「肌内部のハリ弾力」を実感しやすい肌表面へ
細胞間脂質の並びにゆとりをもたせる新技術で角層を柔軟化
表面が硬いと、内側の弾力は感じにくいことに着目
数ある肌悩みの中でも多く挙げられるのが、ハリ・弾力の低下です。この悩みを解決するため、肌内部の変化に着目した研究がこれまで盛んに行われてきました(※1)。しかし、表面の硬いパンは内部の弾力を感じづらいように、肌の最表面である角層が硬いと肌内部からのハリ・弾力向上を実感しにくいと考えられます。そこで角層を柔らかくする新技術の開発に取り組みました。
※1 参考リリース: 「巨大なヒアルロン酸をボール状に凝縮して肌内部へ届ける」(2019年7月31日)http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20190731_4.pdf など
角層細胞間脂質の分子の並びにゆとりをもたせる
本研究では角層細胞の隙間を満たす細胞間脂質の柔軟性に着目しました(図1)。
細胞間脂質は、脂質の分子が規則的に配列した「ラメラ」と呼ばれる構造をとっています。ラメラ構造へのアプローチとして、これまでは欠損したラメラ構造を補填する技術(※2)が主でしたが、今回は「ラメラ構造を上からみたときの並び方」に着目しました。ラメラ構造を上から見ると、分子の並び方の違いから、密に並ぶ「直方晶」や、ややゆったりと並ぶ「六方晶」が知られています(補足資料1)。
一方、細胞間脂質は液状の油剤が混ざると柔軟化します。人工細胞間脂質を用いてラメラ構造と柔らかさの関係を解析すると、「直方晶」は非常に硬く、「六方晶」はやや柔らかいことが判明しました。このことから、油剤によってラメラ構造が変化することで柔軟性も変化するのではないかと考えられました。しかし、油剤によってはラメラ構造を作る脂質成分が油剤に溶け込みラメラ構造を維持できなくなるなど、角層の機能に悪影響を及ぼしてしまうことも考えられます。そこでラメラ構造の並び方に程よくゆとりを持たせる最適な油剤の種類や配合量を精査しました(補足資料2)。
※2 バリア機能の補助や化粧品成分のなじみ向上を目的としたベシクルや乳化製剤など
実使用でも狙い通りの実感
ラメラ構造の並びにゆとりができ柔軟化した細胞間脂質が、ハリ弾力実感の変化につながる可能性を調べるため、モデル実験を行いました(図2)。
本研究で見出した油剤で柔軟化させた人工の細胞間脂質をスポンジに塗布し反対側から押すと、スポンジの変形が大きくなりました。このことから、角層でも細胞間脂質を柔軟にすると、よりふっくらしやすくなることが期待できます。
実際に、本技術に加えて角層細胞の柔軟性を上げる技術(※3)を併用したスキンケア製剤について、専門評価者により評価したところ、21名中18名が本技術を用いていないスキンケア製剤と比べ肌のハリ弾力を実感しやすいと回答しました。
※3 参考リリース:「ポーラ化成工業が化粧品基材の持つ肌改善効果をデータで解明
高濃度グリセリンが皮膚バリアを破壊せずに角層細胞を柔軟化、扁平化しバリア機能を良化」(2013年6月25日)
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20130625.pdf
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【補足資料1】 細胞間脂質のラメラ構造
細胞間脂質のラメラ構造には、脂質の並び方が異なる「直方晶」と「六方晶」があります(図3)。直方晶は、前後の脂質分子との距離が近く、ぎゅっと密に詰まって並んでいる状態です。一方、六方晶は、前後の脂質同士の距離が少し遠く、ゆとりをもって並んでいる状態です。この他、脂質分子が乱れた「液体状態」もあります。
【補足資料2】 油剤によるラメラ構造の変化について
人工的に作った細胞間脂質に対して化粧品に用いる油剤を混合し、その時のラメラ構造を解析する実験で、ラメラ構造を変化させる油剤を調べました。ラメラ構造の解析にはX線散乱測定を用いました(図4)。
従来製剤に含まれる油剤(従来品の混合油剤)をベースとし、そこから種類や配合比をさまざまに変えラメラ構造への影響を調べたところ、人工細胞間脂質中の直方晶の割合が少なくなる油剤の組み合わせ(開発品の混合油剤)を突き止めました(図5)。
直方晶の割合が少なくなったことから、配合した油剤により、ラメラ構造を作る脂質同士の並びにゆとりができたことが示唆されます。
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