BPO放送倫理検証委員会、TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見を公表。放送倫理違反と判断。

放送倫理・番組向上機構


 放送倫理・番組向上機構[BPO] の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、審議していたTBSテレビ『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定 第26号)をまとめ、2017年10月5日、記者会見して公表した。


 TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』(2017年1月31日放送)の「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、4月の委員会で審議入りした事案。

 委員会は、男性の人間性を否定するような強烈な言葉を使ったこと、視聴者に「すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物」という印象を与えたことなどの編集や表現方法について、男性の人格を傷つけるだけでなく、ホームレスの人々への偏見を助長する恐れがあり不適切だったとして、放送倫理違反は明らかであるとした。さらに、別のホームレス男性の話を断りなく撮影し放送した点も、取材対象者との信頼関係を損ねる行為であり、これも放送倫理違反と判断した。そのうえで、番組制作スタッフにホームレス問題に対する認識の希薄さがあったことを指摘した。
 
  • 概 要
TBSテレビの全国ネット番組『白熱ライブ ビビット』は、2015年9月、東京都と神奈川県の間を流れる多摩川の河川敷で暮らしているホームレスの人たちを題材にした企画を放送して以来、「多摩川リバーサイドヒルズ族」と題してシリーズ化した。2017年1月31日に放送されたその「エピソード7」は、法定の狂犬病予防接種を受けさせずに多くの犬を飼っているホームレスの男性を「周辺の住民に迷惑をかけている人物」として取り上げた。その際、この男性を「犬男爵」と呼んだうえ、別のホームレス男性の発言を引用して、「人間の皮を被った化け物」とカラーのイラスト付きで表現した。
こうした放送内容に対し、貧困問題に詳しい大学教授やホームレス自立支援団体の理事長がインターネット上で、「ホームレスの人たちへの差別や偏見を助長する」などと厳しく批判した。その後、取材時の新たな問題も発覚したことを受けて、TBSテレビは3月3日、番組とそのホームページで「取材した男性を傷つける不適切な表現や取材手法があった」と認め、謝罪した。
 
  •  委員会の判断
 多くの犬を飼っているホームレスの男性について、揶揄していると受け取られかねない「犬男爵」と呼んだうえ、別の男性の発言を引用して、極端に誇張したイラストとともに「人間の皮を被った化け物」と決めつけた。この男性の話の脈略にはまったく触れず、人間性を否定するような強烈な言葉だけをピックアップした編集や表現方法には弁解の余地がない。

 ホームレスの男性がカメラマンらに向かって怒鳴る「出会いのシーン」は、番組ディレクターが意図したものなのか、それとも想定を超えた成り行きだったのか。事実経過を詳しくたどると、「過剰な演出」とまで言い切れるかどうかは微妙である。しかし、VTRでこのシーンを冒頭から計3回も使い、「すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物」という印象を視聴者に与えたことは、表現上の問題として看過できない。
男性の人格を傷つけるだけではなく、ホームレスの人々への偏見を助長する恐れもあるこれらの表現は不適切であり、放送倫理違反は明らかである。
 
 そもそも、「人間の皮を被った化け物」などという別の男性の話は断りもなく撮影され、放送された。委員会はテーマの重要度や取材目的、公共性・公益性との兼ね合いから、必ずしも「無断撮影」自体を否定するものではない。しかし、この場合は、TBSテレビが報告書で「重大な信義則違反」と認めているように、この男性との信頼関係を損ねる行為であり、これも放送倫理違反と判断する。
一方、今回の問題が表面化した後、TBSテレビの一連の対応は迅速で、適切だった。番組とホームページでの謝罪の内容も率直に自らの過ちや問題点を認めており、真摯な自律的姿勢がうかがえた。



■委員会決定の全文はこちら
https://www.bpo.gr.jp/?p=9245&meta_key=2017

<参考資料>
「放送倫理検証委員会」運営規則
http://www.bpo.gr.jp/?page_id=903

■ 放送倫理・番組向上機構 概要
名称:放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的と
した非営利・非政府の団体。言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応する独立した第三者機関で、民放連およびNHKによって設置され、以下の三委員会から構成される。

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