開発AI研修 セッションA 第2位(所属センター初)。社内CTF 68チーム中5位(CISOレベル5)。ソフトウェア技術センター業務表彰 優秀賞。特許保有(特許7086873号)。日本ソフトウェア科学会 第42回大会 チュートリアル講師(2025年)。

2024年11月に株式会社Leachを創業。2026年3月、YC公認ハッカソン c0mpiled-7にて技術賞「The Biggest Engineering Lift」、Builders Weekend 2026 Tokyoにて VoiceOS賞を受賞。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社Leach 広報担当 URL:https://leach.co.jp

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会社概要

株式会社Leach

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URL
https://leach.co.jp
業種
情報通信
本社所在地
東京都港区芝五丁目三十六番四号 札の辻スクエア9階
電話番号
-
代表者名
冨永 拓也
上場
未上場
資本金
-
設立
2024年11月