“つながっていても、話し合えない”世代、通信制課程でも“対話力”を育てるAIプログラムを実施
新潟青陵高校とコグニティ、AI活用の共同研究で「話す力」「つなぐ力」を可視化・育成
定性情報の定量化技術によるコミュニケーションリサーチを行うコグニティ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役:河野 理愛、以下 コグニティ)は、学校法人新潟青陵学園 新潟青陵高等学校(新潟県新潟市、以下 新潟青陵高校)とともに、生徒の「話し合い力(対話力)」を科学的に育成する実証実験を実施しました。
新潟青陵高校は、2026年度に開設予定の広域通信制課程(設置認可申請中)において、話し合いを活性化するという新たなアプローチの1つとして、AIを使った「対話の型」を学ぶことで発言のハードルを下げることに挑戦しています。

■ 背景:Z世代は「準備していないと発言しない」
コグニティが2024年に実施したコミュニケーション調査「Z世代のコミュニケーション特性 2024」*によると、Z世代は「自信のないことや準備していない内容には発言しない」という傾向が明らかになっています。非同期・非対面のやりとりに慣れた世代にとって、突然の対話や議論への参加は心理的ハードルが高いことが課題となっていました。
そこで、新潟青陵高校では通信制課程の開設にあたり、生徒が“話し合いの型”を事前に理解し、安心して参加できる環境の整備に着手。議論内容をAIで分析し、具体的な改善点や長所を数値とグラフで示すプログラムを共同で開発しました。
*https://cognitee.com/docs/COGSURVEY202405.pdf
■ 内容:教師の「勝ちパターン」からレポートを生成
2025年1月、教員と生徒によるディスカッションデータ(計4件)をAIで分析し、「良いディスカッション」に見られる構造的特徴を抽出。これをもとに、生徒一人ひとりに合わせたフィードバックレポート「COG-DISCUSS(コグ・ディスカス)」を開発しました。「COG-DISCUSS」は、1つのディスカッションについて、表紙とCHECK1〜4の構成により、ファシリテーションスキルと、メンバー全員の議論スキルについてのポイントと改善点が抽出できる分析レポートとなります。ファシリテーションスキルについては、議論の深堀りのきっかけになった問いかけが進行役(以下、ファシリテーター)から何回されたかが検出されることや、話題の発散が見られた場合には「話の流れ」が適切だったかを確認する表示がされます。また、メンバーの議論スキルについては、説明不足の話題がある場合にその話題を明示し、更に充実した話し合いを促す検出がされます。

3月には、開発したレポートを用いたワークショップを生徒向けに実施。AIが可視化した「先生たちの議論」と「自分たちの議論」の違いをグラフで比較しながら、どうすれば議論が深まるかの“型”を学ぶ講義と、実際の再ディスカッションをセットで実施しました。

■ 結果:レクチャー前後のスキルレベルをAI分析で可視化
レクチャー前と後で、高校生たちの議論の内容がどう変わったかを分析。結果として、以下のような変化が数値で裏付けられました。
・メンバーの発言量が平均約83%増加:メンバーが話す割合は53.3%から、88.9%へ
・話題の発散が減少:話合いの抜け漏れがある話題が3.1話題から1.4話題に減少
・「問いかけの質」が向上し、議論の双方向性が強化:メンバー間の質問の数が1.5倍に

【話量の違い】
レクチャー前は、ファシリテーターの進行で参加メンバーからの発言・議論を促すことができず、ディスカッション時間のおよそ半分はファシリテーターが話している状態だった。しかしレクチャー後は、ファシリテーターの話量が5分の1程度に抑えられ、各参加メンバー1人あたりのトーク量が均等に議論が行われるようになった。

【話題構成の違い(特許技術)】
レクチャー前は、1つのディスカッション内で検出された「掘り下げのない話題数=議論が少ない話題数」が平均「3.1」話題と多く、各トピックの掘り下げが浅くなってしまう傾向が見られた。話題が次々と切り替わることで、議論全体にまとまりがなく、聞き手にとっては論点が把握しづらい状態だった。
一方、レクチャー後は議論が少ない話題数が「1.4」話題にまで減少。話題の絞り込みが行われ、1つのトピックについて十分に深掘りされる構成に変化した。ディスカッションの質を高めるために必要な、情報量を増やすよりも、テーマを絞って掘り下げるスキルが発揮された結果となっている。

【フィードバックレポート上の変化】
初回のディスカッションでは、議論における“話の筋道”や“問いかけの質”にバラつきがあり、AIの評価スコアもグループごとの差が大きく出ていた(スコア分布:0〜36点)。
しかしレクチャーと個別フィードバックを経た再ディスカッションでは、全グループが一定水準以上の構成的な議論を実現し、スコアも80〜100点の高水準に集中。とくに、「進行役の迷いが少ない」「参加者が論理的な問いかけを行っている」「意見に対する補足がなされている」点が共通して観察された。
この変化は、構造化されたフィードバックレポート(COG-DISCUSS)が、実践的な改善を後押しした証左である。
■ 通信制課程だからこそ、“対話”の価値を高める教育へ
新潟青陵高校の通信制課程は、今後さらにコミュニケーションスキルなど持ち運び可能なスキルである「ポータブルスキル」の育成に力を入れていく方針です。物理的な距離はあっても、学びは“つながり”の中にある——その実現のため、AIを活用した科学的フィードバックが、これまでの通信教育に新たな可能性を示しています。
コグニティでは、これまで“勘と経験”に頼っていた定性的な対話や思考の力を、独自のAI技術によって可視化・定量化することで、見えにくかった力も公平に評価できる社会の実現を目指しています。
今回の新潟青陵高校との取り組みは、こうした考えのもと、教育現場においても“伝える力”や“つながる力”を客観的に育てる試みとして位置づけられています。今後も、高校教育をはじめとした多様な現場で、誰もが自分の成長を実感できる仕組みの構築に取り組んでまいります。

コグニティ株式会社
◯ 社 名 :コグニティ株式会社
◯ 事業内容 :定性情報の定量化技術を使った調査・分析サービス
◯ 本 社 :〒140-0015 東京都品川区西大井一丁目1番2−208号
◯ 設 立 :2013年3月28日
◯ Web :https://cognitee.com/
◯ 資本金 :6億円(準備金含む)
◯ 従業員 :74 名(リモートワーカー含む)
◯ 代表者 :代表取締役 河野 理愛
◯ 受賞歴他 :
■EY Innovative Startup エンタープライズ部門受賞(2019)
■第11回 HRアワード 人材開発・育成部門 最優秀賞(2022)
■第22回 一般社団法人日本テレワーク協会 テレワーク推進賞 優秀賞受賞(2022)
■第3回TOKYOテレワークアワード 推進賞(2023)
■一般社団法人生成AI活用普及協会協議員(2023〜)
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