ふるさと納税改正案に関する自治体の意見調査の結果を発表:賛成が23.9%、中立53.8%の多くも賛成傾向に
ふるさと納税へのポイント付与禁止について、自治体の半数以上が中立も手数料次第で賛成に。調査結果から見えるふるさと納税の実情
株式会社ふるさと納税総合研究所は、ふるさと納税の改正案に関する自治体の意見調査を実施し、その結果を発表しました。本調査は、ポータルサイト、有識者や寄付者が改正案に対する様々な意見を発信し、楽天グループは「ふるさと納税へのポイント付与禁止」に反対する署名を集めている中で、当事者である自治体の実際の声を明らかにすることを目的にしています。
ポータルサイトが寄付者に対して返礼品とは別にポイント等を付与することを禁止することについて、自治体は「非常に反対」、「反対」、「中立」、「賛成」、「非常に賛成」の5つから選択回答いただき、加えてその回答の理由についてもコメントをいただいています。
調査結果の概要
調査は「寄附者に対しポイント等を付与するポータルサイト等を通じた寄附募集を禁止[告示改正。R7.10~]について、どのように評価しますか。」という内容です。調査結果の評価の分布は以下のとおりです。「非常に賛成」が2.6%、「賛成」が21.3%、「中立」が53.8%、「反対」が17.8%、「非常に反対」が4.5%になりました。この数字だけ分析すると拮抗しているようにみえますが、中立評価のコメントを見れば実質的な賛成評価、条件付きの賛成評価も多く含まれています。
自治体評価の理由
賛否両論の評価が集まりました。反対評価の中には、手数料削減の効果が不明瞭で、運営事業者の利益が増えるだけではないかと懸念を示すものもありました。また、手数料の上限を設定することの方が効果的であろうとの声もありました。他方、賛成評価には、手数料削減と返礼品率引き上げに加え、ポイント競争による悪影響からの軽減を期待する声が聞かれました。また、中立の立場を取る評価には、ポイント付与のメリットを理解しつつも、自治体負担の増加を懸念しており、手数料が下がるのであれば賛成に転じる可能性が高いというものも見られ。全体として、多くの自治体は手数料が下がるのであれば賛成の立場を取る傾向が強く見られました。
自治体コメント
以下、アンケートにお答えいただいた自治体職員の皆様の主なコメントを、それぞれの評価ごとに
整理し紹介していきます。
非常に賛成(2.6%):ポイント付与競争がやりすぎであり、自治体を企業競争に巻き込むべきではない。ポイントが制度の本旨に反していたため、手数料低減につながる動きとして賛成。各ポータルサイトが手数料を引き下げるかは疑問だが、経費5割ルールで苦しい自治体にとっては朗報。ポイントがなくともふるさと納税利用者は減らないと予想し、本来あるべき姿に近づくと考える。
賛成(21.3%):各ポータルサイトが自社負担としているが、手数料が下がれば返礼品率を引き上げられるため賛成。ポイント付与がなくなることで手数料が一律削減されるなら評価する。制度本来の趣旨に反していたため、ポイント付与は好ましくないと考える。ポイントアップデーの寄附集中やポイント競争の激化が問題となっている現状を是正する効果的な改正と考える。
中立(53.8%):ポイントによる募集が禁止された後、自治体負担が変わらなければ賛成する理由はなくなる。ポータルサイトの手数料は変わらない可能性が高いため、どちらでも良い。ポイント付与率の上昇を止めたかったが、集客の落ち込みが懸念されるため中立。ポータルサイトの戦略としてポイントを活用することは理解できるが、自治体負担が増大している現状も理解できる。そのため、ポイント付与禁止によってどのような影響が出るかを見守りたい。もし禁止によって自治体の負担が軽減されるのであれば賛成に転じる可能性もあるが、現段階では中立の立場を保つ。
反対(17.8%):各社がポイント原資は手数料ではなく運営会社からと公表しているため、ポイント付与禁止が手数料の引き下げに繋がるとは思えない。また、抜け道が見つかる可能性があり、単に手数料の上限を定める方が良かった。ポイント制度のないポータルサイトが競争できるようになるのは良いが、ポイント廃止が事務負担の増加に繋がる懸念もある。総務省に手数料の引き下げまで言及してほしい。
非常に反対(4.5%):ポータルサイトの手数料が減る根拠がなく、運営事業者の利益が増えるだけになる可能性がある。本来、自治体に落ちるべき寄附金が運営会社に流れる現状を解消したい意見には賛成だが、強制的な禁止には反対。手数料率に規制を設ければ解決する問題であり、ポイント付与廃止は問題の解決に繋がるかわからない。サイト勢力図の変化が出品事業者の売上に悪影響を及ぼす心配もある。ふるさと納税は経済対策や生活支援の一面もあるため、物価高騰の最中に実施することに懸念がある。
弊社の提言
本調査により明らかになった各自治体の意見を踏まえ、弊社は、改正案が目的とする「制度本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われる」を実現するための方策として、以下の通り提言します。
【提言1】ポータルサイトの手数料率の上限設定
改正案の目的である「制度本来の趣旨に沿った運用がより適正に行われる」を実現するために、ポイント付与禁止はもちろんのこと、ポータルサイトの手数料の上限を明確に定めることを提案します。これにより、自治体の負担軽減が実質的に達成されると考えます。ただし、単にポイントを禁止してしまうと、ふるさと納税活動そのものの縮小を招く恐れがあります。
【提言2】地域に根ざしたインセンティブの提示
ポイント付与の禁止が寄附者の行動に及ぼす影響を最小限に抑えるために、寄附者へのインセンティブの見直しを行います。例えば、寄附額に応じた抽選等にて、寄付の使い道を現地で視察できる権利や地域イベントへの特別招待など、地域に根ざした新たなインセンティブの提供が考えられます。ポイント付与に代えて各自治体ならではの工夫や活動で、寄付者の関心を維持しつつ、寄付者とのつながりをより強化されることが期待できます。
【提言3】 監視・運用組織の設置
制度が改正されても、遵守されなければ意味がありません。改正された制度の適正な運用と監視を行うための組織の設置を提言します。この組織は、制度の実施状況を監視し、不正や違反が発生した場合には迅速に対応する役割を担います。具体的には、寄附金の使用状況や手数料の適正性を定期的にチェックし、透明性を確保するための監査機能を持たせます。また、自治体やポータルサイトからのフィードバックを集約し、制度の改善に役立てることができます。
【提言4】寄附の使い道を重視したプロモーションの強化
各自治体に対しては、寄附者がふるさと納税を通じてどのように地域に貢献できるかを明確に伝えるプロモーション活動の強化をするよう提案させていただきます。具体的には、寄附金が具体的にどのようなプロジェクトに使われ、地域社会にどのような変化をもたらしているかを示すストーリーを作成し、広報活動に利用することを提案します。寄附者が自分の寄附が地域に与える影響を実感できるようなキャンペーンを展開することで、寄附意欲がより高まることが期待できます。
【提言5】正しい制度理解を広めるための情報提供
寄附者への情報提供を充実させるため、総務省やポータルサイト各社にはふるさと納税に関する制度理解キャンペーンを実施することを提案します。寄附者が制度の意義や利用方法を正しく理解し、自主的に寄附先を選択できるよう、わかりやすい情報提供を行なってもらいます。これにより、寄附者の理解と納得感が向上し、制度の利用促進に繋がると考えます。
今回のレポートはポイント付与の賛否の調査結果をお伝えするものでした。しかしご回答いただいた職員の皆様のコメントから、単なるポイントの問題だけではなくふるさと納税制度の持続や自治体の発展に対する根本的な意見も改めてお聞きすることができました。弊社としても、ふるさと納税制度がさらに健全で持続可能なものとなり、地域振興と納税者の利益がバランスよく達成されることを期待します。自治体と寄附者、そしてポータルサイトの三者が協力し、より良い制度運営を目指すことが重要です。
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株式会社ふるさと納税総合研究所
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