CFOの意識調査 経理業務の自動化および2017年に注目するリスク・イベント
2017年2月2日
デロイト トーマツ グループ(東京都港区、CEO 小川陽一郎)は、企業経営の参謀として様々な課題に直面するCFO(Chief Financial Officer: 財務担当役員)を支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目的に多岐にわたる活動を行っています。CFOの意識調査はその一環であり、今回の調査ではマクロリスク及びロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や人工知能(AI)が業務に与えるインパクトについて意見・見解を伺いました。特に、RPAは、経理処理などルールの決まった処理を複数のシステム(エクセル、ERP、メールなど)をつないで作業自体を自動化する仕組みで近年注目を集めています。(回答企業数45社 企業規模は回答企業の内訳を参照ください)
1.経理業務の自動化
AIとRPA各々について業務のどの部分に適用可能か伺ったところ、「ほとんどない」の回答は10%以下(AI:9%、RPA:2%)。半数以上のCFOが「AIに置き換えられる業務がたくさんある」と回答しており、RPAについては、「RPAに置き換えられる業務がたくさんある」との回答が40%に上ったことと合わせて、「間接業務のある程度の部分」及び「ごく簡単な標準定型業務」に導入可能という回答が各々1/3近くに上りました。現時点でかなりの人数のCFOがこれら技術の実際の業務の現場への適用の可能性に期待していることがうかがえます。
RPAがAIとの対比においてどのようにとらえられているのか聞いたところ、RPAは有益な自動化ツールではあるが、大きな恩恵は後の認知知能(CI:Cognitive Intelligence)または人工知能(AI:Artificial Intelligence)によってもたらされるとの回答が46%と最多でした。また、16%のCFOが「純粋なITの一種に過ぎない」との回答でした。
RPA とは工場でロボットが組立やパッケージングをするように、例えば人事、経理財務、調達、営業事務などの業務領域で、人による処理行動と全く同様に各種アプリケーションを操作することができるソフトウェアのことで、いわばソフトウェアを動かすソフトウェアです。CIやAIの開発によるさらなる恩恵は大いに期待できる一方で、既に企業で使われているERP やメールソフト、表計算ソフトなどをそのままに、従来、人が手作業によって行っていた入力やデータ連携の多くを自動化することで、大規模なシステム導入やプログラムの修正・変更をせず、短期間、低コストで導入できる点が最大の特徴です。
「デジタル人材」は、人に代わりうる可能性を指しており、「RPAもAIもデジタル人材の導入になりえる」が38%と、回答の多さから期待が高いことがうかがます。一方、コメントではAIやRPAを使いこなせる人材の育成が課題、とのご指摘がありました。
RPAの効果について、それが何をもたらすか、複数回答で答えていただきました。それほど恩恵をもたらすものではないという回答はわずか8%であり、様々な形での有効活用を期待しています。特に、品質の向上や精度の向上を期待するという定性面への効果を上げた回答が目立ちます。
実際の導入現場では、当初は“ロボットは24時間働きます”といった定量面での効果をアピールする場合が多いですが、利用が拡大するにつれ、「間違いのないきちんとした業務を遂行する」という業務品質の向上への効果が認められることからも裏付けられます。
最も回答の多かった「業務容量拡大・縮小の柔軟な対応」(23%)は、「長時間労働の解消に役立つ」というコメントもあり産業界の課題の “働き方”の問題にも一石を投じる可能性がうかがえます。
実際の導入予定については「現時点は未定」が61%と最多です。これは半ば予想された結果であり、注目は20%が「近年中に試験導入を検討中」と答えており、企業現場への急速な浸透がうかがえます。他の回答は「いいえ、効果が期待できない」(5%)、「いいえ、効果はありそうだが、他の取り組みを優先させる」(14%)と効果がなさそうだからという回答はわずか5%でした。コメントとしては、「経理部門のみへの導入では効果は限定的」という積極的なご指摘や、「導入の前提になる、業務の標準化の取り組みがまだまだ」という慎重なご意見が寄せられました。
過去に同様に行われたデロイトの海外でのサーベイでは、2015年に13%だった「近年中に導入を検討」という回答が2016年で76%と飛躍的に伸びたことを考えると、今後の変化に注目すべき数字と言えます。
RPAでどの程度の業務が自動化できるかという点については、マンパワーの20~30%と答えた方が半分以上(51%)で最多、続いて、40~50%という回答が28%、マンパワーの10%未満が21%でした。
2.2017年に注目するリスク・イベント
グラフ4は、CFOが2017年の事業展開を展望するうえで注目しているリスク・イベントの回答結果です。国内よりも海外イベントへの関心が高いことが確認できました。
回答が最も多かったのは米国のトランプ政権の動向に係るものであり、具体的には、「保護主義路線の明確化」(25%)、及び、「対中東・対中国を含む外交政策とそれが国際政治に与える緊張」(16%)です。同時に行った調査でトランプ政権下で米国経済が上昇するという回答は86%と前回の17%から急上昇しており、CFOは米国経済にはポジティブな効果をもたらすと評価しているものの、貿易政策や外交政策面での不安も同時に感じ取っているように見受けられます。
次に多くの回答を集めたのは「中国の経済政策の混乱」(12%)です。この回答に見られる通り、中国のマクロ経済政策が上手くいくかどうか、心配な面が残されています。欧州については、「極右・極左政党の伸長」(11%)や「英国のEU離脱に伴う混乱」(10%)がリスク・イベントとみられており、広い意味での政治リスクが意識されていることが確認できます。欧州では今年、3月のオランダ下院選挙、4月のフランス大統領選挙、夏場以降のドイツ連邦議会選挙といった政治イベントが控えているほか、イタリアにおいて解散総選挙の可能性もあります。こうしたなかで、CFOが欧州の政治リスクに敏感になっているのは素直な反応といえますが、これら各国の現状を見る限り、欧州において「想定外」の政治リスクが顕現化する可能性はあまり高くないとみることもできます。
「エマージング諸国の資本流出圧力の高まりや通貨急落」(3%)や「日本の財政規律への不安の高まりとそれを受けた金融市場の混乱」(2%)については、今のところCFOの関心はそれほど高くありませんが、いずれも潜在的には大きなインパクトを持ちうるイベントだけに注視が必要と思われます。特に、トランプ相場のなかでドル高が進むなかで、幾つかのエマージング諸国通貨への下落圧力が高まっていることを踏まえると、エマージング諸国発のリスクシナリオへの警戒は引き続き必要と言えます。
回答企業の内訳
アンケートの対象企業である上場日本企業を中心とした45社
■売上高
本年1月10日~1月20日に、Webサイト及び調査票送付により実施
デロイト トーマツ グループ(東京都港区、CEO 小川陽一郎)は、企業経営の参謀として様々な課題に直面するCFO(Chief Financial Officer: 財務担当役員)を支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目的に多岐にわたる活動を行っています。CFOの意識調査はその一環であり、今回の調査ではマクロリスク及びロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)や人工知能(AI)が業務に与えるインパクトについて意見・見解を伺いました。特に、RPAは、経理処理などルールの決まった処理を複数のシステム(エクセル、ERP、メールなど)をつないで作業自体を自動化する仕組みで近年注目を集めています。(回答企業数45社 企業規模は回答企業の内訳を参照ください)
1.経理業務の自動化
AIとRPA各々について業務のどの部分に適用可能か伺ったところ、「ほとんどない」の回答は10%以下(AI:9%、RPA:2%)。半数以上のCFOが「AIに置き換えられる業務がたくさんある」と回答しており、RPAについては、「RPAに置き換えられる業務がたくさんある」との回答が40%に上ったことと合わせて、「間接業務のある程度の部分」及び「ごく簡単な標準定型業務」に導入可能という回答が各々1/3近くに上りました。現時点でかなりの人数のCFOがこれら技術の実際の業務の現場への適用の可能性に期待していることがうかがえます。
RPAがAIとの対比においてどのようにとらえられているのか聞いたところ、RPAは有益な自動化ツールではあるが、大きな恩恵は後の認知知能(CI:Cognitive Intelligence)または人工知能(AI:Artificial Intelligence)によってもたらされるとの回答が46%と最多でした。また、16%のCFOが「純粋なITの一種に過ぎない」との回答でした。
RPA とは工場でロボットが組立やパッケージングをするように、例えば人事、経理財務、調達、営業事務などの業務領域で、人による処理行動と全く同様に各種アプリケーションを操作することができるソフトウェアのことで、いわばソフトウェアを動かすソフトウェアです。CIやAIの開発によるさらなる恩恵は大いに期待できる一方で、既に企業で使われているERP やメールソフト、表計算ソフトなどをそのままに、従来、人が手作業によって行っていた入力やデータ連携の多くを自動化することで、大規模なシステム導入やプログラムの修正・変更をせず、短期間、低コストで導入できる点が最大の特徴です。
「デジタル人材」は、人に代わりうる可能性を指しており、「RPAもAIもデジタル人材の導入になりえる」が38%と、回答の多さから期待が高いことがうかがます。一方、コメントではAIやRPAを使いこなせる人材の育成が課題、とのご指摘がありました。
RPAの効果について、それが何をもたらすか、複数回答で答えていただきました。それほど恩恵をもたらすものではないという回答はわずか8%であり、様々な形での有効活用を期待しています。特に、品質の向上や精度の向上を期待するという定性面への効果を上げた回答が目立ちます。
実際の導入現場では、当初は“ロボットは24時間働きます”といった定量面での効果をアピールする場合が多いですが、利用が拡大するにつれ、「間違いのないきちんとした業務を遂行する」という業務品質の向上への効果が認められることからも裏付けられます。
最も回答の多かった「業務容量拡大・縮小の柔軟な対応」(23%)は、「長時間労働の解消に役立つ」というコメントもあり産業界の課題の “働き方”の問題にも一石を投じる可能性がうかがえます。
実際の導入予定については「現時点は未定」が61%と最多です。これは半ば予想された結果であり、注目は20%が「近年中に試験導入を検討中」と答えており、企業現場への急速な浸透がうかがえます。他の回答は「いいえ、効果が期待できない」(5%)、「いいえ、効果はありそうだが、他の取り組みを優先させる」(14%)と効果がなさそうだからという回答はわずか5%でした。コメントとしては、「経理部門のみへの導入では効果は限定的」という積極的なご指摘や、「導入の前提になる、業務の標準化の取り組みがまだまだ」という慎重なご意見が寄せられました。
過去に同様に行われたデロイトの海外でのサーベイでは、2015年に13%だった「近年中に導入を検討」という回答が2016年で76%と飛躍的に伸びたことを考えると、今後の変化に注目すべき数字と言えます。
RPAでどの程度の業務が自動化できるかという点については、マンパワーの20~30%と答えた方が半分以上(51%)で最多、続いて、40~50%という回答が28%、マンパワーの10%未満が21%でした。
2.2017年に注目するリスク・イベント
グラフ4は、CFOが2017年の事業展開を展望するうえで注目しているリスク・イベントの回答結果です。国内よりも海外イベントへの関心が高いことが確認できました。
回答が最も多かったのは米国のトランプ政権の動向に係るものであり、具体的には、「保護主義路線の明確化」(25%)、及び、「対中東・対中国を含む外交政策とそれが国際政治に与える緊張」(16%)です。同時に行った調査でトランプ政権下で米国経済が上昇するという回答は86%と前回の17%から急上昇しており、CFOは米国経済にはポジティブな効果をもたらすと評価しているものの、貿易政策や外交政策面での不安も同時に感じ取っているように見受けられます。
次に多くの回答を集めたのは「中国の経済政策の混乱」(12%)です。この回答に見られる通り、中国のマクロ経済政策が上手くいくかどうか、心配な面が残されています。欧州については、「極右・極左政党の伸長」(11%)や「英国のEU離脱に伴う混乱」(10%)がリスク・イベントとみられており、広い意味での政治リスクが意識されていることが確認できます。欧州では今年、3月のオランダ下院選挙、4月のフランス大統領選挙、夏場以降のドイツ連邦議会選挙といった政治イベントが控えているほか、イタリアにおいて解散総選挙の可能性もあります。こうしたなかで、CFOが欧州の政治リスクに敏感になっているのは素直な反応といえますが、これら各国の現状を見る限り、欧州において「想定外」の政治リスクが顕現化する可能性はあまり高くないとみることもできます。
「エマージング諸国の資本流出圧力の高まりや通貨急落」(3%)や「日本の財政規律への不安の高まりとそれを受けた金融市場の混乱」(2%)については、今のところCFOの関心はそれほど高くありませんが、いずれも潜在的には大きなインパクトを持ちうるイベントだけに注視が必要と思われます。特に、トランプ相場のなかでドル高が進むなかで、幾つかのエマージング諸国通貨への下落圧力が高まっていることを踏まえると、エマージング諸国発のリスクシナリオへの警戒は引き続き必要と言えます。
回答企業の内訳
アンケートの対象企業である上場日本企業を中心とした45社
■売上高
■調査日・調査方法
本年1月10日~1月20日に、Webサイト及び調査票送付により実施
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