製造業のFAX受注はなぜ消えないのか ── 15社超のヒアリングで見えた"デジタル化できない本当の理由"と、AI業務OS「FactoryOS」の挑戦
株式会社Leach(本社:東京都、代表取締役:冨永拓也)は、少量多品種製造業に特化したAI業務OS「FactoryOS」の事前登録を開始しました。

朝8時、工場で最初に動くのは"機械"ではなく"FAX"

ダイヤモンド工具を製造する、ある従業員20名規模の工場。経営企画室の部長は、製造から営業、受発注処理まで何でもこなす。この工場に届く注文書は、8割がFAX、2割がメール。取引先は100社から200社にのぼり、注文書のフォーマットは100種類を超える。
「1日に最低でも30件、多いときは100件を超える注文が届きます。メーカーや卸の独自フォーマットで送られてくるので、1枚ずつ中身を確認して、システムに手入力しています」
FAX通信表に手書きで書かれた注文もある。仕様がわかるように図面の番号が記されていることもあれば、書かれていないこともある。創業20年で蓄積された図番は1万件近く。リピートは半分あるかどうかで、残りは都度確認が必要だ。
この光景は、決してこの工場だけの話ではない。当社が製品開発にあたって実施した15社以上のユーザーヒアリングでは、業種を問わず、同じ構造の課題が繰り返し浮かび上がった。段ボール製造業で月2,000件の注文書を処理する営業事務担当者。アパレルメーカーで1日50件から100件の発注書を手入力する営業事務チーム。蛇腹メーカーで年間2万件の受注を処理する営業技術部。いずれの現場でも、受注の入り口はFAXと手入力だった。
経済産業省の委託調査(2019年)によれば、日本の中小企業の約76%がFAXを受発注業務に使用しているというデータがある。Industry 4.0、スマートファクトリー、製造業DX──華やかなキーワードが飛び交う一方で、受注の入り口は依然として「紙」なのだ。
なぜ、FAX受注は消えないのか。ヒアリングを通じて見えてきたのは、単なる「ITリテラシーの問題」では片付けられない構造的な事情だった。
ヒアリングで見えた"FAXが消えない"5つの構造的理由

理由1:得意先がFAXを使い続けている
大阪に本社を置くアパレルメーカーの営業事務担当者は、こう語る。
「うちの得意先は大手のホームセンターから、工事現場に直送する小口の客先までさまざまです。注文書はほとんどFAXで届きます。コロナ直前に電子化の法令を受けて紙の印刷はやめましたが、結局PDFデータを画面に表示させながら、システムに手入力している状態です」
製造業のサプライチェーンでは、下請け企業が「FAXをやめてほしい」と得意先に申し入れることは取引関係上きわめて難しい。ヒアリングの中でも、「取引先より立場が弱く、先方のやり方に合わせるしかない」という声が共通して聞かれた。
受発注のデジタル化は、自社だけでは完結しない。取引先を含めたエコシステム全体が変わらなければ、1社だけがデジタルに移行しても意味がない。ここに、製造業DXの最も根深いボトルネックがある。
理由2:中小製造業に合うEDIが存在しない
大企業間の受発注では、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)が普及している。しかし、中小製造業の世界では事情が異なる。
三重県の蛇腹メーカー(従業員199名)の事例では、年間2万件の受注のうちEDI経由は約40%、残り60%はアナログ──FAXやメールでの受注処理が続いている。EDIを導入している取引先は一部のOEM先などに限られ、大半の取引先は独自フォーマットの注文書を個別に送ってくる。
ダイヤモンド工具メーカーでも、EDIから届くのは1社だけ。100社以上の取引先のほぼ全てが、独自フォーマットの注文書をFAXで送ってくる。統一規格のEDIシステムを全取引先に導入してもらうことは、事実上不可能に近い。
結果として、「どんなフォーマットでも受け取れるFAX」が、皮肉にも最も汎用性の高い受注インフラとして機能し続けている。
理由3:導入コストと"現場の納得"
ヒアリングのなかで、生産管理システムの導入を進めている企業もあった。ダイヤモンド工具メーカーでは、テクノア社のTECHKSを2ヶ月前に導入し、マスター登録の作業を進めている最中だった。
「サーバをおかずにクラウドで運用できるのが決め手でした。うちは規模が小さいので、専任のIT担当者を置くまでの余裕がない」
ただし、受発注システムやAI OCRなどの機能は使っていない。導入は受注処理と売上管理が中心で、全機能の活用には至っていないという。中小製造業の営業利益率は一般に3%から5%。限られた予算の中でシステム投資を行うには、確実に効果が見えるところから段階的に進めるしかない。
理由4:少量多品種がデジタル化を阻む
少量多品種製造業には、大量生産型の工場とは根本的に異なる複雑さがある。
新潟県の段ボール製造業で営業事務を担当する女性は、月に約2,000件の注文書を処理している。PDFの注文書を1枚ずつ目で読み、基幹システムに手入力する作業だ。
「色んなお客様から発注が入ってきて、締切時間までに入力しなければならない。スピードが必要な中で単価チェックもしなければならないけど、どうしても見落としてしまうことがある」
品番マスタの数が数千、数万に及ぶ少量多品種の世界では、注文の自動処理は難しい。同じ製品でも得意先ごとに品番が異なるケースは珍しくない。兵庫県の製造業で購買調達を担当する女性(月500件以上を処理)も、品番や単価の照合ミスに悩んでおり、Excelマクロで補正を試みているが「限界がある」と話していた。
理由5:FAXには"証拠"としての信頼がある
三重県の蛇腹メーカーでの取材では、注番・図番の転記ミスが日常的な課題として挙げられた。注文内容の確認や納期調整のやりとりは、FAXの原本を基に行われる。過去にOCRの導入を試みたが精度が足りず、運用を断念した経緯もある。
アパレルメーカーの営業事務担当者も、「確認が必要な場合はPDFデータに書き込んでFAX番号を使って返信している。電話で済むこともあるが、記録を残すにはFAXのほうが確実」と話す。
FAXが単なる通信手段ではなく、取引の記録基盤として機能しているという現実がある。
FAX受注が奪っている"見えないコスト"

構造的な理由があるとはいえ、FAX受注が現場にもたらしているコストは大きい。ヒアリングで得られた実データを整理する。
時間コスト:1人あたり1日50件から100件の手入力
アパレルメーカーでは、営業事務1人あたり1日50件から100件の注文書を手入力している。ダイヤモンド工具メーカーでも1日30件から100件超。三重県の蛇腹メーカーでは、年間2万件の受注のうち60%にあたる1万2,000件をアナログで処理しており、2名から3名の体制で対応していた。AI導入によってこの作業時間が半減し、3名体制から1名体制に移行できたという。
少量多品種の工場では、受注処理に割ける人員は限られる。その貴重な人的リソースの大部分が、本質的には「紙に書かれた情報をデジタルに転記する」作業に消えている。
エラーコスト:品番・単価の照合ミスが日常的に発生
ヒアリング先の多くで共通して挙がった課題が、品番の照合ミスと人為的な入力漏れだ。段ボール製造業の担当者は「どうしても人為的ミスは発生する。ミスを防ぐには限界がある」と話す。ダイヤモンド工具メーカーでは、時間がかかりそうな仕様確認や値上げ対応は部長や社長に振られるなど、属人的な処理が残っている。
品番を1桁間違えただけで異なる製品を作ってしまえば、材料費も加工時間もムダになる。ミスの発覚が遅れれば、納期遅延や取引先の信用毀損につながりかねない。
機会コスト:「攻めの仕事」ができない
受注担当者が転記作業に追われている間、工場は「守りの仕事」しかできない。新規顧客の開拓、既存顧客への提案、生産効率の改善──こうした前向きな業務に割くリソースが、構造的に不足している。
ヒアリングの中で「EA(アーリーアダプター)」として特定できた企業には、明確な共通点があった。取引先より立場が弱く、多種多様なフォーマットの注文書が1日に20通以上届く。個別カスタマイズで納品しており、1品あたりの単価は数千円から数万円。こうした企業ほど、受注処理の負荷が経営を圧迫していた。
「FAXを否定しない」という発想 ── AI業務OS「FactoryOS」の設計思想

ここまで見てきたように、FAX受注は「遅れている」のではなく、「そうせざるを得ない構造」の中に存在している。この現実を踏まえ、株式会社Leachが開発を進めているのが、少量多品種製造業向けAI業務OS「FactoryOS」だ。
FactoryOSの設計思想は明確だ。「FAXをなくす」のではなく、「FAXのままでデジタル化する」。
FAX注文書のAI-OCR読取:紙を"そのまま"デジタルに

FactoryOSの入り口は、FAX注文書のAI-OCR読取だ。得意先がこれまで通りFAXで注文書を送ってくる──その紙をスキャンするだけで、AIが品番・数量・納期・特記事項を自動で読み取り、構造化されたデジタルデータに変換する。
ここで重要なのは、取引先に何も変えてもらう必要がないという点だ。得意先は今まで通りFAXを送るだけ。デジタル化の負荷は、受け取る側のFactoryOSが引き受ける。
少量多品種特有の課題である「品番の名寄せ」にも対応する。得意先ごとに異なる品番表記を、AIが学習し、自社の品番マスタと自動的に紐付ける。導入初期は人間が確認・修正する必要があるが、使い込むほどAIの精度が向上する。
三重県の蛇腹メーカーでは、過去にOCRを試みて精度不足で断念した経緯がある。FactoryOSでは、最新のAI技術を活用し、従来型OCRでは対応できなかった手書きFAXや多様なフォーマットの読み取りに取り組んでいる。
受注チェックリスト自動確認

AIが読み取った注文内容を自動で整理し、確認リストを生成する。一致・要確認・不一致がカラー表示され、担当者は異常値だけを目視確認すればよい。ヒアリングで多くの担当者が挙げた「品番照合ミス」「単価の見落とし」といった課題に対し、AIによるダブルチェックの仕組みを提供する。
受注から生産進捗管理まで一気通貫

FactoryOSは、FAXの読み取りだけで終わらない。読み取った受注データを、生産進捗管理にそのまま連携させる。
受注 → 生産指示 → 進捗管理 → 出荷
この一連の流れを、ひとつのプラットフォーム上で管理できる。これまでバラバラだった「受注台帳(Excel)」「生産指示書(紙)」「進捗管理(ホワイトボード)」が統合される。現場の作業者はタブレットで進捗を更新し、事務担当者はリアルタイムで全体の状況を把握できる。
AI図面検索:過去の知見を資産に変える

ダイヤモンド工具メーカーのヒアリングでは、創業20年で蓄積された約1万件の図番をどう管理するかが大きな課題だった。リピートは半分程度で、残りは過去の仕様を探し出して確認する必要がある。
FactoryOSのAI図面検索機能は、図面の形状・寸法・材質・表面処理などの特徴をAIが抽出・インデックス化し、類似図面を検索できる。ベテラン社員の頭の中にしかなかった暗黙知を、組織の共有資産に変える。
開発の背景 ── なぜ「製造業の受注」に着目したのか
株式会社Leachは2024年11月に創業したスタートアップだ。代表の冨永拓也は、こう語る。
「15社以上の製造業関係者にヒアリングを重ねてきました。どの現場にも共通していたのが、受注処理のアナログさです。最新の工作機械を導入している工場でも、受注の入り口はFAXと手入力。Industry 4.0の議論は『工場の中』の話ばかりで、『工場への入り口』である受注プロセスが見落とされている。ここにこそ、最も大きなインパクトを生み出せる余地があると考えました」
FactoryOSの「OS」は、Operating Systemの略であると同時に、「工場の基本的な業務基盤」という意味を込めている。受注・生産管理・図面管理という製造業の根幹となる業務を、AIの力でシームレスにつなぐ。
「既存の製造業向けシステムは大企業向けに設計されているものが多く、中小の町工場には機能が過剰で価格も高い。かといって、Excelとホワイトボードでの管理には限界がある。ヒアリングでは、20名規模の少量多品種の工場であれば月額10万円程度までの投資は検討できるという声もありました。その間を埋める、町工場のためのAIシステムを目指しています」
町工場デジタル化の"本当のハードル"を越えるために
FactoryOSの開発にあたり、最も重視しているのは「現場起点の設計」だ。
取引先に変化を求めない。得意先がFAXを使い続けていても、FactoryOSは機能する。受発注自動化の恩恵を、自社だけの導入で享受できる設計にしている。
導入のハードルを極限まで下げる。ダイヤモンド工具メーカーが生産管理システムの選定で「サーバ不要のクラウド」を決め手にしたように、IT専任者がいない中小工場でも使えることを前提に設計する。
AIが学習し続ける。各工場の注文パターン、品番体系、得意先ごとの癖──FactoryOSのAIは使えば使うほど、その工場に最適化されていく。
製造業DXの"最初の一歩"を、受注プロセスから
多くの製造業DXの議論は、IoTセンサーやロボット導入といった「生産工程の自動化」に焦点を当てがちだ。しかし、15社以上のヒアリングを通じて明らかになったのは、もっと手前の「受注プロセス」にこそ、最も即効性のある改善ポイントがあるということだ。
三重県の蛇腹メーカーでは、AI導入で受注処理の作業時間が半減し、3名体制から1名体制への移行が実現している。この事例が示すように、受注プロセスの改善は、すぐに目に見える効果を生む。
FactoryOSは現在、事前登録フェーズだ。少量多品種製造業の現場で、FAX受注に課題を感じている方々からの声を集めながら、製品の最終調整を進めている。
「FAXが届く現場をなくすのではなく、FAXが届く現場を強くする。すべての町工場に、AIという新しい仲間を届けたい」──それが、FactoryOSの挑戦だ。
FactoryOS 事前登録受付中

少量多品種製造業向けAI業務OS「FactoryOS」は、現在事前登録を受付中です。FAX受注の現場に課題を感じている製造業の皆さまからのお申し込みをお待ちしております。
主な機能
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FAX注文書のAI-OCR自動読取(手書き対応)
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受注チェックリスト自動確認(一致・要確認・不一致のカラー表示)
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得意先別の品番自動名寄せ(AIが学習して精度向上)
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受注データから生産指示書の自動生成
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リアルタイム生産進捗管理(タブレット対応)
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AI図面検索(類似図面の自動検出)
事前登録のメリット
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正式リリース時の優先案内
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導入支援プログラムへの優先参加
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開発チームとの直接フィードバック機会
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先行ユーザー特別価格でのご提供
会社概要
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会社名:株式会社Leach
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代表者:代表取締役 冨永拓也
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設立:2024年11月
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事業内容:製造業向けAIソリューションの企画・開発・運営
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コーポレートサイト:https://leach.co.jp/ja
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主要サービス:AI業務OS「FactoryOS」
本件に関するお問い合わせ先
株式会社Leach 広報担当
E-mail:pr@leach.co.jp
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