日本人ダンサー中ノ目知章合同取材会「バレエ・アム・ライン」白鳥の湖の魅力を語る!
バレエ・アム・ライン初来日公演 マーティン・シュレップァー演出《白鳥の湖》
ヨーロッパで最先端、ドイツのデュッセルドルフとデュースブルグに本拠地を置く話題のバレエカンパニー、バレエ・アム・ラインによる初来日公演が、今年9月に東京(9/20(金)・21(土)@Bunkamuraオーチャードホール)と兵庫(9/28(土)@兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール)で開催されるにあたり、所属ダンサーの中ノ目知章(なかのめともあき)が都内で記者懇談会を開いた。
■中ノ目知章(なかのめともあき)
児玉克洋、宮本百合子に師事。2007年第18回全日本バレエコンクール、第40回埼玉全国舞踊コンクールに於いてジュニアの部第一位。
2008年ハンブルクバレエ学校よりスカラシップを得て2年間留学。ジョン・ノイマイヤー、ケヴィン・へイゲンらの指導を受ける。
同校卒業後、ドルトムント劇場と契約、その後キール劇場、ノルウェー国立バレエ団、そしてハーゲン劇場所属を経て現在ドイツ・デュッセルドルフ/デュイスブルクに拠点を置く
バレエ・アム・ライン ソリストとして活躍中。
今秋9月のバレエ・アム・ライン初来日公演 シュレップア―版≪白鳥の湖≫では
オデットの継母の側近役(予定)。
Q,「バレエ・アム・ライン」というバレエカンパニーの特徴は?
バレエカンパニーとしての環境が全て整っていること。バレエスタジオが5つあり、サウナやジム、身体のメンテナンスを受けられる場所が全て整っている。
カンパニーのレパートリーが充実していることも特徴としてある。その中でもアム・ラインの芸術監督であるマーティン・シュレップァーのレパートリーがやはりみんな一番好き。
監督のマーティン自身が週に1回レッスンの指導をするというのは今までのカンパニーではなく、実際に手本を見せて教えてくれるので、今までのカンパニーよりも格段に成長できた。
Q,「バレエ・アム・ライン」の《白鳥の湖》の特徴
クラシックは綺麗に踊らなければならない。また“白鳥の湖”といえば白いチュチュという印象を持っている方が多いと思うが、マーティン・シュレップァーが見せたかったのは、“陰と陽”の美しさ。人や物それぞれに必ずあるであろう“陰と陽”の心理的な部分を映して魅せていることが特徴だと思う。
振付のときにマーティンから役についての振付の細かい説明は一切なく、指導の際にはそのダンサーから出てくる感情をしっかりと引き出して踊って欲しいと強く求められる。
つまり登場人物のキャラクターの表面的なところではなく、ダンサー自身の内面からでてくる感情をその役の心理にあてはめるように作られている、と語る。
出演者一人一人、一つ一つの役割に特徴がある。“個性”をだして踊らなければいけないというところがこの作品に限らずシュレップァーが大切にしているモットーともいえるだろう。
マーティン・シュレップァー版の《白鳥の湖》は初版台本に則っている。例えばオデットを守る祖父役やオデットを苦しめる継母役が登場する。“善と悪”や“陰と陽”を表現していることが良く分かる部分ともいえるだろう。
Q,マーティン・シュレップァー版の《白鳥の湖》を一言で表すならば?
「白鳥の湖という物語の奥深いところを見ることができる」ということだろう。
“ただ観て終わる”というのではなく、“観てから考える”ということをお客様にゆだねているところがある。クライマックスも観た人の解釈にゆだねられるだろう。
Q,マーティンの指導とは?
マーティンは普段のレッスンでも全力で踊ることを求めてくる。
他のバレエカンパニーでのレッスンは作品を踊るためのウォームアップだったが、マーティンのレッスンはその概念が覆された。
バレエというと“綺麗に踊ること”が求められがちだが、シュレップァーは綺麗に踊るというよりも限界への挑戦や筋肉の使い方を意識した実用的なレッスンである。
毎日フルMAXで踊ることの積み重ねで、舞台に立った時にも作品の演出・振付を全力で出すことができていると思う。
“舞台の上でリスクを冒すことを恐れないで欲しい。失敗してもいいから全力で踊って欲しい”という気持ちがマーティン・シュレップァーにはある。
また日頃から私たちは「パーソナリティ(個性)」を意識しろと言われている。普段のレッスンから「パーソナリティ」を出していくことを大切にしている。
Q.今回の《白鳥の湖》で中ノ目さんが踊る継母の側近役とは?
《白鳥の湖》の中の悪役として有名なのはオディールやロットバルトだが、マーティン・シュレップァーはロットバルトを操るオデットの継母に焦点をあてている。その継母の側近役を踊ります。僕は髪の毛も黒いし、陰の部分を視覚的にも引き出せるキャスティングかな?と思う。
側近役という悪役を悪く見せるというより、自分の中にある“陰”を意識して、内からでてくる“悪”をみせることを大切にしている。
Q.音楽がオリジナル版であるが今まで踊ってきた白鳥の湖とは違う音楽についての特徴は?
振付と音楽が合っていること。オリジナルのCDはかなりテンポが速く、そのテンポを使っているんだろうなと思う。「くるみ割り人形」や「眠れる森の美女」などの有名なストーリーバレエに振付をしてこなかったマーティンが、今回「白鳥の湖」を手掛けたということは、小澤征爾さんの音源がよっぽど衝撃的だったんではないかなと思う。
今回の指揮者である小林資典さんもドイツのドルトムントで活躍されている方。ドイツで活躍されている日本人の指揮者と一緒に日本で仕事できることはとても楽しみ。
Q.登場人物について
例えば王子だと心境の変化がとても繊細に描かれている。強さだけでなく弱さも見せている。一般的な王子というよりも、心の変化や葛藤が見えてくる人間味のある役どころだと思う。僕は側近役としてオデットをいじめる役なので、オデットには悲しんで欲しい。だがオデット自身もとても強い女性として作られていると思う。
バレエだとオデットはオデット、オディールはオディールであって、ダンサー自身の個性を出すと役が崩れてしまうと思いがちだが、マーティン版は個性を前面にだしているところも見どころの一つ。
踊る人によっても役の解釈が違ってくるので、今回のダブルキャストでのダンサーそれぞれの個性の違いもみどころ。1回だけでなく、2回3回とみて欲しい。
Q,バレエ・アム・ラインの初来日公演について
日本で公演ができると聞いたときは「本当かな」と思いました。日本の振付ではなくドイツのバレエ団の振付を日本で踊ることはなかったのでとても楽しみです。劇場にぜひお越しいただき、“ドイツの芸術”を感じて欲しいです。
バレエ・アム・ライン初来日公演 マーティン・シュレップァー演出 《白鳥の湖》
1956年創業以来、ドイツを代表するオペラハウスの一つとして知られるライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー、バレエ・アム・ライン。ヨーロッパで強烈なインパクトを与え続けるバレエカンパニーの、記念すべき初来日公演に選ばれた演目は、チャイコフスキーの中でも特に有名な作品である《白鳥の湖》。マニュエル・ルグリの後任として2020年シーズンよりウィーン国立バレエの芸術監督就任が決まっている鬼才マーティン・シュレップァーが、世界初演時の原典譜と台本を用いて、チャイコフスキーが理想とする《白鳥の湖》を新演出。ファンタジーよりリアリティを追求した物語性豊かな本作は、2018年6月にドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスや衣装、照明、美術において、これまでの《白鳥の湖》を刷新するスタイリッシュな舞台として話題を呼び、連日満員の大成功を収めた。ドイツ国外では、今回が初披露となるシュレップァー版《白鳥の湖》。来日ダンサー42名が縦横無尽に舞台上を駆け巡り、オーケストラの演奏に合わせてダイナミックに踊る姿はまさに“究極のアート”だ。
■マーティン・シュレップァー(Martin Schläpfer)
ロイヤル・バレエスクールで学びバーゼル・バレエに入団。
その後1994年にベルン・バレエの芸術監督となり、
1999年~2009年はバレエマインツを結成し芸術監督に。
2009年にバレエ・アム・ラインの芸術監督および首席振付家に就任。
就任最初のシーズンでドイツのダンス雑誌『tanz』で最優秀振付家
に選ばれ、バレエ・アム・ラインは2013、2014、2015、2017年と最優秀カンパニーに選ばれた。
欧州では人気振付家として、自身のカンパニー以外にもチューリッヒ・バレエ、ミュンヘン・バレエ、オランダ国立バレエなどに作品を提供。2006年にブノワ賞最優秀振付家、タリオーニ賞、2009年と2012年にはドイツ芸術のアカデミー賞と称されるファウスト賞を受賞。2014年にはタリオーニ・ヨーロッパバレエ賞最優秀芸術監督に選ばれた。
振付家・シュレップァーを取材したドキュメンタリー『Keep the flame, don't pray to the ashes』はドイツで放映され、DVD化もされている。
2020年にはマニュエル・ルグリの後任としてウィーン国立バレエ団芸術監督の就任が決まっている。
■バレエ・アム・ライン(Ballett am Rhein)
(Kenny Farquharson, The Times)
デュッセルドルフとデュースブルグの2か所に本拠地を
置くライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー。
2009年のリニューアル後、スイス出身の振付家
マーティン・シュレップァ―が芸術監督に就任。彼の指導の下で、非常にクオリティが高い作品を次々と発表、そのレパートリーの広さで多くの観客を魅了し、「21世紀のバレエ芸術」のパイオニアと称されている。シュレップァ―の驚くべき想像力と才能に導かれて2013、2014、2015、2017年とドイツのバレエ雑誌『tanz』で最優秀カンパニーに選ばれたこのバレエ団は、シュレップァーの作品を中心にバランシン、ロビンスといったネオクラシックや、ゲッケ、ナハリンなどの現代作品を得意としている。
2018年6月に世界初演を迎えた、シュレップァー振付の『白鳥の湖』は演劇的要素が強く、衣装や照明、美術など、これまでの≪白鳥の湖≫のイメージを一新するスタイリッシュな舞台で話題となり、連日満員の大成功を収めた。
《白鳥の湖》
演出・振付:マーティン・シュレップァー
時 間:約2時間45分(1回休憩)
プレミエ :2018年6月8日(デュッセルドルフ)
2018年9月28日(デュースブルク)
王子ジークフリートは結婚をするようにといわれたが、彼はそれを気に入らず拒んでいた。
友達といつも通り狩りに出かけ、だんだん夜が更けていきやがて夜になっていく。
森の深いところにある不思議な湖の近くで彼は白鳥を見つけ射ようとしたところ、その白鳥が見たことのない少女に変わっていく。白鳥オデットは夜の間だけ元の人間の姿にもどることが許されているのであった――。
≪白鳥の湖≫は作曲家・チャイコフスキーの中でも特に有名なバレエ作品である。
1877年のモスクワ・ボリショイ劇場で世界初演されて以来、ロマンティックバレエの象徴として様々な解釈のもと上演されてきた。1895年にペテルブルグにてマリウス・プティパとレフ・イワーノフによって改訂・振付が施され、現在もプティパとイワーノフの改訂版を基に様々なところで上演されている。
バレエ・アム・ラインではスイス出身の振付家であるマーティン・シュレップァーがチャイコフスキーの原典版音楽(通常バレエに使用されているのは変更、削除、他曲が挿入され、ほぼ30%が原典版と異なる)を使用し、台本は世界中で上演されている“プティパ・イワーノフ改訂版”ではなく改変前のオリジナルを使用。≪白鳥の湖≫おなじみの白タイツやチュチュを衣装に取り入れず、陰影を際立たせる演劇的要素の強い照明や多国籍なダンサーたちの個性を生かした振付で、これまでにないスタイリッシュで力強くスピード感のある新しい≪白鳥の湖≫を創り出した。
このシュレップァー版≪白鳥の湖≫は2018年6月、ドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスをはじめ、衣装や照明、美術、そして“古典”と“モダン”を融合させた斬新な演出が話題を呼び、チケットは即日完売、連日観客を熱狂させ大成功を収めた。
“古典”と“モダン”を融合させた演劇的アート作品
鬼才マーティン・シュレップァー版《白鳥の湖》のココに注目!
◎チャイコフスキーの原典版音楽を使用
現在《白鳥の湖》で使用されている楽譜は改変されたものを使われていることが多く、チャイコフスキーの原典版音楽で観た人はほとんどいないという。シュレップァーは、チャイコフスキーが書いたテンポを忠実に再現した小澤征爾指揮・ボストン交響楽団の原典版録音を聴いたとき、これまでバレエ音楽として聴いていた≪白鳥の湖≫とは異なる、ドラマを感じさせるダイナミックな音とスピーディーなテンポに衝撃を受け、原典譜を使用しての制作を決めた。コンテンポラリーを得意とするシュレプファーにとっては長年の課題だった大型古典作品の演出を決意するきっかけともなった。
◎オリジナル台本へのこだわり
世界中で上演されている《白鳥の湖》はプティパ/イワーノフ改訂版を基に演出されている中、シュレップァーは敢えて1877年世界初演時の初演版台本を使用。改訂版には出てこないオデットの祖父や継母など登場人物が多いのが特徴的だ。シュレップァーは新しく取り組むにあたり、今まで成功を収めてきたファンタジーな世界観が広がるプティパ/イワーノフ版のコピーではなく、チャイコフスキーが求め創造した物語を現代に生きる我々が心理的に共感できるように、一から新しい≪白鳥の湖≫を作り上げた。
◎観る者に想像させる個性的かつ斬新な演出
シュレップァー版《白鳥の湖》では、白いタイツやチュチュは登場しない。日中は白鳥で夜になると人間になるという設定で、裸足であることで彼女たちが女性であると表現しつつ、若者の日常的な衣装を用いて人間的要素を強調。観る者に想像させる“余白”を残した演出、演劇的要素の強い振付を輝かせる効果的な照明、ダンサーたちの卓越した技術が一体となり、これまでとはまったく違う力強くスピード感あふれ、ダイナミックでスタイリッシュな《白鳥の湖》が誕生した。
<公演詳細>
公演名: バレエ・アム・ライン マーティン・シュレップァー演出 ≪白鳥の湖≫
出演: バレエ・アム・ライン(ライン・ドイツ・オペラ バレエカンパニー)
演出: マーティン・シュレップァ―(バレエ・アム・ライン芸術監督/振付家)
指揮: 小林資典(ドルトムント市立オペラ 第一指揮者)
演奏: シアターオーケストラトーキョー(東京公演)/大阪交響楽団(兵庫公演)
東京公演: 2019年9月20日(金)18:30開演(17:45開場)
2019年9月21日(土)11:30開演(10:45開場)
2019年9月21日(土)18:30開演(17:45開場)
Bunkamura オーチャードホール
兵庫公演: 2019年9月28日(土)15:00開演(14:15開場)
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
料金: S席 ¥20,000/A席 ¥17,000/B席 ¥14,000 /C席 ¥11,000 /D席 ¥8,000/SS席 25,000
※未就学児入場不可
主催: 関西テレビ放送、BS日テレ、キョードーマネージメントシステムズ
協力: WOWOW
後援: 在日ドイツ商工会議所、ドイツ連邦共和国大使館
招聘・企画・制作: 関西テレビ放送、キョードーマネージメントシステムズ
お問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
*東京公演チケットに関するお問合せ: サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
公式HP: https://ballettamrhein.jp/
■中ノ目知章(なかのめともあき)
1992年生まれ、神奈川県出身。現在27歳。
児玉克洋、宮本百合子に師事。2007年第18回全日本バレエコンクール、第40回埼玉全国舞踊コンクールに於いてジュニアの部第一位。
2008年ハンブルクバレエ学校よりスカラシップを得て2年間留学。ジョン・ノイマイヤー、ケヴィン・へイゲンらの指導を受ける。
同校卒業後、ドルトムント劇場と契約、その後キール劇場、ノルウェー国立バレエ団、そしてハーゲン劇場所属を経て現在ドイツ・デュッセルドルフ/デュイスブルクに拠点を置く
バレエ・アム・ライン ソリストとして活躍中。
今秋9月のバレエ・アム・ライン初来日公演 シュレップア―版≪白鳥の湖≫では
オデットの継母の側近役(予定)。
Q,「バレエ・アム・ライン」というバレエカンパニーの特徴は?
バレエカンパニーとしての環境が全て整っていること。バレエスタジオが5つあり、サウナやジム、身体のメンテナンスを受けられる場所が全て整っている。
カンパニーのレパートリーが充実していることも特徴としてある。その中でもアム・ラインの芸術監督であるマーティン・シュレップァーのレパートリーがやはりみんな一番好き。
監督のマーティン自身が週に1回レッスンの指導をするというのは今までのカンパニーではなく、実際に手本を見せて教えてくれるので、今までのカンパニーよりも格段に成長できた。
Q,「バレエ・アム・ライン」の《白鳥の湖》の特徴
クラシックは綺麗に踊らなければならない。また“白鳥の湖”といえば白いチュチュという印象を持っている方が多いと思うが、マーティン・シュレップァーが見せたかったのは、“陰と陽”の美しさ。人や物それぞれに必ずあるであろう“陰と陽”の心理的な部分を映して魅せていることが特徴だと思う。
振付のときにマーティンから役についての振付の細かい説明は一切なく、指導の際にはそのダンサーから出てくる感情をしっかりと引き出して踊って欲しいと強く求められる。
つまり登場人物のキャラクターの表面的なところではなく、ダンサー自身の内面からでてくる感情をその役の心理にあてはめるように作られている、と語る。
出演者一人一人、一つ一つの役割に特徴がある。“個性”をだして踊らなければいけないというところがこの作品に限らずシュレップァーが大切にしているモットーともいえるだろう。
マーティン・シュレップァー版の《白鳥の湖》は初版台本に則っている。例えばオデットを守る祖父役やオデットを苦しめる継母役が登場する。“善と悪”や“陰と陽”を表現していることが良く分かる部分ともいえるだろう。
Q,マーティン・シュレップァー版の《白鳥の湖》を一言で表すならば?
「白鳥の湖という物語の奥深いところを見ることができる」ということだろう。
“ただ観て終わる”というのではなく、“観てから考える”ということをお客様にゆだねているところがある。クライマックスも観た人の解釈にゆだねられるだろう。
Q,マーティンの指導とは?
マーティンは普段のレッスンでも全力で踊ることを求めてくる。
他のバレエカンパニーでのレッスンは作品を踊るためのウォームアップだったが、マーティンのレッスンはその概念が覆された。
バレエというと“綺麗に踊ること”が求められがちだが、シュレップァーは綺麗に踊るというよりも限界への挑戦や筋肉の使い方を意識した実用的なレッスンである。
毎日フルMAXで踊ることの積み重ねで、舞台に立った時にも作品の演出・振付を全力で出すことができていると思う。
“舞台の上でリスクを冒すことを恐れないで欲しい。失敗してもいいから全力で踊って欲しい”という気持ちがマーティン・シュレップァーにはある。
また日頃から私たちは「パーソナリティ(個性)」を意識しろと言われている。普段のレッスンから「パーソナリティ」を出していくことを大切にしている。
Q.今回の《白鳥の湖》で中ノ目さんが踊る継母の側近役とは?
《白鳥の湖》の中の悪役として有名なのはオディールやロットバルトだが、マーティン・シュレップァーはロットバルトを操るオデットの継母に焦点をあてている。その継母の側近役を踊ります。僕は髪の毛も黒いし、陰の部分を視覚的にも引き出せるキャスティングかな?と思う。
側近役という悪役を悪く見せるというより、自分の中にある“陰”を意識して、内からでてくる“悪”をみせることを大切にしている。
Q.音楽がオリジナル版であるが今まで踊ってきた白鳥の湖とは違う音楽についての特徴は?
振付と音楽が合っていること。オリジナルのCDはかなりテンポが速く、そのテンポを使っているんだろうなと思う。「くるみ割り人形」や「眠れる森の美女」などの有名なストーリーバレエに振付をしてこなかったマーティンが、今回「白鳥の湖」を手掛けたということは、小澤征爾さんの音源がよっぽど衝撃的だったんではないかなと思う。
今回の指揮者である小林資典さんもドイツのドルトムントで活躍されている方。ドイツで活躍されている日本人の指揮者と一緒に日本で仕事できることはとても楽しみ。
Q.登場人物について
例えば王子だと心境の変化がとても繊細に描かれている。強さだけでなく弱さも見せている。一般的な王子というよりも、心の変化や葛藤が見えてくる人間味のある役どころだと思う。僕は側近役としてオデットをいじめる役なので、オデットには悲しんで欲しい。だがオデット自身もとても強い女性として作られていると思う。
バレエだとオデットはオデット、オディールはオディールであって、ダンサー自身の個性を出すと役が崩れてしまうと思いがちだが、マーティン版は個性を前面にだしているところも見どころの一つ。
踊る人によっても役の解釈が違ってくるので、今回のダブルキャストでのダンサーそれぞれの個性の違いもみどころ。1回だけでなく、2回3回とみて欲しい。
Q,バレエ・アム・ラインの初来日公演について
日本で公演ができると聞いたときは「本当かな」と思いました。日本の振付ではなくドイツのバレエ団の振付を日本で踊ることはなかったのでとても楽しみです。劇場にぜひお越しいただき、“ドイツの芸術”を感じて欲しいです。
バレエ・アム・ライン初来日公演 マーティン・シュレップァー演出 《白鳥の湖》
1956年創業以来、ドイツを代表するオペラハウスの一つとして知られるライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー、バレエ・アム・ライン。ヨーロッパで強烈なインパクトを与え続けるバレエカンパニーの、記念すべき初来日公演に選ばれた演目は、チャイコフスキーの中でも特に有名な作品である《白鳥の湖》。マニュエル・ルグリの後任として2020年シーズンよりウィーン国立バレエの芸術監督就任が決まっている鬼才マーティン・シュレップァーが、世界初演時の原典譜と台本を用いて、チャイコフスキーが理想とする《白鳥の湖》を新演出。ファンタジーよりリアリティを追求した物語性豊かな本作は、2018年6月にドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスや衣装、照明、美術において、これまでの《白鳥の湖》を刷新するスタイリッシュな舞台として話題を呼び、連日満員の大成功を収めた。ドイツ国外では、今回が初披露となるシュレップァー版《白鳥の湖》。来日ダンサー42名が縦横無尽に舞台上を駆け巡り、オーケストラの演奏に合わせてダイナミックに踊る姿はまさに“究極のアート”だ。
■マーティン・シュレップァー(Martin Schläpfer)
ライン・ドイツ・オペラの“バレエ・アム・ライン”芸術監督/振付家。
ロイヤル・バレエスクールで学びバーゼル・バレエに入団。
その後1994年にベルン・バレエの芸術監督となり、
1999年~2009年はバレエマインツを結成し芸術監督に。
2009年にバレエ・アム・ラインの芸術監督および首席振付家に就任。
就任最初のシーズンでドイツのダンス雑誌『tanz』で最優秀振付家
に選ばれ、バレエ・アム・ラインは2013、2014、2015、2017年と最優秀カンパニーに選ばれた。
欧州では人気振付家として、自身のカンパニー以外にもチューリッヒ・バレエ、ミュンヘン・バレエ、オランダ国立バレエなどに作品を提供。2006年にブノワ賞最優秀振付家、タリオーニ賞、2009年と2012年にはドイツ芸術のアカデミー賞と称されるファウスト賞を受賞。2014年にはタリオーニ・ヨーロッパバレエ賞最優秀芸術監督に選ばれた。
振付家・シュレップァーを取材したドキュメンタリー『Keep the flame, don't pray to the ashes』はドイツで放映され、DVD化もされている。
2020年にはマニュエル・ルグリの後任としてウィーン国立バレエ団芸術監督の就任が決まっている。
■バレエ・アム・ライン(Ballett am Rhein)
”表現力豊かで、パワフルで、セクシー“
(Kenny Farquharson, The Times)
デュッセルドルフとデュースブルグの2か所に本拠地を
置くライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー。
2009年のリニューアル後、スイス出身の振付家
マーティン・シュレップァ―が芸術監督に就任。彼の指導の下で、非常にクオリティが高い作品を次々と発表、そのレパートリーの広さで多くの観客を魅了し、「21世紀のバレエ芸術」のパイオニアと称されている。シュレップァ―の驚くべき想像力と才能に導かれて2013、2014、2015、2017年とドイツのバレエ雑誌『tanz』で最優秀カンパニーに選ばれたこのバレエ団は、シュレップァーの作品を中心にバランシン、ロビンスといったネオクラシックや、ゲッケ、ナハリンなどの現代作品を得意としている。
2018年6月に世界初演を迎えた、シュレップァー振付の『白鳥の湖』は演劇的要素が強く、衣装や照明、美術など、これまでの≪白鳥の湖≫のイメージを一新するスタイリッシュな舞台で話題となり、連日満員の大成功を収めた。
《白鳥の湖》
音 楽:P.チャイコフスキー
演出・振付:マーティン・シュレップァー
時 間:約2時間45分(1回休憩)
プレミエ :2018年6月8日(デュッセルドルフ)
2018年9月28日(デュースブルク)
王子ジークフリートは結婚をするようにといわれたが、彼はそれを気に入らず拒んでいた。
友達といつも通り狩りに出かけ、だんだん夜が更けていきやがて夜になっていく。
森の深いところにある不思議な湖の近くで彼は白鳥を見つけ射ようとしたところ、その白鳥が見たことのない少女に変わっていく。白鳥オデットは夜の間だけ元の人間の姿にもどることが許されているのであった――。
≪白鳥の湖≫は作曲家・チャイコフスキーの中でも特に有名なバレエ作品である。
1877年のモスクワ・ボリショイ劇場で世界初演されて以来、ロマンティックバレエの象徴として様々な解釈のもと上演されてきた。1895年にペテルブルグにてマリウス・プティパとレフ・イワーノフによって改訂・振付が施され、現在もプティパとイワーノフの改訂版を基に様々なところで上演されている。
バレエ・アム・ラインではスイス出身の振付家であるマーティン・シュレップァーがチャイコフスキーの原典版音楽(通常バレエに使用されているのは変更、削除、他曲が挿入され、ほぼ30%が原典版と異なる)を使用し、台本は世界中で上演されている“プティパ・イワーノフ改訂版”ではなく改変前のオリジナルを使用。≪白鳥の湖≫おなじみの白タイツやチュチュを衣装に取り入れず、陰影を際立たせる演劇的要素の強い照明や多国籍なダンサーたちの個性を生かした振付で、これまでにないスタイリッシュで力強くスピード感のある新しい≪白鳥の湖≫を創り出した。
このシュレップァー版≪白鳥の湖≫は2018年6月、ドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスをはじめ、衣装や照明、美術、そして“古典”と“モダン”を融合させた斬新な演出が話題を呼び、チケットは即日完売、連日観客を熱狂させ大成功を収めた。
“古典”と“モダン”を融合させた演劇的アート作品
鬼才マーティン・シュレップァー版《白鳥の湖》のココに注目!
◎チャイコフスキーの原典版音楽を使用
現在《白鳥の湖》で使用されている楽譜は改変されたものを使われていることが多く、チャイコフスキーの原典版音楽で観た人はほとんどいないという。シュレップァーは、チャイコフスキーが書いたテンポを忠実に再現した小澤征爾指揮・ボストン交響楽団の原典版録音を聴いたとき、これまでバレエ音楽として聴いていた≪白鳥の湖≫とは異なる、ドラマを感じさせるダイナミックな音とスピーディーなテンポに衝撃を受け、原典譜を使用しての制作を決めた。コンテンポラリーを得意とするシュレプファーにとっては長年の課題だった大型古典作品の演出を決意するきっかけともなった。
◎オリジナル台本へのこだわり
世界中で上演されている《白鳥の湖》はプティパ/イワーノフ改訂版を基に演出されている中、シュレップァーは敢えて1877年世界初演時の初演版台本を使用。改訂版には出てこないオデットの祖父や継母など登場人物が多いのが特徴的だ。シュレップァーは新しく取り組むにあたり、今まで成功を収めてきたファンタジーな世界観が広がるプティパ/イワーノフ版のコピーではなく、チャイコフスキーが求め創造した物語を現代に生きる我々が心理的に共感できるように、一から新しい≪白鳥の湖≫を作り上げた。
◎観る者に想像させる個性的かつ斬新な演出
シュレップァー版《白鳥の湖》では、白いタイツやチュチュは登場しない。日中は白鳥で夜になると人間になるという設定で、裸足であることで彼女たちが女性であると表現しつつ、若者の日常的な衣装を用いて人間的要素を強調。観る者に想像させる“余白”を残した演出、演劇的要素の強い振付を輝かせる効果的な照明、ダンサーたちの卓越した技術が一体となり、これまでとはまったく違う力強くスピード感あふれ、ダイナミックでスタイリッシュな《白鳥の湖》が誕生した。
<公演詳細>
公演名: バレエ・アム・ライン マーティン・シュレップァー演出 ≪白鳥の湖≫
出演: バレエ・アム・ライン(ライン・ドイツ・オペラ バレエカンパニー)
演出: マーティン・シュレップァ―(バレエ・アム・ライン芸術監督/振付家)
指揮: 小林資典(ドルトムント市立オペラ 第一指揮者)
演奏: シアターオーケストラトーキョー(東京公演)/大阪交響楽団(兵庫公演)
東京公演: 2019年9月20日(金)18:30開演(17:45開場)
2019年9月21日(土)11:30開演(10:45開場)
2019年9月21日(土)18:30開演(17:45開場)
Bunkamura オーチャードホール
兵庫公演: 2019年9月28日(土)15:00開演(14:15開場)
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
料金: S席 ¥20,000/A席 ¥17,000/B席 ¥14,000 /C席 ¥11,000 /D席 ¥8,000/SS席 25,000
※未就学児入場不可
主催: 関西テレビ放送、BS日テレ、キョードーマネージメントシステムズ
協力: WOWOW
後援: 在日ドイツ商工会議所、ドイツ連邦共和国大使館
招聘・企画・制作: 関西テレビ放送、キョードーマネージメントシステムズ
お問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
*東京公演チケットに関するお問合せ: サンライズプロモーション東京 0570-00-3337
公式HP: https://ballettamrhein.jp/
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