がんゲノム解析「リキッドバイオプシーを用いたネオアンチゲン同定と免疫細胞療法への応用」
第25回日本がん免疫学会総会 研究発表より
※1 腫瘍組織を用いず、血液等の体液からがんの遺伝子情報を解析する検査。
※2 正常細胞ががん細胞に変化する過程で発現する抗原(目印)。特有の遺伝子情報を持ち、がん細胞だけに現れる抗原。ネオ(新しい)+アンチゲン(抗原)=ネオアンチゲン(新生抗原)と呼ばれる。
※3 ある物質等と同一であるかどうかを確かめること。
【研究結果】
● 全体の9割以上の再発・転移・進行がんの症例でネオアンチゲンの同定が可能であったことから、ネオアンチゲンを用いた免疫細胞療法(樹状細胞ワクチン療法など)にリキッドバイオプシーが使用できる可能性が示唆されました。※
※再発・転移・進行がんでは生体組織による検査が困難であることが多く、ネオアンチゲンの同定においては、リキッドバイオプシーが現実的な選択肢となる可能性があります。
●化学療法、放射線療法、免疫療法の治療前後に実施したリキッドバイオプシー解析の結果、治療効果がある程度認められた症例では、がん細胞クローンの変化(遺伝子変異パターンの変化)を確認できました。リキッドバイオプシー解析が治療の効果判定に役立つ可能性が示唆されました。
●治療経過中にがん細胞クローンが変化するため、ネオアンチゲンを用いた免疫細胞療法では、各治療ステージにおいてリキッドバイオプシー解析を行い、ネオアンチゲン候補を新たに同定し、クローン変化に合わせて治療ペプチド(ネオアンチゲン)を変更していくことの重要性が示唆されました。
●遺伝子変異は患者様ごとに異なっており、がんの種類によって共通する変異はごく少数であることが判明し、個別化がん治療の重要性を認識することができました。
【目的・背景】
がん医療において遺伝子情報に基づく個別化治療の研究が国内外で進められており、遺伝子パネル検査など一部のがんゲノム解析検査では、国内の保険診療も始まっています。また、遺伝子変異数の多いがん細胞に対しては、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)を代表とする免疫チェックポイント阻害薬(剤)によるがん治療の奏効率(治療効果)が高いこともわかってきました。※4
これは遺伝子の変異によって新規がん抗原であるネオアンチゲンが出現し、自然免疫(体に元々備わっている免疫機能)が誘導されているためと考えられています。
東京ミッドタウン先端医療研究所は2010年の開設以降、樹状細胞ワクチン療法などのがん免疫細胞療法を提供しています。今回の研究では、同施設に通院されている患者様のうち、リキッドバイオプシーを用いてがんゲノム解析を行った症例を対象に、ネオアンチゲンの同定が可能か検討を行いました。
通常のがんゲノム解析は腫瘍組織を用いて行いますが、再発がん・転移がんの患者様は十分な組織量を得られないことも珍しくありません。また、がんゲノム解析結果から治療薬候補が見つかる患者様は約13.2%であり、適応内使用可能な薬剤は3.2%であるという結果も明らかになっていることから※5、治療薬候補のない遺伝子変異に対ネオアンチゲン免疫療法の応用可否についても検討しました。
※4 Tumor Mutational Burden and Response Rate to PD-1 Inhibition(N Engl J Med 2017; 377:2500-2501December 21, 2017)
※5 Feasibility and utility of a panel testing for 114 cancer associated genes in a clinical setting: A hospital based study. Cancer sci. 2019 1480 1490)
【発表概要】
■対象・方法
同施設を受診したがん患者様99名に対し、リキッドバイオプシー検査によるがんゲノム解析を実施
■解析がん種
肺がん(NSCLC)17例、すい臓がん 14例、乳がん 12例、胃がん 12例、大腸がん 10例
胆道がん 6例、子宮体がん 4例、卵巣がん・腹膜がん4例、頭頸部がん 3例
その他 17例(アポクリン腺がん、子宮頸がん、舌がん、十二指腸 GIST 、腎がん、膵内分泌腫瘍前立腺がん、
肉腫、脳腫瘍、肺小細胞がん、肺内分泌腫瘍、尿管がん)
■結果
得られたcfDNA量 (20ml 血液中) | 162.7 ± 352.3ng |
cfDNA中の腫瘍由来 DNA(ctDNA)比率 | 0.006%~90.6% |
生殖細胞系列病的バリアント疑いを持つ症例(PGPV) | 6症例(6%) |
症例ごとの遺伝子変異総数(遺伝子増幅およびMSI-highを除く) | 0~21 5.6±4.3 |
症例ごとのアミノ酸変化を伴う1塩基変異数(非同義) | 0~14 3.6±2.8 |
アミノ酸変化を伴う1 塩基変異(非同義)を持つ症例の割合 | 90/99 (90.1%) |
その他の遺伝子変異(総変異数に対する比率)
アミノ酸変化を伴わない1塩基変異(同義) | 16.3% |
フレームシフト | 4.8% |
ストップコドン | 4.3% |
5’3’上流・非翻訳領域での変異 | 3.8% |
部分欠失、癒合、重複 | 1.1% |
遺伝子の増幅、MSI-high | 12.6% |
下記は遺伝子変異の重複例。膵がんでのKRAS(G12D)が最多であった。
しかし全体の94.7%は他と重複しないユニークな変異であった。
遺伝子増幅とTMB(tumor mutation burden)
【医師紹介】
田口 淳一(たぐち じゅんいち)医師
東京ミッドタウン先端医療研究所 所長
東京ミッドタウンクリニック 院長
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 総院長
1984年 東京大学医学部卒業。
1993年 ワシントン州立大学へ留学。
東京大学医学部附属病院助手、元宮内庁侍従職侍医、東海大学医学部付属八王子病院循環器内科准教授を経て、2007年 東京ミッドタウンクリニック院長、2010年 東京ミッドタウン先端医療研究所所長に就任。2020年 5月 日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック総院長に就任。
<認定資格>
日本内科学会総合内科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
東京医科歯科大学 難治疾患 研究所 非常勤講師
日本人間ドック学会 遺伝子検査に関わる検討委員会 委員長
東京医科大学 客員教授日中医学交流センター 理事 他
【東京ミッドタウン先端医療研究所】
所在地 :〒107-6206 東京都港区赤坂9丁目7−1 ミッドタウン・タワー 6F
TEL :03-5413-7920(月曜~金曜 9:00-17:00 ※土曜・日曜・祝日除く)
URL :https://www.midtown-amc.jp/
【株式会社アドバンスト・メディカル・ケア】
会員制ホテル事業などを展開するリゾートトラスト株式会社のグループ企業。東京ミッドタウンクリニックをはじめ、全国の医療施設のプロデュースを行い、日本の長寿社会において“より健康に”“より美しく”生きるためのベストソリューションを提案。メディカルサービスだけではなく、医師監修による高付加価値サプリメントや、化粧品開発といった分野にも積極的に取り組んでいる。
所 在 地 : 〒107-6206 東京都港区赤坂 9-7-1 ミッドタウン・タワー6F
設 立 : 2006 年 2 月
代 表 者 : 代表取締役社長 古川 哲也
資 本 金 : 100,000,000 円
主な業務内容: 医療施設の運営支援ならびにサプリメント・化粧品の企画、販売等
URL: https://www.amcare.co.jp/
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