2021年の台湾電力設備製造業の景気展望<ワイズ機械業界ジャーナル2021年2月第1週号発行>
〜台湾機械業界の動向が分かる〜
ワイズコンサルティング グループ(本社:中華民国台北市、代表取締役:吉本康志)は台湾機械業界専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2月第1週号を発行しました。今週号では、機械設備業界、電力設備業界、自動化設備メーカーのMIRLEオートメーション、農業・林業用機械設備業界について紹介します。
<210204号内容>
1 | 台湾機械設備製造業の振り返りと2021年の展望 |
2 | 2021年の台湾電力設備製造業の景気展望 |
3 | 自動化設備メーカー、盟立自動化(MIRLEオートメーション) |
4 | 台湾農業・林業用機械設備製造業の振り返りと2021年の展望 |
●今週号の記事を一部紹介します。
<2021年の台湾電力設備製造業の景気展望>
一、2021年の景気展望
台湾経済研究院(台経院、TIER)が行った電力設備製造業の景気動向調査によると、調査対象企業のうち57.14%が2021年の景気は好転し、台湾の生産量、海外販売量、受注量、総販売量、台湾メーカーの販売額などがいずれも成長すると考えていることが分かった。台湾で▽電力施設の建設▽工場や住宅工事▽第5世代移動通信(5G)対応製品の需要などが増加しており、関連設備と部品の販売が好調となる見通しだ。さらに、一部メーカーが米中貿易摩擦の影響への対応として、台湾への投資金額を引き上げている。
また調査では62.07%の企業が、総コストが増加すると回答した。これは各社が生産能力の再調整を進めているためだ。一部メーカーは増加したコストを製品価格に反映させる計画だが、中国メーカーが積極的に受注獲得に動いており、原材料価格も上昇していることから、多くのメーカーが価格引き上げには慎重な姿勢を取っている。このように、価格競争の激化と国際サプライチェーンの変化が企業の経営コストに影響し、21年の台湾電力設備製造業の景気は小幅上昇にとどまるとみられる。
二、2021年の電力設備市場の動向予測
政府と民間からの需要増加によって販売額が成長
2020年8月、行政院が通過させた21年度総予算のうち、インフラ建設の予算額は20年を下回った。しかし、経済部に所属する▽台湾中油(CPC)▽台湾電力(台電、TPC)▽台湾糖業(台糖)▽台湾自来水(台水)の資本支出額は前年比4.85%増加し、このうちTPCの資本支出額は1,663億6,600万台湾元で最高だった。これは21年に▽大潭火力発電所(桃園市観音区)▽台中火力発電所(台中市)▽興達火力発電所(高雄市)でガス発電設備の新設がピークになるためだ。この他、民間業者が手掛ける▽海能「フォルモサ2」(苗栗県沖)▽允能(雲林県沖)▽大彰化(彰化県沖)▽彰芳(彰化県沖)などで、一部の風力発電機稼働を開始する。関連する機電設備と建設工事の増加が、電力設備製造業の売上高成長に好材料となる見込みである。
EVインフラとエネルギー貯蔵設備へのメーカーの投資が増加
政府の補助政策を受けて、台湾の電動自動車(EV)販売台数は成長が続いている。これに伴ってバッテリー充電・交換設備の需要が増加し、企業がインフラ整備への投資を拡大している。例えば、自動車大手、裕隆集団傘下の裕電能源(YESエナジー・サービス)は、20億台湾元を投資して、2022年までに全台湾に5,000台の充電スタンドを設置する計画だ。この他TPCは、再生エネルギーは給電が不安であることから、エネルギー貯蔵設備の建設を進めている。台湾のエネルギー貯蔵需要量は25年までに590メガワット(MW)に達するとみられ、うち160MWはTPCが台湾本島に設備を設置、430MWは民間企業に開放する。20年7月にTPCが行ったエネルギー貯蔵自動周波数制御補助サービスの入札で、すでに5社が15MWの容量を獲得した。また、TPCは21年にサービスプラットフォームを立ち上げ、エネルギー貯蔵設備と生産に対する民間企業の投資意欲の向上を図る計画である。
台商のUターン投資と建設工事増加で電力設備需要が成長
経済部によると、政府の3大投資プランの投資額は2021年1月22日時点で合計1兆1,868億台湾元に達した。TPCは、台商(海外で事業展開する台湾系企業)のUターン投資と半導体産業の投資の増加による電力消費は21年にピークを迎えると予測している。この他、A級(高級)オフィス物件の賃貸市場は需要に供給が追い付いていない状況で、台湾北・中・南部でオフィスビル建設が進んでいる。内政部によると、20年上半期の台湾全土の住宅工事着工件数は6万件を突破し、前年比12.8%増加した。これらのことから電力設備製造業への需要が増加し、21年も好調が続くと予測される。
三、まとめ
2021年もTPCの重電製品に対する需要は成長が続くだろう。また、台湾の洋上風力発電所建設もピークに達するとみられるが、台湾メーカーは洋上風力発電機に使用される▽発電機▽変圧器▽海底ケーブルなどの需要部品の研究開発能力と生産基礎が弱い。風力発電所開発業者はスケジュール、コスト、システムなどを考慮し、初期に海外製品を優先して採用しているため、洋上風力発電所の開発の台湾当産業メーカーの業績に対する影響は、短期的には限りがある。
台商のUターン投資の増加に加えて、半導体メーカーが工場建設と初期段階の生産を開始していることから、電力消費が増加した。これを受けて、政府と民間発電業者が資本支出を拡大させており、関連する重電製品の需要も成長するだろう。一部製品が台湾で生産されるようになったことも好材料となるとみられる。このため、2021年の台湾電力設備製造業の生産額と販売額、景気は20年より小幅成長する見通しだ。
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