~「あたりまえをたやさないまち」池田町~「能楽の郷 池田 葉月薪能」を開催しました
日本の伝統文化に触れる夏の一夜、760年の伝統を受け継ぐ地元10代の若き舞手も参加。人間国宝による競演で約800人の観客を魅了。
池田町水海には「水海の田楽・能舞」が760年以上受け継がれています。鎌倉幕府の第5代執権、北条時頼公が雪で立ち往生した際、村人たちが「田楽」を舞い、そのお礼として時頼が「能」を教えたのがその始まりと語り継がれており、毎年2月15日には、安寧と豊穣を願いながら春の訪れを待つ神事として舞を奉納しています。
第一部の民俗芸能交流会では伝統文化の担い手たちが、ともに国の重要無形民俗文化財に指定されている池田町の「水海の田楽・能舞」と京都市の「嵯峨大念佛狂言」から演目を披露。「水海の田楽・能舞」の中で唯一、10代の若者が舞手を務める「あまじゃんごこ」がトップバッターを飾りました。
第二部の能狂言には、かつての越前の猿楽ともゆかりのある地・京都から、人間国宝に認定された「金剛流 二十六世宗家 金剛永謹師」と「大蔵流 茂山七五三師」をお招きしました。能狂言の演目には「第20回全国能面公募展」の優秀作品3面が使用されました。
当日は「変身・能役者体験」をはじめ「創作能面展」「池田の古面パネル展」も開催。
会場には池田町の食や木の魅力を楽しめる物販店のほか、茶道の野点席も設けられ、大いににぎわいました。夜は町民によって廃油から作られた約1000個のエコキャンドルの灯りが参道を彩り、終演時に打ち上げられた花火には歓声が上がりました。池田町の夏の一夜は幻想的で厳かな雰囲気の中、日本の伝統文化に触れる人々の温かい笑顔に包まれました。
これからも、「あたりまえをたやさないまち」池田町は760年の伝統を受け継ぐ「能楽の郷」として、日本の文化を大切に継承していきます。
<葉月薪能(はづきたきぎのう):参考資料>
薪能は、鎌倉時代に奈良の興福寺で始まったとされており、能舞台の周囲にかがり火を焚いて演じる能楽です。池田町では昨年23年ぶりに薪能を復活。今年は「水海の田楽・能舞」に加え、京都市の「嵯峨大念佛狂言」の演舞が披露されました。ともに国の重要無形民俗文化財に指定されています。
また、狂言方二大流派の一つである大蔵流の茂山七五三(しげやましめ)さん、茂山宗彦(しげやまもとひこ)さんによる演目「二九十八」、興福寺を母体として発達したシテ方五流の一つ金剛流 二十六世宗家金剛永謹(こんごうひさのり)さん、金剛龍謹(こんごうたつのり)さんによって「泰山府君」を披露。
シテ方である茂山七五三さん、金剛永謹さん、さらに「泰山府君」でワキ方をつとめた宝生欣哉(ほうしょうきんや)さんは、今年新たに人間国宝に認定されました。葉月薪能は3人の人間国宝の舞の鑑賞が叶った貴重な機会となりました。
池田の総社である須波阿湏疑(すわあづき)神社の境内に設けられた舞台の前でかがり火を焚き、その中で演じられる薪能は、幻想的で荘厳な雰囲気に包まれました。
能や狂言で使用する面は、池田町が平成9年から開催している「全国能面公募展」に出品された作品から選ばれたものです。池田町の能面公募展の優秀作品は、自分の製作した能面が主要流派の舞台で使用されることから、現代の面打ち師にとっての登竜門になっています。
【第一部「民俗芸能交流会」】
水海の田楽・能舞より 田楽「あまじゃんごこ」/能舞「田村」
池田町で760年以上、絶えることなく受け継がれている水海の田楽・能舞は、1つの祭礼において田楽と能舞(猿楽能)の両方を奉納する芸能で、五穀豊穣、息災延命、天下泰平、国土安穏を祈願します。
毎年2月15日に池田町水海の鵜甘(うかん)神社で、田楽四番(烏とび・祝詞・あまじゃんごこ・阿満)・能舞五 番(式三番・高砂・田村・呉服・羅生門)が奉納され、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
今回はその中から、荒ぶる神々を鎮め世界を清める田楽「あまじゃんごこ」と坂上田村麿の武勇を示す能舞「田村」を上演しました。
田楽「あまじゃんごこ」を披露した地元10代の舞手たち
森田彬太さん(高校1年生)写真左
「会場の熱気を感じて緊張しましたが、最後までやり切れてよかったです」
石丸純乃介さん(中学3年生)写真中央
「この暑さに戸惑いましたが、いつも通りの舞を披露できたと思います」
村中亮太さん(中学3年生)写真右
「水海の誇りをもって大勢の前で舞い切ったこと、いい思い出になりました」
嵯峨大念佛狂言より 「釈迦如来(しゃかにょらい)」
京都の清凉寺で受け継がれている郷土色豊かな伝統芸能で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。すべての役者が面をつけ、無言で演じられるのが特徴です。大念佛狂言は、能系統の「カタモン」とコミカルな「ヤワラカモン」に分けられますが、今回は「ヤワラカモン」の代表格。美人の母親がお参りすると、「ガッテン、ガッテン」と嬉しそうに動く人間臭いお釈迦様が会場を沸かせました。
【第二部「葉月薪能」】
<火入れ式>
日没が近づいた第二部のはじめに「火入れ式」が執り行われました。地元の中学生山内誉さん(2年生)が巫女を担い、国の重要文化財に指定されている須波阿湏疑神社本殿から種火を受け取り、舞台前に届けました。届けられた種火は面打ち師をはじめ関係者により、厳かな雰囲気の中で火入れされました。
大蔵流狂言 二九十八(にくじゅうはち)
出演:茂山七五三(しげやましめ) 茂山宗彦(しげやまもとひこ)他
伝統を大切にしながら親しみやすい狂言を目指す茂山千五郎家による「二九十八」。舞台は室町時代。妻を持たぬ男が良き伴侶を授かろうと清水寺へ参詣したところ、夢で「西門に立った女を妻にせよ」とのお告げを授かります。今年人間国宝に認定された茂山七五三さんが妻乞いする「男」を好演しました。
「女」の面には、第20回全国能面公募展で創作能面の部・審査員特別賞作品に選ばれた清水充子さん(京都府)作の能面「乙(おと)」が使用されました。
金剛流能 泰山府君(たいさんぷくん)
出演:金剛永謹(こんごうひさのり) 金剛龍謹(こんごうたつのり)他
桜の咲き誇る頃、風雅を愛する「中納言」は延命の神「泰山府君」に桜の延命を祈ります。そこに「天女」が現れ、桜を手折り昇天しますが、「泰山府君」が呼び戻し、桜を元に戻させ、さらに大いに神通力をふるって、桜の命を延ばします。人間国宝に認定された金剛永謹さんと宝生欣哉さんが「泰山府君」と「中納言」を演じ、舞台で繰り広げられる優美で豪快な舞に大きな拍手が送られました。
「天女」の面に第20回能面公募展・写し面の部で最優秀賞に選ばれた田中徳平さん(福岡県)作の能面「増女(ぞうおんな)」、「泰山府君」の面に審査員特別賞に選ばれた臼田祐翠さん(岐阜県)作の能面「小癋見(こべしみ)」が使用されました。
【関連イベント】
〈変身・能役者体験〉場所:池田町能面美術館
池田町の「水海の田楽・能舞」で使われていた能装束と能面(レプリカ)を着装し、保存会の方々の指導による所作体験と記念撮影を行いました。
今年初開催となった能役者体験に愛知県から参加した亀丸美緒さん・ 日高杏沙美さんは、「面をかけ、視野が狭くなった状態で舞うことのすごさを実感しました」「衣装や面の重みを体感し、能を今までよりも身近に感じることが出来ました」と感想を語りました。
池田町では今後も、能面・装束の着装、所作など、伝統文化に触れる機会創出に取り組んでまいります。
〈創作能面展〉場所:池田町能面美術館
古面をコピーすることが常道とされる面打ちの世界で「創作能面」の分野を切り開いてきた池田町在住の面打ち師、桑田能忍・能守親子。 両氏の代表作を含む約100点の能面を展示しています。
■令和5年度能面美術館企画展「創作能面展」
期間:令和5年8月31日(木)まで開催中
時間:10時~16時(土日祝は17時)
入場料:300円
会場:池田町能面美術館(池田町志津原17-2 TEL:0778-44-7757)
〈池田の古面パネル展〉 場所:須波阿湏疑神社
先人と地域を敬う象徴として大切に保管され、普段は一般公開していない室町期からの貴重な古面41点を、須波阿湏疑神社拝殿前にて、パネルにて展示しました。来場者は貴重な古面写真を熱心に観覧しました。
〈エコキャンドル・花火〉
池田町の青年団をはじめとする町民たちが3日かけて作成した約1000個のエコキャンドルが、神社参道を照らしました。エコキャンドル作りには池田町で集められた廃油が使用されており、2005年から環境活動の一つとして実施しています。 また終了後、約10分の打ち上げ花火が夏の夜空を彩りました。
〈池田町ならではの多彩な出店〉
会場には池田町ならではの出店が来場者を迎えました。池田町の食品加工研究支援施設「食ラボ」からは地元野菜をたっぷり使った「いけだ玉まんじゅう」を初お披露目。そば打ち名人による十割そばや、手作りの赤飯、ます寿司、米粉のお菓子など、来場者を食でおもてなししました。
さらに、Tシャツなどの記念グッズや、池田町の木工体験施設「ウッドラボいけだ」から若き職人たちが葉月薪能を記念して制作したお土産品も販売されました。
また、特設された野点エリアでは池田抹茶教室のみなさんが抹茶を販売しました。薪能とあわせて日本文化を感じる夏のひとときとなりました。
■「あたりまえをたやさないまち」池田町
福井県池田町は人口約2300人、森に囲まれた小さな町です。心をいやす日本の原風景、作物をいつくしむ感謝の気持ち、人と人が思いやり、支えあって暮らす「あたりまえをたやさないまち」を目指しています。
池田町町長・杉本博文
「人々が共同して暮らす小さな社会だからこそ、人々が関わりあえる、相互扶助が生きるまちでありたいと 願っています」
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