日本人の約4割が「死」と疎遠になっている ~「多死社会」の陰に潜む「疎死(そし)社会」の顕在化~

― 『2026年 築地本願寺不安調査』結果報告 ―

宗教法人 築地本願寺

 浄土真宗本願寺派 築地本願寺(所在地:東京都中央区)より、『2026年 築地本願寺不安調査』の結果を公表いたします。本年は、現代社会に広がる漠然とした不安の背景に、人々の「死」との距離感が影響しているのではとの仮説のもと、18歳から79歳の男女1,236名を対象にインターネット調査を実施しました(2026年1月30日〜2月1日実査)。
 調査を通じて浮かび上がったのは、「多死社会」と呼ばれる時代ではあるが、一人ひとりが「死」と向き合う機会はむしろ失われつつあるという逆説的な現実です。当寺はこれを「疎死(そし)社会」と名づけ、広く社会に発信いたします。

1.「疎死社会」とは何か

 近年、高齢化に伴い年間死者数は増加の一途をたどり、「多死社会」という言葉が広く使われるようになりました。しかし、死者数という「量」が増える一方で、個人が「死」と向き合う「質」はどうなっているのでしょうか。

  現代の日本社会では、核家族化・単身世帯の増加、病院での看取りの一般化により、かつて日常の中に当たり前のように存在していた「死と直面する機会」が、私たちの生活から急速に減っています。

社会全体として死者数は増えながらも、個々人の人生においては、身近な人の死に立ち会い、死と深く関わる経験がむしろ減っている——この状況を、築地本願寺は「疎死社会」と定義します。

  疎死社会においては、「死」は理解されないまま遠ざけられます。死への理解や心の消化がなされないまま、恐怖や不安だけが残る。これは、現代の生活者が抱える漠然とした不安と、深いところで結びついているのではないかと考えられます。

2.今回の調査で明らかになったこと:7つの発見

■ 発見① 現代は死が遠ざけられた「疎死社会」

 「死と向き合う機会・時間や経験はあまりない」と答えたのは全体の40.8%。

若年層(18〜29歳)では約2割が「お墓がない、またはどこにあるか知らない」と回答。

先祖や死者とのつながりそのものが薄れている実態が明らかになりました。

■ 発見② 「自分の死」に関する世代間ギャップ

 若年層にとって「自分の死」は「得体の知れない恐怖」である一方、年代が上がるにつれ「いつか訪れるものとして受け入れるべきもの」として捉えるようになる傾向が確認されました。70 代では約6割が「受け入れるべきもの」と回答している一方、男性18〜39歳では約25%にとどまります。「死を自然なプロセスとして受容する」には、死と向き合う経験の積み重ねが不可欠であることを示唆しています。

■ 発見③ 自分より「他者の死」を受け入れ難い

 「自分が死ぬこと」よりも、大切な人との「つながりが途切れること」への抵抗感の方が強い——これは、現代人の孤独への恐怖や、関係性への依存と裏表をなす感情かもしれません。

■ 発見④ 男女で異なる「死の受け止め方」

 男性は「知人の訃報」などきっかけがなければ死を意識しにくい傾向がある一方、女性は自身の体調の揺らぎ・疲れ・ニュースなど、日常のさまざまな場面で死を意識する傾向があります。また、「来世や生まれ変わりを信じる」「事故物件を避けたい」「人は亡くなった後も何らかの形で残る」という設問に対する反応が、女性が顕著に高く、死に関する感覚的・精神的な感受性の差が浮き彫りになりました。

■ 発見⑤ 死と向き合う経験が「レジリエンス」を育む

「死と向き合う機会・時間・経験がある」層は、そうでない層と比べて、不安に対して「自分で原因を特定し、具体的に対処する」という積極的な姿勢を取る割合が8.7ポイント高くなっています。死と向き合うことで、不安への耐性が高まっている可能性が垣間見えます。

■ 発見⑥ 故人への思い——若者には「つらい体験」、シニアには「懐かしみ」

 全体の約8割が故人に思いを馳せることがあると回答。しかしその感情は世代で大きく異なり、若年層では「さみしい」「つらい」「落ち込む」などネガティブな感情が相対的に高く、60代以上では「懐かしい」「ありがたい」が上位に挙がります。死に接する経験を重ねることで、喪失の痛みが感謝や追憶へと変容していく様子が読み取れます。

■ 発見⑦ 「死の意識」が生への活力を生む

 自由回答では、「身近な人の死を経験したことで今を大切に生きようと思った」「後悔しないよう行動するようになった」という声が多く寄せられました。「死」を意識することは、「残された時間をどう生きるか」という問いを呼び起こし、生への活力につながることが窺えます。また、理想の生き方としては総じて「心身の平穏」を求める回答が上位を占めました。その生き方を実現するためのサポートとしては、「身辺整理・相続に関する相談の場」が最も多く(17.2%)求められておりますが、若年層では「生き方についてのアドバイスをくれる場」を求める傾向も見られました。 精神的なケアと実務的なサポートの両立が求められる中、サポートの内容については年齢層に応じた対応が必要であることが明らかになりました。

3.疎死社会と「見えない不安」

 本調査では、「漠然とした不安を感じる」「悪いニュースを見て不安になる」と回答した人が全体の4割強にのぼり、昨年比で約5ポイント増加しています。注目すべきは、不安への対処行動で、「死と向き合う経験が乏しい層」では、不安を「趣味や仕事にのめりこんで考えないようにする」「距離を置く」といった逃避的な対処が多い傾向にあります。

 「死」という避けられないテーマから目を背けることが習慣化してしまうと、人は脆弱化し、死と直面した時にそれを乗りこえる力を備えられなくなるのかもしれません。「疎死社会」がこういった脆弱性を孕む社会であるとすれば、現代の不安のあり方と、深いところでつながっている可能性があります。 

 当寺は、今回の調査結果が、この因果関係を断言するものではないことに留意しつつも、「死への疎遠さ」と「日常的な不安の深さ」の間に、無視できない関連性が示唆されていると理解しています。

築地本願寺からのメッセージ                   

 仏教は「生死」を説きます。これは『生ある者は必ず死に帰し、愛するものといずれはお別れをしなければならない時が必ず来る』という、ファクトで当然なことを大前提として「いのち」を見つめることを教えるものともいえます。その視点に立つと「死は必然、生こそ偶然」であったということに気づかされ、生きている私の時間の1秒1秒は自分が努力して生きているというよりも、何らかのお陰で生かされているのではないかという極めて仏教的な考えに自然に行き着くのではないかとも思います。

 しかし、あくせくと慌ただしく生きる現代の生活では、よほどのきっかけがないと、そういったことを深く考える時間を持つことは少ないのではないでしょうか。生きているいのちは皆いずれ死に帰し、それはどんなかたちでいつ訪れるかは知れない、まさに風前の灯火のような儚いものです。しかし、一瞬一瞬の鼓動を刻みながら私の中にいのちが宿っていることに気づけば、自分のいのちはなにかとても儚く、いとおしいと思えるのではないでしょうか。わたくしの出身、兵庫県で執筆された志賀直哉の名作『城崎にて』では、怪我の養生に兵庫県の城崎温泉を訪れ、いくつかの小動物の死を目にし、これと対比して生きている自分のいのちを考え顧みる主人公の「自分」が描かれています。自分の怪我や小動物たちの一瞬先の死を通じて、深く自分のいのちと向き合っています。

 現代に生きる私たちは、死を忌み嫌い出来るだけ遠ざけよう、見なくてもいいようにしようとしているように感じます。しかし、必ず迎える一大事に出会ったとき、怖くさみしいけれどそれをどうにか受け入れることのできる、私にとっての揺るがない礎が必要だと感じます。その礎を先人は命を懸けて求め続けてきました。そして宗祖親鸞聖人は、南無阿弥陀仏のお念仏の中にこそ救いの真実があることをお説きになっておられます。聖人の説かれる浄土真宗のみ教えは「修行を行うとともに、悔い改めよ」とは説かれません。「不完全な私が救われるには、何もできない私を抱いてくださる、ただ一方的な救いでなければ救われないのだ」ということをお説きくださるのです。

 不安のない人間など存在しません。両手いっぱいに不安や心配を抱えて生きているのがみんなです。

でもそれを乗り越える、いや、何とか受け入れることができる、という世界をいただくこと。これが浄土真宗のあたたかいみ教えでもあると思っております。

築地本願寺 宗務長 尾井貴童(おのいきどう)

【調査概要】

※リリース内の調査データ:小数点以下を四捨五入しており、合計値が100%にならない場合もあります。

※年代・性別など個別データやグラフをご希望の方はお問い合わせください。

築地本願寺ではいつでも皆さまをお待ちしています

 築地本願寺では様々な不安に寄り添うためにいつでも門を開いて皆さまとのご縁をお待ちしております。築地本願寺の「あなた」の不安に少しでも寄り添えるかもしれない、施策をご紹介します。

●築地本願寺 悩み相談窓口情報

< 僧侶僧談 >

 本堂に9-16時で僧侶が常駐しています。お気軽にお声をおかけください。

< よろず僧談 >

 仏事やお墓のことだけではなく、人間関係や日頃の生活の不安など、気になるあれこれを僧侶に相談できる場です。

 要予約制(火曜日14:30~・15:30~・18:30~/金曜日13:30~・14:30~・15:30~)

 ですので、築地本願寺HP https://tsukijihongwanji.jp よりお申込みください。
 ※築地本願寺倶楽部会員対象。築地本願寺倶楽部は入会費・年会費無料。

●築地本願寺新報 お悩み相談コーナー「ちょっときいてよ」

 「僧侶僧談」や「よろず僧談」など対面でのお悩み相談以外に、毎月築地本願寺が発刊している寺報(広報誌)『築地本願寺新報』にお悩み相談「ちょっときいてよ」コーナーをご用意しています。
このコーナーでは築地本願寺の職員や「新報」の編集委員がみなさまのお悩みにお答えしています。

一つのお悩みに対して三者三様の視点での回答が読めるので、ひそかな人気となっています。 

※「築地本願寺新報」は本堂やインフォメーションセンターに設置。公式HPでもお読みいただけます。

●毎月第一月曜日の風物詩「テンプルモーニング」

 「テンプルモーニング」は憂鬱な気分になりがちな月初めの月曜日早朝に、ちょっといいことをした気分になれるお寺のお掃除と、元気になれる「活力ワード」と題した僧侶からのお話を聞く行事です。出勤や家事を始める前にほんの少し早起きして参加すると、心も体もリフレッシュできると多くの方から好評をいただいています。どうぞ軽い気持ちでまずは覗きに来てください。あなたのご参加をこころよりお待ちしております。

※テンプルモーニングの開催情報は築地本願寺公式X(旧Twitter)及びHPをご確認ください

          築地本願寺新報
     テンプルモーニング「活力ワード」の風景

https://tsukijihongwanji.jp/enjoy/new-report/

浄土真宗 東京ビハーラ 無料電話相談

 築地本願寺内にある東京ビハーラの無料電話相談です。僧侶、医師、カウンセラーがあなたの苦しみ悲しみに寄り添います。東京ビハーラの相談員が、あなたとご一緒の時間を共にします。どうぞお電話ください。

【東京ビハーラ 電話番号:03-5565-3418 HP https://tokyo-vihara.com/ 】

浄土真宗本願寺派 築地本願寺について

 築地本願寺は、京都の本願寺(西本願寺)を本山とする浄土真宗本願寺派の寺院です。古代仏教建築様式などを模した現在の本堂は1934(昭和9)年に落成。内観は浄土真宗寺院の伝統的な造りと、シャンデリア、正面扉上部にあるステンドグラス等の西洋文化も調和し、礼拝施設として心安らぐ空間となっています。2014(平成26)年には、本堂や正門などが国の重要文化財に指定されています。

 2017(平成29)年、“開かれたお寺”をスローガンに、誰でも入りやすく、親しめるお寺を目指し、カフェ・ショップ等が入ったインフォメーションセンターを境内に新設しました。はなまつりや盆踊り、除夜の鐘など四季折々の行事を開催し、年間約300万人が集うお寺となっています。

浄土真宗本願寺派築地本願寺

●取材に関する問い合わせ
浄土真宗本願寺派築地本願寺 広報担当:岩田・二木
メールアドレス:koho@tsukijihongwanji.jp
電話:0120-792-048
     (コンタクトセンター・全日9時-17時)
住所:東京都中央区築地3ー15ー1

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会社概要

宗教法人 築地本願寺

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業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都中央区築地3-15-1
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代表者名
竒山 明憲
上場
未上場
資本金
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設立
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