歴史的資料「浅井・小川台湾原住民資料」を台湾・国立中央図書館へ寄贈
―日本人研究者の功績を辿り、日台学術交流の新たな象徴へ―
東京外国語大学(東京都府中市、学長:春名展生)アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研、所長:近藤信彰)は、歴史的に極めて貴重な「浅井・小川台湾原住民資料」を台湾の国立中央図書館(NCL)へ寄贈いたします。これに伴い、当研究所は、台北駐日経済文化代表処の代表を来賓にお迎えして、寄贈式典および記念シンポジウムを開催いたします。
本資料は、日本人研究者による台湾研究の輝かしい功績を示すものであり、共同利用・共同研究拠点であるAA研において、学内外の研究者が共同して長年整理を進めてきた成果です。今回の寄贈は、単なる資料の譲渡に留まらず、日本と台湾の長年にわたる深い学術的絆を象徴する重要な節目となります。
取材を希望される報道関係の方は、事前にメールにてお申し込みください(申込期限:6月17日(水)まで)。
■ 本リリースのポイント
1. 歴史的に極めて貴重な資料の寄贈と「帰還」
寄贈される「浅井・小川台湾原住民資料」は、台湾の先住民族が使用する台湾諸語(フォルモサ諸語)に関する極めて貴重な記録です。これらの資料が、かつての調査地である台湾の国立中央図書館へと寄贈されることは、学術的・文化的に大きな意義を持ちます。
2. 日本人研究者による台湾研究の功績
本資料は、小川尚義、浅井恵倫、土田滋ら日本人研究者が心血を注いで構築した、台湾諸語研究の礎となるものです。シンポジウムでは、台湾中央研究院から台湾原住民語の第一人者である李壬癸(Paul Jen-Kuei Li)博士をお招きし、基調講演が行われます。また、日本人の研究者も参加し研究発表を行います。
3. 共同利用・共同研究拠点としてのAA研の役割
これらの膨大な資料は、共同利用・共同研究拠点であるAA研において、学内外の多くの研究者が共同で整理・調査を進めてきた成果です。長年の共同研究を通じて資料の体系化が進んだことで、今回の寄贈が実現しました。
4. 日台の長年にわたる学術交流の象徴
今回の寄贈式には、台北駐日経済文化代表処の代表を来賓にお迎えします。日台の学術協力が過去から現在、そして未来へと続く強固なものであることを示す象徴的なイベントとなります。

サオ族の女性
■ 寄贈式・記念シンポジウムの概要
日時: 2026年6月19日(金) 13:00 – 17:30
会場: 東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所(東京都府中市朝日町3-11-1)
主催: 台湾国立中央図書館(NCL)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)
当日のプログラム
● 第1部:寄贈式典(13:00 – 14:00)
台北駐日経済文化代表処の代表を来賓にお迎えし、歴史的資料の寄贈を記念する式典を執り行います。
-
開会の辞: 近藤信彰(東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所 所長)
-
受贈あいさつ: 翁誌聰(台湾中央図書館)
-
来賓あいさつ: 台北駐日経済文化代表処 代表
-
記念講演: 三尾裕子(慶應義塾大学)
「小川・浅井資料: 背景とその整理」
● 第2部:記念シンポジウム(14:30 – 17:30)
テーマ:「台湾への日本の貢献―台湾原住民言語学の視点から」
台湾原住民語研究の第一人者である李壬癸博士を招き、日本人研究者も交えて研究発表を行います。
-
基調講演: 李壬癸(Paul Jen-Kuei Li/中央研究院語言學研究所 教授)
「台湾における初期の日本人による言語学的貢献」 -
研究発表: 柴田海(台湾中央研究院 語言学研究所)、月田尚美(愛知県立大学教授)、
落合いずみ(旭川市立大学)、今西一太(S.I. Co., Ltd.) -
閉会の辞: 李壬癸(中央研究院 教授)
■ 資料の学術的価値
寄贈される資料の中には、すでに消滅した言語や変化してしまった文化の面影を伝えるものが少なくありません。特に「平埔族(へいほぞく)」に関する資料は、当時の独自の言語や文化を詳細に記録した数少ない一次資料として、言語学・民族学において極めて重要視されています。
これらの膨大な資料は、共同利用・共同研究拠点であるAA研において、2000年度からのプロジェクトを通じて体系的に分類・整理、および電子化が進められてきました。今回の寄贈により、これらの貴重な「知」が、調査地である台湾へと「帰還」し、次世代の研究へと引き継がれることになります。
■ 寄贈資料の概要
このたび台湾の国立中央図書館(NCL)へ寄贈される「浅井・小川台湾原住民資料」は、1930年代から1940年代にかけて、浅井恵倫の収集した資料のほか、浅井がその師小川尚義より受け継いだ資料で構成される「浅井文庫」は、台湾先住民の言語研究における極めて貴重な一次資料群です。
これらの資料は、かつて台湾で話されていた、あるいは現在絶滅の危機に瀕している言語や文化を記録した極めて貴重なもので、主に以下のカテゴリで構成されています。
1. 文献資料(文献・手稿・ノート類)
日本人研究者が交通の不便な時代に台湾各地を巡り、重い機材を携行して山路や海岸の集落で直接採集した記録です。
-
フィールドノート(調査手帳):
約400点。言語調査の生の記録が記されています。 -
語彙集・単語比較表:
一般台湾南島語、および平埔族(パゼッヘ、カバラン、シラヤ、ファボラン等)、高山族(アミ、アタヤル、ブヌン、パイワン、プユマ、ルカイ、サイシャット、セデック、ヤミ等)の言語を網羅した詳細な単語リスト。 -
文法ノート・論文草稿:
言語学的分析(音韻、文法構造、接頭辞・接尾辞など)や未発表の研究原稿。 -
古文書の写し:
「新港文書」*などの契約文書の転写や、中国語地方誌(府志・県志)からの抜粋。
* 新港文書は、台湾先住民がローマ字で記した17〜19世紀の契約文書群であり、台湾先住民語研究と台湾史研究の双方にとって重要な歴史資料である。小川・浅井資料には約100点分の資料があり、うち 5点は原本、10点は写真複製、約90点は非常に精密な手写写本である。
【サンプル画像】

OA090
台湾原住民諸語の単語比較
浅井氏調査 (Vocabulary collected by Asai)
MS 小川,ノート1冊(78ページ)
ヤミ,ブヌン(3種類の方言),ツォウ,カナブ,サアロア,マガ,トナ,マンタウラン,セデック,シラヤについての単語比較

OA114
アミ語の単語・センテンス・会話文
阿眉蕃語発音ノ特徴(大正三年七月二十四日,台東廳磯貝武平氏)
MS 磯貝武平,29ページ
アミ語の単語,センテンス及び会話文(カタカナ表記)磯貝武平氏による台東での調査

OA150
アタヤル語会話
『タイヤル語週報』第1号〜第29号
(昭和六年五月〜十二月)新竹州警務課編
印刷物,計92ページ
占領期に台湾総督府の地方行政機構として県警本部+治安行政+一部地方統治を合わせたような役割を果たしていた「新竹州警務課」が任務を円滑に遂行するために行った調査の成果を刊行した週報であり、アタヤル語の会話が含まれている。

新港文書B-13
(転写本)277mm × 465mm ローマ字・シラヤ
村上 S-66(p.97),小川 訳 24
薄手楮紙,乾隆46年8月(1781年);印なし
〔小川尚義による訳〕ここに在るものは,リカットの(子)サライがラトクの子ヴァゴラス,及タカラン,トピスから銀二円正を借りる証文である。而して此の銀の利子となるべきは一円につき一ヶ月ならば四分正なるべし。而してサライの期限は九ヶ月に於て龍銀を返済するものとす。[注1]若し此の九ヶ月に於て返済せざる時はラトクのヴァゴラシはピロク餉(?)として地租を取るべし。彼等の言ふ所確実にして二比納得づくなり。而して此の銀は,而してサライの此の納租は一石と四斗とに相違なし。

新港文書D-2
(原本)455mm × 469m ローマ字・シラヤ?
やや薄手,嘉慶27年?(1822年?),印なし
2. 画像資料(写真・フィルム)
言語だけでなく、当時の台湾原住民の生活、儀礼、物質文化を視覚的に記録したものです。
-
写真:
計14,482点に及びます。アルバムやネガスライドが含まれ、台湾原住民、インドネシア、中国大陸の民族写真、欧州旅行写真など多岐にわたります。 -
動画フィルム:
8ミリおよび16ミリフィルム。台湾平埔族、タイヤル族、紅頭嶼(ヤミ族)、漢族の生活や行事などが記録されています。

C02-14:2
頭目の上衣襟元の刺細織布
(パイワン又はルカイ) (パイワ
ン。ルカイではこのような蚊
様は後に入った。)

C03-05:IO
盛装した男性達。アミ族。

C04-02:28
桜社(春陽)
山肌に広がる原住民集落(万大社, 1934 年以行。奥のIll は,現在万大ダム湖になっている)

C04-02:40
日月渾
樟脳木を削る原住民(椋脳の厭料を削っているごころ。)
3. 音声資料(レコード・蝋管)
すでに失われた言語の響きを今に伝える貴重な音の記録です。
-
音声レコード:
約40枚。浅井恵倫が録音した台湾原住民の歌謡(蕃曲)などが含まれます。 -
蝋管(ろうかん):
北里闌(きたざと・たけし)らが収集した音声資料なども、本資料群の整理過程で関連づけられています。
4. その他
-
単語カード:
22,000枚を超える膨大なカード群。 -
書簡・メモ:
研究者間(小川・浅井間など)で取り交わされた手紙や、インフォーマントからの書簡。 -
地図・統計資料:
台湾全図、集落名リスト、戸口調査(人口統計)データなど。
【東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)について】
アジア・アフリカ地域の臨地研究(フィールドサイエンス)に基づく共同研究を遂行し、研究資源の収集・分析・編纂および研究成果の発信を担う共同利用・共同研究拠点です。共同研究や研修・セミナー等を通した次世代研究者の養成にも注力しており、世界の学術発展に多角的に寄与しています。
国立大学法人 東京外国語大学
学長:春名 展生
アジア・アフリカ言語文化研究所(通称「AA研」)
所長:近藤 信彰
所在地:東京都府中市朝日町3-11-1
URL:(大学)https://www.tufs.ac.jp/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像
