バッテリー市場、2035年に6.8TWhへ 供給過剰下で競争軸は「増産」から「コスト・歩留まり・供給網」へ

2025年の世界の過剰生産能力は約900GWh、世界で販売されるバッテリーの75%以上をアジアのメーカーが製造 マッキンゼー、最新ホワイトペーパー「バッテリー2035:新たな競争優位を確立する」公開

マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン

マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本代表:岩谷直幸)はこのたび、2035年に向けた世界のバッテリー市場、技術進化、製造競争力、サプライチェーンの変化を分析した最新ホワイトペーパー「バッテリー2035:新たな競争優位を確立する」を公開しました。 

世界のリチウムイオン電池需要は2024年に1.0TWhを突破し、2025年には約1.6TWhに達しました。マッキンゼーは、世界のバッテリー需要が2030年に4.2TWh、2035年には6.8TWhまで拡大すると予測しています。2035年の需要の85%以上をリチウムイオン電池が占める見込みです。 

一方、需要が急増しているにもかかわらず、バッテリー業界ではすでに供給過剰と激しい価格競争が起きています。 

2025年時点のリチウムイオン電池の世界の過剰生産能力は約900GWh。バッテリーパック価格は2024年に20%低下した後、2025年にも8%下落し、過去最低となる108ドル/kWhまで低下しました。これは2018年の半分以下の水準です。 

つまり、2035年に向けて市場が大幅に成長するからといって、すべてのメーカーがその恩恵を受けられるわけではありません。 

「どれだけ生産能力を持つか」から、「どれだけ低コストかつ高い歩留まりで生産し、競争力あるサプライチェーンを構築できるか」へ。 

バッテリー産業は、次の競争局面に入りつつあります。 

本稿は、マッキンゼー・バッテリー・アクセラレーターチームの見解をまとめたもので、住川武人(シニアパートナー)、山科拓也(パートナー)、アンドレアス・ブライター、デニー・ティーミッヒ、パトリック・シャウフス、ラファエル・レティッヒ、ウェンティン・ガオが共同で執筆し、小泉正剛、桂さゆ里が監訳・監修しました。 

▼ホワイトペーパー
「バッテリー2035:新たな競争優位を確立する」 

■2035年、世界のバッテリー需要は6.8TWhへ 

世界のバッテリー需要は、EVに加え、再生可能エネルギーを支えるバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の拡大により、今後も大きく伸びる見通しです。 

マッキンゼーの分析では、2035年の世界需要約6.8TWhのうち、モビリティ用途が約85%、BESSが約12%を占める見込みです。また地域別では中国が約49%、EUが19%、北米が14%と予測しています。 

世界のバッテリー需要は2035年に約6.8TWhへ――用途・地域・技術・材料系統別の市場構造 

■市場は3倍超へ、それでもバッテリー価格は過去最低 

バッテリー業界が直面しているのは、「需要拡大」と「供給過剰」が同時に進む市場です。 

2025年の過剰生産能力は約900GWhに達し、世界で販売されるバッテリーの75%以上をアジアの主要メーカーが製造しています。とりわけ上流・中流のサプライチェーンではアジアの優位性が強く、世界のバリューチェーンには大きな地域的不均衡があります。 

価格競争も激化しています。2025年のバッテリーパック価格は108ドル/kWh、セル価格は74ドル/kWhまで下落しました。今後は技術進歩によるコスト低減と原材料価格の回復が相殺し合い、価格が概ね横ばい、あるいは若干上昇する可能性もあります。マッキンゼーは低原材料価格シナリオの場合、2035年の世界平均パックコストをNMCで75~90ドル/kWh、LFPで55~65ドル/kWhと予測しています。 

成長市場でありながら、単純な増産では利益を確保できない――これが2035年に向けたバッテリー競争の重要な前提となります。 

■工場立ち上げ時にはスクラップ率70~80%も――「歩留まり」が利益を左右 

バッテリー産業の競争力を左右するのは、材料価格だけではありません。 

新しい生産ラインの立ち上げ初期には、スクラップ率が70~80%に達するケースもあると本稿は指摘しています。スクラップ削減によって得られるコスト効果が、原材料価格の値下げ交渉による節約額を上回る場合も少なくありません。 

マッキンゼーは、競争力のある工場ではセル生産開始から18カ月以内に、歩留まり95%以上、OEE(総合設備効率)85%以上を目指すべきだとしています。 

そのためには、設備そのものに加え、ドライ電極コーティング、高速スタッキング、高効率な充放電工程、デジタルツイン、インライン解析などを製造プロセスへ組み込む必要があります。 

例えば、欧州におけるドライ電極コーティングの導入では、設備投資とエネルギー消費の削減によって2~3ユーロ/kWhのコスト削減が可能になると試算しています。 

■「次世代電池=全固体」とは限らない――量産は2030年以降の可能性 

2035年に向けて、電池技術そのものも進化します。 

市販のリチウムイオン電池のエネルギー密度は過去15年間ですでに2倍以上に向上しており、マッキンゼーは2035年に向けても、半導体における「ムーアの法則」に似た継続的な進歩が期待できるとしています。 

2035年に向けて進化するバッテリー技術と製造プロセス 

量産EVやBESSでは、コストと熱安定性に優れるLFPが引き続き重要な材料系統になる見通しです。EUでのLFPシェアは2030年に49%、2035年には52%、北米ではそれぞれ47%、49%になると予測されています。 

一方、注目度の高い全固体電池の商用規模での量産は2030年以降になる可能性が高いと分析しています。 

2030年時点では、全固体電池のエネルギー密度は400~450Wh/kg、生産コストは約100ドル/kWh、充放電時間は12~20分程度になると試算しています。ただし、量産の成否は界面形成や高歩留まりなど、製造上の課題を克服できるかに左右されます。 

つまり、2035年までの競争では「次の革新的な電池を待つ」だけではなく、既存のLFP・NMCをどこまで改良し、量産技術そのものを進化させられるかが重要になります。 

■バッテリー供給網は中国に集中――「国内生産」だけでは解決しない 

世界のバッテリー産業では、セル組立だけでなく、その前段階となる精錬、正極・負極材などの中流工程が特定地域に集中しています。 

米国とEUはともに、負極用黒鉛や正極前駆体の世界生産シェアが10%未満です。こうした中流工程の偏在が、欧米で競争力あるバッテリー産業を構築するうえで大きな課題となっています。 

世界のバッテリーサプライチェーンの大半は中国に集中 

単にセル工場を国内につくるだけでは、サプライチェーンの自立性は高まりません。 

鉱物の採掘・精錬から、正極・負極材料、セル製造、リサイクルまでを含め、バリューチェーンのどこを自国・域内に確保し、どこをグローバル調達するのかを戦略的に決める必要があります。 

記事では、競争力とレジリエンスを備えた地域完結型サプライチェーンの構築に向け、

①適切なインセンティブ価格の確立、②外国依存リスクの可視化とデジタルトレーサビリティ、③採掘・精錬能力の強化、④中流工程の処理能力強化、の4つを重要な要件として提示しています。 

■EVだけではない――BESSは2030年に500~700GWhへ 

バッテリー市場におけるもう一つの大きな変化が、BESSの急拡大です。 

マッキンゼーは、世界のBESS累積導入量が2025年末までに約200GWhに達し、2030年には500~700GWhまで拡大すると予測しています。 

背景にあるのは、再生可能エネルギーだけではありません。 

特に米国では、AIやクラウドコンピューティングの拡大に伴うデータセンターの電力需要増加が、電力供給の安定性を高めるBESS導入を後押ししています。 

これまで「EVの部品」と捉えられることの多かったバッテリーは、今後、電力・再生可能エネルギー・データセンターを支える社会インフラとしての重要性を一段と高めていく可能性があります。 

■2035年の勝者を分ける4つの競争力 

本ホワイトペーパーでは、2035年に向けて競争優位を確立する企業に必要な能力を、4つの領域に整理しています。 

  1. コストリーダーシップ
    部材構成(BOM)の最適化、生産効率向上、スクラップ削減などを組み合わせ、価格競争下でも利益を確保する 

  2. オペレーショナルエクセレンス
    工場の立ち上げを迅速化し、高いOEEと歩留まりを早期に実現する 

  3. サプライチェーンの国内・域内化
    原材料から中流工程、製造設備まで含め、コストと供給安定性のバランスを取りながら供給網を構築する 

  4. 信頼性の高い技術ロードマップ
    LFP、NMC、全固体電池、ナトリウムイオン電池、ドライ電極などを見極め、競合より早く量産・市場投入につなげる 

■主なポイント 

  • 世界のバッテリー需要は2025年の約1.6TWhから、2030年に4.2TWh、2035年に6.8TWhへ拡大する見通し 

  • 一方、2025年時点の世界のリチウムイオン電池の過剰生産能力は約900GWh 

  • 2025年のバッテリーパック価格は108ドル/kWhまで低下し、2018年の半分以下 

  • 世界で販売されるバッテリーの75%以上をアジアの主要メーカーが製造 

  • 工場の立ち上げ初期にはスクラップ率が70~80%に達する場合があり、歩留まり改善が収益性を大きく左右 

  • 競争力のある工場では、セル生産開始から18カ月以内に歩留まり95%以上、OEE85%以上が一つの目標 

  • 全固体電池の商用規模での量産は2030年以降となる可能性が高い 

  • BESSの世界累積導入量は2025年末の約200GWhから、2030年には500~700GWhに拡大する見通し 

  • 2035年に向けた競争力の鍵は、コスト、製造力、地域化されたサプライチェーン、実行可能な技術ロードマップの4領域 

■日本企業への戦略的示唆 

本ホワイトペーパーの中心的な分析対象は欧州および米国ですが、記事では、日本を含む他地域の経営層も、中国・EU・米国で進むバッテリーバリューチェーンの再編と各プレーヤーの意思決定を注視し、価格・供給のボラティリティを抑えながら独自のバリューチェーンを構築する道筋を描く必要性が高まっていると指摘しています。 

日本の自動車、バッテリー、素材、製造装置関連企業にとって、2035年の競争は「次世代電池の技術開発」だけで決まるものではありません。 

LFP・NMCと全固体電池をどう位置づけるか。どの材料・工程を国内や友好国で確保するか。量産開始からどれだけ早く95%の歩留まりに到達できるか。BESSの急成長をどこまで新たな需要として取り込めるか。 

日本企業が持つ材料技術、製造装置、品質管理、量産技術の強みを、市場投入のスピードとコスト競争力へ変換できるかが、次の競争優位を左右すると考えられます。 

■取材可能な主なテーマ 

本件について、マッキンゼーの自動車・モビリティ、バッテリー、製造、エネルギー領域の専門家が、以下のテーマについて背景解説・個別取材に対応可能です。 

  • 2035年に6.8TWhへ拡大するバッテリー市場で、なぜ供給過剰が起きているのか 

  • バッテリー価格が過去最低水準まで下落する中、メーカーはどこで利益を出すのか 

  • 世界のバッテリー供給網がアジア・中国に集中している背景と、日本企業への影響 

  • 全固体電池はいつ本格量産されるのか――2030年以降の技術競争 

  • LFP、NMC、全固体、ナトリウムイオンは今後どの市場で競争するのか 

  • バッテリー工場の「歩留まり95%」を早期に実現する企業は何が違うのか 

  • スクラップ率70~80%にもなり得る新工場の立ち上げをどう改善するか 

  • 日本の材料・製造装置メーカーが世界のバッテリー競争で取り得るポジション 

  • 「バッテリーの国内化」はどこまで必要なのか 

  • 中国依存を減らしながら、コスト競争力を維持するサプライチェーン戦略 

  • AI・データセンターの電力需要増加がBESS市場に与えるインパクト 

  • BESSがEVに続く「第二のバッテリー需要源」となり得る理由 

  • 日本企業が今後24カ月で優先すべき投資・技術・サプライチェーン戦略 

マッキンゼー・アンド・カンパニー

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、グローバルに展開する経営コンサルティングファームとして、企業および公共機関の重要課題解決を支援しています。産業横断的な知見と高度な分析力により、クライアントの持続的成長と変革の実現に貢献しています。

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会社概要

URL
https://www.mckinsey.com/jp/overview
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区麻布台 1-3-1
電話番号
-
代表者名
岩谷直幸
上場
未上場
資本金
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設立
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