第1回「黒川清賞」受賞者を発表:革新的な医療政策リーダーを顕彰
本賞は、アジア太平洋地域における保健医療政策分野の革新を促進することを目的に設立され、未来を担う若手リーダーや団体の顕著な業績を顕彰するものです。
日本医療政策機構(HGPI)(事務局:東京都千代田区、代表理事:乗竹 亮治)は、2025年2月1日に東京で開催されるフラグシップイベント「医療政策サミット2025」において、第1回「黒川清賞」受賞者を発表いたします。本賞は、アジア太平洋地域における保健医療政策分野の革新を促進することを目的に設立され、未来を担う若手リーダーや団体の顕著な業績を顕彰するものです。
【設立背景】
黒川清賞は、2024年に設立20周年を迎えた日本医療政策機構の新たな取り組みとして誕生しました。2004年の設立以来、HGPIは「市民主体の医療政策を実現する」というミッションのもと、独立したシンクタンクとして活動を続けてきました。その立ち上げに深く関わり、代表理事として組織を導いてきたのが黒川です。黒川は、幅広いステークホルダーを結集し、グローバルな視点から医療政策の選択肢を提供する活動を推進してきました。特に、「独立性」「中立性」「実現可能性」という原則に基づくアプローチは、国内外で高く評価されています。この賞は、黒川の理念と活動を象徴するものとして、次世代のリーダーを支援する新たなプラットフォームとなります。
【理念】
黒川清賞は、医療政策の変革を推進する力となる若手リーダーを支援し、アジア太平洋地域から世界へとその影響を広げることを目的としています。本賞は、以下のような特徴を持つ候補者や団体を顕彰します:
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革新性:既存の枠組みにとらわれず、新たなアプローチや解決策を提案した個人や団体
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インパクト:地域社会や国際的な規模で、具体的かつ測定可能な影響を与えた取り組み
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将来性:持続可能な変化を生み出すビジョンを持つ若手リーダーや団体
本賞の選考過程は、日本医療政策機構の理念「市民主体の医療政策の実現」に基づき、国籍や分野を問わず、多様な候補者から慎重に選定されました。初回となる今回は、ベトナム、インド、フィリピン、インドネシア、ネパール、オーストラリアなどの候補者から、革新性、地域および国際的な影響力、次世代リーダーとしての模範性に基づき受賞者を選定しました。
【第1回受賞者】
レンゾ・ギント(シンガポール国立大学 デューク-NUS医科大学 シンヘルス・デューク-NUSグローバルヘルス研究所(SDGHI) 准教授)
レンゾ・ギント氏は、フィリピン出身の医師であり、現在はシンガポール国立大学デューク-NUS医科大学のシンヘルス デューク-NUSグローバルヘルス研究所(SDGHI)の准教授を務めています。ギント氏は、気候変動と健康の交差点における政策提言と教育、研究において国際的なリーダーとして活躍しており、特に「プラネタリーヘルス(Planetary Health)」という新たな学際分野の先駆者として知られています。
【選考委員会からのコメント】
選考委員会は以下の点を高く評価しました:
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革新的な研究と政策提言:気候変動に強靭で持続可能な医療システムの構築や、気候変動が精神健康、移住、健康格差に与える影響への取り組み
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国際的なリーダーシップ:フィリピン気候変動委員会、世界保健機関(WHO)諮問グループ、ランセット委員会などでの重要な役割
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教育とネットワーク形成:アジア太平洋地域におけるプラネタリーヘルス教育と研究の革新、および地域社会と国際的なステークホルダーを結びつけるネットワークの構築
本受賞に対して、選考委員会委員 黒川清(日本医療政策機構 理事・終身名誉チェアマン):
"黒川清賞は、私たちが掲げてきた理念『市民主体の医療政策』の具体的な一歩を示すものです。この賞は、次世代のリーダーや団体が、革新と持続可能性を軸に、地域と世界の課題に取り組む姿勢を讃えるものです。受賞者であるギント氏は、気候変動という複雑で差し迫った課題に対して、プラカデミック(Pracademic)として、ステークホルダーを巻き込み、科学的根拠と実行可能な政策提言を結びつける優れた能力を発揮しています。そのリーダーシップとコミットメントは、私たち全員にとってのインスピレーションとなるでしょう。
また、2024年に20周年を迎えた日本医療政策機構が、こうした賞を創設できたことは、組織の成長と多くの皆様の支援の賜物です。私たちは、これまで国内外で健全な議論(Healthy Debate)を促進し、多くのステークホルダーとの協働を進めてきました。その成果が、このような形で具体化したことを大変嬉しく思います。
今後も、HGPIは市民社会とともに、世界的な課題解決のためのプラットフォームとして機能し続けます。そして、この賞が若い世代を後押しし、新しい視点と行動を生み出す契機となることを強く願っています。”
本受賞に対して、選考委員会委員長 乗竹亮治(日本医療政策機構 代表理事・事務局長):
"このたび創設された「黒川清賞」は、私たちの理念をさらに具現化し、次世代の革新的なリーダーたちを支援するものです。本賞は、アジア太平洋地域における若手専門家や団体の取り組みを讃え、革新性とインパクトを広く認知させることで、より持続可能な未来の医療政策を形作ることを目指しています。
特に、第1回受賞者であるレンゾ・R・ギント氏の活動は、気候変動と健康の課題において、学問と政策を架橋する優れた例です。彼の取り組みは、地域の課題に取り組むだけでなく、その知見を国際社会へ共有することで、他地域への波及効果を生み出しています。このような人物を顕彰することで、黒川清賞が未来のリーダーシップを育むきっかけになることを期待しています。
また、この黒川清賞が契機となり、日本医療政策機構がアジア太平洋地域の若手専門家の交流と協働を支えるハブとしての役割を果たすことを願っています。日本がこれまで蓄積してきた医療政策の好事例や教訓を世界に共有し、国際社会の知見を日本国内の医療政策に生かす、双方向の知識の循環が生まれることは、私たちの目指す目標のひとつです。そして、このような取り組みが、次の20年を見据えた新たな政策の選択肢を提示し、社会に健全な議論(Healthy Debate)を広める原動力となることを願っています。”
【今後の展望】
本賞は、広範な分野から推薦された候補者を対象に、国内外の専門家からなる選考委員会による厳正な評価を経て受賞者を決定しました。選考では革新性と社会的インパクト、候補者の持つ将来性が特に重視されました。黒川清賞を通じて、HGPIはアジア太平洋地域における革新的な取り組みを世界に発信し、持続可能な医療政策の実現に向けて新たな議論を促進してまいります。
■レンゾ・ギント(Renzo R. Guinto):
レンゾ・ギント(Renzo R. Guinto)医師(MD, DrPH)は、シンガポール国立大学デューク-NUS医科大学のシンヘルス デューク-NUSグローバルヘルス研究所(SDGHI: SingHealth Duke-NUS Global Health Institute)でグローバルおよびプラネタリーヘルスの准教授を務めている。フィリピン出身のギント氏は、プラネタリーヘルスという新しい分野の世界的な先駆者であり、主要な提唱者の一人である。彼は、気候変動に強靭で環境的に持続可能な医療システム、気候変動が精神健康に与える影響、気候変動と移住および健康の関係、グローバルヘルス介入における気候変動の影響、気候と健康に関する教育、気候と健康に関わる倫理的課題など、幅広いテーマに取り組んでいる。
加えて、ギント氏は「グローバルヘルスの脱植民地化」を推進する国際的な運動の中心的存在でもある。この運動では、知識生産における認識論的不公正への対抗、多様性と包摂性を考慮した政策決定の推進、健康格差を助長する権力構造への挑戦、そしてグローバルサウスの声を強調することに尽力している。
学術と政策の架け橋を担う「プラクアカデミック(Pracademic)」として、ギント氏はフィリピン気候変動委員会、世界保健機関(WHO: World Health Organization)の気候変動と健康に関する倫理諮問グループ、ランセットの「持続可能な医療」委員会および「人種差別・構造的差別とグローバルヘルス」委員会など、数々の助言役を務めてきた。また、フィリピン保健省、世界銀行、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID: United States Agency for International Development)、国際移住機関(IOM: International Organization for Migration)、ウェルカム財団(Wellcome Trust)などの組織のコンサルタントも歴任している。
ギント氏は、母国フィリピンにおいて移住者健康プログラムやフィリピン移住者健康ネットワーク、国家観光開発計画、国家気候適応計画の策定に寄与したほか、世界銀行の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と気候スマート医療に関する戦略やWHOの「健康、移住、避難に関するグローバル研究アジェンダ」の構築にも携わった。
アジア太平洋地域および世界規模でプラネタリーヘルスを推進するため、ギント氏は初等教育から学部・大学院、専門教育に至るまで、プラネタリーヘルス教育の革新を先導した。ユニバーサルヘルスケアからパンデミック予防に至る多様な研究プロジェクトを主導し、『ランセット・プラネタリーヘルス(The Lancet Planetary Health)』をはじめとする複数の影響力あるジャーナルの編集委員も務めている。
さらに、ヘルスシステムグローバル(Health Systems Global)の「気候変動に強靭で持続可能な医療システム」分科会の議長や、フィリピン医師会の環境保健・生態学委員会の議長、「プラネタリーヘルス・フィリピンズ(Planetary Health Philippines)」の設立者および代表など、数多くの委員会やネットワーク、機関の設立と運営に携わってきた。
また、ロンドンのインペリアル・カレッジのクライメイトケアズセンター(Climate Cares Centre)、プライマリケア・インターナショナル(Primary Care International)、ヘルス・イン・ハーモニー(Health in Harmony)、チャイルド・ファミリー・ヘルス・インターナショナル(Child Family Health International)、ワン・サステイナブル・ヘルス・フォー・オール・フォーラム(One Sustainable Health for All Forum)、フィリピン公衆衛生医師会など、複数の諮問委員会や運営委員会のメンバーも務めている。
学歴としては、ハーバード大学で公衆衛生学博士号(DrPH)、フィリピン大学マニラ校で医学博士号(MD)を取得。さらに、オックスフォード大学、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)、コペンハーゲン、ウェスタンケープ大学、アントワープ熱帯医学研究所(ITM)、カロリンスカ研究所、ストックホルム商科大学、ハワイのイースト・ウエスト・センターで追加研修を受けている。現在は、フィリピンのセントルークス医療センターおよびケンブリッジ大学で客員ポストを兼任している。
ギント氏は世界で最も影響力のあるプラネタリーヘルスの伝道者の一人であり、これまでに約70カ国、100大学で講演を行い、200以上の報告書や記事を科学誌や書籍、一般メディアに発表。短編映画を制作し、プラネタリーヘルスの理念を世界に発信している。
その功績により、2019年にオバマ・アジア太平洋リーダー、2020年にTatler誌の「Gen.Tリスト(アジアの未来を形作る400人のリーダー)」に選出。2022年にはフィリピンの「傑出した若者」(TOYM: The Outstanding Young Men)に選ばれ、ワシントンD.C.のグローバルヘルス大学コンソーシアムから初代プラネタリーヘルス革新賞を受賞している。
■日本医療政策機構とは:
2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンク。市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供しています。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供しています。日本国内だけでなく、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、活動しています。
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